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職員の給与等に関する報告

 

まえがき報告及び勧告に当たって

 

まえがき全文:PDF版97.4KB

 

 人事委員会の勧告制度は、公務員の労働基本権制約に対する代償措置として、職員の勤務条件を社会一般の情勢に応じた適正なものとする機能を有しており、労使交渉によって給与を決定できない職員が、県行政を公正かつ効率的に進めるという使命感を持ち、安心して職務に取り組むための基盤であるとともに、職員の勤務条件について県民の理解を得る上で重要な役割を担っている。

 

 また、地方公務員の給与については、地方公務員法で「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」という均衡の原則に基づいて決定することとされている。

 従来は、この均衡の原則については、国家公務員の給与に準ずることで実現されると解されてきたが、昨今は、地域の民間企業従業員の給与をより重視することが求められている。

 

 本委員会では、こうした要請に応えるため、民間企業従業員の給与をより広く把握することとし、一昨年の勧告から、県職員と県内民間企業従業員の給与の比較において比較対象となる企業規模を100人以上から50人以上に拡大するなどの見直しを行ったところであり、職員の士気の高揚や有能な人材確保の観点から一定の給与水準を確保しつつ、地域の民間給与の実態をより適正に反映していく必要があると考える。

 

 現在、本県においては、危機的な財政状況の下、定員削減をはじめとする行政の効率化・スリム化、事務事業の見直しなど更なる行財政改革への取り組みが進められている。

 

 このような状況において、本県職員は、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう、今後一層の業務の効率化や職務能力の向上に努めるとともに、複雑・多様化する業務に対し、強い使命感を持って立ち向かっていくことが求められている。

 職員には新しい時代の地方自治を支える全体の奉仕者として、県民の期待と要請に応えるよう職務に精励することを切に要望するものである。

 

職員の給与等に関する報告

 

報告全文:PDF版436.3KB

 

 本委員会は、地方公務員法の規定に基づき、平成20年4月1日現在の島根県職員12,815人に係る給与並びに県内120の民間事業所の従業員4,769人の給与(以下「民間給与」という。)の実態を把握するとともに、職員の給与等を決定する諸条件について調査検討を行ってきたが、その結果の概要は次のとおりである。

 なお、職員の給与については、職員の給与の特例に関する条例(平成15年島根県条例第15号。以下「特例条例」という。)により減額して支給されている(注)ことから、このような状況も踏まえて報告を行うものである。

 

(注)本県においては、県財政の健全化へ向けた取組として特例条例が制定され、平成15年4月以降、職員の給料、諸手当が減額して支給されている。当該条例は数次の改正(減額率の改定、減額期間の延長等)を経て、現在の減額期間の終期は平成23年度末とされている。

 

○減額率(給料及び給料月額を算出基礎とする諸手当(退職手当除く))

  • 管理職:10%・8%(管理職手当は25%・20%)
  • その他:6%(若年層の諸手当連動は3%)

 

職員給与実態調査及び民間給与実態調査の調査人員

 

1職員給与等の状況について

 

 

(1)職員の構成等

 職員には、その従事する職務の種類に応じて、行政職、公安職、医療職、教育職など9種類の給料表が適用されており、その構成比をみると、中学校及び小学校教育職が37.5%と最も高く、以下行政職30.7%、高等学校等教育職16.2%、公安職11.4%等の順となっている。

 

 また、職員の平均年齢は43.8歳、平均経験年数は21.7年となっており、このうち行政職の職員についてみると、平均年齢は44.2歳(昨年43.9歳)、平均経験年数は22.7年(同22.3年)となっている。(参考資料第1表:PDF版65.7KB

 

給料表別職員数等

職員構成比グラフ

 

 年齢階層別の職員数を10年前と比較してみると、近年の採用者数の抑制を受けて職員数が減少する中、平均年齢は全職員で3.6歳、行政職では4.6歳上昇している。(参考資料第4表:PDF版64.5KB

 

年齢階層別職員数グラフ

 

(2)職員の給与

 平成20年4月分の職員の平均給与月額は、特例条例による減額措置前(以下「減額措置前」という。)では406,632円であり、特例条例による減額措置後(以下「減額措置後」という。)では381,357円となっている。

