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第8回賢明な利用を語る会

ラムサール条約登録と宍道湖・中海でのエコツーリズムについて考える

 

 2007(平成19)年度3回シリーズの最終回(通算8回目)の「賢明な利用を語る会」を、平成20年2月23日(土)にサンラポーむらくも(松江市)にて開催しました。

 午前は、実際に白鳥号に乗ってエコクルーズを体験。あいにくの強風で、宍道湖には出られないため大橋川に変更し、環境ボランティアさんによるシジミの水質実験や水鳥の説明を受けました。下船して、松江の街並みをガイドをしてもらいながら、松江城まで歩きました。

 午後からは、「宍道湖・中海でのエコツーリズム」について、事例の発表や座談会を行いました。

【午前の部】

この日は、あいにく風が強く、寒い一日でした

白鳥号への乗船

強風の中、乗船してもらいました。

白鳥号の写真

さあ、いよいよ出航です。

白鳥号

強風でしたが、無事に出航しました。

船内の様子

船内では、シジミの浄化作用や水鳥の話

をしてもらいました。

松江市内の散策

白鳥号を降りて、松江市内を歩きました。

松江市内の散策

売布神社も見学させていただきました。


【午後の部】

1.主催:島根県、県立自然館ゴビウス、ホシザキグリーン財団

2.日時:平成20年2月23日(土)午後1時30分〜午後3時30分

3.参加者数:34名

4.会場:サンラポーむらくも(松江市殿町)

5.次第

(1)開会挨拶島根県環境生活部次長三代広昭

(2)事例発表

 以下の3題について、事例を発表していただきました。


  • NPO法人松江ツーリズム研究会高橋保氏

 演題:「松江を活用したツアーの造成について」

 私の所属する松江ツーリズム研究会は、松江城や小泉八雲記念館など松江市が所有する施設の管理運営を行っているのと同時に、観光案内所で観光業を営んでおります。

 観光案内所には、いろんな人がお越しになります。1月でも1,075人の方がお越しになりました。

 10月に設立させた観光案内所ですが、とても多くの方にご利用いただいています。多くは道を尋ねる方ですが、それ以外にもお薦めの場所がないか、2時間しか時間がないがどこを見れば良いか、などといった質問を寄せられることがあります。

 お客様の声を聴いてみますと、「松江城はすばらしい、最高だ」とか、いつも出るのは「あの夕日はすばらしい」、そのほかには「堀川と遊覧船、塩見縄手の町並みなどは情緒があっていいですね」、「お茶やお菓子がおいしい」、「料理がおいしいところだ」など実にさまざまあります。

 

 なかでも、「ガイドさんがついてもらったことで、私たちの今回の旅行は価値が上がった、記念になった」というお声をいただきました。それらを聴いてみると実にさまざま観光資源があるんだということに気づかされます。私が単に見落としていた、あるいは気づいていなかったのかと反省することもあり、お客様はいろいろなところを見て感動していらっしゃるのだなと感じたところです。

 

 確かに旅行形態は変わってきております。以前のようにせかせかと移動するのではなく、ゆっくり時間をかけて巡る、そして今まで知らなかったことや人が知らなかったことを勉強するようになってきています。

 それから趣味を活かすなど、旅行の形が変化してきていると感じております。本当の松江を知っていただきたい、松江の魅力を感じていただきたいと思っています。

事例発表1
事例発表

 

 昨年度の旅行業法の改正により、私どものような小さな会社でも旅行業を取り扱うことができるようになりました。近場の日帰りや1泊2日などの旅行が取り扱え、全国からお越しの方に提供できるようになりました。いわゆる着地型商品と呼ばれていますが、より詳しくサービスの行き届いた商品を提供していきたい、と私どもは取り組んでおります。見過ごしてきた松江の文化を知っていただきたいと思っています。

今日遊覧していただいた宍道湖はラムサール条約に登録され、世界でも重要な湿地として登録されています。今日は天候が悪くあいにくの状態でしたが、自然界のしくみや営み、そしてそこに関わる生き物や人間、とりわけ鳥やシジミ漁などはエコツーリズムのバロメーターではないかと思ってます。

 そして、今日歩いていただいた大橋川や京橋川、松江城、堀川など、松江の街は水に囲まれた水郷都市です。今日のように専門のガイドさんに説明いただき、先人たちが自然とのかかわりの中で育んできた貴重な文化遺産を、ボランティアガイドによって分かりやすく楽しく案内していただくような旅行商品を開発していく、つまり付加価値をつけることが新しい旅行商品の魅力ではないかと思っています。

