宍道湖中海の水質

宍道湖中海の水質

●COD(化学的酸素要求量)に係る環境基準

COD(化学的酸素要求量)に係る環境基準
類型指定水域 宍道湖 中海
水域範囲 斐伊川水系の宍道湖(大橋川を含む) 斐伊川水系の中海及び境水道
類型指定年月日 昭和48年6月29日

 

島根県告示第431号

昭和47年10月31日

 

島根県告示第808号

環境基準類型 湖沼A類型 湖沼A類型
環境基準値 3mg/L以下 3mg/L以下

 

●全窒素、全りんにかかる環境基準

全窒素、全りんにかかる環境基準
類型指定水域 宍道湖 中海
水域範囲 斐伊川水系の宍道湖(大橋川を含む) 斐伊川水系の中海及び境水道
類型指定年月日 昭和61年4月1日島根県告示第418号 昭和61年4月1日島根県告示第418号
環境基準類型 湖沼III類型 湖沼III類型
環境基準値 全窒素0.4mg/L以下

 

全りん0.03mg/L以下

全窒素0.4mg/L以下

 

全りん0.03mg/L以下

 

宍道湖及び中海における環境基準点

宍道湖・中海の環境基準点の図

※T-1、T-2、T-3は鳥取県の測定地点

 

 

近年の宍道湖・中海の水質を経年的にみると、COD(化学的酸素要求量)はほぼ横ばいで推移しており、環境基準の達成には至っていません。また、アオコや赤潮に見られる富栄養化の目安ともされる全窒素及び全りんについても、同様に横ばい状態で、これらについても環境基準は達成されていません。

 

平成11年度の水質は、下表のとおりであり、項目によって若干傾向は異なりますが、全体としては、両湖とも依然顕著な改善は見られていません。

 

●平成11年度水質測定値の概要

 

宍道湖の状況
宍道湖 H11測定値 過去5年間

の平均値

COD(mg/L) 5.0 4.9
全窒素(mg/L) 0.53 0.54
全りん(mg/L) 0.061 0.06
中海の状況
中海 H11測定値 過去5年間

の平均値

COD(mg/L) 6.2 6.5
全窒素(mg/L) 0.78 0.8
全りん(mg/L) 0.072 0.088

※CODは、75%値が最も高い地点の値。全窒素・全りんは、年平均値が最も高い地点の値。過去5年間は、H6年度〜H10年度。

 

●CODの経年変化

CODの経年グラフ

●全窒素の経年変化

全窒素の経年グラフ

●全りんの経年変化

全りんの経年グラフ

 

また、宍道湖・中海では、年によってアオコや赤潮の発生が見られ、ここ数年は、ミクロキスティス、オシラトリアという植物プランクトンによるアオコや、プロロケントラムという植物プランクトンによる赤潮の発生が毎年確認されています。

 

このようなアオコや赤潮の発生に見られる、湖の富栄養化が進むと、植物プランクトンの死骸が湖底に沈澱してヘドロの原因となります。また、植物プランクトンが死んで分解するときに水中の酸素をたくさん消費して、水中の酸素が少なくなり、湖内の魚介類が死んでしまう場合もあります。

 

 

アオコ・赤潮
赤潮の写真

赤潮(中海)

アオコの写真

アオコ(宍道湖)

 

プランクトン
プロロケントラムの写真

 

プロロケントラム

ミクロキスティスの写真

ミクロキスティス

 

このように、富栄養化の進行は、湖水の汚濁や悪臭などの原因となります。

 

宍道湖・中海は、私たちに有形無形の恵みを与え続けてくれる貴重な財産であり、この財産をきよらかに保ちながら次の世代へ継承していくことは、私たち県民の責任です。汚濁の原因や水質を保全するための対策について理解を深め、私たち一人一人にできることを考え、行動していくことが何より大切です。

 

 

用語集
●環境基準

 

環境基本法に基づき国が設定する、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準のこと。

環境基本法に基づき国が設定する、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準のこと。

 

