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受け継ぐ挑む島根の伝統工芸

受け継いだ技術の確かさ、
現代の生活にフィットさせるセンス、そして挑戦する心。
それらを兼ね備えた職人が、島根の伝統工芸に
新たな潮流を生み出しています。
可能性を広げ、時代を超えて
受け継がれていく逸品を紹介します。


組子の写真


組子/吉原木工所

格子型の枠にはめ込んでいくのは、小さな薄い木片。釘や金具は使わず、縦、横、斜めの組み合わせで菱や亀甲、桜や梅の花をかたどった幾何学模様を仕上げていきます。この伝統的な木工技術「組子(くみこ)」を、洗練されたインテリアとして現代の住環境に生かしているのが吉原木工所です。


一つ一つの枠に木片を組み込んでいく様子
一つ一つの枠に木片を組み込んでいく


組子は伝統的に、和室の欄間などの飾りに使われてきました。しかし「和室のない住宅が増え、使われる場が減っていました」と組子職人でもある社長の吉原敬司さん。転機が訪れたのは、需要拡大を模索し、パリで開かれたインテリアの見本市に参加したとき。多くの人々の目を引いていたのは、模様の大きな海外のじゅうたんでした。「組子職人は小さく緻密に作ることで技を誇ってきたけど、家という大きな空間のアクセントになるよう、大きくデザインしてみよう」とヒントを得ました。

そして完成させたのが、通常の約2倍に組子を拡大した工法です。障子の全面を使って、伝統的な組子の模様を一つ一つ大きく見せるように製作。デザイン性の高さから多くの人を引きつけ、和室にも洋室にも似合うことから活躍の場が広がりました。

デザインには、職人経験のないデザイナーを起用。木の幹の色の違いを取り入れ、風景を描くようにデザインされた組子に、「自分はつい伝統的な図案にしがち。自由な発想には驚かされます」と吉原さんは話します。


デザインの打ち合わせをする吉原敬司社長の写真
デザインの打ち合わせをする吉原敬司社長


高津川を表現した萩・石見空港の組子の写真
高津川を表現した萩・石見空港の組子


工房では現在、県内外から集まった若者たちが職人として活躍中。時代の変化を柔軟に受け入れ、磨かれていく伝統の技は次世代へ確かに受け継がれています。


木片を組み合わせ、幾何学模様を描く組子の写真
木片を組み合わせ、幾何学模様を描く


●お問い合わせ

吉原木工所
浜田市三隅町室谷912-1(TEL:0855・34・0227)


土人形/島根の招き猫工房

真っ赤なタイを担ぐ、愛くるしい表情の招き猫。「島根の招き猫工房」の渡辺福美(ふくみ)さんが手がける土人形は姿こそ現代風ですが、素材も工法も、伝統の長浜人形にのっとっています。


長浜人形の技法で作られた招き猫の写真
長浜人形の技法で作られた招き猫


長浜人形は、良質な粘土の産地である浜田市長浜地区に伝わる素焼きの土人形。内裏びなや天神様が多く作られ、地域の人々に親しまれてきました。しかし最近では「地元でも長浜人形に触れたことがない人が増えている」と渡辺さん。そこで現代になじむモチーフとして、招き猫を新たにデザインしました。


渡辺福美さんの写真
渡辺福美さん


「素材や技術はいったん途絶えるとなくなってしまう」という思いから、粘土や下地に塗る胡粉(ごふん)、彩色に使う土絵の具や膠(にかわ)も昔ながらのものにこだわります。「アクリル絵の具と違って、はけ目が残って塗りにくいんですよ」と言いつつも、濃淡は味わいのひとつ。素朴な手仕事のぬくもりとして大切にしています。


彩色に使う土絵の具と胡粉の写真
彩色に使う土絵の具と胡粉


長浜人形の技術は石見神楽の面づくりにも生かされていて、地域の芸能を下支えする役割も担っています。「人形を作ることで、地域の伝統を残していきたい」と話す渡辺さんの招き猫は、石見の文化にも福を招いてくれそうです。


招き猫に色を塗る様子
胡粉と土絵の具、にかわは昔ながらのもの


●お問い合わせ

島根の招き猫工房
浜田市三隅町向野田605-5(TEL:090・1011・4217)


石灯籠/川賀石材店

ごつごつとした石柱には丸や波形の窓がくりぬかれ、まるでオブジェのよう。その中心に淡いオレンジ色の電灯がともると、光がこぼれて夕暮れの庭を温かく照らします。

川賀石材店が手がける「アートストーン」は、この地で古くから作られて日本各地の庭園に広まった伝統的な石灯籠の、いわば現代版です。


庭を照らすアートストーンの写真
庭を照らすアートストーン


材料の来待(きまち)石は古代から利用され、江戸時代には「御止石(おとめいし)」として保護された松江市の特産品。石質が軟らかいのが特徴です。「水なじみがいいので庭に置いてしばらくすると色が茶色く変化したり、苔むしたりするのが魅力」と代表の伊藤勉さん。素朴な風合いや耐寒性・堅牢さに優れた素材である点も注目され、近頃は野鳥の憩いの場として来待石をお盆状に加工した「バードバス」も人気を呼んでいます。


来待石のバードバスの写真
来待石のバードバス


住環境の変化に応じて柔軟な発想で来待石の可能性を広げ、形や用途を変えながら庭に彩りを添え続ける伊藤さん。「石の肌は、自然に風化したものが面白いんだよ」と断面を削って凹凸を再現する石工の技は、ともに工房を支える息子の剛さんに受け継がれています。


伊藤勉さんと息子の剛さんの写真
伊藤勉さんと息子の剛さん


断面を削り凹凸をつくる様子
断面を削り凹凸をつくる


●お問い合わせ

川賀石材店
松江市宍道町東来待1462-3(TEL:0852・66・2252)


島根の伝統工芸品は、島根県物産観光館のホームページでも紹介しています。

島根県物産観光館松江市殿町191(島根ふるさと館内)
(TEL:0852・22・5758)

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お問い合わせ先

広聴広報課

島根県政策企画局広聴広報課
〒690-8501
島根県松江市殿町1番地   
【電話】0852-22-5771
【FAX】0852-22-6025
【Eメール】kouhou@pref.shimane.lg.jp