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報告

  

まえがき本年の報告及び勧告に当たって

まえがき全文:PDF版110.8KB

 

 我が国の経済情勢については、本年9月の月例経済報告(内閣府)では、景気はこのところ一部に弱さが見られるものの回復しており、先行きについては、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれるとされている。

 また、雇用情勢についても、完全失業率が低下傾向で推移するなど、厳しさが残るものの着実に改善しているとされている。

 

 本県の経済・雇用情勢に目を向けると、景気の動向については、公共投資が減少しているものの、生産活動は順調な動きが続き、個人消費で持ち直しの兆しがあるなど、総じてみれば緩やかに回復しつつある。

 また、本年8月の有効求人倍率は0.98倍となっており、昨年同月に比べて0.12ポイント改善しているが、全国平均と比較すると下回っている。本年7月末の常用労働者数をみると、226,646人で昨年同月に比べて2,699人増加しており、雇用情勢についても緩やかな改善がみられる。

 県内の民間事業所においては、経済社会システムの変革が進む中で、これまであらゆる部門で経営努力が重ねられてきており、本年において雇用調整を実施した事業所は昨年より減少している。また、給与面では、ベースアップを実施した事業所や定期昇給を増額した事業所は昨年よりも増加している。特別給(ボーナス)については、本県においては全国的な増加の動きには至らず、昨年よりも支給割合が減少している。

 

 地方公務員の給与については、地方公務員法で「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」という均衡の原則に基づいて決定することとされており、従来は、この均衡の原則については、国家公務員の給与に準ずることで実現されると解されてきたが、昨今は、地域の民間企業従業員の給与をより重視して決定することが求められている。

 このような要請を受けて、昨年の勧告から、公務員と民間企業従業員の給与の比較において、比較対象となる企業規模を100人以上から50人以上に拡大するなどの見直しも行ったところであり、本委員会としては、職員の士気の高揚や有能な人材確保の観点から一定の給与水準を確保しつつ、地域の民間給与の実態をより適正に反映していく必要があると考える。

 

 県行政においては、危機的な財政状況の下、定員削減をはじめとする行政の効率化・スリム化、事務事業の見直しなど更なる行財政改革への取り組みが進められている。

 このような状況において、職員の皆さんには、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう、複雑・多様化する業務に対し、強い使命感を持って立ち向かっていくことが求められている。今後一層の業務の効率化や職務能力の向上に努めるとともに、新しい時代の地方自治を支える全体の奉仕者として、県民の期待と要請に応えるよう職務に精励されることを切に要望するものである。

 

職員の給与等に関する報告

報告全文:PDF版375.6KB

 

 本委員会は、地方公務員法の規定に基づき、平成19年4月1日現在の島根県職員13,028人に係る給与並びに県内122の民間事業所の従業者4,287人の給与(以下「民間給与」という。)の実態を把握するとともに、職員の給与等を決定する諸条件について調査検討を行ってきたが、その結果の概要は次のとおりである。

 また、職員の給与については、職員の給与の特例に関する条例(平成15年島根県条例第15号。以下「特例条例」という。)により減額して支給されていることから、このような状況も踏まえて、報告を行うものである。

 

職員給与実態調査及び民間給与実態調査の調査人員

 

 

1職員給与等の状況について

  

(1)職員の構成等

 職員には、その従事する職務の種類に応じて、行政職、公安職、医療職、教育職など9種類の給料表が適用されており、その構成比をみると、中学校及び小学校教育職が36.8%と最も高く、以下行政職31.1%、高等学校等教育職16.4%、公安職11.2%等の順となっている。

 また、職員の平均年齢は43.6歳、平均経験年数は21.5年となっており、このうち行政職の職員についてみると、平均年齢は43.9歳(昨年43.4歳)、平均経験年数は22.3年(同21.9年)となっている。

 

