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令和6年2月定例県議会知事施政方針並びに提案理由説明要旨

 定例議会開会にあたり、諸議案の説明に先立ちまして、当面の県政運営に臨む私の基本的な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。


(1.能登半島地震)

 はじめに、能登半島地震についてであります。

 先月1日からの地震、そして、その救援に当たられていた海上保安庁と日本航空との航空機衝突事故でお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご家族の皆様にお悔やみを、そして、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 島根県では、これまでDMAT医療チーム、DPAT精神医療チーム、警察官、保健師、事務職員等の人員や給水車の派遣を行っております。

 また、県内に避難される方に対しては県営住宅の提供や、当面の生活のための支援金の支給、児童生徒の就学に向けた支援等を行うこととしております。

 引き続き国や全国知事会等と連携、協力し、被災地に寄り添った支援を行ってまいります。

 今回の地震では、陸路が限定される半島部においては、多くの道路が寸断されると、救助や物資の提供等が難しくなることが明らかになりました。

 同じく半島部を有する島根県としましては、今回の災害を踏まえ、市町村とも連携し、消防、警察、自衛隊等のヘリコプターによる支援を受けるための環境整備や、水や食料の備蓄の充実など、防災体制の強化を図ってまいります。


(2.エネルギー価格・物価高騰対策)

 次に、エネルギー価格・物価高騰対策についてであります。

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、経済活動、社会活動は回復基調にあります。しかしながら、エネルギー価格・物価の高止まりが続いており、県民の皆様の生活や、企業活動に大きな影響を及ぼしております。

 県としましては、引き続き県民の生活、経済活動の回復に向けて全力で取り組んでまいります。

(3.新型コロナウイルス感染症対策)

 次に、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。

 県としましては、感染状況に応じて、県民の皆様に適切に感染対策をしていただけるよう、今後も情報提供や必要な注意喚起を行ってまいります。

 また、医療ひっ迫を回避するため、引き続き市町村や医師会等関係団体と連携し、医療提供体制の確保や高齢者施設等における感染対策への支援に取り組んでまいります。


(4.予算の概要)

 それでは、提出いたしました来年度当初予算と今年度補正予算について、概要をご説明申し上げます。


(1)来年度当初予算は、エネルギー価格・物価高騰対策と島根創生の推進の両立を進めるとともに、健全な財政運営を図る予算として編成しており、総額は4,617億円で、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う関係経費の減により、今年度に対し、4.3%、207億円の減となっております。

 11月、2月補正予算においても、エネルギー価格・物価高騰対策や国土強靱化対策を進め、切れ目ない予算としており、全体としては4,932億円で、前年度比で3.9%、202億円の減となっておりますが、このうち、感染症対策及びエネルギー価格・物価高騰対策を除く通常予算では、前年度比で2.0%、97億円の増となっております。


(2)エネルギー価格・物価高騰対策につきましては、国の補正予算で措置された財源等を活用し、引き続き取り組んでまいります。


(3)島根創生を推進する施策につきましては、この4年間の取組を踏まえ、島根創生を着実に進めるため、産業や、結婚・出産・子育て、暮らしの支援、新しい人の流れづくりに関連する事業を強化してまいります。

 

(4)なお、昨年10月の財政見通しでお示しした、来年度当初予算における財源不足につきましては、事業のスクラップ・アンド・ビルドや事業費の精査に加え、特別会計の余剰金の活用等その効果が一時的な手法も用いながら編成したところです。また、国民スポーツ大会の準備経費が増加したことから、新たに国民スポーツ大会等開催基金を1億円取り崩しております。

 こうしたことから、将来にわたって財源不足が解消した状況ではなく、県財政は依然として厳しい状況にあると考えております。

 それでは、来年度の主な施策等について、順次、ご説明申し上げます。


(5.エネルギー価格・物価高騰対策)

 まず、エネルギー価格・物価高騰対策についてであります。


(1)発注者として、県が、労務単価の上昇や物価高騰の影響を踏まえたより適切な価格で契約を行うため、施設維持管理費等の経常的な委託料等や指定管理料を増額し、県内事業者の賃金引上げを促進してまいります。

 

(2)LPガス消費者や特別高圧電力を利用する中小企業の負担軽減につきましては、支援額を見直した上で、4月末まで期間を延長するとともに、中小企業、小規模企業に関しましては、国の経済対策を受け、企業が行うエネルギーコスト削減や生産性向上のための設備投資を支援しております。

