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平成14年度再評価委員会からの意見具申

平成14年12月16日


島根県知事澄田信義様

島根県公共事業再評価委員会

会長杉元邦太郎

公共事業の再評価について(意見具申)


本委員会は、島根県の公共事業の再評価について慎重審議を重ねた結果、別紙の通り意見を取りまとめましたので、これについて意見具申をいたします。
なお、県におかれては、本委員会の意見を尊重し、公共事業の推進にあたられるよう要望いたします。

1.平成14年度島根県公共事業再評価の結果の総括

本年度委員会に付託された、島根県の公共事業の再評価案件は、別記されているとおり、農林水産部事業21件、土木部事業4件である。
これらのうち抽出して審議したものは、農林水産部関係6件、土木部関係1件であり、更に現地視察を行って詳細に審議したものは農林水産部関係4件、土木部関係1件であった。
これら再評価の審議結果について、島根県知事に意見を具申する。

(1)
 島根県における再評価審議はすでに5年度を迎え、関係部局からの“審議対象事業の説明資料”の内容も詳細かつ充実したものとなってきたと受け止められる。
このことは本委員会発足以来、本委員会への追加説明や追加資料等の対応がなされ、その要請が回を追うごとに提出資料に反映されてきた結果であり、関係部局の誠実な対応に敬意を表するものである。
これらは国から提示されている再評価の考え方を超えているものも多く今後「島根県方式」として更に充実されることを期待するものである。
また現地視察を踏まえての審議は、各委員の目を通して確かな審議として反映されており、これもまた「島根県方式」といえるものと考える。

(2)
 本年度の再評価の結果で最大の事項は「大万木山」の林道開設事業を中断し、残余の区間の事業を廃止するというものである。
本委員会に提出された事業の中で、事業着手以前に中止、改変した例はあるが、いったん着手した事業を中断廃止するということは大英断である。
その理由として、林道未開設区間の大半が、将来にわたって保全すべき森林であるという事情が発生したとはいえ、事業継続か中止かという「再評価」のあり方に厳密な目を注ぐという意味で、委員会としても大きな評価を与えるものである。

(3)
 なお公共事業については、より一層の効率性、実施過程の透明性を図り、島根県民はもとより、国民の理解を得ることが求められている。
特に農林水産部所管事業については、事業受益者の申請事業であり地元負担があること、面的整備を相当含むことなど、土木部所管事業と異なる基本的性格を有していることは理解できるとしても、可能な限り集中投資を行い、早期の事業完了など、より一層の効率的な事業実施の工夫が必要と考えられる。

(4)
 以下に掲げる「個別事業毎」の再評価に関する見解は、従来のものとは異なり、各専門分野ごとに委員が分担して執筆している。このことは、各委員が自らの責任で再評価に参加して、その見解を公表するという意味で、これもまた「島根県方式」として今後とも継続していきたい。

(5)
 また、委員の中の一名から農道事業に対して総括的意見が提出された。
これを事項(6)として付記しておくが、このように個別事業を超えて類似事業を総括するということは、当該事業の実施において大きく寄与できるものとして、このような総括論も「島根県方式」として評価できるのではないかと考える。

(6)
 県民に対して事業効果の説明をより分かり易く行うために、従来から定量化が困難な効果の評価について、特に農道整備事業のように効果項目が多岐にわたる場合の効果について、客観的な評価の導入を要望し、一定の試みがなされてきた。
この意味で一般交通効果の取り扱い、農業の多面的機能の取り扱い等、本年の飯石地区広域営農団地農道整備事業、金屋子地区一般農道整備事業における新たな効果の評価の試みは、今後検討の余地はあるものの島根県独自の再評価方式の確立過程として評価できる。
農道整備事業以外の事業においてもこの試みが積み重ねられることを期待する。
なお、農道整備事業は金屋子地区の例に顕著に見られるように、任意の工区に分割して実施される場合が多い。
このような工区毎に投資効率の効果を見ることも検討したが、合理的とは言い難く、今後は実施中の工区の進捗と未着工工区の計画を踏まえた評価法の検討が望まれる。


2.審議対象事業

島根県が再評価の対象として提出してきた事業は、下記のとおりである。

●農林水産部21カ所
・中山間地域総合整備事業
2カ所
・かんがい排水事業
1カ所
・広域営農団地農道整備事業
2カ所
・農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業
4カ所
・一般農道整備事業
4カ所
・地すべり対策事業
6カ所
・林道開設事業(森林基幹道)
1カ所
・普通林道開設事業(森林管理道)
1カ所

 ●土木部4カ所

・一般国道道路改築事業
1カ所
・新世紀道路ネットワーク整備事業
1カ所
・広域基幹河川改修事業
1カ所
・海岸保全施設整備事業
1カ所

3.詳細審議案件の審議と現地視察

●農林水産部6カ所

(1)飯石北地区中山間地域総合整備事業(三刀屋町・掛合町)<現地視察及び審議>
(2)飯石地区広域営農団地農道整備事業
(木次町・吉田村・三刀屋町・掛合町・頓原町・赤来町)<現地視察及び審議>
(3)砂子原地区農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業(加茂町)<現地視察及び審議>
(4)金屋子地区一般農道整備事業(広瀬町)<審議>
(5)井野地区地すべり対策事業(三隅町)<審議>
(6)林道開設事業(森林基幹道)大万木線(吉田村・頓原町)<現地視察及び審議>

