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農水商工委員長報告

農水商工委員長報平成29年2月定例会

 

 農水商工委員長報告をいたします。

 農水商工委員会に付託されました議案の審査結果等について報告いたします。

 

 今定例会において本委員会に付託されました議案は、「平成29年度島根県一般会計予算」など予算案8件、「使用料及び手数料の額の改定等に関する条例」など条例案2件、「直轄特定漁港漁場整備事業に対する県の負担について」など一般事件案2件であります。

 

 これらの議案について、執行部に説明を求め、慎重に審査いたしました結果、いずれの議案も全会一致をもって、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。

 

 次に、議案の審査過程における執行部からの説明、委員からの質疑、意見等のうち主なものについて報告いたします。

 第2号議案「平成29年度島根県一般会計予算」についてであります。

 商工労働部から「しまね観光誘客推進事業」及び「特定有人国境離島地域滞在型観光推進事業」について説明があり、委員からは、これらの事業を工夫し隠岐地域の誘客における課題の解決に取り組んでもらいたいとの意見がありました。執行部からは、隠岐支庁を中心に関係部局とともに取り組みたいとの回答がありました。

 「中小・小規模事業者等出産後職場復帰促進事業」では、委員から今年度の実績と来年度の見込みについて質問がありました。執行部からは年度後半から徐々に申請が増えており、来年度は積極的に周知を行うことにより申請者の増を見込んでいるとの回答がありました。

 次に、農林水産部・商工労働部両部共管の「しまね食品産業総合支援事業」における県産品販売サイトの運営力強化では、委員から県産品を販売している民間事業者のサイト等を調査し相乗効果をもたらすようにしてもらいたいとの意見がありました。

 続いて、農林水産部の「水田農業緊急総合支援対策」では、委員から県独自の基準や品種の見直しなどにより島根米の価値の向上を図ってはどうかとの意見があり、執行部からは、今後は売れる米作りが基本となることから、島根ならではの米作りの考え方を検討する中で売り先のニーズに応じた品種転換や栽培方法の導入などを進め、島根米の販売力強化を図っていきたいとの回答がありました。

 「野生鳥獣被害対策事業」では、委員から担い手の確保について質問があり、執行部からは集落や営農組織単位で防除や捕獲に取り組んでいただけるよう働きかけていくとともに、様々な制度を活用して担い手の確保に努めたいとの回答がありました。

 

 次に報告事項など所管事項調査における質疑、意見等のうち主なものについて申しあげます。

 商工労働部所管事項についてであります。

 執行部から報告のありました「石州瓦産業の発展に向けた取り組みについて」では、委員から業界が策定した中期計画の販路開拓について質問がありました。

 執行部からは、石州瓦業界が行う取り組みについて、県は販路開拓への助成や、県のネットワークの活用といった側面的な支援を行っていくとの回答がありました。

 そのほか、委員からは、出雲市で分散飼育されているトキについて、一般公開された場合の観光資源としての活用に関する質問があり、執行部からは、今後、関係機関と相談しながらどのような活用が可能であるか研究していきたいとの回答がありました。

 

 さて、本委員会では昨年度から、「若者の働く場の確保に向けた農林水産業及び地域産業の競争力強化」をテーマとして、県内外の農林水産業や製造業において、規模は小さいながらも新たな事業や経営改善などに積極的に取り組み、若者の雇用や定着に成果をあげている事例を調査し、検討を進めてまいりました。

 以下、調査等を通じて得られた成果を踏まえ、報告いたします。

 

 はじめに、農林水産業についてであります。

 本県は、県土の大部分が中山間地域等の条件不利地域であり、総じて農林水産業の生産規模が小さく、他産地との競合の面において課題を抱えています。そうした状況の中で生き残りを図るためには、地域資源を最大限に活用し、創意工夫により魅力ある産業を生み出すことが重要であると考えます。

 このため本委員会では、浜田市や津和野町で農業の効率化や持続可能な経営に取り組んでいる事例や、海士町の水産業や畜産業等で小規模ながらも地域資源を活かし、大きな成果をあげている事例を調査しました。

 農業の効率化や持続可能な経営に向けた取組では、集落営農組織が法人化や広域連携を進め、農業資材等の共同購入や無人ヘリコプターでの防除作業等によるコストや労力の軽減、米の栽培基準を統一することによるブランド化、さらにはUIターン等による新たな人材の雇用・育成等を積極的に行っていました。

 また、地域資源を活かした取組では、地元事業者が、特産であるいわがきの種苗生産から養殖、販売までの一貫した体制づくりに取り組んだり、島生まれ島育ちの和牛を島内で大規模に肥育し、首都圏をターゲットにブランド化するなど、先進的な取組を展開していました。

