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文芸作品入賞作品紹介

今年も皆様からたくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。

応募点数と入賞作品を、次のとおり紹介します。

 

〇応募点数

計2,097点

 

(内訳)

一般の短歌271点、俳句393点、川柳498点、詩20点、散文12点
ジュニアの短歌139点、俳句487点、川柳142点、詩132点、散文3点

〇知事作品と選評

●一般の知事賞

 

【短歌】

縁側で病む妻の爪切りながら洗濯機の音とまるのを待藤井幹雄

 

 爪を切られる人が病む夫であったなら受け止め方が違ったかもしれない。妻の爪を切りながら耳は洗濯機の音を気にしている夫の心情を察する。縁側という設定にあたたかさを感じつつ、男性が介護している現実には言い知れぬ寂しさが漂う。介護の歌は共感されやすいが主観をのべると只事となってしまう。事実のみを述べその奥にある様々は読者に任せられ、真実味のある味わい深い一首となった。

 

【俳句】

どやどやと来て覗かるる山椒小玉みづえ

 

 邑智郡邑南町上亀谷に瑞穂ハンザケ自然館があり、オオサンショウウオの完全屋内水槽で人工繁殖が行われている。山陰中央新報によると、同館は十八年・十九年に自然光と外気温の影響を受けない完全室内水槽での人工繁殖に国内で初めて成功したと記されている。

 掲句はそのようなハンザケ自然館の山椒魚を団体で見学に出かけたのであろう。どやどやという表現で集団見学を示しているが、少し騒々しい山椒魚の見学で、静かに観察することが大切かもしれない。

 同館では今年は室内水槽での繁殖が成功しなかったという報道もあったが、特別天然記念物のオオサンショウウオの繁殖に再挑戦するというので成功を祈りたい。

 

【川柳】

意地張った後の小骨が抜け切れ芝原恵子

 

 柳壇の一茶と言われている作家(須崎豆秋)の「骨立てたまま二次会へついて行き」の作品を彷彿とさせるが、本作品上五句、意地張ったが(イ)本人の性格、(ロ)他者との状況設定、を上手く表現され能動的に自分を詠む作意にユーモラスもあったり、心の葛藤や、イライラ感の表現が、群を抜いていた。

 

 【詩】

『望郷有原悠二

 

コロナ禍の日常でワクチンの副反応に戸惑い〈鬱〉状態になりながら、娘とのかみ合わない会話に翻弄されつつ故里の父母に寄せる思いが増幅されているという内容。

句点の置き所が独特で、ザワつく心の中を象徴的に表現しているようで面白く読みました。途中2箇所にある穴の底を見せるような表記もユニークな工夫です。自動筆記のような単語の連記なども作品全体のリズム感を上手く引き出しています。

 

 【散文】

『白の萌芽左近司みのり

 

 堀川遊覧を舞台にした船頭の物語。家族間のわだかまりから家出した青年が、城下町の堀端に辿り着き、珍しい木舟を漕ぐ老船頭に魅せられ、見習いとして住み込みで指導を受ける。やがて年末で引退する最後の日、老船頭は秘かに青年の家族と連絡を取り、一人前の船頭に育ってデビューを迎えた青年の初就航に乗船させようと手配する。両親と弟が船に近付いてくるのを見て青年船頭が涙する姿が感動を呼ぶ、第一級の作品である。

〇ジュニア大作品と選評

●ジュニアの大賞

 

【短歌】

ピストルの音が鳴るたび速くなる体に響く自分の鼓齋藤琉晟

 

運動会かスポーツ大会でしょうか。自分の走るレースが近づくごとに胸がどきどきしてくる、多くの人が経験しているであろう、あの緊張感がとてもよく伝わってきます。大切なことは「胸がどきどきする」とか、「緊張する」とか、ひと言も言っていないということです。そんな説明はしなくても「体に響く自分の鼓動」とだけ言うことで、読者にそれが伝わってくるということです。ここに短歌の秘密と面白さがあるのです。

 

【俳句】

たんぽぽがコンクリートから生えてき沼田都福

 

 最近雑誌や新聞に何かと「根性○○」として各種の草花が紹介される。例えばたんぽぽ、すみれ、ひまわり、夏水仙、立葵などである。

その理由は家屋と道路の境目がコンクリートで塞がれて境目までしっかり塗りつぶし土がない筈であるが、植物の種子はたくましく少しの隙間に砂や土が集まると、そこに発芽して成長する。雑草と見ていたのに時期が来て突然花が咲いたので驚いたのである。作者は見たままの状態を俳句にしたのである。

 

 【川柳】

にじ色に光るうろこと僕の長尾蓮斗

 

 にじ色に光るうろこの表現に、レベルの高さと、なぞかけの楽しさを感じました。僕の顔もにじ色に変化をして行くプロセスが、イメージの飛躍で加速され、神秘的なときめきと癒やしを覚えました。