 また、行政職の職員の平均給与月額(以下「職員給与」という。)は、減額措置前では384,437円で、昨年に比べ1,169円減少(△0.3%)しており、減額措置後では359,959円で2,003円の減少(△0.6%)となっている。

 昨年は若年層の給料などの増額改定が行われ、また、平均年齢も昨年に比べ高くなっているにも関わらず、平均給与月額が減少しているのは、平成18年4月の給料表の切替に伴う経過措置により支給されている差額(注)(以下「切替に伴う差額」という。)が減少していることによる。

参考資料第7表:PDF版67.7KB

 

(注)国においては、平成18年4月から、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金水準が最も低い地域に合わせ、平均4.8%の引下げ改定を行い、経過措置を設けて段階的に実施するなどの改正が行われた。

 本県においても、国に準じて給料表の引下げ改定が行われている。

 

○経過措置の内容

 改定後の給料表の適用の日(平成18年4月1日)における給料月額が、その前日に受けていた給料月額(切替前給料月額)に達しない職員に対しては、その者の受ける給料月額が、昇給等により切替前給料月額に達するまでの間、その差額を支給する。

 

職員の平均給与月額の状況

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

2民間給与等の状況について

 

 本年5月から6月にかけて、職員の給与等と比較検討するため、人事院と共同で、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の県内241の民間事業所のうちから層化無作為抽出法(注)により抽出した124事業所を対象に「平成20年職種別民間給与実態調査」を実施し、うち120事業所の調査を完了した。(参考資料第19表:PDF版83.2KB

 また、平成18年から調査対象企業の範囲を拡大しているが、調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、引き続き96.8%と極めて高いものとなっている。

 なお、調査では、公務の行政職と類似すると認められる事務・技術関係職種3,760人及び研究員、医師等職種1,009人について、本年4月分として支払われた給与月額等を調査するとともに、各民間企業における給与改定の状況や、雇用調整の実施状況等についても調査を行った。

 

(注)層化無作為抽出法とは、特定の条件でグループ(層)を作成し、それぞれの層から無作為に対象を抽出する方法。民間給与実態調査においては、「産業」「企業規模」「組織」を基準として層を作成し、各層から一定数の事業所を無作為に抽出し、調査対象としている。

 

(1)本年の給与改定等の状況

 一般の従業員(係員)の給与改定状況をみると、ベースアップの慣行のない事業所の割合が44.2%(昨年38.4%)となっている。ベースアップを実施した事業所の割合は38.0%(同34.1%)と昨年に比べて増加し、ベースアップを中止した事業所は16.9%(同27.5%)と減少している。一方、ベースダウンを実施した事業所について、昨年は0%であったが、本年は0.9%となった。

 また、一般の従業員について、定期に行われる昇給を実施した事業所の割合は79.7%(昨年73.4%)となっている。昇給額が昨年に比べて増額となっている事業所の割合は45.4%(同35.1%)と昨年に比べ増加する一方、減額となっている事業所の割合も16.1%(同6.7%)と増加している。

 

民間における給与改定の状況

 

民間における定期昇給の実施状況

 

(2)雇用調整の実施状況

 平成20年1月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は23.1%と昨年(18.1%)に比べて増加している。

 

民間における雇用調整の実施状況

 

3物価及び生計費について

 

 本年4月の消費者物価指数(総務省)は、昨年4月に比べ、全国で0.8%、松江市で1.3%それぞれ増加している。

 また、勤労者世帯における消費支出(総務省「家計調査」)等を基礎として算定した本年4月の松江市における2人世帯、3人世帯及び4人世帯の標準生計費は、それぞれ186,880円、207,630円及び228,350円となっている。(参考資料第29表:PDF版84.1KB第30表:PDF版77.4KB

 

4都道府県職員の給与について

 

 先に総務省が公表した平成19年4月1日現在の都道府県ラスパイレス指数(行政職)の平均は、99.6であった。

 本県のラスパイレス指数は、特例条例による給与の減額措置の影響もあり92.6となっており、平成17年度以降は全国最低水準となっている。

 

