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かん水方法が‘デラウェア’の生育と果実品質に及ぼす影響

  栽培研究部 果樹グループ  倉橋 孝夫

 

 本県のブドウ園では、主にスプリンクラーを用いてかん水が行われています。かん水量や間隔は土壌の乾燥程度などから判断しているため、1回に2〜3万リットル/10aと必要以上の水が施用され、ハウス内の湿度の上昇による裂果の発生や果実糖度の低下などを起こしてます。 そこで、ブドウの必要とする水量を施用し、ハウス内の湿度を低下させる点滴かん水方法について検討しました。実験には、無加温栽培2年生‘デラウェア’を用いて、日射量に応じてかん水量が調節できる日射比例点滴かん水区(平均22.6リットル//日、以下日射比例区)と1日一定量かん水する日同量点滴かん水区(20リットル//日、日同量区)及びスプリンクラーにより週に1回かん水する慣行かん水区(400リットル//週、慣行区)を設定し、生育や果実品質などについて比較しました。 

 

 ○結果の概要

 幹周、平均新梢長、収穫後の葉面積などの樹の生育は、慣行区が最も優れ、次いで日射比例区、日同量区の順で、かん水量の多い区ほど良くなりました。また、収量は日射比例区と慣行区が多く、日同量区はやや少なくなりました。裂果発生率は日同量区と日射比例区で7%以下と低く、慣行区は13.4%と高くなりました(表1)。 果実品質についてみると、1房重には差が認められませんでしたが、1粒重は慣行区が最も大きく、次いで、日射比例区、日同量区であったが、逆に、果皮強度は日射比例区と日同量区の点滴かん水区が慣行区に比べて強くなっていました。糖度は日同量区が24.0%、日射比例区が23.7%と高く、慣行区は22.7%とやや低くなりましした(表2)。 以上のように、点滴かん水を行うことにより、従来のスプリンクラーによる慣行かん水に比べ、樹の生育が抑えられましたが、 果皮強度が強くなることにより裂果が軽減され、糖度の高い高品質のブドウが生産できした。また、点滴かん水方法で比較すると、日射量に比例した水量を施用する点滴かん水区は日同量の点滴かん水区より、生育が優れ、収量が多いことが明らかとなりました。

 

かん水装置 生育と収量の図

 

  ○今後に向けて

 ‘デラウェア’栽培では、樹体が必要とする水分を点滴かん水することにより、ハウス内の湿度も下がり、裂果の発生が軽減され、高糖度の品質の良いブドウが生産できることが明らかとなりました。 今後は、さらにブドウの生育ステージ毎の最適な養水分量や樹体内の水分状態の把握などについて研究を進めていきたいと考えています。

 

   [島根県農業技術センターだより第4号 2006年8月] 


アクロバット全文(アクロバットデータ)

 


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