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英国製海図の発見

 

 先日、また江津市内から竹島にかかわる重要な資料が発見されました。今度は、イギリス海軍が作製した海図の複写が発見されました(図−1)。江津市和木公民館で所蔵されています。
 


 

英国製海図

 


 

 この海図は1897年(明治30)に刊行され、表題は「日本西部沿岸:油谷湾至安島崎(付隠岐諸島・若狭湾)」というものです。山口県の油谷(あぶらたに)湾から福井県坂井市(旧三国町)の安島(あんどう)崎までの日本海沿岸の海域を記しています。島根県では隠岐諸島をはじめ、宍道湖の水深まで書かれているのが注目されます。この海図は日本政府・水路部刊行の海図をもとに作製されたと記しています。

 この海図は10年ほど前、和木公民館主事森崎玉子さんによって発見されました。1905年(明治38)日露戦争の日本海海戦の際に、ロシア艦隊のイルティッシュ号が江津市沖で沈没しました。その際和木地区の住民がイルティッシュ号の乗組員を救助しました。森崎さんを中心に、和木地区の皆さんによってイルティッシュ号の遺品が収集され、現在公民館で展示、保管されています。この海図もイルティッシュ号の遺品の一つで、乗組員がお世話になったお宅へお礼として贈られたものということです。森崎さんはこの資料が重要な資料と思い、発見後すぐ複写し、公民館で保存されました。また海上保安庁へ連絡し、この海図は確かにイギリス海軍が作製したものに間違いないと確認されたとのことでした。海図には日本海軍から受けた銃弾の跡も残っていたとのことです。その跡はコピーでも確認することができます。日本海海戦がいかにすさまじいものであったかが分かります。残念ながら海図を所蔵されていた家は絶えてしまい、海図の所在は現在不明です。しかし森崎さんのはからいにより、コピーですが、重要な資料が地元に残りました。

 さて、この海図と竹島問題とのかかわりですが、隠岐諸島の北西に、現在の竹島を示す「LiancourtRocks」を記していることが注目されます。「LiancourtRocks」とは1849年フランスの捕鯨船リアンクール号が現在の竹島を発見したことに由来します。韓国側は、現在の竹島を自国領と主張する一つの根拠として、朝鮮半島の東海岸を描いたロシア海軍作製の海図「朝鮮東海岸図」(1857、1862、1868、1882年刊行)に現在の竹島が記されていることを挙げています。つまり、ロシアが現在の竹島を韓国領と認識していたと主張しています。海図「朝鮮東海岸図」では、現在の竹島のうち、西島を「オリヴツァ」、東島を「ミネライ」と記しています。西島は、1854年4月ロシアのオリヴツァ艦が現在の竹島を発見したため、その艦艇の名を付け、東島はオリヴツァ艦が黒海艦隊に属していた1846年までの艦隊の最初の名前「ミネライ」号を記念して名付けたものです。海図「朝鮮東海岸図」(1857年版)は、現在韓国鬱陵島の独島博物館・常設展示室に展示されています。

 しかしながら、最終報告書でも触れましたが、海図や水路誌は海上での安全航行のために作製されたもので、領有権を示す資料ではありません。実際イギリス海軍作成の『支那海水路誌』などをもとにわが国の水路部が作成した『朝鮮水路誌』(1894年、明治27年)では、現在の竹島は函館へ向かい日本海を航行する海路にあたるので大変危険であると、航行に注意を喚起しています。また国際法によれば、領有権を示すためには、現在の竹島で、韓国政府が実際に行政権を行使していたことを示す資料を提示する必要があります。しかしこれまでのところ韓国政府をはじめ、韓国側の研究ではそうした資料は一切提示されていません。

 今回江津市で発見された海図によって、イギリス海軍が刊行したわが国の海岸を描いた海図にも、現在の竹島が記されていることが新たに分かりました。つまり、今回の資料の発見によって、韓国側の主張、ロシアが現在の竹島を韓国領と把握していたという主張には、根拠がないことが改めて明らかとなりました。

 韓国・独島博物館では、8月8日から10月6日まで60日間開館10周年を記念して特別展が開催されています。独島に対する国民的関心と愛を鼓吹させるために、「武陵桃源(※)を訪ねて、東海(※)の島で」というテーマで、国内外の資料約60点を展示し、過去地図上に現われる鬱陵島・独島がどのように認識されていたかなどを示しているとのことです。この特別展では展示品のなかでも、特に「朝鮮東海岸図」が重要な位置づけとなっています。独島博物館の解説によれば、「朝鮮東海岸図」は、「第三国ロシアの視覚でも、独島を韓国領土として把握したという重要な資料的価値を持っている」としています。竹島問題研究会の調査によれば、韓国側では、朝鮮王朝といった公的機関、そして民間作製の地図を含めて、現在の竹島を記した地図は1枚も確認することができませんでした。つまり、韓国側では現在の竹島を地理的に認識していなかった可能性が高いといえます。歴史的資料に立脚した主張をしてほしいと強く願うばかりです。

(元竹島問題研究会委員島根大学法文学部准教授舩杉力修)

 

【註】

・武陵桃源:「理想郷」、「別天地」を比喩する言葉
・東海:日本海
【文献】

水路部編『朝鮮水路誌』、水路部、1894年

「朝鮮東海岸図」(独島博物館ホームページ告知事項、2007年7月4日)


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