 なお、本年4月に公立大学法人島根県立大学が設立され、この法人が島根県立大学及び島根県立大学短期大学部を運営することとされたことに伴い、従来の大学教育職給料表適用者が当該法人の職員となったことや、同じく本年4月より病院事業に地方公営企業法を全部適用することとされたことに伴い、県立病院に勤務する医療職給料表適用者等が職員の給与に関する条例(昭和26年島根県条例第1号)の適用を受けなくなったこと等から、職員給与実態調査の対象職員数は13,028人と昨年に比べ998人の減(マイナス7.1%)となっている。(参考資料第1表:PDF版66.1KB

 

 

給料表別職員数及び構成比

 

職員の年齢階層別人数及び構成比

 

(2)職員の給与

 平成19年4月分の職員の平均給与月額は、特例条例による減額措置前(以下「減額措置前」という。)では、409,668円であり、特例条例による減額措置後(以下「減額措置後」という。)では、384,981円となっている。

 また、行政職の職員の平均給与月額(以下「職員給与」という。)は、減額措置前では385,606円(対前年比マイナス0.9%)で3,521円減少しており、減額措置後では361,962円(同マイナス0.9%)で3,271円の減少であった。(参考資料第7表:PDF版68.5KB

 

職員の平均給与月額の状況

2民間給与等の状況について

 本年5月から6月にかけて、職員の給与等と比較検討するため、人事院と共同で、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の県内250の民間事業所のうちから層化無作為抽出法により抽出した124事業所を対象に「平成19年職種別民間給与実態調査」を実施し、うち122事業所の調査を完了した。(参考資料第17表:PDF版75.0KB

 また、昨年から調査対象企業の範囲を拡大しているが、調査完了率は、調査の重要性に対する民間事業所の理解を得て、98.4%と極めて高いものとなっている。

 なお、調査では、公務の行政職と類似すると認められる事務・技術関係職種3,477人及び研究員、医師等職種810人について、本年4月分として支払われた給与月額等を調査するとともに、各民間企業における給与改定の状況や、雇用調整の実施状況等についても調査を行った。

 

(1)本年の給与改定等の状況

 新卒事務員・技術者の初任給の平均額は、大学卒で185,920円(昨年182,214円)、高校卒で148,489円(同147,761円)となっており、いずれも昨年に比べて増額となっている。(参考資料第20表:PDF版75.2KB

 一般の従業員の給与改定状況をみると、ベースアップの慣行のない事業所の割合が38.4%(昨年44.6%)となっている。ベースアップを実施した事業所の割合は34.1%(同30.4%)となっており、昨年に比べて増加する一方、ベースアップを中止した事業所も27.5%(同23.4%)と増加している。なお、ベースダウンを実施した事業所はなかった(同1.6%)。

 また、定期昇給を実施した事業所の割合は73.4%(昨年72.3%)となっている。昨年よりも増額した事業所の割合は35.1%であり、減額した事業所の割合(6.7%)を上回っている。

 

民間における給与改定の状況

 

民間における定期昇給の実施状況

 

(2)雇用調整の実施状況

 平成19年1月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は18.1%と昨年(22.8%)に比べて減少している。

 

民間における雇用調整の実施状況

 

3物価及び生計費について

 本年4月の消費者物価指数(総務省)は、全国では100.1(昨年100.1)と昨年と同水準であったが、松江市では99.8(同100.4)と0.6%下落している。

 また、本年4月の勤労者世帯における消費支出(総務省「家計調査」)は、松江市では341,060円となっており、この家計調査等を基礎として算定した本年4月の松江市における2人世帯、3人世帯及び4人世帯の標準生計費は、それぞれ183,970円、204,550円及び225,160円となっている。(参考資料第26表、第27表:PDF版61.4KB

 

4都道府県職員の給与について

 先に総務省で公表された、平成18年4月1日現在の都道府県ラスパイレス指数(行政職)の平均は、99.2であった。

 本県のラスパイレス指数は、特例条例による給与の減額措置の影響もあり92.6となっており、平成17年度以降は全国最低水準となっている。

 

都道府県のラスパイレス指数の分布状況

 

5職員給与と民間給与との比較

 

