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新規採用教員辞令交付式教育長訓辞

サンラポーむらくも4月2日

 訓辞

 ただいま、辞令を交付した百十名の皆さんは、念願がかない、晴れて本県教職員として教育現場に勤務されることになりました。心からお慶び申し上げます。皆さんの目標は、教職員として採用されることではなく、教育に携わることであり、それは今日から始まることになります。

 皆さんには、子どもを学校に託す保護者の願いや地域の大きな期待が込められていることを十分に認識し、教職員としての使命を自覚の上、社会全体への広い視野と教育への熱い情熱をもって、職務に精励されるとともに、自らの資質の向上を目指して、絶えず自己研鑽に努め、人格を高めるために修養を積んでいただきたいと思います。

 また、これから皆さんは、早速それぞれの勤務校に赴かれる訳でありますが、校長をはじめ諸先生方との協調連携を深め、法令に定められた服務の遵守はもとより、勤務を離れても地域社会の一員として、児童生徒や保護者、地域社会の方々から信頼される教職員となられるよう切望しております。

 折角の機会でありますので、門出にあたって皆さんにお話しいたします。六十年前、敗戦から再出発した我が国社会は、ものの豊かさでは世界屈指の大国となった反面、心の豊かさや歴史・文化・匠の技などを尊重する心を軽んじ、今日に至りました。とりわけ、バブル経済の崩壊以来、過度な市場原理主義や効率主義、自分さえよければといった風潮が蔓延し、いとも簡単に人の生命を殺めるといった、社会の安全までがおびやかされる様々な社会病理現象を抱え込むこととなりました。こうした社会状況は、子どもたちの安全に直接関わるとともに、心身の発達等に重大な影響を与え、学力低下や不登校など、子どもたちをめぐる種々の問題が起こっております。

 このような時代の変化に的確に対応するため、平成十六年三月に「しまね教育ビジョン二十一」を策定し、子どもたちが知・徳・体の調和のとれた発達をすること。社会や人との関わりの中で、自分の生き方を考え、行動していく力や問題解決能力を身に付けることをめざしております。

一知育は、学力調査とそれに基づく学力向上対策プロジェクトを実施します。

二体育は、体力づくりとともに心身の健康づくりでもあり、徳育にも通じることであります。

三徳育は、規範・規律意識や社会性を身につけさせること、併せて、他人を思いやる心、卑怯を恥じる心を養うことでもあります。道徳などの特定の教科を越えた心の教育であります。

 この三本は、それぞれごとに目標を掲げ、目的意識的に実施することが重要でありますが、それと同じくらい、総合的・有機的に実施する視点を欠いてはなりません。

 そうした考えから、特にふるさと教育に力を入れております。このふるさと教育は、学校と家庭と地域が一体となって取り組むことを目指しており、地域の人々にも積極的に参加していただき、その知恵や技術を子どもたちに伝えていただいております。

 ふるさと教育では、

一ふるさとを愛し、ふるさとに誇りをもつ子ども

二学ぶことの楽しさを実感し、自ら課題を見つけ、自ら考える子ども

三「他人をやさしく思いやる心」、「美しいもの、気高いものに感動する心」など、豊かな心や人間性、社会性をもつ子どもの育成を目指しております。

 また、年度末には、子どもたちや教師の学習や研究の発表の場として、県内五教育事務所管内で「ふるさと教育フェスティバル」を開催しております。地域に伝わる神楽や伝統芸能、米作りや自然学習などの取り組みの発表に、手応えを感じました。

 「教育に期待される役割」は、人格形成の最も重要な時期にあって、「知・徳・体」のバランスの取れた人格をつくることであり、これはいつの時代でも不変不易であります。そのさらに基礎となるのが感動する心、卑怯を恥じ、弱いものをいたわる心など「豊かな心」の醸成です。

 皆さんには、単なる知識の切り売りではなく、子どもたちの知的好奇心を喚起し、知ることの楽しさを教える教育を行って欲しいと願っております。そのためには、皆さん自身が豊かな情感・感性を身に付け、知性を高めて欲しいのです。

 繰り返しになりますが、人格形成にあたっての最も多感な時期においてこそ、「四季折々の移ろいを感じ取る豊かな感性」、「地域の人々とのコミュニケーションを通じた人を思いやる心、人の痛みがわかる人間」、「社会のルールを学び、卑怯を感じる心」、この三つをしっかりと身に付けた子どもに育てて欲しいと願っております。

 最後に一つ、はなむけの言葉をお伝えします。昨年の新規採用教職員の方々にもお話ししたことですが、それは「そつ啄同時」という四字熟語であります。卵の中のひなが殻を破って今まさに生まれようとするとき、それを察知した親鳥が外から殻をつついて介助するといいます。機をみて両者相応ずる様は、教育の本旨、学ぶ側、授ける側の阿吽の呼吸に通じるものであります。

 この言葉を贈り、皆さんの御活躍を大いに期待して訓示といたします。

 平成十九年四月二日

 島根県教育委員会教育長

 藤原義光

※「そつ啄同時」の「そつ」は「口」偏に「卒」という漢字です。ホームページ上で表示できないため、ひらがな表示してあります。


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