 また、制度融資による資金繰りの支援に加え、商工団体の相談対応の強化により、企業の事業継続を引き続き支援してまいります。


(3)農林漁業者への支援につきましては、省エネ、省コストの施設及び設備の導入への支援を行っております。

 高騰が続く畜産飼料については、国の補填が昨年末で終了した後も引き続き配合飼料への独自補填を行うとともに、県産粗飼料の利用が拡大、定着するよう、良質な粗飼料生産の取組を支援してまいります。

 また、今後も農業者、漁業者の資金繰り支援を行うことにより、経営への影響緩和を図り、安定して経営が継続できるよう対応してまいります。

(4)高齢者福祉施設や障がい福祉施設につきましては、エネルギーコスト削減のための設備更新の支援を行っております。

 また、食材価格の高騰等を踏まえ、医療機関の食材費や特別支援学校等の給食費、こども食堂の運営経費等への支援を引き続き行ってまいります。


(5)県立大学及び私立専修学校の学生等の授業料について、引き続き減免することにより、経済的に修学が困難となる学生等の修学継続を支援してまいります。

 

(6.魅力ある農林水産業づくり)

 次に、魅力ある農林水産業づくりについてであります。


(1)農業につきましては、水田園芸において、タマネギや白ネギ、アスパラガス等の共同出荷施設整備や作業の省力化推進等により、面積が拡大し、取組が定着してきております。また、有機農業については、県東部の集落営農法人を中心に有機米の生産が本格化するなど、取組が拡大しております。

 引き続き、水田園芸や有機農業の産地の拡大、発展に向け、拠点施設の整備、作業の機械化や省力化、販路開拓等を支援してまいります。


(2)畜産につきましては、和牛子牛の価格が低迷する中、国に対し、島根県に不利となっていた価格補填対策の運用の改善を働きかけた結果、支援単価の引上げと、来年度の事業継続につながりました。県としましても、購買者のニーズに応えた質の高い子牛の生産を推進し、価格の向上につなげてまいります。


(3)林業につきましては、県内の原木生産量が順調に増加する一方、原木の円滑な流通とともに、最も高い価格帯で取引される製材用原木を加工する製材工場の規模拡大等が急務となっております。

 原木市場の機能強化や中核的な製材工場の施設整備等を支援することにより、地域ごとに原木の生産から流通、加工までが円滑につながる体制を整備してまいります。


(4)水産業につきましては、昨年7月に策定した第8次栽培漁業基本計画に基づき、マダイやヒラメの種苗生産の効率化に加えて、高い収益性が見込まれるナマコの種苗生産に新たに取り組むため、生産施設の機能強化を行ってまいります。

 単価が高く、安定した漁獲が見込める魚種の放流により水産資源を豊かにすることで、沿岸自営漁業者の所得向上につなげてまいります。

 

(7.力強い地域産業づくり)

 次に、力強い地域産業づくりについてであります。


(1)ものづくり産業につきましては、脱炭素化やデジタル化が急速に進展し、産業構造の大きな変化が見込まれます。

 今後、成長が期待される次世代産業分野への参入を促進するため、産学官が連携し、企業の戦略策定から研究開発、販路確保まで一貫した支援を引き続き行い、収益性の高い高付加価値企業の創出を進めてまいります。

 また、石州瓦産業につきましては、厳しい経営環境の中、策定された中期計画を踏まえ、新商品開発や新分野への進出、製造原価の低減に向けた取組等を引き続き支援してまいります。

 

(2)「次世代たたらプロジェクト」につきましては、国の交付金を活用し、航空産業、モーター産業分野等での事業化を引き続き進めてまいります。

 

(3)IT産業につきましては、県内のIT企業の従業者数が、令和2年4月の1,608人から、昨年4月には1,784人に増加し、売上高も、令和元年度の289億円から、昨年度334億円へと、堅調に伸びております。

 若者の就職の有力な受け皿として、魅力的な産業となるよう、引き続き取組を進めてまいります。


(4)産業のデジタル化につきましては、システムの導入経費や人材育成への支援等を通じて、企業の自発的な取組を促進し、県内企業の競争力の強化を図ってまいります。


(5)観光の振興につきましては、「ご縁も、美肌も、しまねから。」をキャッチフレーズに、冬季の誘客対策に取り組んでおります。今後も、首都圏を中心に積極的にプロモーションを展開し、一層の認知度向上を図ってまいります。

