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実事求是〜日韓のトゲ、竹島問題を考える〜

第14回

東京学芸大学教授君島和彦氏の蛮勇

 

 7月25日付の朝鮮日報は、東京学芸大学教授の君島和彦氏を称え、「独島は歴史的に韓国領、ある日本の大学教授の勇気」と報じた。朝日新聞の若宮啓文氏が「風考計」の中で事実無根の内藤正中氏の主張を論拠に、竹島問題の実像を曖昧にした3日後、同紙の「私の視点」で、君島氏が「教育の場に押し付けるな」と日本政府を牽制したからである。

だが朝日新聞と、朝鮮日報に報じられた君島氏の言動には大きな隔たりがある。朝日新聞で「結論の出ていない竹島問題を教育に持ち込むな」とした君島氏は、朝鮮日報では「竹島の専門家でない。第一史料を研究したこともない。だが内藤正中島根大学名誉教授(独島は歴史的に韓国の領土と主張する日本学者)の意見に同意する。竹島は韓国領土という主張が正しいと思う。それに反対する主張には説得力がない」としているからだ。

 ここには二つの問題が潜んでいる。「第一史料を研究したこともない」まま、内藤氏の説に無批判に従った事実。君島氏は10年程前から韓国側と歴史教科書を共同研究し、『日韓交流の歴史』を発行するなど、韓国側の事情にも詳しいはずである。君島氏は「結論の出ていない竹島問題を教育に持ち込むな」とするが、韓国の歴史教科書では四半世紀も前から「日本は日露戦争中、一方的に独島を日本領に編入してしまった」と教えてきた。日本側の抗議には「領土問題は存在しない」とし、対話を拒んできた韓国側が、領土問題の存在を認めた現在、解説書から竹島の記述の撤回を求める根拠はどこにあるのだろうか。それは「竹島は日本領ではない」という先入見(歴史認識)で、歴史を見ているからである。

 これらはいずれも君島氏の事実誤認に基づいている。これまで内藤正中氏は、外務省の見解に対しては批判的だが、竹島が韓国領だとは明言してこなかった。それを韓国側が、外務省批判の部分を使い、自説の補強に利用してきたのである。その一つが、1877年の太政官指令(「竹島外一島之儀、本邦関係これなし」)である。だが内藤氏が今日の竹島とした「外一島」は、1880年の時点で、欝陵島であったことが確認されている。そこで近年の内藤氏は、1905年のリャンコ島の島根県編入以前、日本側でもリャンコ島を韓国領としていたと、無理な主張を始めている。その根拠が『韓海通漁指針』(1903年)と『最新韓国実業指針』(1904年)である。いずれの「江原道」編にもリャンコ島の記述がある、というのが理由である。だが両書ともに、朝鮮の境界を「東経130度35分」と明記しており、「東経131度55分」に位置するリャンコ島は当然、朝鮮領の外にあった。朝鮮の境界を「東経130度35分」とするのは、大韓帝国が1899年に刊行した『大韓地誌』も同様である。

 君島先生は、「第一史料を研究したこともない」と自負するが、毎度、第一史料をよく見ていないのは内藤正中氏なのである。それを君島氏は「内藤正中島根大学名誉教授の意見に同意する。竹島は韓国領土という主張が正しいと思う。それに反対する主張には説得力がない」としたのである。説得力がないのは、内藤正中氏や君島和彦氏の主張である。

 歴史研究で欠かせないのは文献批判と、適切な史料操作である。それらを怠って事実無根の内藤説に盲従し、それを根拠に敢えて韓国側に有利な発言をしながら、「竹島問題を教育に持ち込むな」とするのは、どのような思惑によるのだろうか。これを曲学阿世と言う。

(下條正男)


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