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県議会答弁:令和4年2月定例会(田中明美議員質問分)令和4年3月2日

(議員質問)

 「探究学習」が高校教育の中でどの様に実施されているか伺う。

 

(教育長答弁)

 「探究学習」は、小学校低学年時に行う生活科の授業や、小中学校での総合的な学習の時間での学びを土台といたしまして、高校で、実際の社会や生活と自身との関わりから、「これは何故こうなっているのだろうか」といった疑問から、仮説を立て、「どうしたら解決するのだろうか」と、その解決に向けて情報を集め、整理分析し、まとめ、最後に、それを人にわかってもらえるよう発表する過程を経て、生徒の学びを深めていくことを目的としております。

 また、この学びは、一つの課題に対して長い時間向き合い、先ほど申し上げた過程を何度も繰り返す学習となっております。

 この学習では、教員のみならず、コンソーシアムや市町村の協力を得ながら、地域と学校とが一体となって、子どもたちを育む体制の中で進めており、地域住民や地元企業など、多くの方の力をお借りして取り組んでおります。

 

 

(議員質問)

 「高校魅力化コンソーシアム」をより一層強固なものとし、高校生が地元地域をよく知り、地域課題に触れ、その解決について学ぶ質の高い「探究学習」が行えるような学習環境を整えていくこと、また授業以外でも地域活動に県内高校生が積極的に参加していくように意識醸成を図り島根に根ざした取組としてほしいと強く願うが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 コンソーシアムの仕組みを構築する前は、「探究学習」に必要な地域とのネットワークづくりや、地域資源を活用した教育教材の作成は、個々の教職員の努力に頼っておりました。

 そのため、地域とのつながりを持った教職員が、転勤などでその高校を離れた場合には、新しく担当となった教員が、再度、地域と高校との関係性を作り直さなければならない状況となり、その間、「探究学習」が一旦停滞するといった懸念がございました。

 現在進めておりますコンソーシアムの制度が成熟していけば、教職員個々の努力への依存が薄まり、担当の教員が去った後でも、組織として、地域と高校との関係性が維持できることから、「探究学習」の質が担保でき、さらに向上していくことができると考えております。

 加えて、このコンソーシアムは、地域と高校とが一体となって子どもたちを育んでいくといった理念から、地域の方々にも、教育に主体的に関わっていこうとする意識が高まり、「探究学習」へ協力いただける教育資源もさらに拡大していくと期待しております。

 こうした取組を進めることで、生徒の地域に対する関心が高まり、授業以外でも、地域との関わり合いを深めたいと思い、地域での活動を積極的に行う者も増えていくことにつながると思っております。

 

 

(議員質問)

 例えば高校の「探究学習」で、「小さな拠点づくり」の住民の話し合い等に高校生に参加してもらい、若い人の意見を聴くような環境をつくってはと考えるが、教育長・地域振興部長それぞれに所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 地域運営の担い手不足が深刻化し、地域コミュニティの維持や、買い物、介護など、日常生活に必要な機能の確保が困難となっている中山間地域・離島の課題をテーマに取り上げて、探究学習に取り組む生徒もおります。

 こうした生徒は、フィールドワークの一環として、地域に足を運び、地域住民の声を聴きながら自身の考えをまとめる学習手法をとっております。

 議員ご提案の、生徒が地域住民の話し合いの場に参加するということは、課題を解決しようとする地域住民の真剣な声を聞く貴重な場となるため、探究学習の場として参加できるのであれば、子どもたちの学びも深まると考えます。

 

 

(議員質問)

 「しまね留学」の受入れ人数についてどのような考えでKPIの目標を令和6年度まで一律200人としているのか伺う。また、県立高校の存続も含め「しまね留学」について今後どのような方向で進めていく考えか伺う。

 

(教育長答弁)

 県立高校の設置につきましては、まずは県内の子どもたちに適切な教育環境を提供することが第一であると思っております。

 そして、子ども同士が切磋琢磨し、多様な学校行事が実施できる学校規模であることが望ましいと考えております。

 近年の人口減少、少子化、過疎化などにより、県内生徒だけを対象としていては、適切な教育環境の維持どころか、学校の存続も危惧される状況も生じていました。

 そこで、県外生徒を一定程度受け入れることで学校を維持し、子どもたちの教育環境を守っていく必要もあり、「しまね留学」に取り組んでおります。

 従って、どの程度県外生徒を受け入れるのかといったことは、各地域における県内生徒とのバランスを考慮する必要がございます。各高校の県内生徒の入学がこれくらい見込めるので、入学定員をこのくらいにして、県外の生徒の規模がこの程度になるという、いわば「引き算」で考えることとなります。

