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気象災害対策(高温・少雨等に関する対策)

気象災害対策

平成16年7月28日
専門技術員スタッフ
高温・少雨等に関する当面の対策

 

水稲


1.間断かん水、節水かんがいの徹底
ハナエチゼン熟期の品種は糊熟期となっている。収量・品質の向上を図るため出穂期後25日過ぎまでは間断かん水を続ける。用水が少ない場合は土壌表面が白く乾くことがない程度に通水を行う。
コシヒカリは減数分裂期〜乳熟期、祭り晴熟期の品種は減数分裂期となっている。出穂期前後は水の最も必要な時期であるので、十分配水できるよう水系ごとの話し合いを進め、地域でのかんがい水の有効利用を図る。穂揃い期を過ぎる頃からは順次間断かん水に移行し、できるだけ収穫近くまで続ける。
2.適期収穫の徹底
平年に比べ気温が2℃前後高く、多照で推移している。出穂期も7日程度早く、収穫は平年に比べ7日以上早まると予想される。刈遅れとならないよう、青味籾率15%を基準に収穫を開始する。
3.病害虫防除
高温で干天が続くとカメムシ類の活動が活発となり、出穂した水稲への飛来量が多くなる。また、畦畔等の雑草が枯死しさらに侵入を助長する。基幹防除(穂揃い期3日後とその10日後の2回)の徹底を図るとともに圃場調査を行い、場合によっては追加防除を行う。
 

大豆


1.現在開花中のところが多い。開花期の乾燥は花震いを招き収量減に直接つながる。また莢伸長期、粒肥大期の乾燥も小粒化等により収量減となる。開花期から50日間は極端な乾燥をさせないよう、うね間かん水を定期的に行う。この際、うね間に入れた水が長期間滞水しないよう注意する。
 

野菜


乾燥の他に高温と強光、熱風による被害が発生するため、用水の確保、かん水の徹底、マルチ被覆、地温の低下対策、遮光資材による遮光等が有効である。被害は移植後で根張りの浅い時期、根傷みや草勢衰弱を生じたものに出やすい。キャベツでは球発育期、スィートコーンでは出穂期前後1ヶ月間等、発生しやすい時期があるので生育状況に注意して管理する。
1.本圃の対策
1)圃場準備
露地では、乾燥により播種・定植できない圃場でも降雨後直ちに作業ができるように準備を終えておく。
2)播種、定植
露地では、播種・定植は土壌表面のみ湿っている場合があるので、十分なかん水と下層土の水分状態を確認した後、夕方の涼しい時刻に実施する。
3)かん水
かん水は朝夕の涼しい時刻に行う。量は少量ずつかん水するより下層土まで浸透する程度の量をまとめて行う。水田転作地等、用水が十分に確保できるところでは畝間かん水を実施する。
4)マルチ等の実施
露地では、圃場内の雑草を刈り取り水分競合を避ける。敷きわら、野草等の敷き草、白黒ダブルやシルバーマルチを行い、ハウスでは通路へのもみがら散布等によって、土壌の乾燥と地温の上昇を防ぐ。
5)遮熱対策
ハウスは出入り口、巻き上げ、天窓等をできるだけ大きく開いて換気し、遮光資材を用いて遮光し、高温・強光を避ける。

2.育苗・苗床の対策
定植の遅れが予想されるセル成型苗は、地床やポリポットに仮植ないし移植する。苗床は日中シルバー寒冷紗等で通風を妨げないように遮光する。但し、過度の遮光は徒長を招くため注意する。

3.生理障害対策
トマト、ピーマン、ナス等では、尻腐果や日焼け果が発生しやすくなるので、塩化カルシュウムの水溶液を葉面散布したり、圃場の乾燥や土壌水分の急激な変化をさせない。畝間の石灰質資材の施用と畝間灌水が有効である。メロンでは茎葉が徒長して、葉の黄化等の障害が発生しやすくなるので、畝にはわらを敷きポリマルチは裾をめくって高温を防ぐ。

4.病害虫防除
高温乾燥により虫害ではハダニ類、スリップス類、アブラムシ類の発育が早く増殖率が高まり、多発生しやすい。特に、ハダニは高密度になってからの薬剤散布では防除効果が出にくいので注意する。ハウス栽培はハウス開閉部の寒冷紗被覆やシルバーマルチを行い、アブラムシ類、スリップス類の侵入を防ぐ。なお、高温時や草勢の衰弱したものは薬害が発生しやすいので、薬剤散布に際しては十分注意する。
 

 

