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農水商工委員長報告

 

 農水商工委員長報平成27年2月定例会(3月6日)

 

 農水商工委員長報告を行います。

 今定例会で農水商工委員会に付託された議案のうち、既に2月27日に報告いたしましたものを除く議案の審査結果等について報告いたします。

本委員会に付託された議案は、「平成27年度島根県一般会計予算」など予算案9件、「島根県特別会計条例の一部を改正する条例」など条例案3件、「変更契約の締結について」など一般事件案3件であります。

 これらの議案について、執行部に説明を求め、審査いたしました結果、いずれも全会一致をもって、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。

 次に、議案の審査過程並びに所管事項の調査における委員からの質疑、意見等のうち、主なものについて報告いたします。

 まず、商工労働部の所管に係る事項について申し上げます。

 執行部から、予算案について、地方創生・人口減少対策のためには、雇用対策や隠岐・石見地域など県内全域で産業振興を進めていく必要があると考えており、観光誘客の強化、ITの人材育成や研究開発支援の強化、県外から誘致するIT技術者の事業所開設や中山間地域等の雇用や経済を支える地場製造業の設備整備への助成制度の創設、買い物不便対策等地域商業支援の拡充などを行いたいとの説明がありました。

 これに対し、委員から、高校生等へのIT教育は県内全域で取り組んでほしい、中山間地域の自然環境を活かせる小規模な企業の誘致にも力を入れてほしいなどの意見がありました。

 次に、農林水産部の所管にかかる事項について申し上げます。

 執行部から、平成27年度においては、農林水産物の高付加価値化等の推進、担い手対策の充実、多様な地域資源を生かした戦略展開、農林水産業の振興や集落の維持等に必要な基盤整備などを重点施策とし、農林水産業・農山漁村の持続的発展を図るとともに、地方創生・人口減少対策を進めていくとの説明がありました。

 これに対し、委員から、農地中間管理事業について、平野部で先行して事業が行われているが、今後は中山間地域についても力を入れてほしいとの意見があり、執行部からは、中山間地域の農地を守るため、地元で話し合いを進め、営農組織を作るなどして、この事業を進めていきたいとの回答がありました。

 また、委員から、木質バイオマス発電事業について、燃料の確保体制をしっかり支援してほしいとの意見があり、執行部からは、新たに創設する「木質バイオマス県内全域集荷体制支援事業」などを活用して、燃料用チップの安定供給を推進していきたいとの回答がありました。

 なお、このたび県内の11のJAが合併して誕生した「JAしまね」の役員の皆様が、当委員会へもあいさつにみえました。

大きくなった組織の力が生かされるよう、連携を深め、必要な支援を行うことを執行部に求めたいと思います。

 

 最後に、当委員会の調査テーマについて申し上げます。

 

 

 本委員会では、2年間にわたり、食品を中心として競争力のある産業の育成についてをテーマに現地調査を含め、調査活動を実施してまいりました。

 本県の食品製造業は県内全域に立地しており、県全体の製造業の中で事業所数25%、雇用者数15%は最も比率が高く、地域の経済活動や雇用を支える重要な産業といえます。

 しかしながら、県内の食品製造業は全国の事業者と比較して小規模な事業者が多く、様々な課題を抱えています。

 本県は豊かな自然環境に育まれた全国に誇れる農林水産物等を有しており、この地域資源を活用して県外、さらには海外へ販路を拡大できる、競争力ある商品を開発していく企業の育成が今必要とされています。

 このような観点から、県内外の先進事例を調査し、検討を進めてまいりました。調査等を通じて得られた成果を踏まえ、報告します。

 人材の確保・育成は、どのような産業においても重要です。

 若者の定着に何が必要なのか、後継者を育成するためにはどうすればよいのかは大きな課題です。

 そのような中、有機栽培に取り組み、一定収益を確保した生産者団体では、後継者が地元に帰ってきたことで、生産者の平均年齢は40歳前後という、高齢化がいわれている昨今では驚くべき若さでした。若者の定着には、所得の確保と子育てができる環境が大切だとの話を興味深く聞きました。

