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経営に関すること

GAP(GoodAgriculturalPractice)

 GAPを理解し、農産物の安全を確保し、より良い農業経営を実現しましょう。

GAPとは

 農産物の生産において食品としての安全を確保することは最も重要なことです。しかしながら、食品の安全だけではなく、環境の保全、労働の安全などに取り組むことで持続可能な農業生産につながります。これらの取組を記録簿や掲示物で確認・表示しながら農業活動を改善することで、より良い農業経営を実現するのがGAPです。

「GAPをする」

 農業者がGAP(活動または取組)を自ら実施することです。以下に項目別に一例を示しますので、参考にしてください。

  • 食品安全・・・農薬使用時の記帳、異物混入の防止、資材の保管など
  • 環境保全・・・適切な施肥、廃棄物の適正な処理など
  • 労働安全・・・農業用機械の点検や整備、作業安全用の保護具の着用、危険個所の掲示など
  • 人権保護・・・家族経営協定の締結など
  • 農場経営管理・・・責任者の配置、内部点検の実施など
「GAP認証をとる」

 農業者のみなさんが取り組んでいるGAPが、正しく実施されていることを第三者機関が審査し、確認した証明を受けることを「GAP認証をとる」といいます。日本ではGLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAPの3種類が普及しています。

 また、農林水産省では、GAP認証農産物を取り扱う意向のある実需者を「GAPパートナー」として登録しており、令和5年9月1日時点で69社が紹介されています。(Goodな農業!GAP-info(外部サイト)

美味しまね認証制度

 GLOBALG.A.P、ASIAGAP、JGAPは、認証を受けるための審査費用が必要となります。こうした中、島根県では審査費用が無料で国際水準相当の美味しまね認証制度を設けていますので、こちらの認証の取得もご検討ください。

 美味しまね認証制度の詳細については、美味しまね認証専用サイト(外部サイト)をご覧ください。

美味しまねゴールド認証取得者(国際水準相当)

集落営農法人の経営多角化

 集落を支える新たな人材を確保できる経営を実現するため、集落営農法人の経営に園芸作物など新たな品目を導入しませんか。県では、排水対策など基盤の整備や改良、栽培など総合的に支援します。まずは、お近くの農業部までご相談ください。

6品目

経営多角化の事例

キャベツ

(1)吉賀町真田

 圃場整備事業をきっかけに一昨年から試作に取り組み、昨年は10アール当たり約4トンを生産しました。令和3年3月には農事組合法人ごんごんじいの郷が設立されたところで、水稲のコスト低減に取り組みつつ、多角化経営を実践していきます。

 吉賀町では昨年の1.3倍にあたる約2.2ヘクタールの栽培が予定され、隣接する津和野町でも栽培者が倍増し、また益田市でも新たに栽培が予定されるなど栽培面積が拡大しています。

昨年より大幅に上回った収量 鉄コンテナを利用した出荷

 

(2)浜田市上府町

 上府農事組合法人では、圃場整備を契機に令和3年の法人設立からキャベツ栽培に取り組んでいます。令和4年産では管理技術が向上し、初夏作型では初年度を上回る収量(約4トン)となりました。その後の秋冬作型では面積を60アールに拡大させると共に、省力化を目的として加工業者用向け栽培に取り組み、県内でも優秀な収量(5.5トン)を確保しました。

 加えて、令和5年産では新たにタマネギ栽培に取り組み、水田を活用した2年3作体系(水稲→タマネギ→キャベツ)の確立を目指しています。

令和3年からキャベツ栽培に取り組む 初年度を上回る収量 水田を活用した2年3作体系の確立を目指す

 

白ねぎ

(1)大田市福光(農事組合法人ふくみつ)

 圃場整備事業をきっかけに平成29年の法人設立当初から白ねぎを栽培しています。大田市での先駆的な取り組みで、現在では三瓶地域にも波及しつつあります。土寄せ作業を行う法人の構成員

 

ミニトマト、アスパラガス

 ミニトマトやアスパラガスは、施設整備への初期投資や労力を多く必要とし、また露地野菜と異なり機械化による省力化には限界があります。生産規模を決定する際には資金力、技術力、労働力を考慮しましょう。

 

(1)美郷町村之郷(農事組合法人むらじ)

 ミニトマトを集落営農法人の経営品目に導入した先駆的な事例です。熱心な栽培管理により県内でもトップクラスの単収をあげています。その一方で労働時間が多くなっていることから、管理作業の効率化が課題になっています。

 