実は、一度沖縄の「ビオスの丘」というところに行っことがあります。そこでは、船に乗ってまわるのですが、特に珍しいコースではなく、船でランを見ながらまわるだけです。ところが、この船の船頭さんが、大変にお話がお上手で詳しいのです。そこにとんちやクイズ、駄洒落などが盛り込まれて本当に楽しく過ごすことができ、下船するときは拍手が起こっていました。あれだけ詳しく話していただくと、ランに興味がなくても好きになります。

 ここがキーポイントになると思います。わずかな時間でも強い印象を残すことができること、私はこのような旅行商品をガイドさんたちと一緒になって開発していきたいと思っています。ほかにはない、新しい商品、そして印象に残る商品を作っていきたいと思っています。一度にはできませんから試行錯誤の中、いろんなご意見を取り入れながらやっていきたいと思っています。このような商品はきっとヒットすると私は思っております。

 今日はお城を見ていただきましたが、堀川の水がお城の中をめぐり大木が育っております。これが街の中にあるものかと思うほどです。こういった自然を歩くと私も心が癒されます。

 また、ツバキも428本がお城では登録されていますが、おそらく1,000本以上はあるかと思います。ツバキには約2,000種類くらいあり、用途の多い植物ですので、江戸時代は薬や油などをとり藩の財政を支えていたそうです。3月23日には「ツバキ谷探訪」という企画を予定しております。ツバキに詳しい方をお招きし、一緒に歩くツアーです。私も伺ってみてツバキの魅力を知り好きになってしまいました。春から秋にかけて長く咲く、楽しませてくれるものです。

 もうひとつ、平成9年から走っている堀川遊覧船ですが、それまでは異臭が漂う川がよみがえりました。コースの中に「北惣門橋(きたそうもんばし)」というのがあります。実は橋の下を掘ってみるとシジミがとれるのです。あの堀川にシジミがいる。それだけ堀川はよみがえったわけです。

 すばらしい松江、貴重な文化遺産を私はもっと多くの方に知っていただきたい。そのためには、このような遺産をきちんとつないだ旅行商品、専門のガイドさんによる説明付きの商品をつくって、積極的に販売していきたいと思っています。

 すでに着地型の商品について提携したいと大手の販売会社からお話をいただいております。このような取り組みが松江市が目指している観光立市、入り込み客数1,000万人に近づく、あるいはその道に近づくのではないかと思っています。

 本日のコースは、3月から発売いたします。これは5つのコースがあて、時間の余裕に応じて、できるだけお客様が参加しやすいように配慮しています。また、最少催行人数も2名に設定しております。これはせっかくお申込いただいたお客様に取り消しをしない、船会社さんやガイドさんの協力の賜物によるものです。信用を落とさない、せっかく申込いただいたお客様にがっかりさせないという私どもの意気込みでございます。また、桟橋で私たちが出迎え観光案内所までご案内いたします。こういうちょっとしたサービスが、お客様の口コミとなり宣伝していただけるように願っております。

 

 松江は小泉八雲で知られる街です。私どもでは小泉八雲の文学ツアーというのも販売しております。小泉八雲が書いた場所を小泉八雲お孫さんである「小泉凡」さんのご案内で回るものですが、たいへん好評をいただきました。なかでも小泉八雲が書いた怪談をとりあげたものでは、真っ暗の中五感を働かせて巡るのですが、お化け屋敷ではございません。小泉凡さんの解説を、関連する場所を巡りながら聞くものです。

 旅行業というのはたいへん難しいものです。特に着地型といわれる商品は儲けがないものですから、存続がたいへん難しいのです。私どもはたまたまNPO法人という形態をとっておりまして、松江市の指定管理を受けておりますのでそういった意味では経営が安定しております。その上にたって、全社員が協力して新しいエネルギーを生み出し、エコツアーや文学ツアーというのを積極的に販売していきたいと思っています。

 

 また、お越しいただいた皆様に、「松江に来て本当によかった」と感じていただけるよう、社員が「グッドエンターテイナー」としてこれからも続けていきたいと思っております。




 

  • 白鳥観光有限会社船長上谷雅宏氏

 演題「宍道湖・中海で実施されているツアー企画とその現状について」

事例発表2

 まず、白鳥観光の概要について簡単に説明いたします。昭和62年に設立いたしました。

 夏の水郷祭に間に合うように設立させました。設立当初は1年持つだろうか、3年持つだろうか、とご心配いただいていたようですが、今まで続いております。

 設立の翌年私は入社したのですが、最初の私の仕事は船の後ろにたまっているゴミを流すことでした。船の後ろ5〜6メートルにゴミがついているのです。写真をみていただくと分かるのですが、「はくちょう号」は青い部分しか水に入っていないため、船が水を吸い上げるインペラーというところがゴミで壊れてしまいます。

