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教育長講話~教育施策説明会(小・中学校校長対象)

 日頃から、現場で子どもたちのために働く先生方を束ねながら学校運営にご尽力をいただきありがとうございます。

 

 まず、東日本大震災の被災者の方々に心からお悔やみ申し上げます。近年世界的にも自然災害や大きな出来事が多く発生していますが、今回の地震・津波は未曾有の被害をもたらしました。現地の方は大変な苦労をしておられ、島根県としても最大限の支援をしていく必要があります。

 現在、二つの支援をしています。

 一つ目は人や物資の支援です。教育委員会では、職員、教員の協力を得て、被災地に支援部隊を送っていますが、現地に赴いた職員からは、大変厳しい状況にあると報告を受けています。瓦礫の山があちらこちらに見られ、また、魚介類が打ち上げられ、そのままになっていることから異臭にも悩まされているということでした。また派遣期間の一週間程度では成果がすぐには見えないため、なかなか達成感が得られないということでした。ただ、派遣した職員の提案により、避難所の子どもたちに図書を送ることが、教育庁職員の本の提供を受けながら実現したことは何よりの喜びでした。

 これから先、大変な年月や労力が必要で復興にはまだまだ長い時間が必要だと思います。

 被災地の教員も不足しているようであります。島根県といたしましても、教員の皆さんに対して支援者としての希望を募るアンケートをしているところです。是非校長先生方にも協力をお願いしたいと思います。

 二つ目は、被災児童・生徒の受け入れです。小中では、44名を受け入れている松江が一番多いと聞いています。現在のところ子どもたちは順調に過ごしているようです。入学料、検定料の無料化、教科書の無償配布等を行っていますが、心のケアも大切であります。万全の支援をしていきたいと思っているところです。どうか転校生がいじめにあうといったことがないよう配慮願いたいと思います。

 そうした中、このたびの被災地の方々の秩序立った行動は、世界からも賞賛されています。日本人として誇りに思うところであります。また、先生方や子どもたちの避難所での献身的な支援活動を見ると教育の成果を感じます。教育に携わる立場として、改めて教育の大切さを感じ、一生懸命取り組んでいかなければならないと思っています。

 このたびの大災害を教訓あるいは契機として、児童生徒が「おもいやり」「人の絆」「助け合いの精神」等を真剣に考えていけるような教育を進めていただきたいと思います。また、避難場所の確認等の備えを教職員と共に考えて頂きたいと思います。

 さて、教育長に就任して以来1年、全力で取り組んできましたが、施策については成果のあったもの、まだ途上のもの、新たに問題の顕在化しているものなど様々で、教育は一朝一夕にすべての結果を求めるわけにはいかないことを実感しています。

 私は、教育長に就任するまで外部から教育を見てきた立場でありますが、教育界はなかなか大変だなと感じていました。その要因として、4つの社会環境の変化があげられると思います。

 一つ目は、便利になった反面、効率重視で温かさの薄くなった社会、急激な情報化の進展等の社会環境の変化です。こうした変化は、子どもたちの生活の中に入り込み様々な深刻な影響を与えています。

 二つ目は、地域・家庭においての教育力が弱まっていることです。このことによって一層の学校依存が見られるようになってきています。

 三つ目は、出生率の低下に伴う少子高齢化の進行です。子どもの数が減っており、学校運営にも影響を与える大きな問題になっています。

 四つ目は、島根県は現在、医者や看護士など医療系あるいは工科系の人材が不足しています。子どもたちの進路については、こうした島根の現状を踏まえた独自の対策を考えていかなければならないと思っています。

 島根の教育は、「学力・心・体」をバランスよく兼ね備えた子どもたちを育成していくことが大切であると思っています。そのために、必要な取組みについて話します。

【学力向上】

 学力の向上については、平成18年度から県単独の学力調査を行っています。年々着実に成績があがってきています。しかし、少し思考力を求められる問題となると正答率が低くなるという結果も見られます。家庭学習についてもまだ課題があります。また、大学入試センター試験の成績は下位に低迷しておりまだまだ充分ではありません。是非、小中学校では自分で学ぶ力・意欲を育て、高校に引き継いでもらいたいと思います。

 島根の課題として理数系の子どもを育てるということがあります。そのために、理科数学に興味を持たせることが大切だと思います。小中の児童生徒へは「数リンピック」の大会を行ったり、中学・高校では「夢実現チャレンジセミナー」をしたりしていますが、もっと根本的に理数に対して興味を持つような仕掛けが必要だと思います。そこで、小学校の先生には理数系の先生が少ないという状況を踏まえ、来年の教員採用試験において小学校採用枠の中に、理数の中学校免許保有者の採用枠を設けました。子どもたちに理科の実験などの指導等に工夫を加え、理数のおもしろさや興味を持たせてもらいたいと思います。

 さて、新学習指導要領が小学校で始まりました。中学校では来年からであります。順調に進んでいると思っていますが、今後、さらに研修の充実等を図って対応したいと考えています。英語(外国語活動)については、小中の連携を大切にやってもらいたいと思っています。ある意味「ゆとり教育」の転換であり、新しい指導方針でしっかり教えられるように改めてお願いしたいと思います。