 また、寄宿舎での指導管理体制では、県外生徒の保護者は全国各地に住んでいて、日常生活や緊急時への対応ができないため、教職員が親代わりとなって、子どもの生活面の面倒を見たり、病気のときは、親身になって看病や通院の対応をするなどしており、教職員に大きな負担がかかっていることも考慮する必要がございます。なお、現在のコロナ禍の状況においては、帰省など移動に伴う感染拡大防止のための対応にも追われており、教職員には、更なる負担も生じてきております。

 県教育委員会としては、県外の子どもたちに、この島根の教育を受けさせたいということを第一義的に考えて、しまね留学に取り組んでいる訳ではないということであります。

 ただ、誤解のないよう申し上げておきますが、学校では、県外から来てくれた生徒も、県内生徒と同様に、一人ひとりを大切に育んでおりますし、県内外の生徒の間でも、互いが多様な価値観と出会い、切磋琢磨できる教育環境ができております。また、県外から生徒が来てくれることで、学校の規模も一定程度維持され、有意義な学校行事を実施できております。

 私は、15歳という年齢において、島根に行くという判断をして、それを実践してくれる子どもたちに、敬意を表したいと思いますし、また、感謝の気持ちでいっぱいでございます。

 卒業後に島根に残る、故郷に帰る、一旦島根を離れても戻ってくると、様々な進路を歩んでいる、あるいは、これから歩んでいくわけでありますが、いつまでも共に学んだ友として、県内生徒との絆を大切にしていってほしいと思っております。

 さて、200人というKPIの数値につきましては、設定した当時、現実に195人を受け入れていたことから持ってきた数値でございまして、目標設定期間の5年間で、大きく県内生徒が減少しないことや、現実にその人数を受け入れていることから、この規模を維持することが、当面、適当であると判断したことによるものであります。

 

 

(議員質問)

 現在、各高校で主幹教諭はどのような仕事をしているのか、また高大連携推進員についても具体的な活動と成果を伺う。

 

(教育長答弁)

 主幹教諭は、学力向上のための授業改善、生徒の実情に合わせた教育課程の構築、大学を理解するために県内大学を身近に意識した高大連携を含めた進路指導体制の強化、地域と協働した探究学習の授業設計など、各高校においての学力底上げを基盤とした生徒一人ひとりの夢の実現を図る役割を担っております。

 今年度は、来年度から教育課程・学習評価が新しくなることから、生徒一人ひとりが学んだ知識・技能を活用し、他者と協働して、自分の考えをさらに質の高いものにしていくという授業となっているのか、各教科の学習計画が、学んだことが社会で生かされるという教科横断的な視点で作成されているのか、学習評価が、生徒の学習成果を的確に捉え、さらに教員の指導の改善につながるものになっているのかなどということについて、学校全体で点検して対応していくために、校内研修を開催するなどして、改革に取り組んでおります。

 次に、高大連携推進員については、学校での学びはどういったものなのか、大学生となったらどういう生活を送るのか、大学の入試が近年どの様に変わってきているのかなど、生徒が大学の理解を深めるために配置しております。

 具体的な活動としましては、主幹教諭と連携し、探究学習の授業設計や、探究学習の学びの成果と進路との連携が図れるよう、研究を開始いたしました。

 また、授業に県内大学の教授等を招き、教科学力の向上や「探究学習」のアドバイザーをお願いするなど、大学の知見を取り入れる授業を推進するため、大学との連携強化にも取り組んでおります。

 加えて、大学生としての学びや、生き方、在り方を理解するため、大学が求める生徒像、いわゆる、アドミッション・ポリシーの読み解きや、現役大学生との交流にも力を入れております。

 主幹教諭や高大連携推進員の配置は始まったばかりで、現在、その仕組みづくりを試行錯誤して取り組んでいる最中でございますので、成果が出るのは、もう少し時間がかかるものと思っております。

 なお、以前と比べて、県内大学を身近な大学として捉える高校生が増えてきているということは聞いております。

 

 

(議員質問)

 島根創生、また人づくりプロジェクトの観点からも、特に県内大学を受験する全ての県内高校生に合格を勝ち取らせていくことを目標に、県教委と高校は積極的に対策を行ってほしいと考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 議員ご指摘のとおり、県内大学を希望し、受験したが合格できず、結果的に、県外の大学等へ進学してしまう生徒が相当数おります。県教育委員会としましては、子どもたちの夢を叶えるため、第一希望の大学に合格できるよう支援することが大切であると考えております。

 これを具体的に進める取組が、主幹教諭や高大連携推進員のもとで始まっております。

 受験対策の取組としては、高大連携推進員を配置した学校では、多くの大学で令和3年度から取り入れられている総合型選抜入試や学校推薦型選抜入試への対応を始めております。