 普通の海の船では5年、10年その部品を換えることはないのですが、昭和63年当初は年に10〜15個交換が必要でした。それだけゴミが浮いていたのです。淡水化が中止になるということで、みなさんがゴミを捨てることがなくなりました。そこでゴミがずいぶん減ったため、「はくちょう2号」を作りました。最近では、中海でもいろいろやってほしいとの要請に答える形で中海にも出かけています。

 私は、船を運航する中でお客様ともお話をするのですが、宍道湖については「夕日がきれい」、「シジミがたくさん取れるんですね」、「すごいきれいな景色ですね」といったお声を聞きます。ところが、中海になると「分からない」というのが圧倒的なんですね。「何と読むのですか」というのもありました。関西のお客様がメインのときは、「大根島」をご存知の方が多いのです。大根島はボタンで有名なのです。ところが、ほとんどのお客様は「大根島は宍道湖のどこにあるのですか」とお聞きになるのです。大根島は宍道湖にあると思っていらっしゃる。しかも中海については「中海って湖なんですか?海じゃないんですか」というお声もあり、本当に知られていない湖だということが分かりました。

 きれいな景色を見るために宍道湖を遊覧しています。夕日を見るためにサンセットクルージングを運行しています。宍道湖七珍などで魚介類が有名ですからそれらを使った食事を用意しています。そのほか夕日を見ながらの貸切の運行もしています。そして最近エコクルーズが始まったわけです。

 エコクルーズが始まったとき、子どもが産まれるところでした。当時この取り組みは松江市、当社、旅館組合、漁協が連携した「夢の観光」と呼ばれていましたので、娘に「観夢」という名前をつけました。エコクルーズに参加されたお客様のなかに、おじいさんがお孫さんに「昔はこの湖で泳いでいたんだよ」と言ったところ、「こんな汚いところで泳いでいたの?」とお孫さんが答えたということを聞いたことがあります。そこで「おじいさんの子どもの頃は湖はきれいだったんだよ」と返すと、「おじいさんは我慢強いんだね」とお孫さんが答えていらっしゃいました。宍道湖はきれいになりつつあるのですが、これからさらにきれいな湖になるように、今後もエコクルーズを続けて行きたいと思っています。

 次に、中海での取り組みについてご紹介いたします。中海はほとんど知られていない、ということで一体どういうコースにすればよいか、というところから観光ボランティアさんと相談しながら進めました。最初は、松江から中海を一周するものにしたところ、すべて回ると193分かかるのです。また航路の都合上、景色があまり変わらないということで、次の機会には松江-波入-境港を回るコースに変更しました。ところが波入港を利用される方がほとんどいらっしゃらないということが分かり、次は松江と境港の直行にし、期間を長くしようということで8月〜10月の土曜日に1日3便就航することになりました。また大根島のぼたん祭りにあわせて、ゴールデンウィークに運行することが決まっています。

 次に環境学習について少しご紹介します。遊覧船に乗って湖心へ出かけ、湖底の泥の採集やパックテスト、プランクトン採集などを行い、湖や水のようすを調べています。

 もうひとつは米子市さん主催の「中海サイエンスクルーズ」です。小学校5年生を対象に平成7年から毎年夏に実施しています。ちなみに米子市の子どもさんは環境にたいへん関心があるように感じています。このイベントのなかで、船内でジュースを配ったところ、一人だけジュースを飲まないお子さんがいらっしゃいました。「どうして飲まないの?」と聞いたところ、「これ、ジュースをここで飲んで返すと、この缶がどうなっちゃうかわからないでしょう。だから僕は家に帰って飲んできれいにしてから捨てる」という答えが返ってきました。

 

 宍道湖・中海における松江市というのは実に広い範囲を占めています。ほとんど松江市です。環境のことを考えるとこれからも松江市の方に多くエコクルーズに参加してほしいと思っています。


  • ひろでん中国新聞旅行株式会社取締役有田隆司氏

 

 演題「宍道湖・中海でのエコツーリズムの取り組みに対するアドバイス」

 事例発表3

 「地域企画販売の注意点」と「エコツーリズムに取り組む際の留意点」という観点から概論的なお話をさせていただきます。

 まず、「観光立国推進基本法(外部サイト)」ができまして、今年の10月1日には待望の「観光庁」というのが日本に初めてできます。日本が一番後発です。すでに諸外国においては、政府観光局など政府直轄の地域おこしのオフィスがありました。これはみなさんにもたいへん関係深い話ですので、少し時間をいただいてお話させていただきます。

 

 観光立国基本法は観光を21世紀の重要な政策にしますよ、といっています。何をするかというと、今回のエコツーリズムなどは第2項「将来にわたる豊かな国民生活の実現のため、観光の持続的な発展を推進していく」、第3項「観光の発展を通じ、地域住民の方々が誇りと愛着をもつことのできる活力の満ちた地域社会を実現する」とあります。要するに人材育成について政府が各地域を応援していきましょう、ということが盛り込まれているのです。