(1)月例給

 職員給与と民間給与との比較は、職員と民間企業従業員の同種・同等の者同士を比較することを基本として、公務においては行政職給料表、民間においては公務の行政職給料表と類似すると認められる事務・技術関係職種の者について行っている。

 また、比較方法については、単純な給与の平均値によるのではなく、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴を同じくする者同士を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行っている。

 なお、昨年の勧告において、民間企業従業員の給与をより広く把握し、職員の給与に反映させるため、比較対象企業規模を従来の100人以上から50人以上に拡大するなどの見直しを行っている。

 

 本年4月分の給与額について、職員給与と民間給与を比較すると、民間給与378,000円に対して職員給与は減額措置前では386,437円であり、8,437円(2.18%)上回っているが、減額措置後では362,740円であり、逆に15,260円(4.21%)下回っている。(参考資料第14表:PDF版65.8KB第18表:PDF版75.0KB

 

職員給与と民間給与との較差

 

 民間における家族手当の支給状況については、配偶者と子2人に係る支給額が、職員の扶養手当の支給額を上回っている。(参考資料第22表:PDF版72.2KB

 

(2)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の4.02月分に相当していた。これは、昨年(4.11月分)より減少しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間平均支給月数(4.45月)を0.43月分下回っている。(参考資料第24表:PDF版72.2KB

 

職員の期末・勤勉手当と民間の特別給との差

 

6人事院勧告の概要

 人事院は、本年8月8日に、国会及び内閣に対して一般職の国家公務員の給与等について報告し、併せて給与等の改定について勧告を行ったが、その概要は次のとおりである。

 

(1)民間給与との較差に基づく給与改定

ア)公務員給与と民間給与の実態

(ア)公務員給与の状況

 民間給与との比較対象である行政職俸給表(一)適用者(166,568人、平均年齢40.7歳)の本年4月における平均給与月額は383,541円となっており、税務署職員、刑務官等を含めた職員全体(286,617人、平均年齢41.4歳)では401,655円となっている。

(イ)民間給与の状況

 新卒事務員・技術者の初任給の平均額は、大学卒、高校卒とも、昨年に比べて大幅な増額となっている。

 一般の従業員について、ベースアップを実施した事業所の割合、定期昇給を実施した事業所の割合とも昨年より増加している。

 平成19年1月以降に雇用調整を実施した事業所の割合は、昨年に比べて減少している。

 

イ)民間給与との比較

(ア)月例給

 公務においては行政職俸給表(一)、民間においては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められる職種の者について、4月分の給与額の比較(ラスパイレス方式)を行ったところ、公務員給与が民間給与を1,352円(0.35%)下回った。

 

 

国の公務員給与と全国の民間給与との較差

 

また、配偶者と子2人に係る民間の家族手当の支給額が、職員のこれらに係る扶養手当の支給額を上回っている。

(イ)特別給

 昨年8月から本年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、所定内給与月額の4.51月分に相当しており、職員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.45月)を上回っている。

 

ウ)本年の給与の改定

(ア)俸給表

 民間との間に相当の差が生じている初任給を中心に若年層に限定して改定を行い、中高齢層については改定を行わないこととする。

 この結果、行政職俸給表(一)について、1級の平均改定率は1.1%、2級は0.6%の改善となり(3級は0.0%、4級以上は改定なし)、行政職俸給表(一)全体の平均改定率は0.1%となる。

 また、行政職俸給表(一)以外の俸給表についても、行政職俸給表(一)との均衡を基本に、所要の改定を行うこととする(平成19年4月1日実施)。

(イ)扶養手当

 民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮し、扶養親族である子等に係る支給月額(職員に扶養親族でない配偶者がある場合又は職員に配偶者がない場合の1人に係る支給月額を除く。)を500円引き上げることとする(平成19年4月1日実施)。

(ウ)地域手当の支給割合の改定

 給与構造改革における地域間給与配分の見直しを着実に実施するため、本年4月1日から平成20年3月31日までの地域手当の支給割合について、地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日の調整手当の支給割合との差が6%以上の地域において、既に本年4月に行った改定に加えて、0.5%の引上げを行うこととした(平成19年4月1日実施)。