●COD(化学的酸素要求量)

ChemicalOxygenDemandの略称。湖沼や海域における水中の有機物による汚濁の程度を示す代表的な指標。有機物等の量を過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で酸化するときに消費される酸素量を表したもの。数値が大きいほど汚濁が進んでいることを示します。

ChemicalOxygenDemandの略称。湖沼や海域における水中の有機物による汚濁の程度を示す代表的な指標。有機物等の量を過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で酸化するときに消費される酸素量を表したもの。数値が大きいほど汚濁が進んでいることを示します。

 

●BOD(生物化学的酸素要求量)

BiochemicalOxygenDemandの略称。河川の汚染の度合いを示す指標で、水中の有機物等の汚染源となる物質が微生物により無機化されるときに消費される酸素量をmg/lで表したもの。数値が大きいほど汚染が進んでいることを示します。

 

●75%値

年間のy個の日間平均値の全てのデータを小さいものから順に並べた場合のy×0.75番目の数値のことで、湖沼の水質環境基準の適否の判定などに用いられます。

年間のy個の日間平均値の全てのデータを小さいものから順に並べた場合のy×0.75番目の数値のことで、湖沼の水質環境基準の適否の判定などに用いられます。

 

●全窒素、全りん

生物の成育にとって欠かすことのできない代表的な栄養塩類。家庭排水や工場排水などにより、湖沼の周辺から流入する水に含まれる窒素やりんが必要以上に増加すると湖沼の富栄養化を促進し、やがてプランクトンが異常に繁殖するようになります。

生物の成育にとって欠かすことのできない代表的な栄養塩類。家庭排水や工場排水などにより、湖沼の周辺から流入する水に含まれる窒素やりんが必要以上に増加すると湖沼の富栄養化を促進し、やがてプランクトンが異常に繁殖するようになります。

 

●富栄養化

植物の栄養素である窒素やリンが水に多く含まれる状態を言います。

植物の栄養素である窒素やリンが水に多く含まれる状態を言います。

 

●アオコ

植物プランクトンが異常に繁殖したとき、水面が緑色に濁るものをアオコといいます。

植物プランクトンが異常に繁殖したとき、水面が緑色に濁るものをアオコといいます。

 

●赤潮

植物プランクトンが異常に繁殖したとき、水面が赤褐色に濁るものを赤潮といいます。

植物プランクトンが異常に繁殖したとき、水面が赤褐色に濁るものを赤潮といいます。

 

湖の富栄養化

湖の富栄養化について
植物プランクトンは、湖水中に含まれる窒素、リン等の栄養塩類を利用して殖えます。栄養塩類は、湖の周辺から流入する家庭排水や工場排水などに含まれて供給されるものと、底泥(ヘドロ)から溶け出したもの、あるいは生物の死骸が分解して水に溶け込んだものなどをいいます。この栄養塩類を利用して増殖した植物プランクトンは、その一部が動物プランクトンや魚介類の餌になりますが、この量があまりにも大きくなるとアオコや赤潮といわれる状態が発生します。このような現象を富栄養化といいます。
下図は、湖沼の富栄養化の一般的な仕組みを模式的に示したものですが、このようなサイクルを繰り返しながら栄養塩類は湖沼内に蓄積され、富栄養化が進んでいきます。
今、私たちにできることは、ちょっとした工夫で減らすことのできる台所排水対策など、富栄養化の原因となる汚濁物質の排水をできる限り減らす実践活動です。
一人一人が身近な浄化対策に取り組みましょう!
●富栄養化のしくみ
富栄養化のしくみイラスト1
富栄養化のしくみイラスト2

 

宍道湖 中海
アオコ・赤潮の発生状況
1989

 

H.元

8月下旬から9月にかけてアオコが宍道湖東南部に認められた。 Microcystisaeruginosa 4月に中海一帯に赤潮発生。 Prorocentrumminimum
1990

 