 

 観光立国推進基本法の大きな目的は、日本を訪れる外国人の数を、現在の約730万人から、22世紀までに1,000万人にすると挙げています。次に日本から外国に出かけるひとを現在の1758万人から2,000万人に引き上げましょう、といっています。つまり外貨の交流や獲得から、経済の発展を地域に支援しましょうと言っています。最後に観光に関わる産業の総売り上げを、現在の24〜26兆円から、平成22年までに30兆円にしましょうといっています。

 そして、次に日本人の国内宿泊旅行は現在平均2.7泊といわれていますが、これを4泊にしましょうと言っています。

 しかし、そのためにはお金がないということでしたら、そこを政府が援助しましょうと言っています。これは政府がお金を直接払いますということではありません。後方費用の支援をするということです。泊まっていただく地域づくりに応援しましょうということですから、私が出張に行く際に2泊分のお金を持っていけば4泊泊まることができるという意味ではないんですよ。

 最後に、コンベンション、国際会議が168件現在行われていますが、これを5割増やしましょうといっています。これはつまり着地型の商品が売れるということです。これが今日のエコツーリズムで最もお伝えしたいところです。この法律が関係ないよ、ということではないのです。これからエコツーリズムを取り組む際に認識していただければと思っています。

 素材提供時の注意点ですが、販売ターゲット別、販売会社別管理をしてください。どちらに対しても、同じような売り方をしないでください。ただ単に素材を出して、売ってくれ、買ってくれというかたちではなく。ちゃんと管理をしてください。

 例えば、地域別、季節別、会社別に販売実数を管理し、それから販売期間、つまりお客様が選択する時間が十分にあるのか確認しなければなりません。

 要するに、この12月から3月に宍道湖のエコツーリズムを実施するのならば、いつ広報をすれば良いのか、日本全国、各国に流せば良いのか、という点です。通常こういったことは6ヶ月前にしていただければ間に合います。そこがずれると「あまりものを作りました」というかたちになってしまいます。素材を情報発信する際に、受地と発地が同じテーブルについているか、ということが重要になってきます。これをお客様に送ってください、というこれまでのかたちではなく、お客様にこういった「お勧め」がありますからぜひ宣伝してくださいということになります。

 例えば、この宍道湖の豊かな自然について言えば、この周辺に住んでいない方はほとんどご存じないです。知っているつもりなのです。今日は船が揺れたとみなさんおっしゃいますが、そんなことは私はまったく感じませんでした。船長さんは揺れたとおっしゃいますが、気象条件や時期特有のものや水というものに対する先入観なのです。もしそれが「いや、ちがう」ということならば、具体的な理由も明確にお客様にお伝えする必要があるのです。

 

 それから、地域の魅力、食や自然等がタイトルに50%以上含まれていますか、ということに良く良く気をつけていただきたいです。エコツーリズム、自然環境保護、これを本当に見たい方というのは本当に一部の方です。お客様をファンにしていく、この地域は自然環境を保護しながら共存しているんですということをみなさんに伝えて、大事にしてもらえませんか、というところから入らなければいけないお客様がほとんどです。

 そのためには、この地域の魅力、たとえば自然や食の魅力、お城から見る風景といったものが提供素材に入っているかどうか、ということです。逆に言えばそれを50%以上入れてくださいよ、入れなければお客様は来なくていいですよ、と思われるものだということを理解しておいていただきたいと思います。そして販売方法が確認できたら即販売していくことが大切だと思います。

 

 また、受地の注意点としてお願いしたいことがあります。目的を受地で徹底することです。エコツーリズムにおいても、県やボランティア、旅行会社の方、物産の方など多くの方が関わりますが、目的を共有しましょうということです。環境保全が大きな目的ですが、環境を守るためにやったのにお客様がたくさん来て環境が悪くなったじゃないか、ということではなく、環境を守るためにはお金が必要だという認識も持っていただきたい。環境保全のために、お金がいったいいくら必要で、それをお客様にどの程度負担していただくのか、ということなのです。とにかく島根に入っていただきたい、その中でエコツーリズムに興味を持っていただいてリピーターを増やしていただきたい、といった方向に考えてぜひとも目標を設定していただきたいと思います。また経済交流ということも発生してきますので、こちらも目的を設定し共有してほしいと思います。

 

 これに関連して、宍道湖を中心としたきれいな街であるという認識はみなさんも私も持っています。しかし本日のような気象条件だと、初めて来られたお客様は、良い景色を見ることができないので、本来なら見ることのできる景色を、できれば乗船前に掲示しておいてもらえるといいな、と私個人としては感じました。