 

 【詩】

『空の美術館野坂はるか

 

短い詩は特に題が大切ですが、この作品は題が素敵です。絵本に付いている語りのようにも読めます。よく観察し、表現しました。

 

 【散文】

『夏風の詩竹内野乃果

 

 作者は、夏の風物詩を「風鈴」の視点から繊細なタッチで描いている。夏の情景描写はもちろん、人物の心理描写も実に巧みで見事だ。作文に「なりきり作文」という手法がある。普段の何気ない日常や出来事でも、何かに「なりきって」描くことで、物事を見る視点が変わり、新たな発見がある。三人称客観の視点から俯瞰することができる。感性が極めて豊かな作者の、更なる飛躍に大いに期待したい。

〇入賞者一覧(一般の部)

第19回文芸作品募集入賞者
種目 作者名(筆名) 住所
短歌 知事賞 藤井幹雄 江津市
金賞 原文子 雲南市
銀賞 坂下杏子 西ノ島町
向田心平 大田市
銅賞 新井千尋 松江市
安藤功 安来市
日野弘子 雲南市
俳句 知事賞 小玉みづえ 松江市
金賞 井下みね子 益田市
銀賞 小川恵女 雲南市
板垣紀子 出雲市
銅賞 永瀬祥司 雲南市
水津照子 津和野町
難波英子 雲南市
川柳 知事賞 芝原恵子 松江市
金賞 山岡紀子 出雲市
銀賞 福間さちこ 出雲市
安部道子 松江市
銅賞 山藤照惠 江津市
岡あきら 出雲市
多久和敬子 出雲市
知事賞 有原悠二 奈良県(江津市)
金賞 澁谷紀 益田市
銀賞 佐田光子 邑南町
多田納力 雲南市
銅賞 彩子 出雲市
三代雄一 松江市
三日月幸太郎 大田市
散文 知事賞 左近司みのり 松江市
金賞 森修 隠岐の島町
銀賞 近藤慶明 安来市
三日月幸太郎 大田市
銅賞 佐藤友章 松江市
猿木浩二 出雲市
細木和幸 雲南市

〇入賞者一覧(ジュニアの部)

第19回文芸作品募集入賞者(ジュニアの部)
種目 作者名 学校名・学年
短歌 大賞 齋藤琉晟 吉賀町立柿木中学校2年
優秀賞 井川夏凛 吉賀町立柿木中学校2年
柴田涼香 浜田市立金城中学校2年
岡本和真 浜田市立金城中学校2年
俳句 大賞 沼田都福 浜田市立金城中学校3年
優秀賞 稲田結衣 雲南市立大東中学校3年
西谷美枝 松江市立第四中学校3年
松本ひなた 松江市立第四中学校3年
川柳 大賞 長尾蓮斗 松江市立美保関中学校3年
優秀賞 神田ゆら 松江市立古志原小学校1年
岡ななみ 出雲市立高浜小学校3年
竹下竜司 松江市立古志原小学校4年
大賞 野坂はるか 益田市立益田中学校2年
優秀賞 岩田琉香 松江市立第四中学校1年
田原來弥 吉賀町立柿木中学校1年
三代心音 松江市立第四中学校1年
散文 大賞 竹内野乃果 邑南町立石見中学校2年
優秀賞 米井仁美 益田市立益田中学校2年

〇【島根文芸第54号】販売中!

島根文芸第54号

 

 第19回島根県民文化祭文芸作品公募の各部門の入賞・入選・招待作品等を集めた作品集を、島根県文芸協会事務局(島根県庁東庁舎3階)で販売しています。冊数に限りがありますので、完売の際はご了承ください。

  • 価格:1冊1,000円(税込み)
  • 購入方法:
    • 【直接購入】島根県文芸協会事務局(島根県庁東庁舎3階)で購入できます。(代金引換)
    • 【郵送希望】こちら(注文用紙)をご覧ください。郵便またはメールにて注文できます。
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  • 「島根県文芸協会」事務局(島根県文化国際課内)

TEL:(0852)22ー5586

 


お問い合わせ先

文化国際課

島根県環境生活部文化国際課
【住所】
〒690-8501島根県松江市殿町1番地
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○多文化共生係/0852-22-6462
○多文化共生推進スタッフ/0852-22-6470
○文化振興室/0852-22-5878
○島根県パスポートセンター/0852-27-8686
【FAX】
○国際交流係・多文化共生係・文化振興室/0852-22-6412
○島根県パスポートセンター/0852-25-9506
【E-mail】
○国際交流係・多文化共生係 bunka-kokusai@pref.shimane.lg.jp
○多文化共生推進スタッフ tabunka-kyousei@pref.shimane.lg.jp
○文化振興室 bunkashinko@pref.shimane.lg.jp
○島根県パスポートセンター  passport@pref.shimane.lg.jp