(エ)期末手当・勤勉手当等

 民間の特別給の支給割合との均衡を図るため、支給月数を0.05月分引き上げ、4.5月分とする。引上げ分は、民間の状況等を参考に勤勉手当に割り振ることとし、本年度については、12月期の勤勉手当を引き上げ、平成20年度以降においては、6月期及び12月期の勤勉手当が均等になるよう配分することとする(公布日実施)。

 

国の一般職員の支給月数

 

(2)給与構造改革

 平成17年の勧告時の報告において、国家公務員の給与制度の基本である職務給の原則、成績主義を推し進めるとともに、地域における公務員給与水準の適正化を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明した。

 この給与構造改革は、平成18年度以降平成22年度までの間に逐次実施を図ることとしている。

 

ア)平成20年度において実施する事項

(ア)専門スタッフ職俸給表の新設

 行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から、複線型人事管理の導入に向けての環境整備を図るため、専門スタッフ職俸給表を新設する(平成20年4月1日実施)。

 専門スタッフ職俸給表は、行政における特定の分野についての高度の専門的な知識経験が必要とされる調査、研究、情報の分析等により、政策の企画及び立案等を支援する業務に従事する職員で人事院規則で定めるものに適用し、3級構成とする。各職務の級の水準は、本府省の課長補佐級から課長級までの水準を基礎としたものとする。

(イ)地域手当の支給割合の改定

 地域手当は、平成22年度までの間に段階的に改定することとしており、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間の暫定的な支給割合を設定(平成19年度の支給割合を1から2.5%引上げ)する。

 

7むすび

 

 職員の給与決定に関する諸条件については、以上述べたとおりである。

 これらの調査結果等を基に、国及び他の都道府県の動向並びに特例条例による減額措置が行われていること等を踏まえ、様々な角度から慎重に検討を重ねた結果、職員の給与について所要の措置を講ずる必要があると判断し、次のとおり報告する。

 

(1)月例給について

 前記のとおり、本年4月分の給与額を比較したところ、減額措置前では昨年に引き続き職員給与が民間給与を上回っていた(2.18%)が、昨年(3.17%)に比べ、その較差は縮小している。

 これは、本県の民間事業所について、ベースアップ、定期昇給の状況がわずかながらも改善傾向にあることに加え、職員の給与水準について、その引下げが段階的に実施されている(注)ことによるものと思われる。

 また、特例条例による給与の減額後では、昨年に引き続き職員給与が民間給与を下回っており、その較差は昨年より拡大している。

 一方、国においては、月例給については俸給表、扶養手当、地域手当の引上げ改定を本年4月に遡及して行うこととされたところである。

 このような状況を踏まえ、職員の月例給については以下に述べる改定が必要であると判断した。

 

(注)国においては、平成18年4月から、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金水準が最も低い地域に合わせ平均4.8%の引下げ改定を行い、経過措置を設けて段階的に実施するなどの改正が行われた。

 本県においても、国に準じて給料表の引下げ改定が行われている。

 

○経過措置の内容

 改定後の給料表の適用の日(平成18年4月1日)における給料月額が、その前日に受けていた給料月額(切替前給料月額)に達しない職員に対しては、その者の受ける給料月額が、昇給等により切替前給料月額に達するまでの間、その差額を支給する。

 

ア)給料表

 若年層の職員の給料水準については、平成14年以降、給料表の引下げ改定に伴って引き下げられているが、民間においては、初任給に伸びが見られたところであり、結果として、初任給を中心とした若年層の職員の給料は民間に比べ低い水準にある。

 上記の点を踏まえ、公務への有能な人材確保の観点から、給料表については、人事院勧告に準じて、初任給を中心に若年層に限定した改定を行うこととする。

 また、高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表については、行政職給料表との均衡を考慮して改定を行うこととする。(注)なお、再任用職員の給料月額並びに任期付研究員給料表(招へい型)及び特定任期付職員給料表については、改定を行わない。