それから、今日感動したのは船内でもらった双眼鏡です。最初は販売するのかなと思っていましたが無料で差し上げると聞いて驚きました。国内でもそういうところはないと思います。高いものでもなくてもいい、安いものでもそういった気持ちが大切だと思います。ただ残念なのは双眼鏡に会社名や船の名前を入れていないこと、これは宣伝になりますし思い出になるのでぜひやってほしいと思います。船内でボランティアガイドさんからたいへん詳しい説明を受けました。できれば、紙芝居のようにしてもらえるとありがたいなと思います。お客様も分かりやすいんです。

 

 それから目標を設定しましょうという話ですが、例えば、ボランティアガイドさんの出動回数を設定してみるというのはどうでしょうか。そうすることによって、お客様からの電話に出るときに、目標が明確ですから声が明るくなったりしたりするかもしれません。このような効果も面白いと思います。それから苦情の回数やお褒めの言葉などもカウントしておくといいと思います。前年度比で苦情が減少したとか、お褒めの言葉が増加したとかといったこともエコツーリズムにおいても考えてみられたらいかがでしょうか。そのような仕掛けをぜひしてほしいと思います。

 エコツーリズムを行うことによって地域のファンを作っていただきたい、エコツーリズムを行うことによって自然環境を保全する意識を育てていただきたいという目標を設定していただきたい。ファンというのはリピーターを育てるということです。リピーターというのは毎度何度もやってくる人という意味だけではありません。「あそこはいいよ、行ってみたら」とほかの人に薦めてくれる人のことです。ここをひとつ抑えてほしいなと思います。

 

 また、アクセスについて、忘れられがちなのが高速バスです。高速バスは全国各地を網羅しており交通としてたいへん発達しているのにみなさん忘れていらっしゃる。エコツーリズムなどにおいては継続的に実施することが必要ですから、そのような条件の時にはJRや飛行機を使った遠方のところに声をかけるよりも、もっと身近なバスで移動できるような近距離をきちんと抑えることを忘れないでいただきたいと思います。40〜50%はそこで抑えておけばリピーターが育ちます。一畑バスも広島バスも始発便や夕方便は満席ですが、それ以外の日中便は意外とガラガラなんです。そこを安くしてくれないか?と交渉すれば安くしてもらえるんです。そのような条件を使って商品を設定するというのも大きいと思います。

 要点をお伝えすると、電話に出たり、エコツアーの話をするときでも常にホスピタリティーを忘れないでほしいということです。エコも歴史散策もすべてそうです。心のこもったおもてなし、これを地域の大きな宿題として共有していただきたいと思います。

 それから、島根県の巨木を訪ねる旅というのを販売しています。島根県自然環境課さんのご理解を得て広島から出発します。島根は本物の自然の場所だと思っています。このチラシをよく見ていただければ分かるのですがメジャーな場所はひとつもありません。お客様は本物を求めています。ですので今ある情報や素材を整理して提供することで近い将来発展する分野ではないかと思っています。


(3)座談会「宍道湖でのエコツアーの定着に向けて」

 3名の方から事例発表をして頂いたあと、野津登美子氏(ホシザキグリーン財団普及啓発課長)の座長、進行で、座談会を行いました。

進行(野津氏):

 それではこれより座談会を始めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 座談会に入る前に、これまで宍道湖西岸で行ってきたエコツアーについて情報提供させていただきます。

 コハクチョウやマガンなどのほかキンクロハジロなどが宍道湖にやってきます。そのなかで今回私たちが一番お勧めしたいのがマガンです。このマガンのモーニングフライトを見るツアーを展開しました。マガンの近くまで行くと鳥にストレスを与えますので双眼鏡や望遠鏡を用いて観察できる範囲まで近寄って観察します。また、観察後は宍道湖グリーンパークでシジミ汁とおにぎりを召し上がっていただきます。その後、宍道湖の水の中にいる生き物を見ていただくために、宍道湖自然館ゴビウスへ出かけて館内を見学したり、裏方を見学したりしています。

 このツアーの問題点としては、相手が生き物であるため時期によってモーニングフライトを見ることのできる時間と場所がずれてきたりします。また早朝のプログラムですのでツアーのお客様には少々ストレスがあるかと思います。またマガンの1日の行動も時期によって異なりますのでそれによって時間がずれることも予想されます。ただ生き物の行動パターンに合わせることで大きな感動を持っていただくことができると思います。

 次に宍道湖ラムサール号のお話をさせていただきます。この電車は4月28日にお披露目となりました。この電車には宍道湖に住む生き物のイラストが2両の電車に描かれています。この電車に乗り、宍道湖西岸の湖岸を歩くガイドツアーを実施しました。この道は一般の方にはあまり知られていない穴場です。およそ1キロをガイドが案内しながら歩いていきました。夏はそれに宍道湖に入って採集するプログラムを合わせて実施しました。このようなツアーを西岸で実施しています。