果樹


乾燥害は、種類、品種により、多様な被害様相を示し、巻き葉、葉の黄化、はなはだしくなると落葉等のため枯死する。また、果実は肥大不良、陽光面の日焼け、果実の萎縮や果肉内の褐変等の生理的障害が発生し収量や品質を著しく低下させる。特に、根張りの不十分な幼木や若木、浅根性の果樹、梅雨期の地下水位上昇で根を傷めた樹等は被害を受けやすいので早めの対策を実施する。
1.かん水
土壌水分が減少するとまず果実の発育が遅れ、ついで新梢の伸長が止まり、その後枝葉が萎凋する。かん水開始の目安は、干ばつ(乾燥)の初期兆候である果実の肥大が停止したような状況が見え始めた頃とする。土壌水分が測定できればpF2.7〜3.0まで減少したら乾燥し過ぎない内に15〜20mm程度を砂地で5〜7日、埴土、埴壌土では7〜10日おきにかん水する。
用水が十分に確保できない園では樹冠下にかん水孔を設け、根域に近い土中かん水を実施する。
また、収穫が終わった樹でも、翌年の花芽着生や枝の生育に影響を与えるので着果樹と同様、葉が萎凋したりしないようにかん水する。
2.草刈り
草生園では草刈りを行い雑草等との水分競合を防止する。
3.有機物マルチの実施
刈草や稲わらを樹冠下に敷いて土壌表面からの蒸散を少なくし、地温を下げ保水性を高める。マルチとしての必要量は2kg/m2程度です。
4.病害虫防除
干天が続くとハダニ類、カメムシ類、スリップス類等が発生しやすいので、これらの発生に注意して早めに薬剤を散布する。また、ぶどう園では天井ビニールが被覆してあると乾燥によりハダニ類が発生しやすいので、収穫が終われば速やかにビニールを除去する。
5.収穫
収穫期のブドウ、モモ、ナシ等は果実の温度が下がっている早朝に収穫し、涼しい場所で選果・選別・箱詰め等を行い品質の低下を防ぐ。また、高温で早熟・過熟となりやすいので収穫時期を失しないように成熟の進行状態をこまめに確認をする。

花き

1.施設花きの高温乾燥対策
1)ハウスの出入口、サイド、天窓を出来るだけ大きく開放し、換気に努める。
2)換気扇、循環扇等の使用により施設内高温空気の滞留を防ぐ(特に平坦地夜間)。
3)ハウスでは日中、必要に応じて一時的に遮光資材を被覆し、気温を低下させる。
4)床及び通路に稲わら等でマルチし、地温の低下に努める。
5)かん水に当たっては、かん水パイプ内の高温の水に注意する。
6)高温・強光線下での育苗については、かん水、遮光等で、気温、苗床温度の低下を図ることは必要であるが、過度のかん水、遮光により苗の徒長を招かないように注意する。
7)施設圃場は、定植前に散水、遮光により地温を下げておく。定植にあたってはかん水を十分行い、やや若苗を用いスムースな活着に努める(老化苗は用いない)。活着するまでは遮光を行なう。

2.露地花きの高温乾燥対策
1)用水の確保に努め、かん水できる場合は毎日4mm程度のかん水を行う。
2)条間、畝間に稲わらや草等でマルチを行い土壌の乾燥を防ぐ。
3)雑草との水分競合を避けるため雑草は刈り取り、または除草剤によって枯らす。

3.水源確保時の注意事項
1)海岸近辺での用水や井戸を水源として利用する場合は塩分に留意し、必ず使用前にチェックを行なう。また、ばらのロックウール栽培で新規水源を利用する場合もNa等のイオン濃度が高いことがあるので注意する。

4.高温により発生する花きの生理障害
1)秋ギクは夏秋ギクより高温の影響を受けやすく、開花の遅延や奇形花が発生しやすい。そのため貫性花(頭状花序の中心部、又は総ほうの部分に不定芽として総ほうと小花が形成されたもの)は、主に蕾の発達、開花が高温期にかかる秋ギクのシェード栽培等で発生しやすい。また夏秋ぎくでも発生する。
2)バラは高温で葉焼けや花弁数の減少、花持ち不良等の品質低下を起こしやすい。花が奇形となるブルヘッドは低温だけでなく、開花約1週間前に高温に遭遇することでも発生する。
3)カーネーションでは花芽が発育途上にあるものは高温障害を受けやすく、ブラインドが発生し易い。
4)ぼたんでは高温・乾燥が続くと葉の早期枯れ上がりが発生し、充実の悪い株となる。また、干ばつでは早く落葉した株で秋に不時萌芽するものがあるので適宜かん水を行う。
5)トルコギキョウの秋出荷では高温によって開花期が早くなり、株のボリュームも貧弱となりやすい。
6)チューリップは貯蔵中に球根内部で来年の茎葉、花芽、根、新球の分化、発達が進むため適温、適湿で貯蔵することが大事である。8月及び9月の30℃前後の高温は球根の生理作用に著しい影響を及ぼし、来年の生育、収量を悪化させる。親喰い現象(1球から2〜4本の茎を伸ばし、それぞれに開花する現象)は貯蔵中の8月中旬から9月の高温で発生しやすいので、この時期の気温が25℃以上にならないように管理する。