(2)津和野町堤田(農事組合法人つつみだファーム)

 圃場整備後に導入する作物にアスパラガスを選定しました。現在は、農事組合法人つつみだファームの堤田営農組合が中心となり、ハウス栽培のほか露地での一年短期栽培(採りっきり栽培)の試験を行っています。

 ハウス栽培では、8月時点で平均草丈は180センチメートルに生育するなど順調です。露地栽培では、排水不良による湿害で欠株がみられましたので、排水対策はしっかりしておきましょう。アスパラの生育状況

 

集落営農組織の広域連携

 ドローンを使った防除やリモコン除草機で作業を効率化。農産物の共同販売や資材の共同購入でコストを低減。近隣の集落営農組織で話し合い、連携することで大きな効果を発揮することが可能になります。組織化に向けては、公益財団法人しまね農業振興公社のコーディネーターの助言を受けながら、連携する組織づくりをバックアップしますのでお近くの農業部にお問い合わせください。

 

広域連携の事例

歩笑夢(ぽえむ)コーポレーショ浜田市

 株式会社藤若農産、農事組合法人ひやころう波佐、農事組合法人てごの里おぐにの3法人が連携し、ドローンを使った水稲の病害虫防除を行っています。設立当初は、構成3法人の農地の防除のみでしたが、現在は他地区の生産者からも作業受託を行っており、作業面積は延べ120ヘクタールまで拡大しています。主要なオペレーターを地域の若手メンバーが担っており、約5ヘクタールの防除を半日で効率的に実施しています。

 

協同組合水神森(すいじんもり益田市

 平成29年7月に大豆栽培で連携する任意組織「益田市西部農事組合法人連携協議会」が益田市西部の8つの法人が参加して設立されました。

 協議会の目玉事業の一つにはオペレーターの相互補完がありましたが、オペレーターはそれぞれの法人で高齢化しており、経営を持続するためにはオペレーターの確保が喫緊の課題となっていました。

こうした中、令和元年に効率的な機械の利用やオペレーティング、そしてUIターン者などの雇用を含めた後継者の確保・育成のため、協議会を構成する5つの法人(農事組合法人おおずえ、農事組合法人とよた農産、農事組合法人あとむ、農事組合法人アグリ向横田、農事組合法人丸山の郷)が出資して協同組合を設立しました。

 現在は大豆の収穫作業と堆肥散布を行っていますが、今後は水稲の作業にも拡大していく計画です。

大豆コンバインでの収穫

 

 

 

 

 

写真:しまね農業振興公社

 

持続可能な米づくり(省力低コスト栽培)

 平成26年の米価水準からさらに10パーセント価格が低下した場合でも、米生産を持続できるようにするためには、その生産コストを60キロあたり9600円まで削減させていく必要があります。そのためには、スマート農業技術や多収穫品種の導入をはじめ、農地の集積や集約も必要です。

 このうち、田植作業の労力軽減や効率化が可能な高密度播種育苗技術を紹介します。令和2年度に行った益田市の農事組合法人横尾衛門での実証結果から見てみましょう。

 

 田植作業は、育苗ハウスから苗を運び出し、軽トラックで運搬します。1回の運搬でどれくらいの苗を移植できるか(田植えできるか)、苗接ぎの回数を減らすことができるか、そして、田植え後の苗箱の洗浄作業もポイントになります。

 慣行の育苗では、箱当たり125グラム播種するため、10アール田植するには18箱使用します。同法人の軽トラック1回で運べる箱数は64箱なので約35アール分となります。

 今回の実証では、箱当たり250グラム播種した密播苗です。この場合、10アール田植するには9箱が必要になります。同じ軽トラックで密播苗を運搬した場合、約70アール分の苗を運搬でき、苗接ぎの回数も削減できました。田植作業の労力軽減

 この高密度播種育苗を取り入れることにより、仮に10ヘクタールで取り組むとすると、慣行の育苗では必要な箱数は3221箱、軽トラックの運搬は51回に対し、それぞれ2203箱、35回となり、育苗箱は約1000枚の削減、運搬回数は16回減少となります。

 この数字、育苗土、潅水、苗箱の積み下ろしなどにかかる労働力(賃金)や時間を考えると無視できませんよね。

育苗ハウスに並ぶ稲苗 苗箱の運搬

 

 

スマート農業

 担い手の減少や高齢化の進行により労働力不足が深刻な問題となっています。また、農作物生産の現場では、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければならない作業が多く、省力化や労力負担の軽減が重要です。また、これら生産現場の課題を解決と同時にコスト低減など経営の改善を図ることが必要です。

