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13.ハウス栽培の新技術

2)補光処理


12月から1月にかけて加温する作型は、生育初期の日長時間が無加温栽培や露地栽培より3時間程度短く、樹勢衰弱の1原因にもなっていると考えられる(図13ー4)。そこで、補光処理や電照について検討を行い、一定の成果を得るとともに、新技術として農家にも導入が試みられるようになった。

補光ハウス図13作型別の日長時間の推移

 

a.光源の種類
補光処理用光源には、蛍光ランプや水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプがある。それぞれ、ランプによって波長特性が異なるため作物に与える影響も少しずつ違うようである。
最初、実験には、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、白熱ランプを用いた。各ランプを8平米に1灯の割合で棚上1.2m前後に吊るした時の平均照度は、ナトリウムランプが2、533ルックスで最も高く、次いで、メタルハライドランプが2、263ルックス、白熱ランプ58ルックスの順になった。

ランプ

 

b.補光処理の効果
巨峰の1月加温栽培において、前述したランプを用いて18時から22時まで補光処理を行い、新梢の生育特性や果実収量及び品質に及ぼす影響をみた。
図13ー5に示すように、いずれの補光区とも無処理区より新梢の伸長は旺盛になった。無処理区の新梢の伸びを100とした時の各ランプにおける伸びの割合は、メタルハライドランプが168であり、次いで、ナトリウムランプが144、白熱ランプは120程度であった。また、補光栽培においては、新梢の登熟期が無処理区よりかなり遅くなり、メタルハライドランプやナトリウムランプは果実の着色期以降であった。このような現象をみると、ブドウ樹における補光処理は、新梢の生育を旺盛にすることが可能であり、若々しさを保つことが出来ると言える。
表13ー4は、果実収量と品質について示したものである。単位土地面積当たりの収量は、無処理区よりメタルハライドランプが64%、ナトリウムランプが33%、白熱ランプが20%程度増収になった。果実品質をみると、各ランプの一粒重は無処理区より1グラムから2グラム重くなった。

 

収量と品質

 

c.ランプの照射範囲
ランプを設置する高さは、高くすれば照射範囲は広がるが、当然照度は低下する。最も効果の高かったメタルハライドランプでは、ランプを棚面より1.9m上に吊るした場合、1灯当たりの照射範囲を18m2まで広げても効果が認められた。また、白熱ランプでは、棚面より1.2m上に吊るした場合6〜8m2に1灯の割合で棚面の照度分布に偏りが出来ないように最も照度の低い場所でも10ルックス以上が保てるように設置するのがよいと考えられる。

 

d.1日の照明時間
12月から1月にかけて加温を開始する作型は、生育初期の日長時間が10時間から11時間であり、露地栽培並の日長時間を確保するには3時間から4時間の照明が必要である。1日の照明時間帯は、日の出前、日没後、真夜中といつの時間帯でも効果が認められた。ただ、電気料金の安い深夜電力を利用することを考えれば、光中断(23時から午前2時に照明)か、または、日の出前に3時間照明するのがよいと考えられる。

 

e.補光処理の導入にあたって
補光栽培は、新梢の伸びが旺盛になり果実収量及び一粒重が増加する。
補光の開始時期は、四葉期頃からでよいと考えられるが、成熟期まで照明を続けると、新梢は伸び続け、棚面は過繁茂状態になり、かえって果実の着色が悪くなってしまう。そのため、目標とする葉の茂り程度を確保したら、その時点で照明を中止するのが栽培のポイントになる。およそ、その時期は開花後40日頃である。
補光設備の導入には、かなりの経費が必要である。したがって、収益性の高い作型において、同一園で連年栽培することが前提になる。



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