 続いてまちづくりネットワーク島根さんが作成された宍道湖を活用したモデルについてご紹介します。

座談会

松本氏:

 街づくりネットワーク島根の松本と申します。私どもは宍道湖の唯一の島である嫁が島の管理をしつつ、夏休みには湖の中に入って嫁が島に歩くツアーを企画したりしています。そのほか湖のそばにできた県立美術館や公園などのスポットの活用も行っています。こういった場所もなんとかエコツーリズムの中に利用できないだろうかというところで検討しているところです。はくちょう号さんがやっているものはある程度の人数と時間をかけて実施するプログラムですが、私どもは景観ガイド的なツーリングをできないかと考えています。もっと少人数でお客様が自力でかつ主体的に景観を体験しながら湖に触れる1時間程度のものをできないだろうかと思っています。

 われわれとしてはイメージはあるのですが、実際どのように組み込んで言ったらよいのか思案しているところです。このような企画が盛り込まれれば宍道湖を中心としたさまざまないろどり感のある本物の水都松江が完成するのではないかと思っています。もちろん環境や天候に左右されるところが大きいのでぜひアドバイスをいただきたいと思っています。

進行:

 ありがとうございました。それではここでみなさんに午前中体験したエコツアーの感想をまとめたものをご覧いただきたいと思います。悪天候に関する感想が多いですね。パネリストの方から一言ずつ感想をいただきたいと思います。

有田氏:

 寒かったですね。まず船については満足していただける素材だと思います。今回2回目ですがそう思いました。ゆっくりチャーターで出かけるといろいろ見ることができると思いました。今日は宍道湖まで出かけてませんが結構楽しめるんだなと思いました。そしてシジミの汁を頂戴したことやシジミの実験も面白かったです。

 次の街歩きについては、いまひとつ魅力を深められていないのではないかと思います。エコということであればもう少しテーマに沿ったほうがいいと思います。それから案内をされる方の一生懸命な姿には感動しましたが、あまりにも一生懸命だと自分の自己が入りすぎてしまい、お客様とのコミュニケーションが薄くなってしまいます。もう少しお客様の様子を見て楽しむことのできる要素を含められるように検討していただきたいと思います。エコってこんなにすばらしいんだ、もっと見てみたい、と思うような感想を持てるように工夫をお願いしたいと思います。

高橋氏:

 先ほど沖縄のお話をさせていただきましたが、専門的なお話はいいと思うのですがその中にクイズやとんち、雑学のような要素が入るといいのではないかと思ったりします。お客様の顔色などもうかがいながらやってみたいと思います。本日の意見をいただきながらいいものにしていきたいと思っています。

上谷氏:

 やっぱり宍道湖って「夏」なのかなという印象を受けました。

進行:

 私たちは宍道湖を常に陸から見ていますが、上谷さんはいつも中から見ているからまた印象が違いますよね。皆さんの感想の中には「寒かった」というのが多かったです。

そのほか、スタッフに対する意見として携帯マイクを持ってほしいというものがありました。それからツアーの内容とバランスということを提言されたお客様がいらっしゃいましたが、有田さんそのあたりはいかがでしょうか。

有田氏:

 エコツアーにおいては企画と顧客を二つに分けていただきたいんですね。エコというものを環境保全という面からきっちり勉強するチームと、環境を大切にしないといけないんだなと思い始めたチームの二つです。これをエコという言葉でひとくくりにしないでいただきたいのです。当然こんなことは知っているだろうというスタンスでは到底裾野は広がりません。どっちが大切かというとこれは一般的な情報を伝えるほうです。つまりファンを増やすためにはまだまだ一般的な内容が必要なのです。

 ではどうしたらいいか、ということになりますが、今日のプログラムになかったものを2つお客様の立場に立って申し上げると、ひとつは「方言がない」、もうひとつは「生活がない」ということです。地域のお話とお話の中に方言がなかったと思います。地域の季節情報などを話してくださるのでいいと思います。特別な話し方を勉強する必要はありません。普通の日常の話を方言で話すだけで十分だと思います。その中でエコツアーに興味を持つ人を増やしていくことが必要だと思います。例えばチラシの中に「マイはしを持参してください」なんて書いてあるのも面白いと思います。また、地域の生活感についてですがこれは、お客様に感動というお土産をお渡ししないといけないと思います。今日は雪が降っています。船長さんと高橋さんとお話をしましたが、こんな雪の中歩くのはいやだよね、とお話しました。ところがお客様というのは疑似体験をしたくてツアーに参加しているのです。お金を払って一時でもその生活の中に入ってみようとしていらっしゃるのです。これが観光のお客様ですからこの疑似体験を楽しませてあげてほしいのです。それがエコツアーをベースにした地域発展です。

