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用語解説

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・ TAC

  漁獲可能量(Total Allowable Catch)の略称で、あらかじめ漁獲量の上限を定め、その範囲内に漁獲を収めるように漁業を管理することをTAC制度と呼んでいます。漁獲量の上限は暦年または漁期年などで定めた1年間を単位として資源状態や経営事情などの社会的要因を考慮して設定されます。日本では平成9年からこの制度が開始されました。現在、マアジ、マイワシ、サバ類(マサバ、ゴマサバ)、スケトウダラ、サンマ、ズワイガニ、スルメイカがTAC魚種として指定されています。TAC制度は、水産資源の保存・管理の中核となる公的制度ですので、その基礎となる資源評価については、今後、資源調査の充実を図るとともに評価精度の一層の向上を図ることが望まれています。

 

・ 栽培漁業

  有用な水産資源を人間の手を加えて積極的に増やしながら合理的に獲る漁業の方式をいいます。対象生物の種苗を大量に放流して積極的に資源の増大を図りながら漁獲する漁業のあり方をせまい意味で栽培漁業という場合もあります。古くからおこなわれてきたサケ・マス類の人工ふ化放流事業はその典型的な例です。

  広くは上述の種苗生産・放流の手法のほかに、水産生物の生息環境を工学的手法で直接・間接に改善、造成、管理して対象生物の繁殖と増大を図る方法(たとえば人工礁を設置して漁場を改善すること)や禁漁期・禁漁区・漁具漁法の制限、漁獲物の大きさや漁船数の制限などをもうけて対象生物の繁殖・保護をする方法を含めます。

  栽培漁業は資源を積極的に培養しつつ、最も合理的な生産を行うことを基本とする沿岸漁業が目指す漁業のあり方です。       

 

・卓越年級群

  魚類資源は生まれた年が1年ずつちがう年齢集団(年級群)から成り立っています。この中で、ある年に生まれた魚の個体数が他の年に生まれた魚の個体数に比べて特別に多い場合、その年齢群のことを卓越年級群と呼んでいます。

  一般的に魚類は多くの卵を産み出しますが、発生初期の生残りは非常に小さいことが分っています。多くの魚類ではこの時期の生残率のわずかな変化がその後成長して漁業資源になる量に大きく影響するのです。卵あるいは仔魚期の恵まれた生育環境が卓越年級を生じさせる原因のひとつであると考えられています。

  いちど卓越年級が現れるとその年齢群は漁獲物中で常に高い割合を示し、その年級が高齢になって死亡していなくなるまで毎年高い漁獲量が得られる場合があることなどもよく知られています。

 

 ・系群

  水産生物のなかには同じ種のなかに産卵期、産卵場、分布域、回遊、成長などで独自の生物学的特徴を有する独立性の高い複数の集団が認められる例が多くあります。水産業の対象となっているこのような種内の集団を水産資源学では系群とよんでいます。系群はある程度遺伝的にまとまった集団で、独自の数量変動が想定されており、資源の調査や解析・管理は個々の系群を単位として別々に行う必要があります。したがって系群は水産資源変動の研究の基本単位になります。

  系群の識別は形態を比較する方法や生化学的な手法、標識放流の情報のほか、生態的な知見をもとに総合的に判断されています。

(森脇晋平)


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