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全国に誇る島根の歴史文化

謹んで新年のご挨拶を申し上げます

溝口善兵衛知事の写真1

昨年は「日が沈む聖地出雲~神が創(つく)り出した地の夕日を巡る~」が日本遺産に認定され、一昨年度の「津和野今昔~百景図を歩く~」、昨年度の「出雲國(いずものくに)たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」に続いて、島根からは3年連続の認定となりました。

また、「第71回全国植樹祭」が2020年に大田市の三瓶山を会場として開催されることが正式に決定するなど、うれしい話題が続きました。このほか、世界遺産登録10周年を迎えた石見銀山やその記念の展覧会には県内外から多くの方々が足を運んでくださいました。

今後も国内外からより多くの方に島根へ訪れていただけるよう、豊かな自然、古き良き文化・歴史など「しまねの魅力」の情報発信に力を入れてまいります。

そして、昨年は、島根の若者たちの活躍がめざましい一年でもありました。スポーツの分野では、ホッケーやラグビー、ソフトテニスなどで素晴らしい成績をあげ、国体の総合順位躍進の原動力となってくれました。また、音楽の分野でも、県内の中学校、高校の合唱部が全国大会で相次いで好成績を収めました。こうした活躍は、県民の皆さんに喜びや元気を与えてくれるものです。これからも若者たちの活躍を県民の皆さんとともに応援してまいりたいと思います。

本年も「子育てしやすく活力ある地方の先進県しまね」を目指し全力で取り組んでまいりますので、県民の皆さまのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。


島根県知事・溝口善兵衛


調査研究で価値を高め魅力的な情報を発信します

358本の銅剣が発見された荒神谷遺跡や、39個の銅鐸(どうたく)が出土した加茂岩倉遺跡、出雲神話、世界遺産の石見銀山、隠岐の独特の祭礼行事など、島根は豊かな歴史文化を有しています。

そして平成25年には、出雲大社本殿の大遷宮が執り行われ、島根は多数の来訪者を迎えました。また、島根という地域がもつ独特の歴史的風土にひかれ、当地を訪れる人も多くみられます。

島根県では、平成25年から、この豊かな歴史文化をより多くの国民に知っていただくための事業を展開し、『出雲国風土記』を紹介した『解説出雲国風土記』や古代史講座の記録集『古代出雲ゼミナール』などを刊行してきました。

また、県内外で開催した歴史文化に関する講演会・シンポジウムは、この5年間で、合計100回以上におよび、延べ2万2千人に来場いただきました。特に東京・大阪でのシンポジウムはいずれも定員の2~3倍の応募があり、島根の「古代文化」に対して、より深く知りたい、第一線の研究者の意見を聞きたいという方がたいへん多くいらっしゃいました。

島根県では今後も島根の歴史文化を深く掘り下げ、その価値を高めるために調査研究を行い、その上で学術的な基盤に立った魅力的な情報の発信を推進していきます。


県指定無形民俗文化財である水若酢神社祭礼風流の様子の写真
県指定無形民俗文化財・水若酢神社祭礼風流(隠岐の島町)


歴史文化を紹介した書籍の写真
歴史文化を紹介した書籍(島根県発行)


古代歴史文化賞

古代の歴史文化にゆかりの深い三重県、奈良県、和歌山県、島根県、宮崎県の5県で古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰する賞です。

5回目となる本年度は、縄文時代における穀物の栽培を証明した小畑弘己氏の『タネをまく縄文人』が大賞、他4作品が優秀作品賞を受賞しました。


第5回古代歴史文化賞の受賞者の写真
第5回古代歴史文化賞の受賞者


大賞作品『タネをまく縄文人』の表紙の画像
<大賞作品>


優秀作品の表紙の画像
<優秀作品>


新春知事対談

古代の歴史文化を継承し魅力あふれる島根へ

島根には、出雲国風土記など日本古代史の重要な資料や史跡が数多くあります。県では古代史の調査・研究と情報発信に取り組んでおり、この分野での他県との連携も積極的に進めています。古代歴史文化担当の県特別顧問・佐藤信氏と溝口善兵衛知事が「島根の歴史文化の魅力」について語り合いました。


佐藤信氏の写真

島根県特別顧問(古代歴史文化担当)
佐藤信氏

さとう・まこと/奈良国立文化財研究所、文化庁で史跡調査等に携わり、平成4年から母校の東京大学・同大学院で教鞭を執る。現在は東京大学大学院教授(日本史学)の傍ら、文化庁文化審議会世界遺産・無形文化遺産部会委員長、島根県古代文化センター企画運営委員長、史跡出雲国府跡発掘調査指導委員会委員などを務める。東京都出身。


