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ホウレンソウ栽培における竹炭の利用

 

環境部土壌環境グループ朝木隆行・技術普及部農業環境グループ野田滋

 

 近年、山林の手入れが行き届かなくなったため竹が繁茂し、県内の竹林面積は1万haにも及ぶといわれています。そのような状況の中で、竹の有効利用を図るため、県内各地に設置された40基余りの窯で、年間約80tの竹炭が生産されています。
竹炭は、土壌の保水や通気といった物理性の改善への効果のほかに、カリウムやケイ酸等のミネラル分が多いことや、養分保持能等の性質があることから、良質な土壌改良資材です。当センターではこの未利用地域資源を生かすため、農業分野での利用法について研究を進めています。ここでは、ホウレンソウの収量や品質に対する竹炭の施用効果と付加価値の高い有機栽培技術を有する篤農家の竹炭の使用事例を紹介します。

1.収量、品質に対する竹炭の施用効果
○試験方法
試験はセンター内のビニールハウスで行い、2004年10月と12月、2005年4月と10月にそれぞれホウレンソウを播種し、合計4作栽培しました(品種:1〜3作目「アクティブ」、4作目「オーライ」)。
竹炭は、孟宗竹を約650℃で焼き1〜4cmの大きさに砕いたものを、1作目の基肥施用時に1a当たり100kgを土壌に混和しました。

○結果の概要
竹炭施用後1作目のホウレンソウの収量は15%増加し、明らかな収量向上効果が認められました。2作目以降も竹炭を施用しない場合に比べ10〜30%高く、効果が持続していることがわかります(図2)。
品質成分について、シュウ酸は1作目、4作目共に竹炭施用により減少しており、品質向上効果が認められました。一方、ビタミンC含量は1作目は大きく向上しましたが、4作目では無施用よりやや劣り、効果の持続性が認められませんでした。品質成分に対する竹炭の施用効果はやや不安定な場合もあり、効果の発現メカニズムや持続性等についてさらに詳しく検討する必要があります。



2.ホウレンソウ有機栽培の現地実証
○調査概要
竹炭は試験開始前に1a当たり100kgを施用し、ホウレンソウを2005年6月27日から10月6日まで3作栽培しました。竹炭の価格は120円/kgでした。
農家自家製のぼかし肥料16kg/aカキガラ粉末16kg/a及びバ−クたい肥200kg/aを毎作施用し、竹炭無施用区(ぼかし肥料)と施用区(ぼかし肥料+竹炭)を設けて、竹炭による増収効果等を検討しました。さらに竹炭区では、ぼかし肥料を20%減らした区(ぼかし20%減肥+竹炭)で竹炭による減肥効果も検討しました(図2)。

竹炭の施用作業

○結果の概要
ホウレンソウの収量は、竹炭を施用することによって、ぼかし肥料のみに比べて6月27日播種(品種:パシオン)で67%、同月30日播種(品種:同じ)で18%、9月2日播種(品種:トライ)で31%増収しました。また、ぼかし肥料を20%減らしても、竹炭の施用で同等か、10〜30%増収しました(図2)。
一方、品質についてみると、竹炭によってビタミンCが若干高くなるものの、量的な差は小さく、明確ではありませんでした(表1)。この原因の一つとして、夏期の栽培であるため、播種から収穫まで約一ヶ月と、期間が短く、差がでにくかったことが考えられます。

収量グラフ

品質成分

○今後に向けて
竹炭はホウレンソウで増収効果が確認されました。また、効果の発現や持続性などで検討が必要ですが、ビタミンC等の機能性成分の向上効果も認められました。天然物である竹炭は、安全、安心志向の消費者ニーズに沿った付加価値の高い資材と言えます。今後は、栽培、実証、検討の場を設け、経済的効果を確認するとともに学習会等を開催して広く波及するようにしたいと考えます。
また、ホウレンソウ以外の野菜についても竹炭の施用効果を検証し、竹炭を活用した特色ある島根県野菜の栽培技術を確立したいと考えています。
 

 [島根県農業技術センターだより第3号2006年3月]


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