H.2

9月下旬〜11月下旬にかけて、アオコがとくに宍道湖南岸に発生。 Microcystisaeruginosa 4,5月に中海南東部で赤潮発生。10月中旬に中海一帯に赤潮発生。 Prorocentrumminimum
1991

 

H.3

ラン藻のCoelosphaerium,

 

Kuetzingianum,

Merismopediaspの出現頻度が高かった。アオコは発生しなかった。

  5月中海一帯に赤潮発生。2月、3月中海一帯に赤潮発生。 Prorocentrumminimum
1992

 

H.4

アオコ、赤潮の発生認められず。 Cyclotella(珪藻類) 5月中海一帯に赤潮発生。 Prorocentrumminimum
1993

 

H.5

アオコ、赤潮の発生認められず。Microcystissp.は夏に出現せずに、10、11月に少し見られた。8月末の大雨の後、9月の試料に無色・透明な糸状菌が全域で発生。ラ藻Coelosphaeriumが秋より優占し、3月には全域で優占。 Cyclotellasp.Coelosphaeriumsp. Prorocentrumminimumが春先と秋から冬にかけて出現。11月、12月には赤潮形成。Chlamydomonassp.が7月中海と本庄工区で優占。8月末の大雨の後に、9月の試料に透明な糸状菌が全域で出現。ラン藻Coelosphaeriumが秋より優占し、3月には全域で優占。 Prorocentrumminimum
1994

 

H.6

アオコの発生認められず。塩分濃度の上昇によりProrocentrumminimumの赤潮が10月〜1月にかけて発生。通年的にはCyclotellasp.(珪藻)が優占し、ラン藻の発生は少なかった。 Cyclotellasp. Prorocentrumminimumによる赤潮が10,1〜3月に発生した。通年的にも同種が優占的であった。夏季にはThalassionemanitzschioidesが優占した。 Prorocentrumminimum
1995

 

H.7

アオコの発生認められず。Cyclotella属数種が年間を通して優占した。 Cyclotella属 Prorocentrumminimumによる赤潮が4,11〜1月に発生した。 Prorocentrumminimum
1996

 

H.8

アオコの発生認められず。6〜7月にProrocentrumminimumの赤潮が発生。Cyclotella属が年間を通じて優占した。 ProrocentrumminimumCyclotellaChaetocerossp.Eucapsissp. Prorocentrumminimumによる赤潮が5,7,11〜3月に発生した。 ProrocentrumminimumSkeletonemacostatumNeodelphineispelagicaNitzschiasp.
1997

 

H.9

9月中旬〜12月中旬にかけてアオコが発生した。9月中旬は南岸、10月上旬は西長江川河口、11月下旬は白潟公園付近、12月中旬は南岸でアオコが確認された。 Microcystisaeruginosa

 

Cyclotellaspp.Chlamydomonasspp.Prorocentrumminimum

Prorocentrumminimumによる赤潮が5月〜6月に発生した。 ProrocentrumminimumSkeletonemacostatumCyclotellaspp.Cylindrothecaclosterium
1998

 

H.10

7〜2月までアオコが散見され、10月には全域で大発生した。 Cyclotellaspp.Microcystissp.MonoraphidiumcontortumCoelosphaeriumkuetzintia-num Prorocentrumminimumによる赤潮が、4,5月、10〜3月に発生した。 Lobocystissp.ProrocentrumminimumSynechocystissp.MinidiscuscomicusNeodelphineispelagicaAsterionellaglacialisSkeletonemacostatum
1999

 

H.11

Dictyosphaeriumの一種と考えられる緑藻が4月に優占した。Prorocentrumminimumによる赤潮が6月に発生。9〜11月には小規模のアオコが発生。1〜3月にかけて緑藻が全域に出現した。 cf.Dictyosphaeriumsp.ProrocentrumminimumMonoraphidiumcontortum Dictyosphaeriumの一種と考えられる緑藻が4月に優占した。Prorocentrumminimumによる赤潮が、5月、1〜2月に発生した。 cf.Dictyosphaeriumsp.Prorocentrumminimum

 

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