●土木部1カ所

(1)新世紀道路ネットワーク整備事業
主要地方道川本波多線川本工区(川本町)<現地視察及び審議>

4.審議日程及び経過

(1)平成14年7月8日
再評価対象事業についての説明及び抽出事業・現地視察箇所審議

(2)平成14年8月26日〜27日
5抽出事業の現地視察及び審議

(3)平成14年9月19日
2抽出事業の審議及び再評価対象事業についての意見取りまとめ

(4)平成14年11月14日
意見具申(案)の審議

5.詳細審議事業の再評価結果
(1)【飯石北地区中山間地域総合整備事業】
→《継続》
 本事業は、中山間地域における過疎化・高齢化対策として、担い手の確保や地域営農システムの構築、環境保全型農業の展開を目的に行われてきたものである。
本事業の進捗につれて営農組合の設立など圃場整備の効果はあがってきており、地域の立地条件に沿った農業生産基盤や生活環境基盤の整備を総合的に行うことによって、定住条件の格差を是正し農村の活性化を図ることができるものと考えられ、本地区における事業継続の必要性は高い。

(2)【飯石地区広域営農団地農道整備事業】
→《継続》
 雲南地区を東西に結び地区のほぼ中央を南北に走る国道54号と連絡することによって、これまで分離していた農地、集落、農業施設間の有機的な結合が得られ、県内外市場への効率的な運搬経路としての機能、地域間交流の促進機能など、本農道が本地域に与える効果は非常に大きいものがあると考えられる。
進捗率も高く、本農道の早期の全線開通を期待する。

(3)【砂子原地区農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業】
→《継続》
 極めて狭隘なために、集落間の連絡を分断していた道路を農業用幹線道路として整備することにより、農業経営の合理化や地域間交流の促進による集落営農の安定拡大を図る効果、及び加茂町北部の環状道路として生活環境の改善や広域的行政の推進を図る効果は、評価し難いものも含め非常に大きいものがあると考えられる。
やや投資効率は低いが、これらの促進のためにも早期の開通が必要である。

(4)【金屋子地区一般農道整備事業】
→《継続》
 本地区の生産基盤整備はほぼ完了しているが、未整備で狭小・屈曲している道路を改良、連結することによって分断を解消し、集落間の交流の促進と生活基盤の改善を図るとともに、基幹産業である農業の活性化、生産基盤の整備に伴う農地流動化促進等、農業経営の近代化及び農畜産物の流通の合理化を図るなど、本農道が本地域に与える効果は非常に大きいものがあると考えられるので、本農道の早期の全線開通を期待する。

(5)【井野地区地すべり対策事業】
→《継続》
 地すべりは、個人資産である農地、家屋だけでなく、道路を始めとする公共資産にも重大な、また深刻な被害をもたらし、地域の荒廃と公益的機能の低下を招く要因ともなっている。
この重大さ、深刻さは、当事者にとって「費用対効果」による評価・判断を超えた事態と考えられようが、この度の想定被害額の算定、再評価において、昨年度本委員会で提起された方式に則り適正に評価され、かつ数値的判断要件を満たしている。
慢性的な地すべり地域である本地区において、本対策事業は個人資産、公共資産を地すべり被害から守り、農業経営と地域生活の安定のみならず地域の振興、活性化を図る上でその必要性が極めて高いと判断される。
着実かつ可能な限り早急な事業の進捗が望まれる。

(6)【林道開設事業(森林基幹道)大万木線】
→《中止》
 本事業は、「県民の森」利用者の利便性の向上と県有林の林業経営のための基盤施設として事業が行われてきたが、「森林・林業基本法」の改正にともない、本林道利用区域の森林について「森林と人との共生林」として区域設定が行われた。それゆえ、林業経営のための間伐・枝打ちといった作業の基盤施設としての必要性は低下するとともに、継続のための費用も当初より膨らみ、事業継続の費用対効果は0.83と低下している。
一方で林道位出谷線が拡幅整備中であり、大型バスの進入が可能となるなど、「県民の森」利用者の利便性は十分確保できる。
これらの状況を勘案し、事業を中止とするのが適当である。
事業の中止により、原生的な中国地方に存在する貴重なブナ林の保全が図れるものと考えられる。
なお、完了済みの区間の終点においては、車の転回および駐車スペースの確保が望まれる。

(7)【新世紀道路ネットワーク整備事業主要地方道川本波多線川本工区】
→《継続》
 主要地方道川本波多線は、国道261号と国道54号を東西に結ぶ幹線道路として位置づけられ、中山間地域間の連携強化と交流促進に必要不可欠な道路である。
川本工区については、幅員狭小、歩道未整備であるにもかかわらず大型車両も含めて交通量が多い現道の状態に鑑み、また、家屋連坦地における生活環境を考慮して、バイパスによる道路整備が早急に望まれると認められる。
バイパス開通により、川本町が行っている共有施設や宅地造成地へのアクセスが整備されるので、まちづくり支援にも寄与するし、費用対効果の水準も勘案して、事業継続とする。
なお、県道仁摩瑞穂線との連絡ルートについて質疑があったが、現時点では地元からの変更ルート案とも関係しているので、触れていない。


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