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11.施肥・土壌管理

1)作型別の施肥法


作型の早晩によって,樹体生長のパターンが違い,それと同時に生産力も異なる。これは,生育期間中の気象条件が大きく関与しているものと考えられる。実際に本県の作型別目標収量は,超早期加温栽培と普通加温栽培とを比較すると約2倍の差がある。これらの要因のなかに気象条件の他に,樹体内の栄養状態も作型によって異なっているからである。
図11-1,2は‘デラウェア’の超早期加温栽培と無加温ハウス栽培及び露地栽培における葉身の5要素含有率の季節変化をみたものである。カルシウムを除くすべての5要素とも生育初期から成熟期に近づくほど低下している。また,各生育期とも5要素含有率は,超早期加温栽培に比べて無加温ハウス栽培や露地栽培が高く,生育に大きく関与する窒素含有率は,生育初期において1%以上の差がみられる。

 このように,早期の作型ほど樹体内の無機成分含量が少なくなっているのが一般的である。したがって,これらのことを考慮した年間の施肥設計を立て,同時に土壌管理も考える必要がある。表11-1は作型別の年間施肥設計基準を示したが,各園によって各種条件が異なるのでこれを応用していただきたい。以下,作型ごとに施肥上の留意点について述べる。

 

図11作型別5要素含有率

 

施肥時期
施肥割合

 

a.超早期加温栽培〜普通加温栽培
この作型では,いかに地温を根が伸長する温度まで早く上昇させ,スムースに養水分の吸収をさせるかが重要である。しかし,実際にはジベレリン前処理期頃まで新根の発生が少なく,前年に蓄えた貯蔵養分を利用して生長しなければならない。したがって,初期生育を順調に行うには,貯蔵養分を十分蓄えておく必要がある。また,この作型では年間に発生する新根量が少なく,そのため養水分の吸収効率が劣る。したがって,土壌の肥沃化を図るとともに,年間の施肥量を多くし,土壌中の肥料分濃度を高めておくことが大切である。
翌年をこの作型に予定している園では,前作の収穫以降貯蔵養分を蓄積するために,葉の保護に努め,礼肥を多めに施用する。特に,生育期間中に苦土があ不足しやすいので,苦土肥料を多めに施用したい。元肥は,まだ地温が高い10月中旬までに年間施用量の50%程度とする。また,被覆直前から直後にかけて速効性肥料を芽だし肥として施用する。しかし,一般的に開花期頃に葉色が褪せることが多いため,気が付いたら即座に速効性肥料を施す。生育期間中は,ハウス内気温のコントロールはできるが,地温は十分でなく,そのため肥料分の分解が遅いので,追肥は早めに施用する。
収穫後の礼肥は,樹体がかなり衰弱していることが予想されるので,窒素や加里を中心に多めに施用する。

 

b.準加温栽培〜無加温ハウス栽培
この作型の生育期は,比較的気温が上昇した後であり,新根が伸長する地温もほぼ確保されているので,一般的に肥料分は効率的に吸収されるものとみられる。前年の作型が早期加温栽培より早期のもので,樹勢強化・回復のために遅らしたものであれば,通常本作型の施肥量より多くしなければならない。また,この作型を連続して行っている場合には,表に示した施肥基準に準じてもらえばよい。
早期の作型と違ってこの作型は,発芽期とあまりずれない時期から新根の発生がはじまり,元肥に施用した肥料分も生育初期から吸収され,そのため新梢の生長が旺盛になりやすい。特に,この作型は梅雨期に着色期・収穫期をむかえるため,梅雨期の低日照や新梢の遅伸びとあいまって果実品質の低下をきたすことが多い。5月中旬以降に追肥した場合には,10年生以上の成木であれば施肥後から樹体全般に肥料分が吸収転送されるまでに10〜15日間かかる。これらのことを予想して,追肥の施用量や施用時期には細心の注意をはらっていただきたい。

 



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