こうしたことを踏まえ、農業分野でのICT化やロボット技術を導入を検討しましょう。

近年の取組事例を紹介します。

 

水稲の低コスト生産

(1)水田の水管理

 水田の給排水や水位を自動で制御します。湛水位や水温などのセンサーから得られたデータや気象予測データを組み入れたシステムもありますが、給水を自動化する簡易な装置もあります。自動給水装置自動給水装置のコントロラー

 

(2)畦畔除草

 中山間地域の急傾斜な水田の畦畔法面の除草作業は危険を伴います。これを解消するリモコン式自走草刈機が開発されています。リモコン式自走除草機

 

(3)主に病害虫防除

 無人航空機による病害虫防除は、これまで産業用無人ヘリコプターが導入されてきましたが、近年はコスト面や操作性でメリットがある無人マルチローター(ドローン)の導入が進んでいます。無人航空機を効率的に活用するため、集落間で連携した広域利用を進めましょう。ドローン防除

 

水田園芸品目の増収、省力化技術

(1)潅水施肥の自動化

 ミニトマトなど施設の養液土耕栽培で、日射量や土壌水分量、EC、地温などのデータをもとに潅水施肥量を割り出して自動で供給して土壌環境を制御します。これまで作業者の経験や勘に頼っていた管理からの脱却で無駄の削減や作業時間の縮小が期待できます。

 

(2)環境制御、換気等の自動化

 施設内の気温や湿度などをセンサーで感知し、自動で換気などを行いハウス内の環境を制御します。ハウスの構造により整備できる装置に限界がありますが、省力化につながります。

 

 

 県では県単補助事業を活用したハウス整備には、環境モニタリング装置の導入を必須要件としています。

 これは、ハウス内の環境をきちんと把握したうえで適切な管理につなげようとするものです。ハウス内の状態がわからずに勘や経験、あるいはマニュアルどおりに作業をするということは、いわば「スピードメーターのついていない自動車」を運転するのと同じです。

 モニタリングと制御を連動させるシステムは高額になりますが、少なくともしっかりとモニタリング(監視)できるようにしましょう。

 なお、温度や湿度を主目的とした安価な記録装置があります。これらは後々の検証と改善にはとても有効な装置ですが、時々刻々と変化するハウス内の環境が農作物の生育に悪影響を与えないよう監視し、報知し、対策につなげるには効果は低いと考えられます。導入する段階では、設置する装置はよく検討しましょう。

 

園芸用ハウスの被災防止・軽減

 近年、台風などの強風や大雪により施設園芸用ハウスの倒壊や破損といった被害が多発しています。

大雪によるハウスの倒壊 台風によるハウスの倒壊

 

 自然災害を完全に防ぐことは難しいですが、適切な保守点検と対策を行うことで被災程度を軽減することは可能です。次のチェックリストを使ってチェックし、適切な対策をとりましょう。

 また、不幸にも被災してしまった場合には一刻も早く復旧することが重要です。被災したときのために園芸施設共済や民間の損害保険に加入しましょう。

 なお、防災・減災のための保守点検は、GAPの取組にもつながりますので継続して取り組みましょう。

 

チェックリスト「降雪」(PDFファイル306KB)

チェックリスト「台風接近1~2日前」(PDFファイル354KB)

チェックリスト「台風接近直前」(PDFファイル280KB)

チェックリスト「日常のメンテナンス」(PDFファイル373KB)

 

 このほか、農林水産省(外部サイト)に被害防止技術が掲載されていますので参考にしてください。

 

 

参考資料

  • 施設園芸用ハウス自然災害対策マニュアル(JA全農生産資材部)
  • 平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策指針(一般社団法人日本施設園芸協会)

お問い合わせ先

西部農林水産振興センター

西部農林水産振興センター
 〒697-0041 浜田市片庭町254 FAX0855-29-5591
川本家畜保健衛生所
 〒696-8510 川本町大字川本265-3 FAX0855-72-9811
益田家畜保健衛生所
 〒698-0007 益田市昭和町13-1 FAX0856-31-9739  
県央事務所
 〒696-8510 川本町大字川本265-3 FAX0855-72-9504
県央事務所大田農業部
 〒694-0064 大田市大田町大田イ1-3 FAX0854-84-9712
益田事務所
 〒698-0007 益田市昭和町13-1 FAX0856-31-9608

電話は「西部農林水産振興センターのご案内」をご覧ください。