県議会答弁:令和7年9月定例会(原議員質問分)令和7年9月19日
(議員質問)
今年度より、本県ではおそらく全国に先駆けて全県で導入しようと取組をスタートさせたが、実際の実施状況はどのようになっているのか伺う。
(教育長答弁)
昨年度、78校でトライアル実施をした「たつじんテスト」ですが、議員ご紹介のとおり、本年度より、県内全ての市町村において取組を進めております。
対象学年は、小学校2年生から中学校3年生までであり、実施する学年などについては、市町村や学校の判断によります。
今年度実施したのは、学校数では、小学校161校、中学校28校、義務教育学校2校、特別支援学校5校と、全体の約7割の196校でした。
児童生徒数では、小学校約6,700名、中学校約1,500名、義務教育学校約100名、特別支援学校約40名の、児童生徒の全体の約2割に当たる、約8,300名でありました。
市町村にも2分の1の負担を求めたこともあり、初年度としてはまずまずの参加であったと思っております。
(議員質問)
実際に導入してみて、現場ではどのような声や評価があるのか伺う。
(教育長答弁)
先ほど申し上げたとおり、幅広い学年・校種において実施いたしました。学校現場からは、児童生徒の学習状況をより深く理解出来るようになったとの声が多数寄せられております。
例えば、小学校の教員からは、「分かりやすく教えるということを常に心がけているが、一向に成果がなく、どうしたらいいものかと悩んでいたところ、子どもたち一人ひとりのつまずきに目を向けることの大切さに気づくことが出来た。」「この夏休みに「たつじんテスト」の結果を分析したことで、分かりやすく教えるだけでは、子どもたちの生きた知識になっていなかったことを知った。」「従来の授業改善では見えてこなかった「分数や小数の理解の不足」「図形の把握の苦手さ」「他者の視点に立つことの難しさ」といったつまずきの要因が明らかになった。」などの感想がありました。
この他に、議員もお取り上げになっているように、学級に3人「学習に向かいにくい」児童がいた場合、ほとんどのことが理解できていない児童、言葉の理解は十分であるが算数が苦手な児童、逆に、計算はできるが文章の意味が理解できていない児童、といったように、一見同じように見える姿の背景が、三者三様であることが浮き彫りになり、今後の個別指導や授業改に活用できる情報だと受け止められています。
市町村独自の動きとして、出雲市では、「たつじんテスト」のポルトガル語版を作成することとされました。まずは、今の日本語版をポルトガル語に翻訳したものを作成し、日本語の理解が難しい児童生徒に対してつまずきの確認を行う。その後、内容そのものも、生まれ育ったブラジルの文化や学習環境に合わせたものを作成するという計画で、ブラジルで育った児童生徒の真のつまずきを把握し、それに対処していく方針であると伺っております。
このように、学校現場や市町村教育委員会において、たつじんテストを活用して児童生徒のつまずきを把握し、学習支援につなげようという評価を得ております。
一方で、教員からは、「個別データを確認し、授業改善に結びつけるためには、相応の時間と工夫が必要である」という声もございます。
(議員質問)
テスト結果の分析・活用のほか、実際の指導方法に生かすという点において、県教育委員会の積極的な取組をお願いしたいと思うが、所見を伺う。
(教育長答弁)
8月に「たつじんテスト」の開発者である慶応大学名誉教授である今井むつみ氏を招聘し、調査の理論的背景や分析方法、子どもたちに見られるつまずきと、その支援の在り方についての研修を、県内3か所で実施いたしました。参加者が自校で作成した支援計画案を持ち寄り、意見交換を行うなど、具体的な授業改善に資する実践的な学びの場となりました。
県教育委員会では、調査実施校が、たつじんテストの結果分析を活かして計画した支援の内容を共有できるWebシステムを整備し、実施校だけでなく未実施校においても閲覧可能とすることで、県内全ての学校が情報を共有できる仕組みを構築いたしました。8月19日のシステム運用以降、一ヵ月間で180件を超える事例が現場の教員から入力されています。