溝口善兵衛知事の写真2
溝口善兵衛知事


島根に残る神話的景観

知事:佐藤先生と島根はとてもご縁が深いのですが、そもそものきっかけは何でしょうか。

佐藤:古代史研究において、史跡の宝庫である島根は格別の地です。大学生だった昭和50年頃に島根で史跡巡りをしたのが始まりで、その後、奈良国立文化財研究所や文化庁による調査でも島根にかかわり、第二の故郷のような愛着を感じています。

知事:特に印象深い所はありますか。

佐藤:まず思い浮かぶのは、松江市宍道町の石宮神社です。733年に編纂(へんさん)された出雲国風土記の中には、オオクニヌシノミコトが狩りをした時、イノシシと犬が石になった神話があります。その石だと伝わる猪石・犬石が境内にあり、古代人も見たであろうその石を見ながら、古代人と同じように想像を巡らせることができる場所です。

このほかにも、神々しく美しい宍道湖の夕日のように、島根では神話的な景観をあちこちで見ることができます。島根の方がうらやましいですね。


進む風土記研究

知事:現在、県古代文化センターでは出雲国風土記の校訂・注釈を行っていて、先生には指導的役割を担っていただいていますね。

佐藤:センターには、出雲国風土記に関する、国内で最も充実した資料が整っています。また県内に数多く残る歴史的景観や遺跡も、研究に役立っています。

知事:出雲国風土記にはどのような特徴があるのでしょうか。

佐藤:地元に根付いた歴史や人々の息吹をよく伝えており、古代日本を地方と中央それぞれの視点からうかがえる非常に希有(けう)な資料です。


県内各地の歴史文化の魅力

知事:島根は古代世界において特別な地域だったのでしょうか。

佐藤:712年に編纂された古事記の中のオオクニヌシノミコトの国譲り神話にみられるように、出雲は日本の古代国家に尊ばれた特別な地域だったと思われます。

知事:国家が特別扱いをしたということは、当時の出雲は先進的だったということでしょうか。

佐藤:はい、古代出雲は、北陸や新潟、九州、朝鮮半島とも深いかかわりがあったようです。日本古代史研究の第一人者で古代出雲歴史博物館名誉館長をなさった故上田正昭先生がよく「グローカル」と言われましたが、開明的な世界観、つまりグローバルな視点で出雲というローカルを作り上げた地域だったのでしょう。

知事:大量の青銅器や特色ある古墳、歴史ある神社や神話からも、古代出雲が豊かで有力な地域だったことがうかがえます。松江の田和山遺跡から出土した紀元前1世紀頃の中国の様式の硯(すずり)も、全国を驚かせました。

佐藤:石見には世界遺産の石見銀山や日本遺産の津和野、隠岐には独特の祭礼行事などがあります。島根の各地に魅力ある歴史文化が残っていますね。

また私が調査に携わった奈良・平城宮跡では、隠岐の海産物を都に送るときに使用した木製の荷札が大量に出土しました。このように、県外にも島根をうかがい知る貴重な遺産があります。


歴史文化の情報発信

佐藤:歴史文化にはお金で買えない価値があります。その価値を、島根県では積極的に調査・研究し、その成果を情報発信されていますね。

知事:社会構造や価値観の変化により、人々の関心が都市から地方へ回帰しています。歴史文化に魅力を感じて島根へUIターンされる方も多く、情報発信が県の発展に非常に重要だと考えて、政策的に取り組んでいます。

その一つが、私が提唱して奈良県や三重県などと共同で創設した「古代歴史文化賞」です。古代歴史文化に関する優れた書籍を表彰することで国民の歴史文化への関心を高めることを目的としています。

佐藤:本年度が5回目ですね。出版社の間でも、古代歴史文化賞を目指そうという意識が高まっていると聞きますし、関心が集まっているように感じます。

知事:平成26年度からは、古代歴史文化にゆかりの深い14県が連携して「古墳時代の玉類」をテーマに共同研究を進めています。個々に研究していては見えにくかった事についても共同研究することにより、新しい成果が生まれています。今年はこれまでの研究をまとめた報告書の刊行と展覧会をする予定です。


国内外に知ってもらいたい島根の魅力

知事:さらに東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、奈良県と共催で日本の国の成り立ちや古代世界を紹介する「出雲と大和展」を東京国立博物館で開催します。荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡から大量に出土した国宝の青銅器、出雲大社をはじめとする県内の寺社の貴重な文化財の展示などを予定しています。地方から国内外に向けて日本の歴史・文化の魅力を情報発信できることは大いに意義があると思います。

佐藤:私もかつて、荒神谷遺跡の銅剣358本を見て大変感動しました。古代史研究をリードする島根県を、うらやましく思う研究者は多いことでしょう。

知事:歴史文化の発信は、島根の価値を高めます。その礎には、確かな調査研究が欠かせません。今後もぜひ、お力添えください。


佐藤信県特別顧問と溝口善兵衛知事の写真
佐藤信県特別顧問(右)と溝口善兵衛知事



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