 

(注)国においては、平成16年4月の国立大学の法人化に伴い、本県の高等学校等教育職給料表並びに中学校及び小学校教育職給料表に相当する俸給表は廃止されているため、当該俸給表にかかる勧告は行われていない。

 

イ)扶養手当

 前述した民間における家族手当の支給状況を考慮するとともに、本県においても少子化対策が緊急的・重点的に取り組まれていることにも配慮し、人事院勧告に準じて、扶養親族である子等に係る支給月額を引き上げることとする。

 

(2)期末手当・勤勉手当について

 国においては、前記のとおり、支給月数を0.05月分引き上げ、4.5月分とすることとされたところである。

 一方、本県においては、職員の期末手当・勤勉手当の支給月数(4.45月分)が民間の特別給の支給割合(4.02月分)を上回っており、昨年に比べ、その差は拡大(昨年0.34月分、本年0.43月分)している。

 また、特例条例により、期末手当・勤勉手当も連動して減額されているが、期末手当・勤勉手当の支給月数から特例条例による減率分に相当する月数を減じた月数(4.19月分)で比較した場合においても、民間の特別給の支給割合を相当程度上回っていることが認められた。

 期末手当・勤勉手当について、本委員会は、職員の士気の高揚や有能な人材確保の観点からは、国や他の都道府県の職員との均衡を考慮し、一定の水準を確保する必要性を認めつつも、昨年の勧告時の報告においては、広く県民の理解を得るために、地域の民間事業所における支給実態をより反映したものとする必要がある旨言及したところである。

 以上の点を総合的に勘案し、本年の期末手当・勤勉手当については、0.2月分引き下げ4.25月分とすることとする。

 引下げに当たっては、平成20年度以降は6月期、12月期の期末手当をそれぞれ0.1月分づつ引き下げることとするが、本年度については、6月期の期末手当が支給済みであることから、12月期の期末手当を0.2月分引き下げることとする。

 また、再任用職員、任期付研究員及び特定任期付職員の期末手当についても同様に支給月数を引き下げることとする。

 

(3)その他の手当等について

ア)地域手当

 民間賃金の高い地域に勤務する職員等を支給対象とする地域手当については、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの間の暫定的な支給割合について、人事院勧告に準じて、下表のとおりとする。

 

平成20年度の地域手当の級地別支給割合

イ)特殊勤務手当

 本委員会は、昨年の勧告時の報告において、社会情勢の変化等により特殊性が薄れているものについて、廃止も含めて見直すとともに、実績を重視した支給内容となるよう検討を進め、早期に改正する必要がある旨言及したところである。

 県立学校の教育職員及び市町村立学校の教職員の特殊勤務手当については、本年4月に、この趣旨に沿った改正が行われたところであるが(注)、その他の職員にかかる特殊勤務手当についても、できるだけ早期に改正を行うことが必要である。

 

(注)関係条例等の改正により、他校兼務手当及び本分校勤務手当の廃止などの見直しが行われた。

 

ウ)教育職員の給与等

 本年6月に公布された学校教育法等の一部を改正する法律により、学校における組織運営体制や指導体制の確立を図るため、小・中学校等に副校長、主幹教諭、指導教諭という職(注)を置くことができることとされた(平成20年4月1日施行)。

 

(注)各職の職務内容

  • 副校長:校長を助け、命を受けて校務をつかさどる
  • 主幹教諭:校長等を助け、命を受けて校務の一部を整理するとともに、児童生徒の教育等をつかさどる
  • 指導教諭:児童生徒の教育をつかさどるとともに、他の教諭等に対して、教育指導の改善・充実のために必要な指導・助言を行う

 

 また、これに先立つ本年3月の中央教育審議会(文部科学大臣の諮問機関)の答申「今後の教員給与の在り方について」においては、現在の4級制の給料表に関し、「主幹(仮称)又は指導教諭(仮称)が新たな職として位置付けられ、配置される場合には「都道府県において、必要に応じて」新たな級を創設することが望ましい」とされているほか、教員に一律4%支給されている教職調整額や、教員に特有の手当等について、見直しの必要性が指摘されている。

