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しまね通vol.8

各分野のプロフェッショナルが、ゆかりの深い島根について語ります。


奈良大学教授・日本の城郭考古学者・千田嘉博さん

千田嘉博さんの写真


せんだ・よしひろ

奈良大学文学部教授、前学長。中世・近世城郭の考古学的研究を行い、益田市の三宅御土居跡と七尾城跡で構成する「史跡益田氏城館跡」など日本各地の城の発掘調査・整備の委員のほか、松江市や東京、大阪、名古屋で開催した松江城天守の国宝指定記念シンポジウムのパネリストも務めた。著書に「戦国の城を歩く」(ちくま学芸文庫)など。奈良県在住。


“遙か遠くの地”島根のお城に思い馳せ

島根に興味を持ったのは中学1年生の時。雑誌の付録で手に入れた全国お城マップで松江城や津和野城を知り、「どんなお城だろう」と頭に描き胸が高鳴ったものです。その当時は名古屋に住んでいて島根はすごく遠い地という印象でしたが、いつかは訪ねてみたいと思いを募らせていました。

実現できたのは、大学を卒業して名古屋市教育委員会の学芸員になった直後です。松江城を見学するために休暇を取り、初めて島根を訪れました。黒っぽい威厳のある天守が、格好良くて美しいというのが実物を見た印象でした。


お城の変遷が凝縮された地を実感

東西に長く、海と山に囲まれた島根では、戦国時代に地域で割拠していたお殿様が、その土地の地理的条件や統治の仕方に合わせて個性的なお城を造っています。益田氏は水運による物資の流通管理のため山上の七尾城から益田川を隔てた対岸に館(三宅御土居)を建てています。月山富田城は山城の麓に館を構え、飯梨川を挟んで城下町を形成。他にも、典型的な山城の津和野城、日本海や浜田川に囲まれ海運を重視した浜田城、三刀屋城をはじめ、戦国時代の出雲に築かれた支城網「尼子十旗」など300を超えるお城が造られました。

調査・研究や講演のために全国のお城を訪ねているのですが、島根のお城を見るにつけて中世から近世にかけて山城から平地の城へなど、お城の変遷が凝縮されていることを実感します。月山富田城は天守や館は残っていないのですが、小高い山城跡やふもとの石垣遺構、飯梨川に沿って広がる城下町の風情などあれだけ残っている史跡は珍しいです。戦国時代のお城の造りや成り立ちを語る上で欠かすことはできず、「お城を勉強したいなら島根に来なさい」と言っています。

最近は、山歩きと同様に「お城歩き」ファンが増えています。人気スポットになり得るお城が島根にはたくさんあるので、誰もがお城を体感できる工夫をしてもらいたいです。


魅力的な食やお茶文化、「日本の面影」

お城以外にも、島根にはたくさんの魅力があります。日本海の海の幸や中国山地の山の幸を味わったり、抹茶と和菓子をいただきながら松江の茶の湯文化を感じたりすることも魅力の一つです。最近は、夢中になって日本の怪談を読んでいるのですが、「日本の面影」を書いたラフカディオ・ハーンの物語の世界にも引き込まれています。

そして美しい景観も。2007年に益田市の「史跡益田氏城館跡」保存管理計画の策定委員を務めていたころ、当時は萩・石見空港はできておらず、JR山陰本線を利用して行き来していました。その時に車窓から見た日本海の海岸線の美しさは今でも忘れられません。(談)


松江歴史館所蔵の「極秘諸国城図」を調査する千田嘉博教授(右から2人目)の写真
松江歴史館所蔵の「極秘諸国城図」を調査する千田嘉博教授(右から2人目)


松江城天守の国宝指定記念シンポジウムの写真
松江城天守の国宝指定記念シンポジウム



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