入力された事例を紹介いたしますと、小学校においては、「言葉の学習につまずきが見られたため、国語の学習で言葉集めゲームや言葉を用いたビンゴゲーム、言葉辞典づくりなどを取り入れ、言葉に関わる活動を充実させる。」「図形の学習につまずきが見られたため、算数の学習で「ずらす」「回す」「裏返す」など、図形を操作する活動を充実させたり、デジタル教科書を使用して視覚的に理解する時間を確保したりする。」、中学校においては、「言葉の学習につまずきが見られたため、社会の学習では、資料の中にイラストや図を入れることで、言葉の意味を理解できるよう支援する。」「分数の学習につまずきが見られたため、数学では、身近で量や大きさを想像しやすいケーキやピザ、時計などを用いて、分数の量感をとらえる活動を取り入れる。」、また、「家庭科の計量や音楽の音符の長さなど、他の教科と関連を図ることを意識する。」などの事例がございます。
このように、この仕組みは先ほどの「授業改善には相応の時間と工夫が必要」との声に応えるものでもあります。
県教育委員会としましては、この「たつじんテスト」の成果を今後とも最大限に生かしていくために、市町村教育委員会のご意見もお聞きしながら、取組を進めてまいります。
また、今議会終了後に市町村教育長さん方との会合を予定しておりますので、そこで詳しく事例を紹介し、情報共有を図りながら、各市町村での取組が進むようお話をしたいと思います。
(議員質問)
実施人数について、今回の2割が来年4割、6割となっていくための方策について伺います。
(教育長答弁)
まず、今現在、教育委員会において作業を行っておりますのは、たつじんテストの結果と全国学力調査の結果を紐づけてみると。具体的にどういう問題が、いわゆる単元的な学習ですね、全国学力調査にあるどういう問題に、たつじんテストのつまずきが影響があるのかについて、紐づけるという作業を行っています。
そういった紐づけをするうえで、全体で8,300名程度のデータがありますので、データ量としては十分だとは思います。ただ、このたつじんテストを実際の個別の指導で生かす場面で、全体として、今の子どもたちは、視点の置き換えが弱いからこういう授業をしようという授業改善は今でもできると思いますけど、本当は突き詰めてねらうことは、この子は、置き換えができない、この子は自分の右左は分かるけど向かい合った人の右左が分からない、あるいは鏡に映った右左は分からない、こういった一人ひとりの特性を把握して個別指導をしていく、ここに役に立てる、これが究極の活用方法だと思っております。そのためには、できるだけ多くの児童生徒がテストを受ける、そして一人ひとりのつまずきの状況を教員が把握することが大切だと思っております。
単に、傾向を見た授業改善で満足せずに、個別指導までしっかりしていくところまでいくと、議員がおっしゃるように、本当は全員に受けてほしい、しかも、毎年受けてほしい、状況の変化を把握してほしい、個人データを積み重ねて、経年変化を見てほしいというのが私の思いでありますし、多くの市町村の教育長さん方も同じ思いであります。ただ、実際には予算という壁がございまして、実際に県の予算分は、昨年度までありました県の学力調査の予算をそのまま振り替えておりますので、用意できておりますが、市町村にとっては、一からということもございまして、できるだけ用意はするけれども、だいたい一年位前から予告はしていましたが、4月の時点から予告したり、みんなでたつじんテストを教育長さん方でやってみたり、いいものだということは理解を得ながら、どうやっていくのか、どう活用していくのか、という仕組みを作り上げて、当初予算にのぞんでいただいたわけですが、結果的には全体の2割程度ということでございました。
参加していない学校の校長から「ぜひやりたいんだ」という声を直接伺っておりますので、この活用方法までしっかり示す、今回、ウェブシステムを使った活用方法を示すことによって、その有用性をぜひ市町村長さん方、あるいは市町村議会に届けていただいて、予算をつけていただければと思っております。県では、すでに今年度当初予算から全員を対象とした2分の1の総額を予算計上させていただいておりますので、対応していただけるよう、日程を提供して、先ほど申しましたように全員が受けて、つまずきの対応ができるように思っています。
お問い合わせ先
島根県教育委員会
〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎)
島根県教育庁総務課
TEL 0852-22-6605
FAX 0852-22-5400
kyousou@pref.shimane.lg.jp