【読書活動】

 読書活動はすべての学習の基本になります。つまり何をするにしろ言語力を高めないといけないということです。藤原正彦(数学者)は、「小学校教育では、1に国語、2に国語、・・・5に算数、あとは10以下」と言っています。それだけ「本を読もう。」と言っているのであります。県では、学校図書館の充実に取り組んでいます。現場ではほぼ100%図書館司書が配置されてきています。いくつかの学校図書館を訪問しましたが、どこも明るい雰囲気の下で様々の工夫した取組みが行われていました。今後も積極的に図書館を活用してもらいたいと思います。この図書館教育の活動は全国にも注目されており、来年は松江で全国大会(図書館活用教育)が計画されています。協力をお願いしたいと思います。

【新聞活用力】

 読書活動と同時に新聞を活用した教育(NIE教育)も大切であります。新聞を読む、活用することで論理展開や情報の取捨選択の力も身につくのではないでしょうか。是非新聞の良さも伝えてもらいたいと思います。

 一方で最近は若い教員の中には、新聞を購読していない者も結構いるのではないかと心配をしています。新聞は新聞社によって論点・見解が異なります。そういうことを先生方が認識していないと、広い視野を持って適切に子どもたちに伝えることができないのではと思います。今の世の中の○×式の風潮の蔓延の要因の一つも若い人たちの新聞離れにあるのではないかと懸念しています。先生方には、世の中の動向にアンテナを高くすると同時に、事件、事故、出来事の背景等を活字を通してしっかりと考えてほしい。そして、世の中は、○×だけではないということを子どもたちに伝えてほしいと思います。

【ふるさと教育】

 ふるさと教育は、地域の方にもお手伝いをして頂きながら、定着してきています。

 平成24年は古事記編纂1300年を迎えます。神話に関する記述のうち、3分の1が出雲の神話で占められています。これを機に島根の歴史・文化・伝統を、全国(東京・大阪)にPRしていきたいと思っています。同時に、この島根の歴史の奥深さを県民の方々にも再認識してほしいと思います。とくに子どもたちに郷土に愛着を持ってもらうために、副読本もリニューアルしますので授業で積極的に活用してもらいたいと思います。

【ふるまい向上】

 昨年から始めている運動でありますが、東日本大震災で注目された「思いやり」「絆」「規範意識」が現代社会では希薄化しています。さらに力を入れて取り組んでもらいたいと考えています。課題としては、まだ県民全体へ十分浸透していないことであります。そこで、今年度は各教育事務所単位で市町村を中心にした協議会等を作り、学校もその一員として加わって頂き、地域に密着した取組みをお願いしたいと思います。

【特別支援教育】

 特別支援教育の対象の児童生徒が増えてきています。昨年度は「特別支援教育あり方検討委員会」を開催し、この3月答申をいただきました。この答申を踏まえ、この夏には、県としての実施計画を策定したいと考えていますが、その過程で校長先生方にもご意見をもらいたいと思います。

 また、通常学級にも相当程度発達障害等のある児童生徒が在籍しているという報告があります。教員も特別支援教育に関する知識をもっていないと適切な指導が難しい時代になりました。先生方に是非、理解を深めてもらいたいと思います。

【体力】

 確かな学力、豊かな心の基本は、体力であります。体力は忍耐力にもつながります。しかし、子どもたちの体力は、親世代と比べると随分下がっています。このため、今年度から「1日1時間は体を動かそう。」をテーマに、子どもが運動をする環境作りに取り組んでいきたいと思います。各管内で1校ずつモデル校としていろいろな取組みをしてもらい、その取組みを全体に広げていきたいと思います。各学校においても、それぞれの特色を生かしながら、地域や家庭とも連携して子どもたちが体を動かすようなしかけを考えていただきたいと思っています。

 なお、「全国体力テスト」は今年は実施されないかもしれませんが、各学校においては引き続き体力を維持するような取組みをお願いしたいと思います。

【情報化】

 携帯電話、テレビゲーム、インターネット等情報化の問題では、その功罪について子どもたちにしっかりと教えていく必要があります。考えさせて、情報や機器に使われず、活用する力を育成していくことが大切です。家庭と一体になって取り組んで頂きたいと思います。

【キャリア教育】

 高校卒業生の就職状況については、この3月は、74%が県内就職しました。県内への就職については、今後も積極的に進めていきたいと思います。そのことと同時に「生き方・働き方」について考えさせていきたいと思っております。これは小学校段階から教えていくべきものであり、自分で生きていく力を付けていかなければなりません。全教科を通じて、お願いしたいと思います。

 最後に、校長先生には、多忙感や心の悩みを抱える先生方のよき相談相手になって、リタイアする先生方が一人でも少なくなるよう体制を整え、学校経営にあたって頂きたい。

 教育は人であります。団塊の世代の大量退職はこれからピークを迎えます。優秀な人材を確保し、その人材をしっかりと育て、さらにその人材を子どものために生かして頂きたいと思います。

 先頭に立って、校長・教頭・先生方が一体となった、地域から信頼される、地域をリードする学校運営を是非、お願いしたいと思います。


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