(6)また、県内各地の温泉や食材等を観光素材とした商品化や、旅行会社等と連携した旅行商品づくり、観光誘客に取り組む地域団体への支援等に加え、地域一体となって観光拠点等を整備する場合に市町村と協調して支援を行うなど、多様化するニーズに対応した魅力ある観光地づくりを進めてまいります。


(7)外国人観光客の誘致につきましては、台湾などターゲットとする国や地域へのプロモーションを強化し、認知度向上を図るとともに受入環境の整備を進め、全国的に高いインバウンド需要の取り込みに向け、引き続き取り組んでまいります。

 また、令和7年に大阪・関西万博の開催を控える関西圏など、外国人観光客が多数訪れる地域からの誘客促進のため、観光案内所や宿泊施設等と連携した取組やバス料金の割引等の取組を進めてまいります。

 加えて、昨年12月に関係機関と連携協定を締結したベトナムと出雲縁結び空港間のチャーター便が、5月に運航される予定となっており、ビジネス、観光両面において交流が一層活発になるよう取り組んでまいります。

 

(8)中小企業、小規模企業への支援につきましては、地域を支える事業の維持、発展を図るため、関係団体や市町村と連携し、経営力の強化や円滑な事業承継、県外での事業展開、地域物流の効率化等を支援してまいります。

 また、起業、創業にチャレンジする事業者を引き続き支援し、事業継続につなげてまいります。

 

(9)企業立地の推進につきましては、県内産業の高度化や魅力ある雇用機会の創出を図るため、県内企業の再投資や県外企業の新規立地を促進してまいります。

 特に、県西部や中山間地域で不足している事務系職場の誘致については、県内で整備の進むサテライトオフィスを活用し、積極的に誘致活動を進めてまいります。


(10)また、この度、出雲村田製作所において、安来市内に新たな工場を建設する計画が発表され、同社及び安来市から、県に対して、用地確保等の協力要請がありました。

 これを受け、県では、県内就職の契機となる雇用の場の創出など、定住や地域経済の活性化に大きな効果が期待できること、また、工場立地を早期に実現することが求められていることから、あらかじめ売却先を決定した上で県が用地造成を行う、オーダーメイドの用地造成事業の実施を検討しているところです。

 本年より、用地取得や造成工事等についての調査、調整を行い、事業着手に向けて検討を進めてまいります。

 

(8.人材の確保・育成)

 次に、人材の確保・育成についてであります。

 今年度、島根大学に材料エネルギー学部が開設され、高度な専門人材の育成等に積極的に取り組まれております。

 県としましては、企業と研究者や学生が交流する拠点づくりや、研究機器等の整備、県内企業との共同研究等への支援を通じ、引き続き産学連携による産業の振興や若者の県内定着を図ってまいります。


(9.結婚・出産・子育てへの支援)

 次に、結婚・出産・子育てへの支援についてであります。

(1)結婚支援につきましては、縁結びボランティア「はぴこ」の活動を支援しており、隠岐地域では、隠岐國はぴこ会の皆様のご尽力により、来年度から、島前、島後が一体となった定期的な結婚相談会や出会いイベント等が実施されることとなりました。

 県としましては、今後も、「はぴこ」の活動支援や結婚気運醸成のためのSNSでの情報発信等を通じて、結婚を望む方の希望がかなえられる環境づくりに取り組んでまいります。

 

(2)保育環境の充実につきましては、適切な保育を行うため県内の保育所に基準以上の保育士が配置されている実態を踏まえ、配置基準の充実を国へ要望してまいりました。この度、制度発足以来76年間改善されていなかった4、5歳児の職員配置基準が、来年度から改善されることとなりました。

 県としましても、保育士の負担軽減を図るための働き方改革の促進、保育施設整備のための支援など、引き続き保育環境の充実を図ってまいります。

 

(3)子育て世代への支援につきましては、12月に県内市町村から今後取り組みたい子育て支援施策をお伺いし、先月には市長会及び町村会から、県内全ての市町村において子ども医療費助成の対象を高校生まで拡充できるよう、また、既に高校生までを対象に医療費助成を実施している市町村が新たな子育て支援策を実施できるよう、市町村支援の充実を求める共同要望がありました。県議会の会派からも、子育て施策の充実を検討するよう要望があったところです。

