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島根県農業試験場研究報告第23号(1988年7月)p74-103

造成ブドウ園の土壌改善法

 


 


澤田真之輔、藤本順子、山根忠明


摘要

 造成ブドウ園は土壌環境に問題があり、生産性の低い場合が多い。その改良対策の中で、最も効果の高い方法は有機物の施用と考えられるが、その施用量、方法などが明確となっていない。そこで造成ブドウ園の有機物施用基準の設定を試みた。

 

1.パーク及ひパーク堆肥の分解特性

 化学組成の異なるパークについて、重窒素を用いて窒素有機化量及び無機化量について検討した。

 

  • 新鮮パークは窒素添加後急激な有機化が認められ、有機化率は1か月後30%に達したが、その後の有機化は少なく、20か月後は35%であった。

 

  • 屋外で堆積した腐熟パークの有機化率は1か月後8%、2か月後22%に増加した。その後の増加は新鮮パークと同様に小さく、20か月後27%であった。

 

  • 窒素添加を行って堆肥化したパークは、ほとんど有機化が認められなかった。

 

  • 窒素有機化実験から、パーク資材の窒素飢餓を回避するに必要な窒素量を計算すると、新鮮パークは乾物1t当たり窒素成分量で1.5kg以上、腐熟パークは1kg以上である。

 

  • 未熟パーク及び腐熟パークは、窒素の有機化が進行している間も、わずかであるが無機化が認められた。また、パーク堆肥の無機化量は他の有機物より多かった。

 

2.有機物の種類と栽培上の特性

 7種の有機質資材についてポット試験を行い、ブドウ樹の生育、収量、果実の品質、葉内無機成分含有率などを通して、各有機物の特性について検討した。

 

  • 有機物がブドウ樹の生育に影響を及ぼしたのは1年目のみで、ポット試験条件下では2年目以降の影響が小さかった。

 

  • 家畜ふんを含む有機物であるオガクズ、モミガラ豚ぶん堆肥及びオガクズ牛ふん堆肥区は、1年目の6月頃まで堆肥に含まれる窒素の肥効が強く影響し、最も旺盛な生育を示した。しかし、その後の生育は鈍化し、落葉期の全新消長は稲わら堆肥、ハーク及びバーク半量区より劣った。

 

  • 十分腐熟していないパークを施用した区のうち、パーク及びパーク半量区は正常な生育を示した。一方、パーク倍量区と生パーク区は、未熟パークに含まれる生育阻害物質によると思われる著しい生育障害が1年目にみられた。しかし、2年目以後は順調な生育を示した。

 

  • オガクズ、モミガラ豚ぶん堆肥区の1年目の生育は正常であったが、2年目以後基部から4−5葉位まで異常葉が発生した。ジベレリン処理を行った果房は花振いし、着粒数が少なかった。

 

  • 有機物の窒素肥効は1年日に大きかったが、2年目以降は分解が進み、有機物から放出される窒素量は少なく、生育への影響は小さかった。

 

  • 窒素以外の葉内無機成分含有率は、施用有機物に含まれる成分量に大きく影響された。特に家畜ふんに含まれるリンの影響は大きかった。

 

  • 果実の糖、遊離酸舎量には区間差がほとんどなく、また有機物施用による品質の低下もみられなかった。

 

  • 有機物が土壌の化学性に及ぼす影響は、全炭素含有率及び可給態リン酸含量に最も大きくあらわれた。

 

 3.有機物の施用法

 花崗岩を母材とする造成園土壌で、豚ぷんパーク堆肥を栽植時のみ施用し、有機物施用法の検討を行った。各処理区ともa当たり施用量を2tとし、混合する範囲と深さを変えて試験を行い、生育、収量、土壌の理化学性、根群分布の調査を行った。

 

  • 有機物を施用しなかった土層には、ほとんど根群分布は認められず、また土量当たり施用量の多い層ほど根群量が多かった。土壌の物理性改良効果よりも養水分条件が良好となったことが大きく影響した。

 

  • 生育、収量とも部分混合区>全面深層混合区>全面浅層混合区>無施用区の順となり、最も生育の勝った部分混合区は3年目に棚面がほぼ埋まり、収量はa当たり155kgとなった。

 

  • 葉内窒素含有率への有機物の影響は、有機物からの窒素放出量が大きく影響し、2−3年目まで認められた。ブドウ樹の生育にもこれらのことが強く影響した。

 

  • 有機物施用による花振い、果実の品質への影響は、ほとんど認められなかった。しかし、果色については全般に不良であったが、これは着果量が関係した。

 

  • 全炭素含有率と可給態窒素含量は同一年次では相関が高く、また同一全炭素含有率での可給態窒素含量は2年目が最も高く、1年目の2.5倍、3年目は2年目の1/2、4年目は1/4と少なくなった。

 

4.造成ブドウ園の有機物施用法

 試験結果から、造成ブドウ園の有機物施用法についての結論を要約すると次の通りである。

 

  • 造成園のように地力の低い土壌では、土壌の物理性の改良及び窒素肥沃度を高めることが早期成園化につながる。したがって、施用する有機物は家畜ふんを含む有機物のように、窒素含有率の高い有機物がより効果的である。その場合、施肥量は新梢などの生育状況を考慮して決定し、窒素過多にならないようにする。

 

  • 有機物施用基準量を根群量から判断すると、改良する土量1m2当たりの施用量は80kg以上であり、また深さは50cm程度必要である。

 

  • 土壌改良は不十分な全園改良よりも、部分的でも十分改良することがより重要である。
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