夜明けの一戦キイロスズメバチの駆除

令和4年9月14日(水)曇りのち晴れ

 

 

「木材加工棟の近くの小屋に、ハチが巣をかけていますけど駆除できますか?」

総務課の足重さんからのお話がありました。

 

 巣があるという木材乾燥小屋に行ってみると、軒下に直径30cm弱の巣があります。巣を出入りしているのは、キイロスズメバチでした。

このままにしておくと、ハチがどんどん増殖してコロニーが大きくなり、駆除が難しくなります。作業しやすい場所でもあり、今なら一人で駆除できそうです。

 

 キイロスズメバチは、この名のとおり鮮やかな黄色が映える、スズメバチの一種で、本州~四国・九州の山林に広く生息します。本種は

ケブカスズメバチ(毛深雀蜂)の亜種とされていますが、従来から呼ばれてきた「キイロスズメバチ」の方が一般に認知されているので、この名称でとおっています。

 中山間地域のほか、周辺にちょっとした林の残る地域では都市部であっても生息できます。家の軒下等に巣を作ることが多く、人が遭遇する機会の多いスズメバチでしょう。

 日中に活発に活動して、花や樹液に集まり蜜や樹液をなめたり、他の昆虫を狩るなどして餌を集めています。飛んでいる昆虫も良く捕まえるそうです。

 

 さて、依頼のあったハチの駆除ですが、外勤に出たハチが巣に戻って休んでいる夜に作業をすると、取り逃がし無く駆除できます。

 そのため作業は夜間が望ましいのですが、暗がりでの一人作業では何かとアクシデントが多いので、夜明けの駆除に臨むこととし、巣に網(中山間地域で多用される、野菜

ネット)を被せ、巣から出るハチの攻撃を抑えながら駆除することを試みました。また、9月のこの時期、朝の気温も下がり、ハチの動きも緩慢だろうという考えです。

 

 日の出前に現場に出向いて駆除作業を開始。ところが、夜明け前のかなり早い時間であっても周辺はかなり明るく、すでに働きバチは餌集めのため、巣の出入りをしています。

労働は夜明け前から開始されているようです。さすが働きバチ。人間の労働基準などお構いなしです。ハチが活動していない時に駆除するという当初の計画はあっさり狂い、都合

良く行かないものだと思いながら駆除スタートです。

 

 巣の周りでモタモタしていると、見慣れないものがウロウロするために、巣に戻ったものや、巣から出たハチが警戒して、どんどんこちらに向かって来て刺そうとするため、

駆除が難しくなります。この先はスピード勝負。

 

 巣の近くに脚立を据え、巣にじゅうぶん手が届く位置まで登ったところで一気にネットを被せます。ネットを被せると、異変を感じた巣中のハチが出入り口から飛び出し、

外敵(この場合、私)を刺そうとして、それこそ「ハチの巣をつついたような」騒動になります。ネットの口を絞りつつ、ハチが出ないようにして、軒下にくっついている巣の部分を

ノコギリで切り、ネットに巣ごと落とし込んで「一網打尽」。この後は、ネットごと冷蔵庫に入れて低温殺虫しました。

 

 今年、中山間地域研究センターでの駆除作業は2回目ですが、専門業者に依頼をしたものを含めると、このほか3個くらいの処理が行われています。豊かな自然に囲まれた

職場ゆえのことです。

 人を刺すスズメバチ類は人的被害の多い危険生物なので、往来のある場所の巣はやむなく駆除しました。しかし、自然界では他の昆虫類の捕食者として、生態系を安定させる役目を

負う構成員です。できることなら駆除はしたくないものなのですが。

 

写真画像1

撤去した巣と、捕獲した成虫。巣の中央下方にある円形の黒色部が出入り口。

成虫数は114頭。コロニーが大きくなると、一巣に1000頭以上の成虫が生活することも。

 

写真画像2

巣の内部。育児室が集合する巣板が三層形成されている。

巣の外、左端の一回り大きい成虫が女王蜂。

 

 

農林技術福井

 

 

 

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