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教育長訓辞:平成31年度新規採用教職員辞令交付式

 ただいま辞令を交付した260名の皆さんは、本日、島根県の教職員として第一歩を踏み出されました。心からお喜び申し上げます。

 これからは、島根の将来を担う子どもたちの教育という重要な使命を担って、着実に歩みを進めていただきたいと思います。

 さて、人口の減少が日本全体の課題となる中、島根県は、恵まれた自然環境や連綿と受け継がれてきた文化・歴史、大切に守り育んできた心の豊かさや環境への配慮、そして勤勉さなど、島根ならではの強みを生かして活力ある地域づくりに取り組んでいます。

 そして、魅力ある就業の機会を創出し、子育てに適した環境を生かして、若い世代の人たちの結婚・出産・子育ての希望が叶えられる社会をつくり、島根に定着、回帰・流入する人の流れを拡大すること。この目標の達成に向け、県民を挙げた取り組みを進めることによって、島根の将来を切り開こうとしています。

 なかでも、地域の将来を担う人材の育成が島根県政の重要な政策課題となっており、教育に寄せる県民の期待はとても大きなものがあります。

 こうした期待に応えるためにも、島根県教育委員会では、島根の子どもたちが、自らの将来に向けて幸福で主体的な生き方を実現できるよう、また、よりよい社会の担い手になっていけるよう、発達段階に応じたきめ細かな教育を進めています。

 島根県教育委員会が目指すこうした方向性は、新しい学習指導要領の狙いと非常に重なるところが多いものと受け止めています。

 新しい学習指導要領の大きな特徴は、子どもたちがこれからの時代を生き抜いていけるよう、大きく2つの点が打ち出されたことです。

 1つ目は、子どもたちがこれからの時代を生き抜くため、育成を目指す資質と能力を、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力」、「学びに向かう力、人間性」の3つの柱で整理している点です。

 2つ目は、「社会に開かれた教育課程」を掲げている点です。

 こうした学習指導要領の2つの方向性は、島根県が力を入れて進めている「教育の魅力化」とも、高い親和性を持ったものであると思います。

 皆さんの中には、「教育の魅力化」という言葉を初めて聞かれた方もいらっしゃるかもしれません。島根県教育委員会が取り組んでいる「教育の魅力化」とは、学校と地域社会がその目標を共有し、協働を図りながら、島根の教育をよりよいものに高めていくことです。地域と連携・協働することで、島根の子どもたち一人一人に、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓くために必要となる「生きる力」を育んでいきたいと考えています。住んでいる地域の優れた資源を教育に活用することは、子どもたち一人一人が当事者として、また、温かく見守られ多くの人から期待を寄せられる中で、自己肯定感を持ちながら、生きる力を育んでいくために、極めて重要なことであると思います。

 そして、「知識・技能」に加え、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力」、学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性」を3つの柱とする新学習指導要領を、島根の強みを生かして実践することになるものと考えます。

 この島根には、豊かな自然や多様な生産活動の体験の場、豊富な知見を持つ先達の存在など、恵まれた教育環境が子どもたちの身近にあります。これまでも、こうした地域資源を活用した教育が進められてきましたが、これらを最大限に活用しながら、学校と地域が一体となって子どもたちを育むこと、そして学校の魅力を一層高めていくことにより、島根らしい教育を推進していきたいと考えています。

 教育の魅力化・魅力の高まりを「地域の魅力」へと発展させることは、地域貢献意識の高まりや、島根で活躍したいという思いを持つ子どもたちを増やすことにもつながるでしょう。「子どもたちに、自らの人生と地域や社会の未来を切り拓く力を育むこと」と、「この地域で学びたい、住みたい、子どもを育てたい、と思えるような魅力ある地域づくりを推進すること」の好循環を生み出す、という方向性は、島根県教育委員会として一人一人の自己実現を支援することと併せ、一層推進していくべき方向であろうと思います。

 先ほどお話しした新学習指導要領の2つ目の特徴「社会に開かれた教育課程」は、学校教育を学校内に閉じずに、社会と共有・連携しながら進めること、そして「より良い学校教育を通じて、より良い社会を創る。」という目標を学校と社会が共有して、その実現を図ろうとするものです。

 こうした点をみても、島根で進めている「教育の魅力化」は、「島根の強みを活かして実践する学習指導要領」であると思っていただいてよいと考えています。

 新しく教職員になられた皆さんは、まずは、目の前の子どもたちのことに全力を傾注することで精一杯だと思います。あせらず、目の前の子ども一人ひとりにとって魅力的な教育活動を地道に積み重ねていくことが、教育に求められる大きな役割を果たしていくことにつながるのだと思っていただければ幸いです。

 次に、教職員となる皆さんの健康管理についてお話したいと思います。

 あらゆる職場で「働き方改革」が重要な課題となっています。

 これまで、学校においては、教職員という職の崇高な使命感の下、『子どものためであればどんな長時間勤務も良しとする。』という働き方が当たり前とされてきました。しかし、こうした働き方によって教職員が疲弊していくのであれば、それは子どもたちのためになりません。

 これからは、教職員の業務負担の軽減を図り、新たに生まれた時間によって、児童生徒等に接する時間を十分確保するとともに、教職員自身の人間性や創造性を高めることで、効果的で充実した教育が各学校で行なわれるよう取り組んでいく必要があります。

 このため、島根県教育委員会では、今年3月に「教職員の働き方改革プラン」を策定しました。私は、「教職員の皆さんの心身の健康を守り、働きやすい環境を整えることが、子どもたちに質の高い教育を提供する基盤である。」と考えています。

 島根県教育委員会は、こうした基本認識を、市町村教育委員会、学校管理職、保護者や地域、そして皆さんを初めとする教職員の方々と共有しながら、学校における働き方改革に向けて努力していく考えです。

 これから教育の現場に立たれる皆さんは、新しい職場で仕事と生活の調和を図りながら、心身ともに健康で、いきいきと子どもたちに向き合っていけるように日々心がけていただきたいと思います。

 結びに、皆さんは、これから県内の様々な地域へ赴任していかれますが、島根県全体をふるさとと捉え、ふるさと島根の教育を教職員全員のチーム力で担っていく、そのような気概を持ち続けていただきたいと願っています。

 どうか健康にはくれぐれも留意され、自己研鑽に努めながら、これからの教職員生活で存分に力を発揮されることを期待しまして、訓辞といたします。

 

平成31年4月1日

島根県教育委員会教育長

新田英夫


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