都道府県のラスパイレス指数の分布状況

 

5職員給与と民間給与との比較

 

 

(1)月例給

 職員給与と民間給与との比較は、職員と民間企業従業員の同種・同等の者同士を比較することを基本として、公務においては行政職給料表適用者、民間においては公務の行政職と類似すると認められる事務・技術関係職種の者について行っている。

 また、職員と民間企業従業員では、それぞれ年齢、学歴などの人員構成が異なっており、このように異なる集団間での給与の比較を行う場合には、それぞれの集団における単純な給与の平均値を比較することは適当ではないため、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴を同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行っている。(参考資料第20表:PDF版83.2KB

 なお、平成18年の勧告以降、民間企業従業員の給与をより広く把握し、職員の給与に反映させるため、比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上に拡大している。

 

 本年4月分の給与額について、職員給与と民間給与を比較すると、民間給与375,492円に対して職員給与は減額措置前では385,191円であり、9,699円(2.52%)上回っているが、減額措置後では360,663円であり、逆に14,829円(4.11%)下回っている。(参考資料第16表:PDF版67.3KB

 

職員給与と民間給与との較差

 

(2)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の4.01月分に相当し、おおむね昨年(4.02月分)並みであった。これは、職員の期末手当・勤勉手当の年間平均支給月数(4.25月)を0.24月分下回っている。(参考資料第27表:PDF版64.5KB

 なお、特例条例により、期末手当・勤勉手当も連動して減額されており、期末手当・勤勉手当の支給月数から特例条例による減額率分に相当する月数を減じた月数(4.00月分)は、民間の支給割合とおおむね均衡している。

 

職員の期末・勤勉手当と民間の特別給との差

 

6人事院勧告の概要

 人事院は、本年8月11日に、国会及び内閣に対して一般職の国家公務員の給与等について報告し、併せて給与等の改定について勧告を行ったが、その概要は次のとおりである。(参考資料6:PDF版3,630KB

 

【職員の給与等に関する報告・勧告】
(1)民間給与との較差に基づく給与改定

ア)公務員給与と民間給与の実態

(ア)公務員給与の状況

 民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(162,960人、平均年齢41.1歳)の本年4月における平均給与月額は387,506円となっており、税務署職員、刑務官等を含めた職員全体(282,546人、平均年齢41.6歳では403,984円となっている。

(イ)民間給与の状況

 一般の従業員について、定期昇給の額が昨年に比べて増額となっている事業所の割合が昨年に比べて減少しているのに対し、減額となっている事業所の割合は増加している。

 平成20年1月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は、昨年に比べて減少している。

 

イ)民間給与との比較

(ア)月例給

 公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、4月分の給与額の比較(ラスパイレス方式)を行ったところ、公務員給与が民間給与を136円(0.04%)下回った。

国の公務員給与と全国の民間給与との較差
民間給与(A) 公務員給与(B)

較差A-B

((A-B)/B×100)

387,642円 387,506円 136円(0.04%)

(注)民間、公務員ともに、本年度の新規学卒の採用者は含まれていない。

 

(イ)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の4.50月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.50月)とおおむね均衡している。

 

ウ)本年の給与改定

 行政職俸給表(一)適用職員について、民間給与との較差が極めて小さいこと等から、月例給の改定を行わないことが適切であると判断した。特別給についても、民間の年間平均支給割合が公務の年間支給月数とおおむね均衡していたことから、期末手当及び勤勉手当の支給月数の改定を行わないこととした。

 また、行政職俸給表(一)以外の俸給表適用職員についても、行政職俸給表(一)適用職員との均衡を考慮し、水準改定を行わないこととしたが、医師の給与について、初任給調整手当の改定を行うこととした。

(ア)初任給調整手当

 国の医療施設における勤務医の確保が重要な課題となる中で、これらに勤務する医師の年間給与は、民間病院や独立行政法人国立病院機構に勤務する医師の給与を大きく下回っている。そこで、若手から中堅の医師の人材確保を図るため、初任給調整手当を改定することとし、医療職俸給表(一)の適用を受ける医師及び歯科医師に対する最高支給限度額を104,000円引き上げ、410,900円とするとともに、国立高度専門医療センター勤務者については、現在適用されている「職員の区分」を1段階引き上げることとする(平成21年4月1日実施)。

