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文教厚生委員長報告

 

文教厚生委員長報平成十五年九月定例会


文教厚生委員長報告を行います。

文教厚生委員会に付託されました議案の審査経過並びに結果について御報告いたします。

今定例会において本委員会に付託されました議案は、予算案四件であります。
これらの議案について、執行部に説明を求め慎重に審査しました結果、いずれも原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。

次に、請願の審査について申しあげます。

新規に付託されました請願第十号、第十二号、第十三号、第十四号、第十五号、第十六号、第十七号、第二十号及び第二十一号の計九件の請願について慎重に審査いたしました。

審査の結果を申し上げます。

まず、請願第十号「抗がん剤治療専門医の早期育成を求める請願」についてであります。
一般に、抗がん剤治療は副作用を伴うとされておりますが、副作用の苦痛を緩和し、発病前同様の日常生活や社会活動を可能とする抗がん剤治療の専門医は全国でも数が少ないことから、早急にこうした専門医を育成する体制を整備する等「がん」治療の一層の進展が急務であるとの意見で一致し、この請願は採択すべきものと決定いたしました。

請願第十二号「青少年健全育成基本法の制定を求める意見書を提出するよう求める請願」につきましては、各委員から、全国共通的な問題である青少年の健全育成は、各県の条例レベルではなく、法律化による対応が望まれるとの意見が出されたのでありますが、具体的請願項目に関しては、急がれるべき課題のある一方で、表現の自由との兼ね合いや処罰規定のあり方など、議論の分かれるものもありますが、立法化が必要であるとの点において趣旨採択と決定いたしました。

請願第十三号「ALSの患者さんの施設に看護師の補充を求める請願」についてであります。
難病でありますALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんを身体障害者福祉法に基づく身体障害者療護施設で受け入れることができるよう、県独自に看護師を配置するよう求める請願であります。
ALSの患者さんは、痰の吸引など二十四時間の医療的ケアを要し、療護施設で受け入れるには、少なくとも看護師四名の増員による交替勤務を必要としますが、県内にはそれだけの配置ができる療護施設はないのが現状であります。支援費制度では、ALSの患者さんが療護施設に入所した場合、支援費に月額約十万円の加算がありますが、これでは四名の看護師は確保できず、ALS患者さんの生活の質の向上を如何に図るかについて、支援費制度の改善等を含め、さらに調査検討が必要との意見から、継続して審査を行うことと決定いたしました。

請願第十四号「認可外保育所の位置づけに関する請願」についてであります。
この請願は、認可外保育所に対する認定制度を設け、指導・支援を求めるものであります。
認可外保育所が、一定の保育ニーズに応えていることは否定できません。
しかし、児童の安全や健康など保育の質を確保する観点において、保育所設置の最低基準を満たす認可保育所によるサービス提供が基本であることからすれば、認可と認可外の中間的位置づけにあたる県独自の「認定保育所」を制度化することの是非は、少子化対策としても慎重に議論すべきであることから、継続して審査を行うことと決定いたしました。

請願第十五号は、「小学校のすべての学年で三十人以下学級を実現するよう求める」ものであります。
請願項目は二つあり、一つは小学校全学年での三十人以下学級を早期に実現するよう国へのはたらきかけを求め、二つ目として、国の制度改正を待つだけでなく、県独自に三十人以下学級を実現するよう求めるものであります。
義務教育における三十人以下学級など、学級編制の弾力的運用については、国による財源措置が不可欠であり、また、全学年へ拡大することは、今年度から実施された小学校一年生における取り組みの成果を踏まえた研究に基づく必要があることから、いずれの項目につきましても継続して審査することと決定いたしました。

 

請願第十六号は、「子どもたちが安全でのびのびと学べる学校とするよう求める」ものであります。
請願項目の第一点は、三十人学級の実施を順次小・中学校の全学年に拡大するよう求めるものでありますが、請願第十五号に係る判断と同様、今年度から実施された小学校一年生における取り組みの成果を踏まえた研究に基づく必要があることから、継続して審査することと決定いたしました。
二点目は、学校施設の改修・改善、とりわけ耐震診断やトイレの改修、保健室へのクーラーの設置等が早急に行われるよう県としての対策を求めるものであります。小中学校の施設は、設置者である市町村において必要な環境改善が計画的に取り組まれるなか、県としても効果的な整備について適切な支援を行う必要のあるところですが、財源の問題もあることから、この項目につきましては趣旨採択と決定いたしました。

請願第十七号「経済的な子育て支援策の充実を求める請願」についてであります。
この請願は、子育てに係る経済的負担の軽減として三つの項目があり、一つ目は無料の妊産婦検診を県が行うよう求めるものであります。妊産婦検診については、市町村が実施主体であり、交付税措置がなされておりますが、妊娠から出産まで十数回の検診のうち、大半の市町村で無料の検診が二回にとどまる現況から、継続して審査することといたしました。
二つ目は、妊産婦検診に係る国庫補助を復活するよう求めるものでありますが、既に市町村に対して交付税措置がなされており、国庫補助復活を求めることは地方分権推進の視点からも適当ではないとの意見から、不採択とすべきものと決定いたしました。
三つ目は、乳幼児のインフルエンザ予防接種にかかる費用への補助を求めるものでありますが、乳幼児のインフルエンザ予防接種は任意接種であることのほか、予防接種の有効性についての調査研究を待って判断されるべきことから、継続審査と決定いたしました。

