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前傾姿勢

 7年前、筆者は本紙に「定住対策のためなら悪魔とも握手する」と書いた。(2001年2月18日付)。今年の年賀状の添え書きには「教育と地域振興の二兎を追い討って出る仕事がしたい」と書いた。それに加え前傾姿勢で取り組みたいとも言った。「前傾姿勢」とは地域振興担当時代、仲間で語り合ってきた言葉で、常に前向きに取り組み、よしや倒れるときにも前に倒れろ、前に倒れる者は救われるというほどの意味である。

 本県の厳しい状況を切り開いていくためにはよほど強力なパワーとスピードが必要で、そのためには脱前例踏襲主義、脱事なかれ主義と討ちてしやまんの心意気が求められる、ということだ。

 7年前といえば現在の極貧ともいえる財政状況をもたらした地財ショックのまだ前であり、国を挙げて景気浮揚のための経済対策が続行中であった。そして近々到来するであろう国全体としての高齢化社会を見据えると、定住対策のためには「がむしゃらに」取り組む気概と思い切った発想が求められていた。

 直近のデータによる本県の高齢化率は27.6%。人口は73万2千人(07年10月1日現在推計)と昭和の初めごろの水準まで低下してきた。出生数は年6,011人(06年)。1981年に1万人を下回って以降減少が続く。また合計特殊出生率も1.5前後と人口を維持するに足る2.07を大きく下回っている。年ごとの人口減は約5千人。単純にいうと、約150年で島根の人口はゼロになる計算だがこれは数字のあやであろう。

 出生数の減は成長過程に応じての地域消費の減、教員数減、産科・小児科や地域交通が成立しなくなるなど地域循環への悪影響を及ぼす。

定住対策の眼目は産業振興による雇用の場、働きの場の確保である。特に子供を生み育てる若者の働き場を確保し、その定住による若者プラス出生による人口の増が必要である。これまでもしまね定住財団を中心に関係機関をあげて若者定住対策を進めてきた。

 毎年県内高校を卒業して就職する生徒の約500人強(40%弱)が県外へ就職。高専では県外が約80%、専修学校では40%弱。これらはいずれも県内に魅力ある職場が確保できればその何割かは県内にとどまったであろう。

 むずかしい資格を取得しても県内で生かすチャンスがなく県外へ、という話をよく聞く。

 また、毎年開催される大卒を対象とする就職フェアは長蛇の列で、そのすべての受け皿が用意できればと残念に思う。

 ひるがえって、企業の立地や創業、起業には条件整備が不可欠であり、道路や空港などの整備を進めてきた。定住対策としては福祉・医療や教育・文化の振興も欠かせない。

 企業の立地創業がそびえる山とすれば福祉・医療や教育・文化などはすそ野を形成し、山を高くするにはすそ野が広くなければならず、これをつなぐのが交通や情報インフラだと考えてきた。

いわば、定住対策とは、それぞれの分野が自らの「仕事」をきちっとやりこなすことが必要な総合的な対策である。

 団塊の世代の定年退職が始まった。本県でもいち早くこの世代のUIターンを呼びかける知事のメッセージを発信した。

定住対策は若者定住対策とともに、自然、安らぎ、伝統、文化などに価値を求める人生観を是とし、その求めるところを提供する施策でもあると思う。

 

平成20年3月24日山陰中央新報「談論風発」への寄稿

 

 

 

 


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