 本県においては、副校長等の新たな職の設置に関する任命権者における検討結果を踏まえ、必要に応じ、その処遇等にかかる検討を行うとともに、教職調整額などその他の手当等については、国の動向を注視していく必要がある。

 なお、産業教育手当及び定時制通信教育手当については、他の都道府県の動向を踏まえ検討を行う必要がある旨、昨年言及したところであるが、上記の国における手当等の見直しの動向も踏まえつつ、更に検討を行う必要がある。

 

エ)勤務実績の給与への反映

 本委員会は、平成17年の勧告時に、職員の勤務実績を的確に反映しうる給与制度の整備が喫緊の課題であるとして、昇給や勤勉手当の見直しに係る勧告を行い、昨年4月に関係条例等が改正されたところである。

 この見直しを実効あるものとするためには、任命権者における勤務実績の給与への反映を一層推進していく必要がある。

 

(4)人事管理上の課題について

ア)能力・実績に基づく人事管理

 職員の公務に対する意欲と能力を高め、組織の活性化と公務能率の向上を図るためには、能力・実績に基づく人事管理を推進する必要があり、その前提として、職員の能力と実績を的確に評価し、その結果を適切に処遇に反映させる人事評価制度の構築が求められている。

 国は、本年7月に国家公務員法を改正し、能力・実績に基づく人事管理を推進するため、今後2年以内に新たな人事評価制度を整備し、任用、給与等の人事管理に活用することになった。

 本県においても、新たな人事評価制度への取組が行われているところであるが、今後、国や他都道府県の制度も参考としながら、人事管理の基礎として活用できる人事評価制度の整備に取り組んでいく必要がある。

 

イ)人材育成と女性職員の登用等

 地方自治体の主体性の強化が求められる一方、かってない厳しい財政状況の中で、県民の期待と信頼に応えていくためには、個々の職員の意識改革と政策形成能力や創造力、専門性などの更なる向上が必要である。

 とりわけ大幅な人員削減への取組が行われている状況にあって、行政水準を維持し、向上を目指すには、職員一人ひとりの能力開発がこれまで以上に求められており、そのための人材育成については、喫緊の課題として取り組んでいく必要がある。

 特に、行政職の職員などの人事異動ローテーションに関しては、職員の専門性を向上させるという観点から、そのあり方を検討する必要がある。

 若手職員の育成は、組織の活性化を図る上で取り組むべき重要な課題であり、意思形成過程への参加機会の充実、職場における人材育成体制の強化などを推進し、若手職員が生き生きと職務に取り組み、様々な課題に積極的に挑戦できる環境を整えていく必要がある。

 また、男女共同参画社会の実現に向けて、女性職員の管理職への積極的な登用、意思形成過程への参加機会の充実など、その育成・登用に引き続き取り組んでいく必要がある。

 

ウ)総実勤務時間の短縮

 総実勤務時間の短縮は、職員の健康の保持及び公務能率の維持・向上の面でも、職業生活と家庭生活の調和を図る上でも重要な課題である。したがって、適正な勤務時間管理に努めるとともに業務の見直しを行うなど、今後とも、時間外勤務の縮減を図る必要がある。

 また、総実勤務時間の短縮のためには、年次有給休暇の積極的な取得を促進することが必要である。(参考資料第28表:PDF版66.4KB

 人事院は、民間企業の所定労働時間が、国家公務員の勤務時間よりも短いという調査結果を受けて、本年の公務員人事管理に関する報告において、来年を目途に民間準拠の原則に基づいて見直しに関する勧告を行うという方針を示した。本県においても、国家公務員の勤務時間の見直しの状況等を注視しながら、検討を行っていく必要がある。

 

エ)メンタルヘルス対策

 職員の心身両面にわたる健康づくりは、職員個人や家族の充実した生活に資することとともに、ますます、複雑・高度化する行政課題に迅速かつ的確に対応し、県民の期待に応えていくためにも重要な課題である。