 

(2)給与構造改革

 給与構造改革は、平成18年度から平成22年度までの5年間で、地域の民間賃金をより適切に反映させるための

地域間給与配分の見直し、年功的な給与上昇の抑制、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与へ

の反映の推進などを逐次実現しようとするものである。このため、平均4.8%の俸給表の水準引下げを段階的に実

施する一方で、この俸給表水準の引下げ分を原資として、改革を進めるための措置を講ずることとしている。

ア)平成21年度において実施する事項

(ア)本府省業務調整手当の新設

 本府省の業務の特殊性・困難性を踏まえ、本府省の人材確保が困難になっている事情を併せ考慮し、本府省課長補佐に対する俸給の特別調整額を廃止した上で、本府省の課長ほか、係長及び係員を対象とした本府省業務調整手当を新設する(平成21年4月1日実施)。

(イ)地域手当の支給割合の改定

 地域手当は、平成22年度までの間に段階的に改定することとしており、平成21年4月1日から平成22年3月31日までの間の暫定的な支給割合を設定(平成20年度の支給割合を級地により0から3%引上げ)する。

 

(3)職員の勤務時間

ア)民間企業の所定労働時間の状況

(ア)所定労働時間の調査

 勤務時間は、給与と同様に基本的な勤務条件であり、情勢適応の原則に基づき、民間と均衡させることを基本として定めるべきものである。

 その際、勤務時間が業務運営の基礎であることを考えると、これを頻繁に改定することは適当ではなく、民間企業の所定労働時間を一定期間にわたり調査し、そのすう勢を見極めることが必要である。

(イ)所定労働時間の調査結果

 本年の調査結果によれば、民間企業の所定労働時間は、1日当たり7時間45分、1週間当たり38時間49分となっている。また、平成16年以降の調査結果は安定的に推移してきており、その平均は、1日当たり、7時間44分、1週間当たり38時間48分となっている。

 

1日当たりの所定労働時間 1週間当たりの所定労働時間
民間企業の所定労働時間の推移
平成16年

時間:分

7:44

時間:分

38:45

平成17年 7:43 38:43
平成18年 7:45 38:53
平成19年 7:44 38:51
平成29年 7:45 38:49
5年平均 7:44 38:48

(注)平成16年、18年から20年は、「職種別民間給与実態調査」結果、平成17年は「民間企業の勤務条件制度等調査」結果

 

イ)勤務時間の改定

(ア)改定の基本方針

 民間企業の所定労働時間は、職員の勤務時間と比較して1日当たり15分程度、1週間当たり1時間15分程度短くなっており、その水準で定着している。これとの均衡を図ることとした場合、公務能率の一層の向上に努めることにより、行政サービスや行政コストに影響を与えることなく、勤務時間の短縮を行うことが可能であると考えられる。

 また、勤務時間の短縮は、仕事と生活の調和にも寄与するものである。

(イ)改定すべき事項

 職員の勤務時間を1週間当たり38時間45分とし、各省各庁の長が、1日につき7時間45分を月曜日から金曜日までの5日間において割り振るものとする。これに伴い、再任用短時間勤務職員の勤務時間、育児短時間勤務職員の勤務形態及び並立任用並びに任期付短時間勤務職員の勤務時間等についても所要の措置を講ずる。

(ウ)実施時期

 平成21年4月1日から実施する。

 

【公務員制度改革及び公務員人事管理に関する報告】
(1)公務員制度改革に関する基本認識

 国民本位の改革を進めるに当たり、「公務及び公務員に対する国民の信頼回復」「時代の変化に適合する有能な人事管理システムの再構築」「職業公務員制度の基本を生かした改革の推進」「使命感を持ち全力で職務に取り組むよう意識改革の徹底」の実現が肝要である。

 