 これらの要望を踏まえ、県内全域での医療費助成の対象拡充や新たな子育て支援施策の充実に、県と市町村で取り組みたいと考えております。

 現在、医療費助成について、県は、一定の自己負担を前提として未就学児には補助率2分の1の補助制度により、小学生には市町村ごとに上限額があり2分の1以内の補助となる「しまね結婚・子育て市町村交付金制度」により、それぞれ支援しておりますが、中学生については支援を行っておりません。

 これを、小学生は交付金制度から補助率2分の1の補助制度に引き上げ、中学生は新たに2分の1の補助制度を設けて、支援してまいります。未就学児と同様、一定の自己負担を前提とした支援といたします。

 県が助成を拡充することで、市町村の自主財源が押し出されることとなります。これまで高校生までを対象とした医療費助成は10市町村で行われておりますが、未実施の市町村においては、この押し出される財源等によって18歳に達する日以後最初の3月末までの医療費助成に取り組んでいただきたいと考えております。

 この県と市町村が一体となった施策の拡充により、自己負担の有無に違いはありますが、子どもの医療費助成の対象年齢がそろい、全19市町村で18歳に達する日以後最初の3月末まで助成が行われることとなります。

 また、既に高校生の医療費助成に取り組まれている市町村には、押し出される財源をそれぞれの市町村の実情に応じた新たな子育て支援施策に活用していただきたいと考えております。

 この措置に係る県の負担額につきましては、中学生までの医療費助成拡充に5.5億円を要すると試算しており、このうち1.7億円については小学生への支援に充てている市町村交付金を活用するため、新たな財政負担は3.8億円と見込んでおります。この財源については、特定の事業の見直しで捻出するのではなく、県予算全体のスクラップ・アンド・ビルドや財源確保で捻出し、令和7年度から実施したいと考えております。

 この子育て世代への支援の充実に係る考え方につきまして、県議会のご意見を伺いたいと考えております。


(10.中山間地域・離島の暮らしの確保)

 次に、中山間地域・離島の暮らしの確保についてであります。


(1)中山間地域・離島における「小さな拠点づくり」につきましては、重点的に支援を行うモデル地区において、計画期間の最終年度となる来年度に向け、各地区で目標の達成を目指した取組が着実に進められており、生活交通や買い物支援、防災活動など、生活機能を確保するための活動が実践されております。

 こうしたモデル地区の具体的な取組過程や成果を関係団体や市町村等に広く周知することで、地域の課題解決に向けた取組が他の地域にも広がるよう、引き続き支援してまいります。

 また、今年度実施した地域実態調査の結果や、市町村の意見等も踏まえ、第6期の中山間地域活性化計画の策定に取り組んでまいります。


(2)離島振興につきましては、特定有人国境離島地域の人材確保対策を強化するよう、関係都道県とともに、国の支援制度の拡充を要望しており、この度、新たに雇用する従業員の住宅確保等に関する民間事業者等への支援が交付金事業に追加されるなど、制度の拡充が図られました。

 引き続き、国に対し、必要な支援の充実と十分な予算の確保を働きかけてまいります。

 

(11.地域の経済的自立の促進)

 次に、地域の経済的自立の促進についてであります。

 

 豊かな自然環境や特徴ある資源を活用し、商品化につなげる「スモール・ビジネス」につきましては、専門家派遣や研修機会の提供、経費助成等の支援により、中山間地域・離島における雇用創出や所得向上を目指した取組を引き続き進めてまいります。


(12.地域振興を支えるインフラの整備)

 次に、地域振興を支えるインフラの整備についてであります。


(1)山陰道につきましては、大田中央・三瓶山IC~仁摩・石見銀山IC間が来月9日に開通します。

 また、令和7年度にかけて約37kmが順次開通し、開通率は85%まで上昇する見込みであり、災害に強い道路ネットワークの形成が進むとともに、企業誘致や広域的な観光振興による地域経済の発展につながります。

 県としましては、引き続き、事業中区間の整備の推進と一日も早い全線開通を国に働きかけてまいります。

 

(2)出雲縁結び空港につきましては、昨年度、運用時間の延長及び1日当たりの発着枠の拡大について空港周辺の住民の皆様と合意に至りました。家屋移転をお願いする方々の移転完了後、令和8年度の運用開始を目途に取組を進めてまいりましたが、家屋の集団移転先の宅地の造成工事に想定よりも期間を要する見込みとなったことから、運用開始を令和10年度目途とすることといたします。