5.病害虫防除
1)干天が続くとハダニ類、スリップス類等の害虫が発生しやすいので、これらの発生に注意して早めに薬剤を散布する。ただし、薬散は薬害を招かないように早朝か夕方の気温が低い時間帯に散布する。

1.被害の起こり方
干ばつ期に土壌水分が不足し、茶樹の生理的機能が阻害され、生育不良となるものであり、地形や土壌構造及び管理などに基づく要因も大きい。
土壌構造が不良な場合は、根の分布が浅く、根量が少ないなど、下層土の水分が利用できないため干害を受け易くなる。また、常時湿潤な土壌環境にある茶園は根が浅くなり被害を受けやすい。
2.被害の状況
生育不良による減収及び品質の低下が起こり、甚だしい場合には枯死株も発生し、被害は一層顕著となる。
3.被害対策
1)事前対策
・土壌水分の蒸発を防止するため、茶園に敷き草等を行う。
・水利のよいところではかん水を実施する。幼木園では特に留意する。
・土壌構造が不良な茶園では、有機物の供給や深耕・耕耘並びに排水対策などを講じて土壌改良を図り、根の分布を深め、保水性をよくする。
2)事後対策
・被害の初期にかん水を行い、敷き草を十分に施す。
・干ばつ時には、カンザワハダニ・チャノミドリヒメヨコバイ・チャノキイロアザミウマ・ハマキムシ類などが多発し易いので、それぞれ適切な防除を行う。
・被害園では、樹勢の回復を早めるため、摘採や整枝を軽減する。
牧草及び飼料作物

1.寒地型の永年牧草については、早期に刈り取りを実施して葉面からの水分蒸散を抑制し、地下部の枯死を防止する。
2.トウモロコシ、ソルガム等の長大作物については、かん水が困難なところでは土寄せ、敷き草を行い、土壌水分の蒸発を極力抑制するように努める。
また、収穫適期に近いもの及び回復が困難と判断されるものについては、早期に収穫を行う。
家畜の暑熱対策

家畜は暑さに弱く、25℃以上で体温の上昇、呼吸数の増加、飼料摂取量の減少がみられ、30℃を越すと急激に採食量の減少や内分泌の異常を来たし、乳量・乳成分の低下、繁殖障害、疾病等の発生が増加する。そこで、次の対策を参考に、経営条件や立地条件にあった方法で暑熱対策に取り組んでいただきたい。
1.畜舎環境対策
1)牛舎の通風換気を良くするための畜舎の改造や送風機を設置する。
畜舎内の空気を押し出す送風機設置は、角度45度で効果が高く、設置間隔は、送風機直径の5〜6倍の距離で効果が高いとされている。
2)西日対策は寒冷紗、植物等を利用して夕方の温度上昇を防止する。
家畜の熱生産量が多くなる時間帯は、15時から20時頃であり、このころに生産される体熱を換気扇や送風機等で畜舎から排出する。
3)屋根等への温度上昇防止対策
屋根に散水施設(スプリンクラー)の設置、屋根材に消石灰等の白色材の吹き付けや断熱材の敷設等により畜舎内温度の上昇を防ぐ。

2.飼養管理対策
家畜は飼料摂取して消化吸収する過程で多量な発酵熱を産出し、体の内外から暑くなり、体温上昇により飼料摂取量が低下する。従って、消化が良く発酵熱産出の少ない飼料を給与する。
1)粗飼料は、消化速度が速く栄養価の高い飼料を給与する。
生育時期の早刈り乾草、細切りやペレット、製造粕類の副産物等消化の良い良質な粗飼料を与える。
2)TDN含有量の高い配合飼料やミネラルの給与
・熱発生が少なくエネルギーが高い脂肪酸カルシュウム等の添加給与を行う。
・胃内の恒常性を保つため、重曹等の緩衝剤の添加も検討する。
・給与順序は、消化の良い粗飼料を、次に濃厚飼料を給与するなど給与順番を守る。
・高温によりビタミンやミネラルの消費量が増加するので補給に心掛ける。
・受胎率の低下防止にビタミンの補給に努める。
3)新鮮な冷水がいつでも自由に飲めるようにしておく。
4)飼料の給与方法は、夜間と早朝給与を基本とし、給与回数を多くする。

3.牛体からの体熱発散対策
1)牛体管理面からは牛体の毛刈りや牛体への散水も暑熱対策に効果がある。
2)細霧冷房は大型ファンと組み合わせて、牛舎内が加湿にならないよう注意する。
3)送風装置を利用したスポットエアコン方法は、冷風を確実に牛体に当てる。
4)夜間の放牧は、放射冷却と夜間の冷風を利用した防暑対策として効果が高い。
放牧場がない場合は、運動場を利用した夜間運動も良い。

4.暑熱技術の組み合わせ
防暑対策は1つの技術だけでは完璧に出来ないので、以上の3対策を立地条件や経営条件に応じて組み合わせ、少しでもヒートストレスを低減させる組み合わせ技術である。

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農業技術センター

島根県農業技術センター
〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
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