(2)公務員人事管理に関する報告

ア)採用試験の基本的な見直し、幹部要員の確保・育成、人事交流の推進等による人材の確保・育成

イ)新たな人事評価制度を活用した、能力及び実績に基づく人事管理の推進

ウ)超過勤務の縮減や育児休業等の制度の周知、心の健康づくりの推進を通した仕事と生活の調和に向けた勤務環境の整備

エ)公的年金の支給開始年齢の引上げに伴う高齢期の雇用問題について、65歳までの段階的定年延長を中心に引き続き検討

 

7むすび

 

 職員の給与決定に関する諸条件については、以上述べたとおりである。

 これらの調査結果等を基に、国及び他の都道府県の動向並びに特例条例による減額措置が行われていること等を踏まえ、様々な角度から慎重に検討を重ねた結果、職員の給与等について所要の措置を講ずる必要があると判断し、次のとおり報告する。

 

(1)月例給について

 本県の民間事業所の状況を見ると、ベースアップを実施した事業所が増加する一方で、定期昇給が昨年に比べ減額となっている事業所や、雇用調整を行っている事業所の割合が増加するなど、各企業、事業所により給与等の状況に差が見られた。

 また、本年4月分の給与について、職員給与と民間給与とを比較したところ、昨年に引き続き減額措置前では職員給与が民間給与を上回り、減額措置後では民間給与を下回ることとなった。

 一方、国においては、医師を除き、月例給については水準改定を行わないこととされたところである。

 このような状況を踏まえ、職員の月例給については以下のとおりとすることが適当であると判断した。

 

ア)給料表

 給料表については、切替に伴う差額が年を追って減少することにより、給料水準が段階的に引き下げられている(注)こと等を勘案し、本年については、人事院勧告に準じて改定を行わないこととする。

 

(注)職員給与のうち給料については、平成18年は359,971円(うち切替に伴う差額16,214円)であったが、平成20年は355,432円(うち切替に伴う差額9,766円)と、切替に伴う差額が年を追って減少していることにより、平均年齢が上昇(平成18年:43.4歳→平成20年:44.2歳)しているにも関わらず減少している。※額はいずれも減額措置前のものである。

 なお、高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表についても、行政職給料表との均衡を考慮し、水準の改定を行わないこととする(注)が、このうち、中学校及び小学校教育職給料表については、後述のとおり新たな職の設置に伴う改定を行うこととする。

 

(注)国においては、平成16年4月の国立大学の法人化に伴い、本県の高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表に相当する俸給表は廃止されているため、当該俸給表にかかる勧告は行われていない。

 

イ)初任給調整手当

 医師不足が深刻化する中、県の機関に勤務する医師の人材確保の重要性に鑑み、人事院勧告に準じて、初任給調整手当の最高支給限度額を引き上げることとする。

 

(2)期末手当・勤勉手当について

 本委員会は、昨年の勧告において、職員の士気の高揚や有能な人材確保の観点から、国や他の都道府県の職員との均衡を考慮し、一定の水準を確保しつつ、地域の民間事業所における支給実態をより反映したものとする必要があると判断し、期末手当・勤勉手当について0.2月分の引下げを勧告したところである。

 本年については、前記のとおり、国においては期末手当・勤勉手当の支給月数の改定を行わないこととされ、また、県内の民間事業所の特別給の支給割合についてもおおむね昨年並みであったこと等を勘案し、改定を行わないこととする。

 

(3)新たに設置される主幹教諭の処遇について

 昨年6月に公布された「学校教育法等の一部を改正する法律」により、学校の組織運営体制や指導体制の充実を図るため、小・中学校等に新たな職として副校長、主幹教諭、指導教諭(注)を置くことができることとされた(平成20年4月1日施行)。

(注)各職の職務内容

  • 副校長:校長を助け、命を受けて校務をつかさどる
  • 主幹教諭:校長等を助け、命を受けて校務の一部を整理するとともに、児童生徒の教育等をつかさどる
  • 指導教諭:児童生徒の教育をつかさどるとともに、他の教諭等に対して、教育指導の改善・充実のために必要な指導・助言を行う

 

 本委員会は、昨年の勧告時の報告において、新たな職の設置に関する任命権者における検討結果を踏まえ、その処遇等にかかる検討を行う旨言及したが、今般、教育委員会においては、平成21年度より小・中学校に主幹教諭を設置する方針を決定されたところである。