 特に、心の健康づくりについては、職員自身がストレスに気づき、これに対処する方法を身につけること、各職場においては、管理・監督者を中心に職員相互の協力・支援や意思疎通を図ること等によりストレスの少ない働きやすい職場づくりを一層推進すること、任命権者においては、職員への相談事業、研修事業を行うことなど、それぞれの立場での継続した取組が必要である。(参考資料第29表:PDF版66.4KB

 

オ)弾力的な勤務形態の導入

 育児や介護を行う職員に対して適切な支援策を講じていくことは重要な課題である。本年、再度の育児休業を取得することができる事由(注1)の拡大等の改善がなされるなど、本県では、これまで育児や介護のための休暇や育児休業の制度の拡充が行われてきたところであるが、これらの制度を利用しやすい職場づくりや職員の意識の改善が引き続き必要である。

 また、本年、地方公務員の育児休業等に関する法律が一部改正され、育児のための短時間勤務(注2)の制度の導入が可能となった。この制度により、長期間にわたる職員の仕事と育児の両立が可能となるとともに、男性職員の育児参加の機会の拡大にも資することが期待されるものであり、本県においてもその導入について検討する必要がある。

 一方、地方公務員法の一部改正により、近年の行政課題の複雑・高度化に対応できるよう、職員の幅広い能力開発を促進すべく、職員が自発的に職務を離れて大学等で修学することや国際貢献活動への参加を認める自己啓発休業制度(注3)を導入することが可能となった。職員の自発性や自主性を積極的に活かす柔軟な仕組みを用意することは、職員個人の自己啓発につながるのみならず、ひいては、組織全体の活力を高めることも期待されることから、職員の実態等を踏まえつつその導入について検討する必要がある。

 

(注1)育児休業の取得は、1人の子について原則1回であるが、職務復帰等の後、条例で定める特別な事情がある場合は、再度の取得が認められている。

(注2)育児のための短時間勤務

○対象となる職員:小学校就学の始期に達するまでの子を養育する常勤職員(現行の育児休業は子が満3歳に達するまで)

○勤務パターン:1日当たり4時間、1日当たり5時間、週3日、週2日半等の勤務形態から選択

○給与:給料及び職務関連手当は勤務時間に応じた額。生活関連手当は全額支給

(注3)自己啓発休業制度

○休業の事由:・大学等の課程の履修…国内外の大学等の教育施設の課程の履修・国際貢献活動…国際協力の促進に資する外国における奉仕活動のうち条例で定めるものへの参加

○休業の期間:3年を超えない範囲内で条例で定める期間

○給与:無給

 

(5)勧告実施の要請について

 人事委員会の勧告制度は、労働基本権を制約されている公務員の適正な処遇を確保するため、情勢適応の原則に基づき、公務員の勤務条件を社会一般の情勢に適応させるためのものとして、県民の理解と支持を得て定着し、行政運営の安定に寄与してきている。

 現在、危機的な状況にある県財政の下、個々の職員は、限られた予算と人員の中で最大限の効果を発揮できるよう、複雑・多様化する業務に対し、強い使命感をもって立ち向かっていくことが求められており、給与をはじめとする職員の勤務条件は、そのような職員の努力や成果に的確に報いるものでなければならない。

 現在行われている特例条例による給与の減額措置については、県の財政運営が一段と厳しさを増していることから、減額措置の継続や管理職手当の上乗せ減額について議論されているところである。しかしながら、減額措置が職員の生活や職務に対する士気に与える影響は極めて大きいものがあり、諸情勢が整い次第、本来あるべき職員の給与水準が確保されるべきと考える。

 県議会及び知事におかれては、この報告並びに勧告に深い理解を示され、適切な対応をいただくよう要請する。

 


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〒690-8501 島根県松江市殿町8番地
      (県庁南庁舎2階)
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    (任用係…採用試験に関すること)
   0852-22-5437
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   0852-22-5436
    (給与係…給与制度、勧告に関すること)
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