 引き続き、空港周辺の住民の皆様に誠意を持って対応し、取組を進めてまいります。

 また、3月末から、中部国際空港線が新規就航するとともに、10月下旬までの間、静岡線が復便することとなりました。

 ビジネス、観光両面において交流が一層活発になることが期待されますので、就航先の自治体や地元の利用促進協議会と連携して、路線定着に向けた利用促進に取り組んでまいります。


(3)萩・石見空港につきましては、東京線では、2便運航継続のため、国の政策コンテストで掲げた利用者数の目標達成に向けて、また、大阪線では、運航継続に向けて、引き続き、島根、山口両県の関係市町や経済団体、航空事業者と密接に連携して利用促進に取り組んでまいります。


(4)隠岐世界ジオパーク空港につきましては、引き続き、国の有人国境離島に係る交付金を活用しながら、全国各地からのチャーター便の誘致に取り組んでまいります。

 

(13.島根を愛する人づくり)

 次に、島根を愛する人づくりについてであります。

 

 県内の高等教育機関や経済団体等に参画いただいている「しまね産学官人材育成コンソーシアム」では、高校生や学生が、県内企業等と交流する「しまね大交流会」を開催しており、島根に魅力的な仕事がある、島根で働きたいといった前向きな意識の変化が参加者に表れております。

 10回目の開催となる来年度は、これまでの成果や課題を踏まえながら、若者に島根の暮らしや人の魅力も伝えていけるよう取り組んでまいります。


(14.新しい人の流れづくり)

 次に、新しい人の流れづくりについてであります。


(1)若者の県内就職につきましては、令和元年度と比較して、昨年度は、高校生の就職率が3.9ポイント増の78.9%、県内大学生等は5.3ポイント増の34.7%、県出身の県外大学生は3.6ポイント増の30.2%とこれまでの取組の成果が現れております。

 今後も、魅力ある企業づくりへの支援や情報発信に取り組み、若者が企業を知る機会を積極的に提供することにより、県内就職を促進してまいります。


(2)Uターン、Iターンにつきましては、県外に住む20代、30代の県出身者を対象に、仕事をキーワードとした説明会を新たに東京及び大阪で実施いたします。また、総合相談会「しまね移住フェア」と、島根暮らしの魅力を発信する交流イベント「しまね暮らしマルシェ」を東京及び大阪で同じ日に同会場で実施するなど、Uターン、Iターンを促進してまいります。


(3)関係人口の拡大、創出につきましては、今後も都市部の方々向けのセミナーの実施や、関係人口マッチング・交流サイト「しまっち!」の活用促進により、地域づくり活動への参画や将来の移住につなげてまいります。

 

(15.女性活躍の推進)

 次に、女性活躍の推進についてであります。

 

(1)就労支援につきましては、就職相談窓口「レディース仕事センター」を県内2か所に設置しており、今年度の就職者数は先月末時点で304人となっております。

 引き続き、求職者に寄り添ったきめ細かな相談対応や、パソコン講習の充実、丁寧なキャリアカウンセリングを通じて、就職や転職を目指す女性のスキルアップと希望に沿った就労を支援してまいります。

 

(2)様々な分野で女性が活躍するためには、女性に偏っている家事、育児、介護の負担を男性にシフトする必要があります。

 「パパの育児手帳」や新婚夫婦向けの「家事手帳」について、その内容を学べる動画を新たに作成するなど、男性が家事等を行うことを当たり前と捉え実践する社会の実現に向けて取り組んでまいります。


(3)また、家庭と仕事の両立支援につきましては、積極的な取組を行っている企業を訪問し、社員の方々と意見交換を実施してまいりました。社員がいきいきと働くためには、経営者、管理職の意識が大切であると実感いたしました。

 家庭と仕事の両立を応援し、働き方改革に取り組む「イクボス」が県内に広がり、誰もが働き続けやすい職場環境づくりが進むよう取り組んでまいります。

 

(16.保健・医療・福祉の充実)

 次に、保健・医療・福祉の充実についてであります。

 

(1)「しまね健康寿命延伸プロジェクト」につきましては、健康に配慮した弁当の考案や販売、働き盛り世代が生活習慣改善に取り組めるようなイベントの開催など、大学、企業、県民の皆様が連携して、県内各地で健康になれる環境づくりに取り組まれております。