 また、県内の地産地消を推進するレストランでは、Iターン者の地域おこし協力隊を活用した運営がされていました。

目的意識を持った若者にとっては、「学べる場」の提供と受け入れ態勢が整っていることが魅力となって、希望者が多く集まり、地域活性化にもつながっていました。

 次に、県内のある食品製造企業は、商談会や展示会で情報収集を行い、信頼を得るために展示会出展を重ねるなど、販路開拓に努力していました。そのほか、通信販売に力を入れている企業、宅配システムを独自開発した企業や高齢者向け惣菜を製造する企業など、消費者の生活スタイルの変化に合わせ新たな取り組みを行なっていました。

 今、国内の食品市場では、単身世帯の増加、高齢化による個食化が進行しており、また、共働きや核家族の増加により生活スタイルが変化し、安全志向、健康志向、本物志向など消費者ニーズも多様化しています。この消費者のニーズを敏感に感じ取り、反映させていくマーケティング力の強化が不可欠だといえます。

 また、県内の産直市において、品質管理委員会を立ち上げ、生産者への注意指導や生産履歴開示を導入している例がありました。県外の冷凍和菓子を製造する企業では、細菌無菌室を設置するなど、徹底的な衛生・品質管理の中で食品添加物に頼らない商品づくりを行なっていました。

 この企業は、冷凍和菓子事業を始めた当初より、海外市場を目標にすることで国内的にもトップクラスの衛生・品質管理を行う企業になったと伺いました。

 次に、県外の製麺業を営むある企業では、高度な設備で多種多様な商品を開発していました。また、県内の水産加工品を製造する企業でも高度な高圧釜を導入し、付加価値の高い、独自の加工食品を開発していました。

 一方、高度な加工施設のない企業では、農産物を冷凍してくれる業者がいないため加工を断念しているとか、加工の利益率が低いなどの声が聞かれました。

 また、地域の幅広い分野の事業者でタッグを組み、連携を進めることで成功した事例がありました。

 県外の製麺業を営むある企業では、産官学連携を発展させて、経済ネットワークを構築し、幻となりつつあった特産農産品を地域ブランドとして蘇らせました。

 また、県外の農業生産法人では、自社内で6次産業化を実施した上で地域との連携に取り組んでいました。

 以上、本委員会での調査テーマに関する調査事例を述べましたが、今後、本県の食品製造業を国内外の厳しい競争に打ち勝っていくことができる競争力ある産業としていくために、次の3点について提案いたします。

 

 第1に、食品製造事業者への設備投資の助成、融資制度などの支援を検討されるよう提案します。市場価値の高い商品を開発していくためには、高度な施設や設備を整備することが重要であり、それにより製品の差別化がされ、競争力の強化が図られます。また、生産効率の向上、生産コストの削減にもつながります。

 第2に、原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程において、徹底した衛生・品質管理体制を整備する支援を提案します。施設整備に加えて、意識啓発の研修を行うなど、中小の食品製造事業者の食品の安全性向上の取り組みを後押しする必要があります。

 第3に、県で行っている施策に、商談会や展示会、生産者と実需者の交流促進を支援する事業がありますが、それらを更にブラッシュアップすることで、マーケティング力の補強につなげることを提案します。バイヤーが重視する、デザイン、味、価格、ターゲットを見極める力や、継続して売れる商品の開発技術力アップを図っていただきたい。

 これらを実現することで、食品製造業が収益性の高い産業構造となり、新たな雇用の場の創出と生活の安定が図られ、後継者たる若者にとって魅力のある産業となり、地域の活性化にもつながっていくことが期待できます。

 これまで本県は、島根の特定品目をブランド化し、認知度向上に力を入れてきました。

 また、最近では県産品の首都圏などへの販路拡大に取り組んでいます。

 今回提案しました、生産基盤の強化と新技術の導入、売れる商品づくりを実践し、島根で育まれた地域資源を改めて"しまねブランド"として打ち出していくことがこれらの取り組みを生かすためにも重要と考えます。

 県内食品製造業の底上げのために、県の支援と専門アドバイザーの活用、また農林漁業者や関係機関等のネットワークを形成し、島根ならではのシステム再構築を切に望みます。

 

 以上、農水商工委員会における審査の概要等を申し述べ、委員長報告といたします。

 



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