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1.‘西条’の系統と特性

松江市秋鹿町の古木‘西条’栽培の歴史と来歴について,河野氏ら(1980)によれば,本県には‘西条’の推定樹齢100〜300年生の老木が各地に散在していたものの,それらの来歴については明らかでないとしている。また,古い記録としては,八束郡東出雲町畑集落では,尼子氏の城下に干し柿を売りに行ったという語り伝えが残っている。その他,「畑の干しがき」(河野喬1975)によると,文化6年(1809)に干し柿用の乾燥小舎を作ったという記録が残されている。

 県内において‘西条’の経済栽培が増えてきてからも,各地域で優良と思われるものを選抜しながら栽培されてきたために,熟期や果形がかなり異なるものが多かった。さらに,‘西条’は30年くらい前までは,干し柿原料としての栽培が主体となっていたため,晩熟系統の分布が多い状況でであった。しかし,ドライアイスによる脱渋法が一般化してからは,生果としての需要が急増するとともに,早生系のものは価格も高く有利に販売されるようになった。

 そこで,島根県農業試験場は生食用に適する‘西条’の系統選抜を目的に,河野氏らにより1970〜'79年に現地調査と高接ぎによる調査を行い,その結果が「西条柿の系統に関する研究」(1980)として報告された。以下,その報告の概要を述べる。

 県内における‘西条’の系統は,果実の外観的特徴から以下の6つの果実型に分けられた。

 

  1. ‘石見型’
    果頂部はやや尖り,果形は円筒形である。横断面は方円形であり,4条溝はほとんどない。へた部に座の残るものやへたの着生が突出するものもみられる。

     

  2. ‘出雲型’
    果頂部は僅かに尖り,果形は弾丸形である。横断面はやや丸みのある方形であり,4条溝はやや浅くなりやすい。へたの着生状況は‘石見型’と同じであり,‘西条’の果形としては最もよい。

     

  3. ‘久手型’
    果頂部はやや丸く,果形は丸くずんぐりした方形である。横断面は角の残る方形であり,4条溝はやや広く深い。へたの着生はややくい込むものもみられる。

     

  4. ‘日御碕型’
    果頂部は極めて丸く,果形は豊円形である。横断面は方形であり,4条溝,へたの着生とも‘久手型’とほぼ同じである。

     

  5. ‘A型’
    果頂部は‘久手型’と同じであり,果形はやや丸くずんぐりした方形である。横断面は‘日御碕型’と同じであり,4条溝は‘久手型’,‘日御碕型’によく似ているが,これらよりやや広く深い。へたの着生状況は扁平である。

     

  6. ‘B型’
    果頂部は丸く,果形は丸くずんぐりした方円形である。横断面は‘日御碕型’,‘A型’と同じであり,へたの着生状況は‘A型’と同じである。果実の外観的特徴は‘A型’によく似ており,鳥取県の‘安部系’と呼ばれているものである。

石見型出雲型
久手型西条柿の系統B型

 

これらの果実型について,果実の外観特性及び品質特性を高接ぎによって数年間の比較調査を行い,生食用に適する‘西条’の系統について次のような結論を示している。生食用には熟期が早いことのほか,食味が良好であること,果色がよいこと,果形がよいことなどの特性を備えた系統がよいと考えられ,‘B型’,‘日御碕型’,‘出雲型’の各系統が生食用に適する。なお,本県の‘西条’の銘柄を確立するためには果形の統一が不可欠であったことから,その後,上記の報告やそれに続く試験研究結果をもとにして,系統の統一が図られた。そして,その後の新植や接ぎ木更新においては,熟期別に早生系と普通系に分け,早生系としては肥大と着色がよい‘B型’を,普通系では溝が浅い‘出雲型’をそれぞれ県内の統一系統として推進を図ってきた。

 

表3<spanclass=表3の3、4から8年生における西条の果実型と果実特性



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