 今後は、こうした取組の成果と課題を検証し、健康寿命の更なる延伸に向け、効果的な健康づくりが広まるよう取り組んでまいります。

(2)医療と介護のサービス提供につきましては、将来にわたって必要なサービスを確保していくため、地域の実情に応じた基盤整備や連携の仕組みづくりを市町村単位で考えていく必要があります。

 今年度2回目となる「地域の医療と介護を考えるセミナー」を今月開催し、中長期的な視点をもって考えることの重要性について理解を深めたところです。

 市町村が中心となった検討や議論が進むよう、引き続き市町村への助言や情報提供を行い、伴走型の支援を行ってまいります。

 

(3)また、介護の充実につきましては、昨年10月に、国に対して緊急要望を行い、今回の介護報酬改定では、へき地に所在する小規模特別養護老人ホームの介護報酬設定上の配慮が継続されるとともに、サービス提供が非効率な地域の訪問介護に対する報酬上の評価が行われることとなりました。

 今後も、中山間地域・離島の医療と介護のサービス提供体制を維持するため、国に対して、地域の実情を伝え、制度の拡充等を働きかけてまいります。

(4)障がい者の就労支援につきましては、令和4年度における島根県の平均工賃が過去最高を記録しており、地域コーディネーターによる事業所と農家のマッチング支援の取組を進めていることなどが、事業所全体の工賃向上につながっていると考えております。

 今後、地域コーディネーターによる支援地域を拡大し、新たに農福連携に取り組む事業所の増加を図るなど、障がい者の自立を支援してまいります。


(5)困難な問題を抱える女性への支援につきましては、年度内に策定する基本的な計画に基づいて、女性の人権を尊重する県民意識の醸成や、相談しやすい環境づくり、切れ目ない支援体制の充実、強化に向けて、市町村や民間団体等と連携、協働し、取り組んでまいります。

 

(17.教育の充実)

 次に、教育の充実についてであります。


(1)江津地域における県立高校の在り方につきましては、学校関係者や地域の方々からいただいたご意見、有識者や県議会での議論等を踏まえ、令和10年度前後に江津高校と江津工業高校を統合して新設校を設置するとした基本的な方針を教育委員会において決定し、今後具体的な教育内容が検討されます。

 江津地域の子どもたちにとって望ましい教育環境を将来にわたって維持できるよう、施設整備等についても検討を進めてまいります。

 

(2)浜田養護学校につきましては、児童生徒数の増加に伴う教室不足や校舎の老朽化、狭あい化の解消に向けた校舎の整備を進め、教育環境の充実を図ってまいります。


(3)特別支援学校の通学支援につきましては、保護者の送迎による負担を軽減するため、来年度から浜田養護学校にスクールバスを増便します。また、始業前の児童生徒の預かり事業についても、新たに出雲養護学校及び浜田養護学校で取り組み、保護者の朝の就業時間の確保を図ってまいります。

(4)児童生徒の学力育成につきましては、基礎学力の向上に向けて学習指導の充実を図るため、小学校低学年段階における学習のつまずきの要因を把握する調査を行い、学校での授業改善を進める市町村を支援してまいります。

 また、ふるさと教育の質を担保しながら教員が児童生徒と向き合う時間を増やすために、県教育委員会と市町村教育委員会が連携して取り組むふるさと教育の運用の見直しを含め、基礎学力向上の取組の状況を注視してまいります。


(5)国のGIGAスクール構想により整備が進んだ小中学校等の「1人1台端末」につきましては、今後の更新に向け、国の補助金を財源とした基金を県において造成し、市町村の計画的、効率的な端末整備を支援してまいります。


(6)教員の働き方改革につきましては、昨年末、県教育長と全ての市町村教育長が、県民の皆様へご理解とご協力をお願いする共同メッセージを発出いたしました。

 また、スクール・サポート・スタッフの小中学校等への全校配置や、部活動への地域連携指導員の新規配置など、外部サポート人材の配置拡充等の取組を進め、教員の負担軽減を図ってまいります。

 

(18.スポーツ・文化芸術の振興)

 次に、スポーツ・文化芸術の振興についてであります。

 

 令和12年に開催予定の「島根かみあり国スポ・全スポ」につきましては、国民スポーツ大会の競技力向上に向け、育成期、充実期、躍進期と段階的に強化を進めております。

 来年度からは充実期に入り、その目標である総合成績20位台の獲得に向け、少年では、ジュニアアスリートの発掘、強化指定高校の拡充、成年では、ふるさと選手登録の働きかけやアスリートの県内就職支援の強化など、競技力向上の取組を進めてまいります。

