第1回宍道湖・中海ラムサール条約と「賢明な利用」を語る会
島根県では、平成17年11月にアフリカのウガンダで開催される第9回ラムサール条約締結国会議での宍道湖・中海の条約登録を目指しています。
条約登録に向け、その意義と、条約の主旨である「賢明な利用」について語る会を平成17年6月11日(土)、島根県松江市殿町のサンラポーむらくもで開催しましたので、その模様をお知らせいたします。
1主催:島根県
2実施年月日:平成17年6月11日(土)午後1時30分〜午後5時
3実施場所:松江市殿町サンラポーむらくも2階「瑞雲の間」
4参加人数:約80名
5次第
(1)主催者挨拶島根県環境生活部次長長谷川眞二
(2)概要説明牛場雅巳氏(環境省自然環境局野生生物課課長補佐)
(3)先進地事例報告須川恒氏(琵琶湖ラムサール研究会、龍谷大学非常勤講師)
「琵琶湖とラムサール条約−大きな湖で条約を活用するには−」
(4)宍道湖・中海での様々な活動事例報告
森茂晃氏(財団法人ホシザキグリーン財団調査研究課長)
「宍道湖の生息する鳥類、動植物」
星野幸代氏(下意東子どもエコクラブサポーター)
「子どもエコクラブ活動を通じて」
国井秀伸氏(島根大学汽水地域研究センターセンター長)
「宍道湖・中海における学術調査について」
小谷武氏(NPO法人斐伊川流域ネットワーク「斐伊川クラブ」理事長)
「宍道湖・中海のヨシ原再生活動」
6概要
環境省自然環境局野生生物課課長補佐の牛場雅巳さんが、「ラムサール条約とワイズユース」について説明。条約の歴史、目的などを説明する中で、登録湿地が当初の「水鳥類の渡来地として重要な湿地」から、現在では「広く生態系として重要な湿地」に変化した経緯などを説明。また、併せて、「賢明な利用」の例として、漁業関係者等による保全活動が行われている北海道の厚岸湖・別寒辺牛湿原や、伝統的な坂網猟と共存しながら、米のブランド化を目指している石川県の方野鴨池の取り組みなどを紹介。条約登録によって、湿地が国際的に位置付けられ、再評価されることで保全活動の盛り上がりが期待できるとし、平成17年11月、アフリカのウガンダで開催される条約締約国会議に合わせ、現在13箇所の国内の登録湿地を、国内の地域バランスに配慮しつつ、様々なタイプの湿地を登録する観点から、汽水湖である宍道湖・中海も含めて、22箇所以上に増やすという日本政府の方針を強調、更なる地元の理解と協力を求めました。
その後、1993(平成5)年に登録された琵琶湖の周辺で活動を続ける琵琶湖ラムサール研究会の須川恒さん(龍谷大学非常勤講師)が「琵琶湖とラムサール条約−大きな湖で条約を活用するには−」と題して講演。“mottainai”の精神を生かし、過去のラムサール条約に関する名講演を収集して掲載するなどホームページを活用した意識啓発や、オオヒシクイの保全活動を展開している様子を説明。一方、行政も住民も登録の意義を生かすため、何をすればいいのか模索している状況が続いているとも指摘。湖岸情報を共有し、さまざまな分野の人たちが継続して対話できる仕組みづくりが必要との提言を行いました。
続いて、ラムサール条約登録を目指す地元宍道湖・中海で様々な活動をしている団体からの報告がありました。
最初に、財団法人ホシザキグリーン財団調査研究課長の森茂晃さんが「宍道湖の生息する鳥類、動植物」と題して報告。宍道湖西岸で宍道湖グリーンパークや隣接するゴビウスを拠点とした野鳥の観察や、魚類などの紹介を通して、自然保護の普及啓発に努めている様子を報告しました。
次に、子どもエコクラブの活動を通じて中海の環境保全活動を長年展開している下意東子どもエコクラブサポーターの星野幸代さんが発表。地域の人たちの理解と協力の下、地元公民館を足場に、意東川の水質や生物の調査、中海の白鳥海岸の清掃活動など、子どもたちを中心とした様々な活動を展開している様子を報告しました。
続いて島根大学汽水地域研究センター長の国井秀伸さんが、研究者の立場から、「中海・宍道湖の自然再生と保全生態−ラムサール条約登録湿地に向けて−」と題して発表。1992(平成4)年の地球サミットにおける生物多様性条約の制定から2003(平成15)年の自然再生推進法の施行に至るまでの経緯やそれらの趣旨、宍道湖・中海におけるアマモを始めとする水生生物を保全・修復する重要性・課題などについて発表しました。
