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気象災害対策(日照不足・大雨に対する対策)

気象災害対策

平成15年7月11日
島根県農林水産部
(農業経営課専門技術員)
日照不足・大雨に対する対策について

松江、浜田、西郷における、平成15年6月10日から7月10日までの日照時間は、それぞれ平年比の44%、46%、51%となっており、日照不足による障害が懸念される。また、梅雨末期の大雨による被害も予想されるので十分な対策を行うことが必要。
1.水稲

(1)対策にあたっての留意点
・水稲の生育が違うと、同じ浸冠水を受けても被害量に大きい差が生じる。被害を受けやすい時期は穂ばらみ期(減数分裂期)を中心とする出穂前20日頃から出穂期にかけてである。
・同一期間の冠水でも水の清濁、流速、水温ならびに葉の露出の有無により異なり、水が濁っているほど、水の動きがない場合、水温が高いほど葉先が水面上に出ていない場合被害は大きい(作物気象災害対策指針参照)。
・生育段階の最も進んでいる品種は、平坦部の「ハナエチゼン」であって、この生育ステージは減数分裂期となっている。また、「コシヒカリ」も5月上旬植までは幼穂形成期となっており、水稲にとっては重要な時期を迎えている。

(2)日照不足対策
光合成による同化作用が不足することから、「コシヒカリ」を中心に葉色が濃く徒長気味の生育となっている。倒伏防止対策や葉いもちなどの病害対策が重要となる。
・間断かん水等の水管理を徹底する。
・生育診断に基づく穂肥を徹底し、過度な施肥や一度に多量な施肥は避ける。
・生育状況によって、倒伏軽減剤の使用を行う場合は使用基準を遵守する。
・発生予察情報や現地での発生状況に注意し、別項にしたがい適切な防除を行う。

(3)大雨対策
1)流出田に対する処置
耕土の流出が比較的軽度か部分的流出の場合、速やかな改植が考えられるが、今回は時期が遅いので、応急対策は不可能である。
2)土砂流入、埋没田に対する措置
・完全に埋没した水田
岩石、木片、浮遊物等を除去し、灌排水操作ができる状態まで復旧を図る。
・土砂流入の少ない水田
株基の土砂を取り除き、稲の生育回復を図るが、土砂の除去後の湛水に支障が少ない場合は、湛水できる程度に取り除けばよい。
3)浸水、冠水田に対する措置
・速やかに退水措置を講じ、一刻も早く稲体を水面上に露出させる。排水が十分でなくても葉先が水面に出ると被害が軽くなる。
・減水とともに、木片その他の浮遊物を除去すると同時に稲体に付着した泥土を洗い流す。その際、急激な完全排水はしないよう注意する。
・退水後は被害診断を適切に行い、枯死株率や幼穂の枯死状態を調べ、幼穂の枯死率を把握する。幼穂枯死率が高くても株基及び茎葉の生きている場合は、これによってかなりの補償が期待できる。
・退水後の早急な追肥は行わず、成育の状況を見て必要な場合のみ施用する。
・浸、冠水田では病害虫が発生しやすいので、別項にしたがい適切防除を行う。
2.大豆

降雨続きで程度に差があるがいずれの圃場も湿害を受けている。できる限り排水がスムーズにゆくよう排水対策を徹底する。天候状況が回復ししだい中耕を実施し、土壌中の気相を多くし根の健全化を図る。
3.野菜

