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来賓祝辞

吉越裕二
独立行政法人北方領土問題対策協会事務局長
吉越裕二
 竹島島根県告示百周年記念行事領土問題講演会開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
はじめに、竹島は我が国の固有の領土です。その固有の領土が他国の不法占拠の下におかれている、こういう点において竹島問題と北方領土問題は共通しています。このような理解に立ちまして、竹島と北方領土問題の早期解決という二つの課題に熱心に取り組んでおられる島根県民会議はじめ皆さんには、大変なご尽力とご苦労をいただいております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
また、竹島島根県告示百周年を迎えたこのときに、「竹島の日」が制定されますことに対して、この制定に向けて熱心に取り組んで来られました皆様方のご尽力に対しましても敬意を表します。
さて、本年は日本とロシアが両国の国境線を択捉島と得撫島との間とすることではじめて決めた日魯通好条約署名から百五十周年、北方領土が終戦後ソ連軍に不法占拠されてから六十周年。そういう節目の年を迎えます。また、プーチンロシア大統領の訪日も予定されております。この歴史的に重要な節目な年をとらえ、竹島・北方領土問題の一日も早い解決を追求する日本国民の熱意、断固たる決意を内外に強く示すことが重要であると考えております。
ここで北方領土問題を巡る最近の動向に話題を転じますと、東京宣言以来十四年を経過しましたが、未だ平和条約の締結には至っていないことは、皆様ご承知の通りであります。この間に、「二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」という、一九九七年のクラスノヤロスクでの日ロ首脳合意も伝えられ、日本側にいくらかの希望と光がもたらされました。しかしこれも不発に終わり、返還要求関係者は悲観と焦燥感にかられたことも事実であります。
さて、昨年十一月十四日ラブロフ外相はロシアのテレビ番組において、「ロシアはソ連の継承国であり、ソ連の義務の中には、一九五六年日ソ共同宣言が存在している。同宣言は、南部の二島を日本に引き渡し、これにより終止符を打つことを規定している」旨を述べました。また、対日関係の重要性、領土問題の解決による平和条約の締結の必要性も強調されました。
翌十五日プーチン大統領は閣議で、ラブロフ外相のテレビ番組の発言を指示し、さらに十二月二十三日、クレムリンでの内外記者会見において、「五六年共同宣言がロシアに沿って義務的なものである」旨、同宣言によれば、「二島返還で決着するものであり、日本側が四島返還を要求しているのは、若干否に思える」旨発言されました。これに対して、小泉総理は、翌二十四日昼、「なぜロシアが四島返還しないのか、不可解だ」と反論しました。また、細田官房長官は同日の記者会見で、「一九九三年の東京宣言に明記されている通り、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという、日ロ共通の方針に従って、引き続き交渉を進めていく」と述べ、四島返還を求める方針が変わらないことを強調し、東京宣言を無視するのは、合意違反で不誠実だと暗に切り返しました。
なぜこの時期に、ロシア首脳が相次ぎこのような発言をしたのか、青山学院大学袴田教授の言葉を借りて申し上げれば、「ロシア国内向けが六割、日本への牽制と観測気球が四割」と分析しておられます。確かに、ロシア政府はこれまで日ロ間には、領土問題を解決して、平和条約を締結する必要があることをロシア国民に周知してこなかったのも事実であります。また、我が国の四島返還という基本路線を逸脱して、二島返還で解決を説く無神経な人がいることも事実であります。
このロシア側の発言をいかにみるべきか、プーチン大統領は昨年十月十四日に北京を訪問し、中国との間で領土問題を最終的に解決しました。日本との間でも領土紛争を解決したい気持ちは思っているのではないかと思われます。このためロシア国内向けの説明として、「日ロ間に解決すべき領土問題がある」ということをロシア国民に知らせ、日本に対しては、アドバルーンを上げロシアの交渉戦術として、日本側の四島返還要求を承知の上で、交渉のはじめとしてふっかけを出してきたようにも見えます。ところが、日本の政治家の一部やマスコミの一部は、これを額面通りにとり、「ロシアの態度は固い、領土交渉の進展は望めない」などと発言したり、一部地域の人たちやにわか評論家的な方々が、「ロシアが言うなら取りあえず、歯舞・色丹を返還させ、その後国後・択捉島については交渉すればよい」などと二島先行論、あるいは段階論が出たりしています。これらはロシアの策にはまってしまう危険な言動であると考えます。
なぜならば、平和条約締結なしで二島を引き渡すなら別ですが、日ソ共同宣言に従うと平和条約締結なしにロシアが二島を引き渡すわけがありません。また平和条約が、戦後処理が終わったことを示す以上、その締結後に、ロシアが国後・択捉の継続交渉を真剣に行うことも考えられません。
このようなロシア側の牽制やゆさぶりに惑わされることなく、国民一人ひとりが一糸乱れず四島一括返還という運動を原点を堅持し、粘り強く運動を継続し、政府の外交交渉を側面から支えることが今最も重要であると考えております。
島根県民会議が本日の竹島島根県告示百周年記念事業を契機として、益々の発展をとげられますことを祈念いたしますとともに、引き続き竹島および北方領土の返還要求運動に強力に推進して下さることをお願い申し上げまして、私の挨拶といたします。

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