 また、全国障害者スポーツ大会につきましては、体験会等の拡充により、大会に参加する選手の掘り起こしやチームの育成を図るとともに、大会運営に必要なボランティアの養成を進めてまいります。

(19.人権の尊重と相互理解の促進)

 次に、人権の尊重と相互理解の促進についてであります。


(1)外国人住民への支援につきましては、日本語学習環境や相談体制の整備、異文化理解や多文化共生の意識醸成のためのセミナー開催など、市町村や関係機関と連携して、外国人住民の方々が安心して地域で生活できる環境づくりに取り組んでまいります。

 

(2)また、性的少数者の方々やその家族、学校や職場の関係者等が抱える悩みや不安について相談を受ける専用相談窓口を設置し、その解消に取り組んでまいります。


(20.自然、文化・歴史の保全と活用)

 次に、自然、文化・歴史の保全と活用についてであります。

 

 隠岐ユネスコ世界ジオパークにつきましては、引き続き、隠岐4町村等と連携し、豊かな自然環境を活用した誘客促進や、受入体制の整備等に取り組んでまいります。

(21.生活基盤の確保)

 次に、生活基盤の確保についてであります。

 

(1)道路整備につきましては、骨格幹線道路の改良を優先的、重点的に進めるとともに、落石対策、耐震補強、老朽化対策、通学路の交通安全対策等を進め、県民の安全、安心と、快適な日常生活及び産業活動の基盤を整えてまいります。


(2)県内のバス事業者では、人材不足を理由として、路線の廃止、減便を表明されるケースが生じております。

 このため県では、国や市町村、事業者団体等によるプロジェクトチームを昨年10月に設置したところであり、引き続き、担い手の処遇改善や、バスと自家用有償運送との役割分担など、必要な対応について検討してまいります。

 また、人材不足が差し迫った課題であることを踏まえ、交通事業者に対し、人材確保、育成の取組への新たな支援を行ってまいります。

 

(3)JRの地方路線につきましては、芸備線について、再構築協議会が設置されることとなりました。

 県内路線においても、芸備線と同様に厳しい利用状況の区間があることから、今後の芸備線の状況やJR等の動向を注視してまいります。

 また、沿線自治体や関係団体と連携して、引き続き路線維持に向けた利用客の増加を図ってまいります。


(4)隠岐航路につきましては、令和8年度からの就航を目指し、フェリー「しらしま」の後継船の建造が、来年度開始されます。

 引き続き、隠岐4町村や関係者と連携して、隠岐地域の住民生活や産業振興のため、隠岐航路の維持に取り組んでまいります。


(5)デジタル化の推進につきましては、「島根県ICT総合戦略」に基づき、行政手続のオンライン化や、デジタル技術を活用した市町村の取組への支援を行うなど、各分野のデジタル化施策を着実に推進し、デジタル化の利便性を県民の皆様に実感していただけるよう取り組んでまいります。

(22.環境の保全と活用)

 次に、環境の保全と活用についてであります。

 

 脱炭素社会の実現につきましては、「島根県環境総合計画」において、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」の長期的な目標を設定し、取組を進めております。

 目標達成に向けて、市町村とともに、国の施策も活用しながら、家庭や事業者への再生可能エネルギー発電設備や省エネ住宅の導入促進等を図ってまいります。


(23.防災対策の推進)

 次に、防災対策の推進についてであります。

 

 江の川下流域の治水対策につきましては、昨年12月に更新された「江の川中下流域マスタープラン」に基づく事業が早期に実施する江の川支川の取組につきましても、国や沿川市町と連携を図りながら進めてまいります。

 また、県東部地域における浸水対策等につきましても、引き続き推進してまいります。

 

(24.原発の安全・防災対策)

 次に、原発の安全・防災対策についてであります。


(1)島根原発2号機につきましては、中国電力は今年8月の再稼働を公表しております。県としましては、原子力規制委員会による保安規定変更認可の審査と、使用前確認が継続中であることから、引き続き審査等の状況を注視してまいります。


(2)原子力防災対策につきましては、昨年秋に実施しました原子力防災訓練の結果も踏まえ、引き続き避難計画の実効性の向上に取り組んでまいります。


(25.安全な日常生活の確保)

