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ブドウの養液土耕栽培

 

技術普及部果樹技術普及グループ山本孝司


1.はじめに
本県のブドウ栽培面積は約350haであり、そのうちの65%で加温栽培が行われています。その加温開始時期は、早期出荷による高収益を得るために早まっています。ところが、早期加温栽培を連続して行うと樹勢衰弱が著しく、それに対して施肥量を増やすなどの対応をしています。そのため過剰施肥による園外への窒素流亡が心配され、環境保全に配慮した栽培が強く求められています。
この問題に対し、園芸部果樹グループと環境部土壌環境グループでは、これまで園全体に対して深耕、施肥、かん水管理を行っていたのを、樹を中心に2〜3mだけを集中的に管理しても、毎年、高品質生産が可能なことを明らかにしました(図2)。この栽培法は、近年、開園した新型ハウスにおいて根域集中管理栽培として実証されています。その結果、肥料の流亡も少なくなり環境に配慮した栽培方法であることが確認されました(図3)。
また、供給した肥料成分がブドウ樹に無駄なく吸収され、ブドウ園の外に流出しにくい施肥法として、養液土耕栽培(点滴かん水施肥栽培)が開発されました。その成果によれば、肥効調節型肥料を用いた養液土耕栽培は、慣行栽培に比べ窒素施肥量が1/3以下になり、肥料成分の流出量も大幅に減少するとしています。
ここでは、本年度から技術普及部として現場普及を図りたいと考えている養液土耕栽培について、現地調査を行っていますので、その概要を紹介します。

図1センター内の養液土耕栽培ハウスで総合学習を行う小学生(図は略AcrobatDataを参照)
図2根域集中管理栽培(センター内ハウス)10a当たり必要最少土量について試験中(図は略AcrobatDataを参照)
図3根域集中管理デラウェア園(現地)うね部分だけに、施肥・かん水を行っています(図は略AcrobatDataを参照)

2.養液土耕栽培とは
この栽培法は、肥料を含んだ養液を作物の根域部分だけにほぼ毎日点滴かん水する方法であり、肥料の利用率が高く肥料成分の流出の少ない環境保全型栽培として注目され、野菜や花き類の施設栽培で普及が進んでいます。ブドウについては、島根県農業技術センターが全国で最も早く実証に向けた研究に取り組んでいます。

3.現地栽培園での取り組み事例
現地の加温栽培デラウェア園では、C社製、O社製の養液土耕栽培装置が設置されています。装置としては、液肥混入器と点滴チューブが必要です。点滴チューブは、樹を中心にした狭い範囲に直線状(図4)または、渦巻き状(図5)に配置されています。点滴チューブの間隔は、40〜50cmにしておくと液肥が土壌中にほぼ均等に浸透します。
表1にC社製の養液土耕装置を導入した2人の生産者の収量と果実品質を示しました。両園とも加温開始時期が早いため、やや収量が低い結果となりましたが、糖度が高く、品質の良い果実が生産出来ました。両園について聞き取り調査を行ったところ、
(1)超早期加温栽培で発生する生育異常葉の発生が少なくなったこと、
(2)液肥量を変えることによって生育調節が可能なこと、
(3)生育期間中の窒素施肥量が半分以下になったことなどが明らかとなりました。
また、点滴かん水部分をビニール等で覆えば、空中湿度が下がり裂果対策にも有効と考えられます。

図4早期加温栽培における点滴チューブの配置状況(直線上に配置)(図は略AcrobatDataを参照)
図5準加温栽培における点滴チューブの配置状況(渦巻き状に配置)(図は略AcrobatDataを参照)
表1現地養液土耕栽培加温デラウェアの収量と果実品質(2005年)(表は略AcrobatDataを参照)

4.今後の技術確立と普及定着に向けて
2人の生産者とも技術導入後1、2年と日が浅く、生育時期別のかん水量や施肥量をどの程度にしたらよいかなど問題点を持っておられました。今後、これらの点について技術普及部としても、研究部門と連携を取りながら問題点を解決し普及を図りたいと考えています。

[島根県農業技術センターだより創刊号2005年7月]


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