 この総合型選抜入試とは、大学が求める学生像に合致する人物を選ぶにあたり、ペーパーテストのみではなく、大学で学ぶ意欲や目的意識を、論文やプレゼンテーションをもとに、総合的に評価し判定する入試方法であります。

 また、学校推薦型選抜入試とは、大学の求める学習成績や部活動実績などの水準、人物像を高等学校長の推薦や面接などをもとに評価し、判定する入試方法であります。

 こうした入試への対策として、具体的には、生徒になじみが薄かった入試情報の読み解き方や、総合選抜等に重要な志望理由書のまとめ方、志望理由書につながる学問探究などを取り入れた基礎講座「進路探究ゼミ」を試験的に開催いたしました。

 参加した生徒からは、総合型・学校推薦型選抜に必要なことが理解でき、入試へのイメージが湧いた、志望理由を自らの言葉で言語化できたなど講座が有益だったと評価を得ております。

 来年度は、配置校だけでなく、インターネットを活用し、配置校以外の高校でも活用できるよう検討を進めております。

 このように、主幹教諭や高大連携推進員が、先ほどのご質問にお答えしたような役割をきちんと果たすことにより、各校の生徒の実態に応じた進路の実現が叶うよう、学力育成に取り組んでまいります。

 

 

(議員質問)

 各高校は、例えば平均偏差値等学力に係る一定の目標値の設定を行い、それを県教委は情報共有をして各高校と一緒になって学力向上に取り組んでいく必要があると考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 私は、本来、高校での教育に期待されているものは、生徒一人ひとりが自ら定めた自分の夢や目標を実現できるよう支援することであると思っております。

 生徒が持つ夢や目標は様々であります。一般入試で大学進学を目指す者もおれば、先ほど述べた総合型選抜入試で合格を目指す者、スポーツや芸術の世界で進学を目指す者もおります。就職のための資格取得を目指す者、あるいは、在学中から地域活動への参加を目指す者など、多様であります。

 こうした多様な夢や目標がある中で、それらの全てを一つにまとめて数値目標とすることは、難しゅうございますし、例えば、一般入試を目指す生徒のみの偏差値を切り取って、学校の数値目標として設定することは、教育上好ましくはないと考えます。

 仮にどんな数値目標を設定したとしても、教職員や学校は、全ての生徒一人ひとりと真剣に向き合い、その将来について考えておりますし、生徒自身、学校が定めた数値目標に届かなくても、あるいは、そもそも目標の外側におかれていたとしても、自分の夢や目標に向かって一生懸命に努力をいたします。

 従って、数値目標の設定よりも、結果が出るまでの過程を重視すべきと考えております。また、その結果については真摯に向き合うということが、学校教育上は大切であると考えております。

 県教育委員会としましては、生徒の夢や目標が叶うよう、今後とも、全力で取り組んでいく考えでございます。

 

 

(議員質問)

 来年度、小中学生に対して算数・数学や科学に興味関心を持つよう取組を行う市町村に対してのみ支援する予算が組まれているが、各市町村に任せるのではなく、県内全ての小中学校で取り組むよう支援すべきと考えるが、所見を伺う。

 

(教育長答弁)

 私は、子どもたちの選択肢を拡げ、子どもたち一人ひとりが選んだ夢の実現を支援していくためには、小中学校から系統性・連続性のある学力育成の取組が非常に重要であると考えております。

 この点につきましては、県教育委員会としても、これまで授業改善プロジェクトの研究推進校など、モデル校を指定した取組を進めてまいりました。指定校においては、児童生徒の意欲向上などの成果が出ておりますが、その成果を広げるためには、さらに工夫した取組が必要であると考えたところでございます。

 小中学校の学力育成の主体は、市町村教育委員会でありますが、議員ご指摘の「しまねの学力育成プロジェクト事業」は、そのための経常的な財政支援ではございません。来年度から3年間の「実証事業」と位置付けており、この事業の成果を取り入れた事業は、特別な予算や教員の加配がないとできないということでは意味がないと考えております。通常の、普段の授業を変えたいと思っております。

 この「実証事業」は、具体的には市町村教育委員会が「学力育成協議会」を設置したり、大学教授などの外部の力を借りて、子どもたちが本物に触れ、学ぶ意欲を高める取組を行うことなどにより、理数教育を含めた学力の育成が進むのかどうなのかを実証してもらうもので、手上げ方式ではありますが、全市町村の3分の1程度の6市町村を対象として予算案に計上しております。

 県教育委員会は、それぞれの取組に深く関わるとともに、6市町村の研究校における学力や学習状況を分析する経年での比較調査の実施や、外部有識者を入れたプロジェクトチームを組織し、県全体の学力育成策を検討してまいります。今後、この取組で得た成果を各市町村に広め、全県の学力育成に生かしていきたいと考えております。

 


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