 次に、安全な日常生活の確保についてであります。


(1)県内における刑法犯の認知件数は、これまで減少傾向が続いておりましたが、昨年は増加に転じ、架空料金請求詐欺や還付金詐欺等の特殊詐欺被害につきましても件数、額ともに増加するなど、極めて憂慮すべき状況にあります。

 特殊詐欺をはじめとした各種犯罪被害を防止するため、幅広い年代に対する情報発信を推進するとともに、関係機関、団体等と連携した対策を推進してまいります。


(2)昨年の県内における交通事故の発生件数は、一昨年に比べ減少しましたが、死傷者数は増加し、死者数に占める高齢者の割合は6割を超えている状況にあります。

 引き続き、高齢者が関与する交通死亡事故を防ぐため関係機関、団体と連携した交通安全対策を推進してまいります。


(3)また、暴力団が犯罪や資金獲得活動を継続している現状を踏まえ、暴力団排除の取組を強化し、より安全で安心な県民生活を確保するため、暴力団事務所の開設、運営を禁止する区域の拡大や、風俗営業者等から暴力団への利益供与に対する罰則規定等を盛り込んだ島根県暴力団排除条例の改正案を今議会に提案しております。

(26.若者の活躍)

 次に、若者の活躍についてであります。


(1)スポーツでは、昨年末に開催された全国高等学校選抜ホッケー大会において、横田高校男子ホッケー部が優勝され、大会連覇という素晴らしい成績を収められました。


(2)また、先月、テニスの全豪オープン車いすの部において、三木拓也選手が、男子ダブルスで準優勝されました。テニスの4大大会において3度目となる快挙であります。

 

(3)文化活動では、日本管楽合奏コンテスト全国大会において、浜田市立金城中学校の吹奏楽部が中学生S部門で最優秀賞と審査員特別賞を受賞され、全日本学生音楽コンクール全国大会では、松江北高校の門脇早紀さんが声楽部門高校の部で1位に輝かれました。


(4)こうした若者の活躍は、私ども県民に大きな感動と喜びを与えてくれるものであり、今後も大いに活躍されることを期待しております。


(27.島根ゆかりの方々の活躍)

 次に、島根ゆかりの方々の活躍についてであります。

 

 昨年秋、隠岐の島町出身の元関脇の隠岐の海、君ヶ濱親方の断髪式が行われました。大相撲の幕内で長く活躍され、県民の皆様に勇気と感動を与えていただきました。

 また、この度、出雲市出身の今岡英樹さんが大相撲の行司の最高位である木村庄之助を襲名されました。これまで、出雲場所の開催に尽力されるなど、地域の活性化や相撲文化の伝承に貢献いただいております。

 お二人の今後ますますのご活躍を期待しております。


(28.竹島問題)

 次に、竹島の問題についてであります。

 

 今月22日は、「竹島の日を定める条例」に基づく「竹島の日」であり、多くの関係の皆様にご出席いただき、記念式典を開催いたします。

 県としましては、今後も、竹島問題についての国民の理解と関心が高まるよう、式典の開催とともに、様々な啓発活動、調査研究等を更に進め、国と連携しながら竹島問題の広報啓発に取り組んでまいります。


(29.「島根創生計画」の実現を目指して)

 おわりに、「島根創生計画」の実現を目指して、一言申し上げます。

 

 来年度は、島根創生計画の計画期間の最終年度となります。

 人口減少対策は、一人ひとりの方々に、島根で暮らし、子育てをしていこうと思っていただく、こうした、人生の選択をしていただくということの積み重ねであり、地道で継続的な取組が必要であります。

 そして、島根に残る人、戻る人、移ってくる人を増やすためにも、「人のつながり」や「人のぬくもり」を感じられるといった島根の良さや都会にはない島根の魅力を県内外に広くアピールし、多くの方々に知っていただくことが重要です。県議会、市町村、関係団体、県民の皆様とともに、オール島根で、「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」の実現に向けて、全力で取り組んでまいります。

 また、来年度は、第2期の島根創生計画の策定に向け検討を行う年度になります。これまで進めてきた島根創生の取組の効果検証や評価を行い、県議会のご意見も伺って、令和7年度から11年度までの新たな計画の策定に取り組んでまいります。

 引き続き、県政運営へのご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。

 

 この後、提出いたしました予算案を含め諸議案の詳細につきましては、総務部長から説明させることといたします。

 

 何とぞよろしくご審議のほど、お願い申し上げます。


お問い合わせ先

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〒690-8501 島根県松江市殿町1番地
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