被害は降雨による浸冠水、滞水、地下水位の急上昇等で生ずる直接被害と多湿、日照不足を介して発生する草勢の衰弱、病害の蔓延等の両面にわたるので、これらの対策を遅れないよう実施しなければならない。なお、草勢が衰弱し、茎葉が軟弱な場合は薬害を受けやすいので、散布濃度を低めとし、高温時の散布を避ける。
(1)浸冠水、滞水対策
根の機能回復がポイントである。浸水被害は長時間に及ぶほど大きく、同じ程度、時間でも停滞水が流水より被害が大である。作業にあたっては水分の著しく多い畝や株付近の土をむやみに動かしたり足を踏み入れて、土壌の固結を招かないよう注意する。
・降雨中、ハウスは側壁ビニルを下げ、接地部に土を乗せ地表水の侵入を防ぐ。露地圃場でも堰をつくるなどして周辺からの雨水の流入を防ぐ。
・圃場(ハウス)の排水溝、排出口を掃除、草刈りしてゴミなどを除去し、溝を深くさらえて雨水の流出を促し、たまった水は畝間に穴を掘って集めポンプ等で速やかに排出する。
・降雨後は畝から浸出する水を集水穴に集めてポンプ等で排出する。マルチはめくると畝の乾燥に役立つが、表面の根を傷める場合があるので様子を見ながらめくる程度を決める。
・草勢回復を図るため葉面散布を行う。果実は早めに収穫し負担を軽くするが、メロンのように糖度が収穫の基準となるものは検査後に収穫する。
・追肥や土壌乾燥後の中耕土寄せは回復に有効な場合もあるが、メロン成熟期、根を傷めるような場合は行わないほうが安全である。
・イチゴ苗は土等で汚れた葉をきれいな水で洗う。
・天候が回復し茎葉がしおれれば様子を見ながら少量灌水する。ただし、しおれが軽い場合は灌水を控えて葉面散布、ハウス換気、軽い遮光等をまじえながら徐々に馴らす。
・出荷できるものは早めに収穫する。
・過湿にともなう病害が発生しやすいので、殺菌剤で予防する。防除は高温にならない時間帯に実施する。

(2)曇雨天、日照不足対策
・灌水は少なくし、茎葉の徒長を防ぐ。
・奇形果、罹病果は除き、収穫も早めて株の負担を軽くする。
・ハウスは降雨中でも出入り口等を開き、やみ間には全開して除湿する。晴天時には上部まで開き、茎葉が高温空気にさらされないようにする。
・抑制野菜の苗床では苗間隔を広げ、灌水も天気にあわせて最小限に止める。
・メロンは糖度上昇が遅れたりばらついたりするので収穫時の検査を徹底する。
・葉面散布、追肥、収穫、薬剤散布等は浸水対策に準じて実施する。
4.果樹

(1)日照不足と高湿度による障害防止対策
・ぶどうでは収穫中から収穫直前のものに裂果が発生し易いのでハウス内の換気をはかり、排水等を行って土壌水分を下げる。
無風のため換気が十分出来ない場合は送風機等で空気の撹はんを行う。また、収穫を行った果実は除湿器を使用した場所で選別や調整を行い、高湿度の場所におかない。
さらに、着色期以降にあり果実の着色がすすまない園は、混みすぎた枝の整理と摘房を行う。
・かき、なし、くり、うめなどは花芽分化期であるため発育枝の誘引、新梢の間引き等を行って花芽分化の促進をはかり花芽の着生の減少を軽減をはかる。
・果樹では新梢葉が高湿度と日照不足で軟弱となり、病気の発生が促進されるので予防的に薬剤散布を実施するが、収穫中や収穫直前のものについては農薬安全使用基準を厳守するとともに、果実の汚れ等に注意する。

(2)大雨による障害防止対策
・園内に雨水が大量に侵入しないように園の外周の排水溝を整備し、降雨後は直ちに排水できるように園内の作溝や、谷の下に排水用ビニールを敷く等の事前対策をする。
・湛水によって根腐れ等が発生した場合には、降雨後の急激な乾燥によって被害が助長されるのでマルチや少量のかん水を回数多く行い、急激な乾燥の防止を図る。
(3)根が傷み養分の吸収が十分でないと判断される場合は、葉が黄変しない内に葉面散布を数回行う。
(4)土砂等で樹が埋められた場合は、最初に樹幹周囲の土砂を取り除き(樹幹の掘り出し)を行い、その後園全体の土砂の除去をする。
5.花き


(1)大雨に対して
1)圃場あるいはハウス内への浸水防止と速やかな排水を図るため、圃場周囲の溝さらえや畝間の整地、ハウスの破損個所の補修を行う。また、圃場周辺からの流入に対しては土のう等をつんでせき止め、圃場内に浸水した水はポンプを使って速やかに排水する。
2)被害を受けた場合は
・倒伏したものは速やかに起こし、支柱等をしっかり立て直すが、その時に株元周辺を強く踏み固めないように注意する。
・生育状況によっては、液肥を2~3回葉面散布して草勢の回復を図る。
・病害が発生しやすいので殺菌剤を散布し予防する。
・株が冠水した場合は、早急に清水で洗い、殺菌剤を散布する。
・浸水等により畝内が過湿状態になっておれば、畝の乾燥を促すためマルチはめくり、また根を傷める心配がない場合は、土壌を踏み固めないように注意しながら表面を浅く耕す。
・大雨後の強日射等により株が萎れる場合は、寒冷紗等を用いて遮光して株の萎れを防ぐ。