請願第二十号は、「義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書を国に提出するよう求める」ものであります。
義務教育において、国が教育の機会均等とその水準の維持向上を保障すべきは論を待たないところであり、その財源が国において確保されなければならない点で、この請願の趣旨は理解できるものとされました。しかしながら、今後、地方の自主性・自立性を高め、地域の実情に即した教育施策を展開していく観点からすれば、現行の義務教育費国庫負担制度の堅持をもって財源確保を求めることは、地方分権推進とは相容れない点を含んでいることから、この請願は趣旨採択されるべきものと決定いたしました。

最後に、請願第二十一号「年金給付額の据え置き等を求める請願」についてであります。
年金によって生活を維持されている方々にとって、給付額の引き下げは切実な問題であり、不安を持たれるところであります。
年金制度につきましては、その財源を含む制度自体の幅広い論議のなかにありますが、年金制度が将来とも安定的に維持されるよう、早急に結論が出されるべきとの観点から、この請願は趣旨採択すべきものと決定いたしました。

なお、六月定例会に付託された請願のうち、継続して審査を行うことといたしておりました第四号、第七号及び第九号につきましては、新たな判断を行うべき状況に至っていないことから、引き続き継続して審査を行うことと決しました。
 

続きまして、付託された議案の審査過程における執行部からの説明、委員からの質疑、意見、要望事項のうち主なものについてご報告いたします。

第百十一号議案、平成十五年度島根県一般会計補正予算のうち、教育費に計上されている「文化財保護費」についてであります。

執行部から、文化財保護費に係る補正のうち主なものは「銀山物語」整備事業費のうち世界遺産登録関係費二千八百五十万円の追加補正であり、石見銀山が早期に世界遺産登録されるよう、今年度から二カ年をかけ、英訳版を含む推薦書並びに図面、写真、四季を通じたビデオなどを作成するとともに、世界遺産登録の前提条件を満たすため、大森地区の五百羅漢の国史跡指定へ向けた取り組みなどを行うとの説明がありました。

これに対し委員から、世界遺産登録の時期に係る見通しについて質疑があり、執行部から、文化庁がいつの時点で推薦書を提出するのか明らかではない。世界遺産登録は、暫定リスト登載から概ね五年ないし十年後に登録されると言われており、予測できる段階にはないが、一日も早い登録を目指しているとのことでありました。

続いて所管事項調査に関連したものについて申しあげます。

先ず健康福祉部に関する事項であります。
執行部報告のひとつに、「県立病院経営健全化計画の策定」がありました。

昨年四月に診療報酬本体のマイナス改定が行われた中、中央病院、湖陵病院の両県立病院は、職員年齢構成を要因とする退職金負担の増大や、中央病院建設に係る償還費負担の本格化など、現状の経営のままでは数年後に内部留保資金の枯渇が危惧される状況にあることから、内部留保資金の減少を防止し、当面の運転資金の確保を図るため、職員の経営参画意識の醸成や診療科別・部門別原価計算の推進等による増収対策、業務委託の推進や適正な人員配置、一般会計からの借り入れによる退職手当負担の後年度平準化等による費用節減対策などを柱に、今年度から平成十八年度までを期間とする第一次経営健全化計画を策定したこと。
同時に、県立病院の役割・機能の見直しを含む抜本的な改革を目指す第二次計画にも着手し、県民への良質な医療の提供を図ろうとするものである、との説明を受けました。

これに対し、委員からは、職員の意識改革への取り組み手法をどう考えているか、あるいは、現病院建設計画の段階での経営状況の将来予測はどうであったか、さらに、職員の適正配置が実現可能なのかといった質疑があり、
執行部から、
職員の意識改革への取り組みについては、他県で成果をあげた病院長を招き職員対象の講演会を実施したほか、知事をはじめ幹部職員が病院へ出向き意見交換する機会を持つ等により着実に進めていきたいこと。
現病院建設計画の段階での経営状況予測と現状を比べた場合、建設コストに見合う収益増は確保できているものの、いわゆる団塊の世代である職員を中心とした早期退職者の増大は、当初見通しを上回るものであったこと。
職員の配置については、従来から、例えば、看護師が担っていた種々業務の一部を臨床検査技師にシフトし、看護師を本来の患者ケアに集中させるなど、患者サービスの向上につながるよう努めてきたところであり、第二次健全化計画策定段階では再度精査していくこと、等の答弁がありました。

次に、教育委員会に関する事項であります。
執行部の報告の一つに、「島根県教育振興ビジョン(仮称)」策定がありました。

このビジョンは、今後十年間を見通した本県教育のあり方について示すものであり、島根県総合教育審議会の審議を経て、来年二月頃には公表できるよう取り組まれていること。この八月には、総合教育審議会による中間まとめが示され、公聴会等を通じた県民意見の集約段階にあること。また、総合教育審議会の中でも多様な意見があるところで、最終まとめに向け、広く県民から意見を求め集約していくこと等の説明がありましたが、文教厚生委員会としても、ビジョンの策定過程において一定の提言をすべきであるとの意見もあり、この問題に集中した委員会を開催することとしたところであります。

以上、文教厚生委員会における審査の概要等を申し述べ、委員長報告を終わります。

 



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