 この方針決定を受け、本委員会として主幹教諭の処遇を検討した結果、以下のとおりとすることが適当であると判断した。

 

ア)主幹教諭の給料表

 職員の職務は、その複雑、困難及び責任の度合に基づき、給料表に定める職務の級に分類することとされており、現在の4級制の中学校及び小学校教育職給料表のうち、教諭は2級、教頭は3級に分類されている。

 新たに設置される小・中学校の主幹教諭の職務については、その職責等が現在の教諭、教頭のいずれとも異なることから、現行の2級と3級の間に新たな級(特2級)を設けることとする。

 なお、昨年3月の中央教育審議会(文部科学大臣の諮問機関)の答申「今後の教員給与の在り方について」においては、「主幹(仮称)又は指導教諭(仮称)が新たな職として位置付けられ、配置される場合には…都道府県において、必要に応じて…新たな級を創設することが望ましい」とされており、既に主幹教諭を設置された他県においても、教諭と教頭の間に新たに級を設けて処遇されているところである。

 

イ)主幹教諭の諸手当等

 主幹教諭については、教職調整額を支給することとし、管理職手当は支給しない。また、期末手当・勤勉手当における役職段階別加算の割合については、100分の10とする。

 

(注)教育職員には時間外勤務手当は支給されず、校長及び教頭には管理職手当(職務の級及び職に応じた定額)が、職務の級が1級又は2級の教諭等には教職調整額(給料月額の4%)が支給されている。

 また、期末手当及び勤勉手当の基礎となる額については、職の職制上の段階、職務の級等に応じ、校長及び教頭については給料の月額の10から20%が、教諭については給料の月額の0から10%が、それぞれ加算(役職段階別加算)されている。

 

(4)その他の手当等について

ア)地域手当

 民間賃金の高い地域に勤務する職員等を支給対象とする地域手当については、平成21年4月1日から平成22年3月31日までの間の暫定的な支給割合について、人事院勧告に準じて、次表のとおりとする。

 

平成21年度の地域手当の級地別支給割合

 

イ)通勤手当

 自動車等の交通用具使用者に係る通勤手当については、昨年来のガソリン価格の高騰を契機として、その改定の必要性について慎重に検討してきたところである。

 その結果、本県と他の都道府県の手当額を比較した場合に改定が必要と認められるほどの差がないことや、国においても改定の勧告がなされなかったこと、更には今後のガソリン価格の動向が不透明であること等から、本年については改定を行わないこととする。

 

ウ)教育職員の給与等

 前記の中央教育審議会答申「今後の教員給与の在り方について」においては、「それぞれの職務に応じてメリハリを付けた教員給与にしていくことが必要」とした上で、教職調整額や教員に特有の手当等について見直しの必要性が指摘されており、本年度の文部科学省予算において、義務教育等教員特別手当の縮減や、部活動手当等の拡充が措置されたところである。

 文部科学省予算における教員給与の見直しは、来年度以降も引き続き行われることとされており、本県においても国の動向を注視するとともに、職務や実績に見合った教育職員の処遇により教育の質の向上を図る観点から、適時適切に改定を行っていく必要がある。

 また、産業教育手当及び定時制通信教育手当については、平成17年勧告時の報告以降、社会情勢の変化や学校教育の現状に適切に対応したものとなるよう、他の都道府県の動向を踏まえた検討が必要である旨言及してきたところであり、この検討結果を踏まえた改定を行う必要がある。

 

(5)職員の勤務時間について

 勤務時間は、給与と同様、基本的な勤務条件として業務運営の基礎となるものであり、人事院においては、前記のとおり1日当たり7時間45分、1週間当たり38時間45分に改定する旨の勧告を行ったところである。

 本県の民間企業における所定労働時間については「職種別民間給与実態調査」により平成18年から本年まで継続して調査を行ったところであるが、本年の調査結果は、1日当たり7時間47分、1週間当たり38時間53分であり、国の調査とおおむね同様の結果となっている。

 基本的な勤務条件である勤務時間については、国及び他の都道府県との均衡を図ることが基本であり、また、勤務時間短縮に当たっては、県民サービスの維持と行政コストの増加を招かないことが前提となる。これらの状況が整えば、本県においても速やかに実施する必要があると考える。