 エコツアーのお客様というのはミッキーマウスに会いに来ているのとは違うのです。地域に一時でも入ってみたいと思っていらっしゃるのです。それを地域は瞬間でいいので受けいれてほしいのです。また荒天時というのもひとつの売りになることを知っておいてほしいと思います。京都は雨を売りにしていることをご存知ですか?夏の京都のポスターは番傘を差した女性がずらっとならんでいます。これも素材なんです。何が人の心を動かすかというと、幸か不幸か消費者の方は環境に対して非常に厳しい目をもっていらっしゃいますので環境を素材することは応援団を得ることになります。どうか島根のみなさんにはそのような状況にあることを認識していただきたいと思います。

進行:

 ありがとうございました。方言のことですが、旅に出たときに地元の方とお話できるのはとても楽しみにしています。今度の巨木ツアーの案内役の先生はこの点においてはたいへんな専門家ですので今から楽しみにしています。

有田氏:

 昨日ご案内の先生とお話したのですが方言がすごくてほめられているか怒られているのかよく分からなかったです。いろいろ話をしているなかで先生に、言葉が分からなかったときに質問していいですか?と聞いてみました。そうしたところ、「質問してもらわなければ分からない」といってもらいました。じゃあ分かる言葉で話してくれ、とも思いましたがそれでいいのだと思います。コミュニケーションが取れることがいいのだと思います。

進行:

 続いて金額のアンケート結果についてまとめたものをご覧ください。こちらについてご意見があったら伺いたいのですがいかがでしょうか。

松本氏:

 はくちょう号という船に乗りますので1,000円、ガイドと城山で500円ずつで2,000円と設定しました。

有田氏:

 熊本市では熊本サルサという企画をやっています。サルサとは散歩という意味ですが、熊本の町をつれて歩くだけですが、街の方には試食を用意していただいており3000円かかります。本日のコースについては4,000円でも5,000円でもいいのではないかと思います。要はお土産や付加価値をつけることだと思います。船も乗った、お土産ももらった、シジミ汁もあった、という手ぶらできて街の魅力を感じて帰る、ということを含めるとこのくらいの金額でいいと思います。全国の最低金額は5,000円と設定されているようです。

 また、みなさまに考えていただきたいのは、このような企画を旅行代理店に持ち込むと手数料というのがかかります。昔は10%でしたが最近は15%くらいが普通になっています。そうすると地元の儲けが減っていきます。地元が嫌な思いをしてまでやるのはいかがなものかと思います。そうするとネットつまり原価でやってくれるところを探したほうがいいのです。その旅行代理店を探してまず軌道に乗せた上で手数料などをあとから計算していくほうが確かだと思います。つまり一概に単価や料金とは言えないということです。単価を抑えて手数料を払うのか、手数料を抑えて単価を確保していくのか、一度整理する必要はあるかと思います。関わっている人がいやいやするようでは長く続きません。天下の柳川水郷めぐりはいまこのような問題でもめています。最初によくよく設定してから取り組んでほしいと思います。そして宍道湖自然館ゴビウスも入れないといけないんじゃないの?と思います。

進行:

 今日のエコツアーを定着させるためにはどのようにしたらよいのかという点について皆さんからご意見を伺いたいと思います。

門脇氏:

 松江市の門脇と申します。さて松江の観光においては未曾有の追い風を受けていると思います。ひとつは開府400年祭、さらに秋の連続テレビドラマが始まりますし、歴史博物館もできます。特に松江市では観光政策を重点的に取り組むと明言されています。先ほど有田先生がご指摘いただいたボランティアの活動数も明示されています。

 現在国土交通省主導のもとに、歩いて暮らそう街づくり、という計画が進んでいます。松江でも検討中で、これが実現すれば松江駅から「はくちょう号」まで歩いていくことができます。さらに船を利用した街歩きの構想がありますし、路面電車の構想もあるそうですがこちらはお金がたいへんかかるそうです。残念なことは観光サイドから見た環境、環境サイドから見た観光というのには温度差があるように感じています。また同じことが行政サイド、民間サイドからでも見ることができます。

 最近、ご当地検定というのがはやっておりますが当地でも始まりました。県外の各地では資格を得るとなにか割引を得られるとかお得な活用の道があります。ところが松江市では資格を取ったきりになっています。これは立案者の方にもうひとつ頭をひねっていただきたいと思います。私も年末年始に松江のまちをご案内いたしました。雪の松江城はたいへんな印象をお客様にもたらしました。お客様は松江の町並みにたいへん感動され、別れるときは「だんだん」と言ってお別れし、その後お手紙のやり取りが始まりました。

