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ブドウの環境保全型栽培のための簡易かん水施肥装置

 

本県におけるブドウ栽培は、主として地力が低く肥料分が流れやすい砂丘未熟土で行われています。また、作型の早期化により樹勢が低下しやすいため、肥料の施用量が過剰になりがちです。その結果、作物の生育に対する悪影響や、窒素による地下水の汚染が懸念されています。そこで、肥料や水を根の周りに集中的に施用し、ブドウによる吸収、利用率を高めるためのかん水施肥装置と栽培法について検討しました。

装置の概要
装置は市販のかん水タイマーやかん水器具と、肥料成分が少しずつ溶出する特性のある肥効調節型肥料を組み合わせたものです。自作すれば10aあたり約15万円で作ることができます。
ブドウ樹の株元から約60cmの高さにつるしたペットボトルなどの容器に肥料(被覆燐硝安加里424、40日溶出型)を充填し、これにかん水タイマーで制御した水を供給します。肥料成分が溶け込んだ養液は、ブドウ樹を中心とする半径約60cmの円周上に均等に配置した滴下ニップルを通じて土壌に点滴方式で供給されます(図1)。樹齢が5年程度までであれば、1樹当たり1kgの肥料を使用し、1日7時間(液量は約20L)かん水タイマーを作動させます。また、給水間隔は、温湯かん水終了後から果実肥大期までと収穫後は2日に1回、果実肥大期から収穫期までは毎日行うことを基本とし、天候などによって調整します。

図1簡易かん水施肥装置の概要(図は略AcrobatDataを参照)

ブドウの収量、品質
「デラウェア」の早期加温栽培で本装置を用いてかん水施肥栽培を行った結果、年度によってやや差があるものの慣行栽培とほぼ同等の果実収量を上げることができました。また、糖度や酸もほぼ同等でした(表1)。

表1「デラウェア」の収量及び品質(表は略AcrobatDataを参照)

肥料の流出量削減効果
調査圃場から深さ3mの地下水を調査した結果、1ha当たりの窒素の流出量は、慣行栽培の44.7kg/haに比べて、かん水施肥では3.8kg/haと1/10以下になりました。また、施肥量に対する流出量の割合は、慣行施肥の22%に比べてかん水施肥では7%と低く、窒素の利用率が高いことが伺えます(図2)。

図2窒素の施肥量と地下水への流出量(調査期間:2003年12/15〜8/29)(図は略AcrobatDataを参照)

装置利用上の留意点
肥料の量や給水間隔は、樹齢、作型、天候などによって調整します。また、好天が続く場合など、スプリンクラーかん水などによりかん水量を増やす必要があります。

環境部土壌環境グループ朝木隆行

 [島根県農業試験場だより第107号2004年11月]


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〒693-0035 島根県出雲市芦渡町2440
 TEL:0853-22-6708 FAX:0853-21-8380
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