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ケイ酸カリの育苗箱施用と水稲の生育および玄米品質

 

乳白粒の多発による1等米比率の低下が大きな問題になっています。乳白粒の発生には、気温の影響が大きく、今後も乳白粒が発生しやすい状況が続くと予想されます。また、土壌からみると県内の水田はグライ土壌が多いため、特に高温下では還元が強くなって、根が傷みやすく、乳白粒の発生を助長しやすいと言えます。したがって、収穫期まで根の活力を維持できるような土壌環境を作ることが重要です。
主要な土づくり資材にはケイ酸質肥料や含鉄資材がありますが、水稲は好ケイ酸植物と呼ばれ、窒素の5〜10倍ものケイ酸を吸収するため、特にケイ酸質肥料の施用は欠かせません。最近では、散布労力がかかることもあって、施用量が減少しており、水田土壌のケイ酸や鉄含有量の低下が懸念されます。そこで、省力化のためにケイ酸カリを育苗箱に施用して、‘コシヒカリ’の品質に対する効果を検討しています。

‘コシヒカリ’の苗質に対する効果

ケイ酸カリ(細粒品)100gを床土(約3kg)に混合すると、ケイ酸吸収量が約3倍になりました(図1)。その結果、葉身が硬く葉が直立し、根量の多い健苗となりました。

‘コシヒカリ’の生育と玄米品質

生育だけでなく乳白粒の発生にも影響の大きい窒素の基肥施用量を変えて、ケイ酸カリを育苗箱に施用した苗と無施用苗を5月中旬に移植して比較すると、本田での生育経過に顕著な差はありませんでしたが、無施用苗に比べて登熟歩合が向上する傾向が認められました。
また玄米品質は、食味評価値およびタンパク含量には差がないものの、乳白粒率が低下し、検査等級が向上しました。
これらの結果から、ケイ酸カリの育苗箱施用は健苗育成に効果があり、また、乳白粒率の低減に寄与するものと考えています。

 施用上の留意点

ケイ酸カリは副成分としてアルカリ分を多く含みます。そのため粉状であると溶解度が高まり、また粒状でも施用量が多いと、絶対量が多くなるため、かん水によって床土のpHが上昇し、生育障害や病害発生の危険性があります。
そのため、ケイ酸カリは整粒品を使用し、1箱当り100gを厳守することが必要です。
ケイ酸カリの施用コストは、育苗箱当り約10円と安価なので、コストの増加はそれほど多くありません。今後、施用効果の安定化を図るため、ケイ酸質肥料をあらかじめ混合した育苗培土の商品化が必要と考えています。

環境部土壌環境科道上伸宏
 

 [島根県農業試験場だより第101号2002年11月]


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