 

民間企業の所定労働時間の推移

 

 

ア)勤務時間を短縮した場合の影響

(ア)県民サービスの維持

 勤務時間の短縮に当たっては、これまでの県民サービスを維持し、かつ行政コストの増加を招かないことが基本である。業務を遂行する際、常にコスト意識を持って取り組むことは当然であるが、勤務時間の短縮によって時間外勤務や休日勤務の増加を招くことのないよう、公務能率を一層向上させる必要がある。

 そのためには、職員一人ひとりが現在の仕事の進め方や働き方を再度点検し、最大限の能率を発揮するよう努めるとともに、管理監督者は、組織全体を把握する者として、業務の進め方や内容を常に見直し、改善していく必要がある。

(イ)仕事と生活の調和

 近年、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の重要性が指摘されている。昨年12月には「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び行動指針が国において策定されたところであり、その実現に向けた効果的な取組が必要となっている。

 勤務時間の短縮は、家庭生活や地域活動の充実につながり、仕事と生活の調和にも寄与するものと考える。なお、仕事と生活の調和を推進するためには、時間外勤務の縮減も重要な課題であることから、より一層の取組を行う必要がある。

 

イ)実施時期

 国並びに他の都道府県の動向を注視しつつ、各職場における勤務体制等について、県民サービスの維持及び行政コストの増加を招かないという観点から検討を行い、時間短縮に向けての状況が整い次第速やかに実施する。

 

(6)人事管理上の課題について

ア)人材の確保・育成と女性職員の登用等

 近年の複雑かつ高度化する行政ニーズを的確に捉え、良質な行政サービスを提供していくためには、高い資質と使命感を有する幅広い人材の確保が重要である。

 このため、現在の大学・高校の新卒者を中心とした人材確保に加えて、民間企業経験者、国際経験の豊富な者、高度な専門的知識を有する者など幅広く多様な人材を積極的に採用していく必要がある。

 また、職員採用試験における応募者数は、民間企業における採用意欲の高まりや、受験年齢人口の減少、採用者数の抑制等により減少傾向にあり、人材確保上、厳しい状況が続いている。

 採用試験の実施に当たっては、年齢要件等の更なる拡大や、募集方法・広報活動の充実などに努めるとともに、引き続き、有能な人材を確保するための試験制度の見直し・改善に取り組む必要がある。

 一方、地方自治体の主体性の強化が求められる中で、県民の期待と信頼に応えていくためには、個々の職員の意識改革と資質向上が必要不可欠である。

 とりわけ、大幅な人員削減への取組が行われている状況にあって、行政水準の維持・向上を図るためには、職員一人ひとりの能力開発がこれまで以上に重要になっている。

 このため、昨年12月に、本県の人材育成の目的・方策を明確にした「島根県人材育成基本方針」が策定されたところであるが、今後はこの方針に基づく具体的施策を確実に実行していく必要がある。

 また、県政の発展を維持増進していくためには、女性職員の育成が喫緊かつ重要な課題となっており、女性職員の意思形成過程への参加機会の充実や管理職への積極的登用など、その育成・登用に引き続き取り組んでいく必要がある。

 

イ)能力・実績に基づく人事管理

 職員の公務に対する意欲と能力を高め、組織の活性化と公務能率の向上を図るためには、能力・実績に基づく人事管理を推進する必要がある。

 その前提として、職員の能力と実績を的確に評価できる人事評価の実施が求められている。

 国においては、昨年7月の国家公務員法の改正により、能力・実績に基づく人事管理の基礎となる新たな人事評価制度が導入され、この結果を昇任、昇給・勤勉手当などの給与、免職や降任などの分限処分、人材育成などに広く活用していくこととしている。

 本県においても、職員の能力・実績をより的確に評価し、給与等にも反映できる制度づくりが進められているところであるが、その進捗具合や人事管理への活用状況には任命権者間に差異が見られる。

 今後、任命権者においては、国の制度等も参考にしながら、人事管理の基礎として活用し得る人事評価制度を早期に整備する必要がある。

 