 これらの取組はいずれも、企業的経営手法を導入して経営基盤を強化し、経営の効率化や農林水産物の高付加価値化等を図り、生産者の所得増加や若者の雇用につなげていました。

 今後、こうした取組を県内各地へ波及・定着させていくことが重要であり、中山間地域における過疎・高齢化が急速に進んでいる状況においては、関係者に対する働きかけや、将来にわたって農林水産業を支える経営感覚に優れた担い手の育成をこれまで以上に積極的に行う必要があると考えます。

 

 続いて、製造業についてであります。

 県内の製造業は、特殊鋼、鋳物、電子部品などの産業の集積や生産拠点があり、県内産業に占める雇用者数の割合も高く、地域の経済や雇用を牽引しています。一方で、全国と比較すると従業員一人当たりの付加価値額が低く、収益性、生産性の向上が課題とされています。

 また、国内の製造業を取り巻く経営環境が一段と厳しくなる中、経営や事業の見直し、新分野への進出などの取組が求められていますが、県内企業の多くは、それらに必要な情報や知識、人材、資金、マーケティング力などの経営資源に限りがあるのが実情です。

 本委員会では、こうした課題への対応を検討するため、益田市や福島県会津若松市で、ICT化・自動化などによる生産性の向上や人材育成に積極的に取り組んでいる企業を調査しました。これらの企業では、労働生産性を向上させることで捻出される労働力を付加価値の高い分野に振り向けることにより、企業の成長を図り、若者の雇用や定着を実現していました。

 今後、人口減少が見込まれる中で、労働生産性を向上させるためには、先端技術の活用と、生産管理、財務管理、販路開拓など経営の根幹となる業務を担う高度な産業人材を育成することが極めて重要であると考えます。

 また、会津若松市で、規模は小さくても自社技術を応用し、新たな市場や需要を開拓している企業や、産学官が連携したネットワークを構築することにより、限られた経営資源を効果的に活用している事例についても調査しました。

 そこでは、異業種・異分野連携により、その企業にしかできないオンリーワンの技術・製品を生み出し、企業の成長につなげていました。また、企業同士が経営資源を相互に補完し、経営改善や技術力向上、受注拡大を図っていることや、連携企業の従業員が互いに切磋琢磨し、労働意欲の向上につなげていることなど、様々な好循環が生まれており、本県においても参考とすべき取組でありました。

 

 これらの調査結果を踏まえて、本県の農林水産業や地域産業の競争力を強化し、若者の働く場の確保に向けた施策の方向性として、次の5項目について提案いたします。

 

 1.集落営農組織の法人化や広域連携の推進について

 ・集落営農組織の法人化や広域連携の取組を推進するため、集落営農法人の設立期から経営安定期

 までの継続的な支援や、広域連携組織の設立に向けた計画づくりの支援などを強化すること

 2.地域資源を活かした多様な農林水産業のさらなる振興について

 ・消費者ニーズと地域資源を結びつけた産業創出を一層促進するため、これまで以上にきめ細かな

 ニーズの把握に努めるとともに、豊かな自然環境や地域の特色を活かした多様なものづくりを進め

 るための支援策のより柔軟な運用や拡充について検討すること

 3.農林水産業を支える人材育成の強化について

 ・将来にわたって農林水産業を支える人材を育成するため、教育機関等と連携し、若い世代に農林

 水産業の魅力を伝え、早い段階から将来の担い手となる意識付けや、経営感覚に優れた担い手の育

 成に、より積極的に取り組むこと

 4.収益性や生産性の向上を目指す中小企業に対する支援策の強化について

 ・中小企業におけるICT化・自動化などの技術導入・活用に対する支援策の拡充や、「しまねソ

 フト研究開発センター」など関係機関による技術支援の強化を図ること

 ・企業支援や人材育成・訓練を行う関係機関が連携し、中小企業の人材育成を効果的に進めるため

 の体制を整備すること。また、中小企業の経営者、技術者、現場従業員など階層に応じた人材育成

 プログラムを整備するなど、企業ニーズに応じた支援を行うこと

 5.中小企業の新分野進出とネットワーク化の推進について

 ・中小企業の新分野への進出や新たなビジネスモデルの構築に向けた取組がさらに促進されるよ

 う、県が実施している「専門家の派遣による経営基盤の強化」、「新製品・新技術の開発に対する

 助成」、「県外及び海外市場などをターゲットとした展示商談会への出展支援」などの施策の充実

 を含め、より効果的な支援を実施すること

 ・中小企業が他の企業等と連携しながら、商品開発、販路拡大、共同受注、人材育成などに取り組

 むためのネットワーク化に対する支援を進めること

 

 以上が、本委員会の調査テーマに関する調査結果の報告であります。

 

 以上、農水商工委員会における審査の概要等を申し述べ、委員長報告といたします。



お問い合わせ先

島根県議会

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