 このような会に観光協会や観光行政などの担当者が出席していないということはたいへん残念なことだと思っています。いくらわれわれが検討しても机上の空論だと思います。ぜひとも連携して進められるようにみんなで協働したいと思います。

 一方で、おもてなしをする市民についても、市民のマナーが悪いところが目立っています。例えば、武家屋敷などで道を渡ろうとしても車がまったく止まってくれない。道にゴミが落ちている。車が水を歩行者にかけても平気で行ってしまう。これは一体どういうことなのか、と思います。非常に感じのよいところと悪いところがあります。基本的な接遇用語さえ使えないところもありますので、最低限の用語だけは明るくはっきりとにこやかにいえるように関係機関に呼びかけていただきたいと思います。

角氏:

 島根県観光振興課の角と申します。貴重なご意見をありがとうございます。先ほどのお話にもありましたが今島根の観光は未曾有の追い風にあります。特に石見銀山の世界遺産登録の波及効果も大きいですし、それから映画やドラマなどメディアをとおして島根のPRの場が増えてきていると感じています。そのような中で県としてもこのようなエコツアーに取り組んだり、既存の商品企画をつなぐことによって面白いものを作り上げていく協力をできればと思っております。また、市民のマナーやホスピタリティのレベルについては、こちらの接する側がお客様からどのように評価されているかについて知る機会が少ないと思いますので、そのような機会を増やしていくことでレベルの向上につなげていきたいと思っています。

進行:

 ありがとうございました。

高橋氏:

 おっしゃっていただいた意見はとても身にしみました。社員にもよく言っていますが、おもてなしの心はまず笑顔だといっております。お客様からの評判は徐々によくなってきておりますが、まだまだ取り組みしていかなければと思っています。また観光行政についてですが、発信するほうだけで地元不在のような感を覚えます。お城ひとつをとっても地元の方でも天守閣まで訪れたことのない人が多いです。これは私の努力が足りないかもしれませんけれど、もっと良いおもてなしやお城のすばらしさや偉大さを広めていきたいと思っています。こういったエコの商品にしても地元の人が自慢してもらえるような、情報発信してもらえるようなかたちをとれば、人が人を呼ぶいい方向になると思いますので、外へ外へと向くのも結構ですが地元の人をないがしろにした形で進めるのはどうかな、と思っています。

進行:

 ありがとうございました。時間も少なくなってきましたので上谷さんから一言いただきたいと思います。

上谷氏:

 さっきお話がありましたが、松江のマナーが悪いというのについて一言あります。私も松江の出身ではないのですが、松江の方は声をかけて何かしてもらうという点においては日本一丁寧な人だと思います。ただ、困っていて立っていたとしても「どうされました?」と声をかける方はあまりいないと思います。ですからこれからがんばって「どうされました」の一言が言えるようになると日本一おもてなしのいい場所に変わっていくと思います。そして本日のエコクルーズですが、普段はわりと方言も交えていますし、シジミ汁も島根の主婦の味を出してやっていますので、そんな形で地域を出していきたいと思います。

有田氏:

 まず「定着」。エコツアーだけではなく「地域」全体のなかでエコが必要なんです。日本、そして世界が認める大切なものがエコであるということをお客様に伝えていく必要があります。また宍道湖だけでなく島根には中山間という自然のかたまりがあります。西日本のエコの発祥地となるだけの素材がありますので、これをぜひ地元の方が自慢を自信を持ってできるようになってほしいと思います。それが定着の第一歩だと思います。

 さまざまな問題もありますし、今はみなさん他人事だと思っていると思います。これを自分のものとして考えるようになると、街が変わります。最後になりますがホスピタリティーの話が出ましたがこれはどこかの人の話を聞くよりはこのことを実践していただきたいと思います。ホスピタリティーを高めるためには、「孫や子に接する笑顔をお客様にしてあげてください」ということです。今日は旅館さんはお見えになっていないようですが、そのような料理を出してあげてほしいということです。孫や子が久しぶりに帰ってきたらそのようなことをしてあげたくなりますよね。それをお客様にすることでお客様には感動が生まれます。お客様も最初はどんな人が出てくるか不安なんですね。それはボランティアガイドさんも同じですね。そのようなとき、笑顔が出ればおのずと道は開けてくると思います。維持継続発展を望むのであればそのすべてにホスピタリティーを入れていただきたい。そのためには孫や子に接する気持ちで話しかけていただければ、このツアーは必ず西日本一のツアーになると思います。ぜひやっていきましょう。。

進行:

 ありがとうございました。今日は本当に悪天候の中長時間お付き合いいただきましてありがとうございました。以上をもちまして第8回の語る会を終了いたします。


お問い合わせ先

環境政策課宍道湖・中海対策推進室

〒690-8501 島根県松江市殿町1番地
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