ウ)時間外勤務の縮減

 時間外勤務の縮減は、職員の健康の保持・増進及び公務能率の維持・向上の面においても、仕事と生活の調和を図る上でも重要な課題である。

 任命権者においても時間外勤務の縮減は重要な課題と位置づけられており、様々な取組がなされているところであるが、管理監督者においては、時間外勤務の縮減への取組が自らの重要な職責であるとの認識のもと、適正な勤務時間管理や業務の進行管理、事前命令及び事後確認による管理を更に徹底するとともに、職員一人ひとりにおいては公務能率の一層の向上に努める必要がある。

 

エ)両立支援の推進

 仕事と生活の調和を図るため、育児や介護を行う職員に対する適切な支援策を講じていくことは重要な課題である。

 本県では、これまでも育児・介護のための休暇や、育児休業制度の整備が行われてきたところであり、本年4月からは新たに育児のための短時間勤務制度が導入されたところである。

 今後もこれらの制度を利用しやすい環境づくりを進めるとともに、男性職員の育児休業制度等に対する理解を深めるため、男性職員に対する制度の周知に努める必要がある。(参考資料第32表:PDF版83.7KB

 

オ)メンタルヘルス対策

 職員の心身両面にわたる健康は、職員個人や家族の充実した生活に資するとともに、複雑・高度化する行政課題に迅速かつ的確に対応していくためにも重要な課題であることから、引き続き健康管理の対策を推進する必要がある。

 特に、精神疾患による休職者が増加していることから、メンタルヘルス対策が重要かつ喫緊の課題となっている。

 管理監督者においては、メンタルヘルスケアが職場における管理監督者の重要な役割の一つであることを認識し、日ごろからコミュニケーションの良い職場環境や雰囲気づくりに心がけるとともに、職員の執務状況、健康状態、出勤状況等を常に把握しておくことが重要である。また、職員自らも自分の心の健康状態を把握し、早期に対処する方法を身につけることが必要である。任命権者においては、引き続き職員への相談事業、研修事業を行うとともに利用可能な制度の周知を図るなど、それぞれの立場での継続した取組が求められる。

 そして、これらの取組を効果的に進めるためには、これまで「個人の問題」として位置づけられがちであったメンタルヘルスを「組織の問題」として位置づけ、人事部門、健康管理部門、研修部門がより一層の連携を図り、対策に取り組む必要がある。(参考資料第33表:PDF版83.7KB

 

カ)退職管理〜高齢期の雇用問題〜

 公的年金の支給開始年齢の引上げに伴って、満額年金受給までの空白期間が生じることを受け、公務においても職員が高齢期の生活に不安を覚えることなく職務に専念できる環境を整備する必要がある。

 人事院では、昨年9月に「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」が設置され、本年7月に「中間とりまとめ」がなされ、その中で、65歳までの定年延長を最終的目標とする旨の方向性が示された。また、本年6月に成立した国家公務員制度改革基本法においても「政府は定年を65歳に引き上げることについて検討すること」とされたところである。

 本県においても、今後、在職期間の延長等についての検討が必要となるため、国等の動向を十分注視していく必要がある。

 

(7)勧告実施の要請について

 人事委員会の勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき、公務員の勤務条件を社会一般の情勢に適応させるためのものとして、県民の理解と支持を得て定着し、行政運営の安定に寄与してきている。

 現在、危機的な状況にある県財政の下、個々の職員は、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう、複雑・多様化する業務に対し、強い使命感をもって立ち向かっていくことが求められており、給与をはじめとする職員の勤務条件は、そのような職員の努力や成果に的確に報いるものでなければならない。

 職員の給与の減額措置については、昨年12月に特例条例が改正され、減額期間が平成23年度まで更に4年間延長されたところである。この減額措置は、県財政が極めて厳しい状況下でのやむを得ない措置であるとはいえ、職員の生活や職務に対する士気に与える影響が極めて大きく、可能な限り早期に本来あるべき給与水準が確保されることを期待するものである。

 県議会及び知事におかれては、この報告並びに勧告に深い理解を示され、適切な対応をいただくよう要請する。

 


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