(2)長雨と日照不足に対して
・灌水、窒素施肥は控えめとし、茎葉が軟弱、徒長するのを防ぐ。
・ハウス換気は十分に行って、ハウス内の通風をよくし湿度を下げる。
・病害では全般に灰色かび病が発生しやすく、キクでは白さび病、黒斑病、ユリに葉枯れ病、バラにべと病、黒星病等の発生が多いので薬剤散布及び病株除去の徹底を図るとともに、ハウス内湿度を下げる等の病害発生が起こりにくい環境を整える。

 

6.病害虫(普通作物、野菜、果樹)

(1)イネ
白葉枯病の常習発生地では浸冠水のあった場合は、排水後直ちにシラハゲン水和剤S1000~2000倍液または同粉剤Sを散布する。また、葉いもちの防除と兼ねてオリゼメート粒剤を施用するのも有効である。また、浸冠水したイネでは、アワヨトウが発生しやすいので、見回り調査を行い、発生が見られた場合には、早めにディプテレックス乳剤1000倍液または同粉剤を散布する。浸冠水によってイネの生育が遅れ、その後急速に旺盛な生育をする場合、葉いもちが発生しやすいので注意が必要である。
本年はいもち病の全般発生期がやや遅く早く、現在の発生量は平年にくらべてやや少ないが、一部地域で発病程度の高い圃場もみられる。また、イネの生育も軟弱でり、6月末から感染好適日が頻繁に出現している。今後曇雨天が続くと多発生することも予想される。既発生地や山間・中山間や平坦部の山沿い地帯などで常習発生地、特に罹病性のコシヒカリでは早急に防除対策を講ずることが必要である。

(2)大豆
浸冠水やこれに伴う多湿条件によってべと病、菌核病、黒とう病、黒根腐病、茎疫病等各種の病害が発生しやすいので、排水対策を講ずる。菌核病の発生の恐れのある圃場ではロブラール剤を散布する。

(3)野菜類
長雨によって疫病、べと病、灰色かび病、軟腐病等の発生が懸念される。圃場内の排水に努めるとともに、早めに防除剤(島根県病害虫雑草防除指針に掲載)を散布する。また、被害茎葉の除去に努めるとともに、施設栽培で浸水した場合はマルチをめくり、換気を極力行い、施設内が過湿にならぬようにする。ジャガイモでは疫病や軟腐病等が発生しやすくなるので、早めにイモを傷つけないよう丁寧に掘りあげる。

(4)果樹
ブドウではべと病、黒とう病、灰色かび病、晩腐病や褐斑病の発生が懸念される。また、カキでは炭そ病や黒星病、ナシでは黒斑病や黒星病が発生しやすいので、予防散布に心がけることが大切である。
このほかにも各種の病害の発生が予想されるので発生情報に留意するとともに調査観察を行い、早めに防除対策を講ずることが重要である。
なお、防除剤の使用に当たっては安全使用基準を遵守する。
7.畜産

(1)飼料作物
・浸水圃場は速やかに側溝等による排水作業を行う。
・トウモロコシ、ソルゴー等長大作物が倒伏すると病害虫の発生が起こりやすいので、早めに収穫の準備をする。
・圃場の点検を行い、雨による浸食場所には稲わら等を埋め込み、地表面を均平にして流水がスムーズに流れるように誘導する。
・草生水路を造成して、流去水が緩やかな斜面を流れるようにする。

(2)家畜
牛舎や飼料庫等は過湿状態になると、病原菌の増殖や飼料の変敗、カビが発生しやすくなるので、飼料給与時は十分点検して給与する。
また、牛舎や飼料庫内は通風・換気を良くするとともに、飼料は直接床に置かないでスノコ等を敷いて置く。

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