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7.結実管理

2)フルメット液剤の利用法

 

 フルメット液剤は、合成されたサイトカイニン(植物ホルモン)であり、天然のサイトカイニンと同様な働きする。特性としては大きく分けて、細胞分裂を促進して細胞数を増加させ果実肥大を促進する作用、花粉の稔性を高めて受粉しやすくし、着果を促進させる作用の2つがある。この液剤は働きが強くわずかの量で植物に与える影響が大きいので使用時期、濃度等に注意する必要があります。

(1)使用方法
‘デラウェア’については、ジベレリン処理適期幅拡大と花振るい防止を中心に使用されている。図7-3は、ジベレリン前期処理時の適期幅拡大について検討された結果である。フルメット液剤を加用することにより着粒数は増加し、処理適期も満開18日前から14日前まで幅が拡大されたことがわかる。また、早い作型では天候条件が悪く、樹体の栄養条件も悪いため、結実が不安定であった。表7-2は超早期加温栽培においてフルメット液剤5ppmを混用して処理した結果である。その結果、早い作型においても着粒数が増加し、安定して結実確保ができた。

フルメット

 

フルメットと果実

 

 処理時期や濃度は、作型、樹勢及び天候条件により変える必要がある。超早期加温栽培や早期加温栽培のような早い作型では、使用濃度(5ppmまで)を高くして、やや遅めに処理するほうが結実はよくなる。それ以後の作型は、比較的結実が安定しているので、使用濃度を低くし、やや早めに処理して適度な着粒密度(9〜10粒/軸1cm)になるようにする。しかし、樹勢が強い場合や天候条件が悪いときは、結実を良くするため濃度を高くし、適期処理を行う。樹勢の弱い樹に対しては高い濃度で処理すると、養分を吸引する力が強いので、処理後の樹勢低下につながるため、使用については注意する。

 

(2)フルメット液剤利用による温度管理
これまでジベレリン処理時期〜結実が判明するまでの夜温は、結実安定のために10〜12℃の低い温度で管理しなければならず、そのため特に生育が不揃いの園では、温度が上げられず生育が遅れたり、生育が停滞している場合が多い。表7-3は、フルメット液剤をジベレリン前期処理に加用することにより結実可能な夜温を明らかにするために行った試験である。処理期間の各処理区の温度推移は、図7-4に示していますが、やや変動があり10℃区では8〜10℃で推移し、15℃区は13〜15℃であり、20℃が17〜20℃で推移した。各処理区における結実率、着粒密度は、ジベレリン単用よりフルメット液剤加用のほうが良くなった。処理濃度間では、明らかな差はなかった。無核果率は、夜温が高いほど悪くなった。このことから、フルメット液剤5ppm加用で結実可能な夜温は15℃程度と考えられた。しかし、この試験での作型は準加温栽培であり天候条件や樹体条件が比較的良い場合の結果なので、早い作型の場合は樹体条件、天候条件や生育の早い花穂の結実状況を観察して温度を調節する必要がある。また、早い加温ではジベレリン処理直後に高温にすると、加温機の稼働頻度が高くなり、処理したジベレリンが乾きやすくなるので注意する。

GA処理

結実状況

 

(3)フルメット液剤利用によるジベレリン前期処理の省力化
ジベレリン前期処理は、浸漬処理によって行われているため多くの労力を要している。ジベレリン後期処理は、労力軽減のため小型噴霧器を用いた散布処理が一部行われているが、前期処理での散布処理は結実不安定となり易く、省力化が困難と考えられていた。しかし、フルメット液剤が使用可能になってからは、結実が非常に良くなったことから、ジベレリン前期処理においてフルメット液剤加用の散布処理が可能かどうか検討した。
表7-4は、果実品質に及ぼす影響をみたものである。浸漬処理を行った区がやや着粒密度が高くなったものの、散布5ppm及び散布3ppm(摘心を加えた)とほぼ同程度であった。処理の方法は、薬剤散布の用に樹全面に散布するのではなく、小型噴霧器を用いて1花穂ごとに処理を行い、花穂に十分ジベレリン溶液を付着させる必要がある。また、浸漬処理は適期の花房ごとに行うが、散布では適期の花穂が最も多くなった時期に一斉に行う必要がある。したがって、新梢の揃いが良く、ジベレリン前期処理を一斉に行うような遅い作型で有効であると考えられる。その場合、フルメットの濃度は5ppmとし、天候条件が悪い場合や強勢な新梢は摘心を併用しなければならない。

 

雨よけ栽培

 

 表7-5は、処理時間及び処理量を比較したものである。処理量は浸漬処理より約6倍多くなるものの、前述の散布処理方法での時間は、浸漬処理に比べ摘心をしない場合で約1/6、摘心をした場合で1/3程度であり、省力化することができる。

 

処理時間と量




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