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島根県農業試験場研究報告第10号(1972年12月)p83-96

積雪、低温、寡日照地帯におけるイチゴのハウス栽培に関する研究(第1報)

 


奇形果発生について


斎藤斉、上野良一


摘要

 イチゴのハウス栽培では、不稔花、奇形果の発生が多く、期待するほどの収量が得られず、とくに初期生産が不安定であるので、1967−'72年にわたって、奇形果発生の実態ならびにその原因と対策について試験を行なった。

 

1.奇形果発生の実態について

 

  • 奇形果の発生は収獲期の前半に多く、またハウスの被覆時期の早いものほど、多発の傾向がみられた。

 

  • 保温状態のよいハウスは、奇形果の発生が少なかった。

 

  • 宝交早生は多収であるが、ダナー、幸玉に比較して奇形果の発生が多かった。

 

2.温度管理と奇形果発生について

 

  • 高低温の影響がみられ、とくに高温が不稔花、奇形果の発生に強く影響することが認められた。

 

  • 開花期(3月6日−3月19日)にトンネルを密閉して、35度C以上の高温管理を行なった区は、開花10日前ごろの幼蕾からすべて寄形果となった。また処理期間中の着果率も低かった。

 

  • 常時(2月16日−3月31日)トンネルを密閉して、高温管理を行なった区は、地上部が極度に軟弱徒長し、株の発育は異常的で、開花数少なく、小花であり、すべて奇形果となった。また3月中旬以降は、全く着果しなかった。

 

  • 夜間トンネルを除去して、低温管埋を行なった区は、標準区に比較して、最低温度は明らかに低く経過しており、着果率も低く、奇形果の発生も多い傾向みられた。また開花初期に1週間夜間トンネルを除去した区やハウスの入り口付近の冷えこみやすい場所も、奇形果の発生が多い傾向がみられた。

 

3.湿度管理と奇形果発生について

 

  • 日中、天候にかかわらず常にハウスの換気を行なった区は、湿度は全般に低く経過する。しかしそれに伴って、気温も低めに経過するので、かえって寄形果の発生も多く、前半の収量も少なくなった。

 

4.奇形果発生防止について

 

  • 花粉媒助の効果は顕著である。寄形果発生率は無処理区の約20〜40%に対し、毛筆受粉区は約3−4%であり、初期収量,総収量ともにすぐれた。

 

  • ミツバチ放飼の効果は大きいが、積雪、低温、寡日照地帯では、より低温活動性のすぐれた昆虫利用についての検討も必要であると考える。

 

  • 1971−'72年における試験では、花粉媒助を行なわなくても、初期から奇形果の発生がほとんどなく、正常に着果することを認めた。これについては、開花期ごろの株の栄養条件と寄形果発生との間、密接な関係があると考えられるので、さらに検討したい。
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