最後に、NPO法人斐伊川流域ネットワーク「斐伊川クラブ」理事長の小谷武さんが発表。子どもたちと一緒に竹ポットによるヨシの植生復元を行う宍道湖ヨシ再生プロジェクトを始め、尾原ダム・交流の里づくり、菜の花プロジェクトなど、斐伊川水系全体を視野に入れた活動を展開、ヨシ再生プロジェクトではヨシを植える際に使う波止めの木材に上流の間伐材を利用していると発表。未来を担う子どもたちへの意識啓発や、ゴミそのものを捨てない環境づくり、関係者の連携の重要性を訴えました。
事例発表の後は、山陰中央新報社論説委員の藤原秀晶さんをコーディネータとして、参加者全員による「賢明な利用」についての意見交換が行われました。
参加者からは、継続的な活動と団体の連携強化を求める声が相次ぎ、
- 研究や調査といった学術的な側面だけではなく、遊びなどの文化面も重視しながら住民の理解を得ることが必要。
- 今回のような発表会といった形式ではなく、参加した住民が自分の意見をどしどし言えるような形式の場を作ってほしい。
- あらゆる機会を作って、周辺住民に条約の意義や大切さなどを継続して訴えることが大切。
などの活発な意見が出されました。
7来場者へのアンケート結果
来場いただいた方々にアンケートにご協力いただきました。主な内容は以下のとおりです。
島根県としては、語る会当日でのご提言、ご意見や、アンケート結果などを踏まえ、今後の活動を検討してまいりたいと考えております。
(1)どのような内容の会議やセミナーに参加したいですか
- 両湖の将来像を語るような会
- 活用についてのパネルディスカッション
- 参加者1人の意見にあったように専門家をまじえた上で対等に10人10色のアイデア意見が自由に交わせる会議
- 宍道湖周辺の環境に関わるセミナー(初級編)として子どもから大人までわかりやすいセミナー(学習会)を開いてほしく、又、これが住民主体のセミナーであることが望ましい
- 湖周辺の住民を集めた会議(語る会)が必要ではないか
- 専門的知識だけでなく次世代を担う子どもに対する解り易いシンポ
- 広く一般(専門家、大人、子ども、団体、etc)に対する情報提供
- 宍道湖中海の各地で現場を見ながら勉強会がしたいです。
- 宍道湖中海の生態系についてもっと詳しく知りたい
- 宍道湖・中海の生態系の詳細
- 山(森)と湖水・川・海の関係
- 宍道湖中海と人々の営み(文化民族、産業、生体、遊び)
- ラムサール条約登録のメリットを住民に理解させるような内容→「条約に登録されて何になるの」という思いを持っている人が多いのではないか(世界遺産登録も同様ですが)
- 漁業者の会議等の意見をHPで公開を
- ネーミング利用の活用策
(2)賢明な利用についてのご提案がありましたらご記入下さい
[1]継続的な活動の必要性に関するもの
- 継続性
[2]協議会設置に関するもの
- 関係者を広く集めた協議会設置
- 米子のワイズユース協議会との連帯を
[3]参加者に関するもの
- 製造、漁業、農業の他の関係者も参加された方が良いのでは
- “賢明な利用を語る会”を開催されましたが、現代産業界の声も聞かないと前へ進まないと思う
- 消極的な賛成をしていると思われる漁協、生産者団体を含めた賢明利用検討会で、消極の芽を刈り取る打合せを
- 多くの住民の意見を吸い上げるようにお願い致します
[4]「賢明な利用」の検討の進め方に関するもの
- とりあえず水質環境と生態系の修復を先行させた後賢明な利用を考えるべき
- 地元自治体が、賢明な利用について本気で取り組むことが必要であると思う
- 松江市は観光ブランドになるのだから戦略的に利用すべき
- 身近なゴミの問題からラムサール迄、幅広い事例発表でよかったが
[5]「賢明な利用」の内容に関するもの
- まず宍道湖の生態系の確認と食から伝わる賢明な利用を考えてみたい
- 湿地の多面的機能をわかり易く評価し、保全目標を設定する
[6]その他
- 先進地(県外)の活動状況の説明
- 県境を越えた取組を期待したい
- 宍道湖中海域でのラムサールワイズユースに関するメーリングリストを立ち上げて情報の交換を進めては
- 環境保全活動を実施する主体、例えばNPO,NGO等の支援方法や仕組みづくり
お問い合わせ先
環境政策課宍道湖・中海対策推進室
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地 TEL:0852-22-6445