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文教厚生委員長報告

文教厚生委員長報平成28年11月定例会(12月16日)

 

 文教厚生委員長報告をいたします。

 今定例会において文教厚生委員会に付託されました議案のうち、既に12月7日に報告いたしましたものを除く議案の審査結果等について報告いたします。

 

 本委員会に付託されました議案は、「島根県社会福祉施設等耐震化等臨時特例基金条例を廃止する条例」など条例案4件であります。

 

 これらの議案について、執行部に説明を求め、慎重に審査いたしました結果、いずれの議案も全会一致をもって、原案どおり可決すべきとの審査結果でありました。

 

 次に、報告事項など所管事項調査における質疑、意見等のうち主なものについて申し上げます。

 

 健康福祉部所管事項についてであります。

 執行部から報告のありました、「保育所入所待機児童の状況について」では、委員から、国が定義する待機児童とそれに含まれない入所未決定者をあわせた待機児童対策について質問があり、執行部からは、市町村が地域のニーズや施設の状況等を踏まえながら、定員の拡大や保育所の新増設など、国や県の制度を活用して待機児童の解消に取り組んでいく必要があるとの回答がありました。

 また、委員から、保育士の処遇改善についても考えていく必要があるのではないかとの意見があり、執行部からは、保育士の賃金等については改善されてきているが、引き続き国に対して処遇の充実を求めていくとの回答がありました。

 

 さて、本委員会では昨年から「安心して島根で子供を産み、育てる環境づくりに向けて」を調査テーマに、現地調査を含め調査活動を行ってまいりました。

 島根で生まれ育った子供たちが、島根の何処にいても、誰一人漏れることなく、地域やさらに広い世界で必要とされる人材として育っていくためには、切れ目のない「子育て」と「教育」環境を構築していくことが大切であることから、本委員会の調査テーマに選定することとし、「少子化対策」と「先進的な教育の取り組み」について調査いたしました。その結果を報告するとともに、今後の県の施策展開に求めることを申し上げます。

 

 まず「少子化対策」についてであります。

 県外では、福井県をはじめとする他県の子育て施策や現場事例を調査いたしました。いずれの県においても地方創生を進める上で、少子化対策に力を入れており、より効果的な施策を展開するために、全庁横断的な体制で、市町村や民間企業等とも連携した取り組みが行われていました。

 また、県内においても、出会いから妊娠・出産・子育てまで様々な支援が展開されており、地元で子どもを産み、育てる希望をかなえる社会づくりに向けた取り組みを調査することができました。調査を進める中で、現場の方の業務の大変さや保育の人材確保の難しさなどの声を多く聞く一方で、それを乗り越えていくやり甲斐に溢れた声も聞くことができ、現場の士気の高さを改めて確認することができました。

 

そこで、少子化対策を一層進めていくために、次の4項目について求めるものであります。

 

1.結婚に向けた出会いの支援について

・県内男女の交流支援はもとより、都会地でUIターンを検討している男女の交流支援も進めるため、「しまね縁結びサポートセンター」を拠点とした活動や、「はっぴぃこーでぃねーたー」による個別相談対応の充実を図ること

 

2.妊娠・出産・子育ての支援について

・小・中学校の頃から、命の大切さや妊娠、出産について理解が深まるように、啓発活動を一層推進すること

・安心して子どもを産み育てるためには、妊娠から出産・子育てまで切れ目のない支援が重要であり、市町村の取り組みを一層支援すること

・待機児童解消に向けて、保育士の確保・定着につながる処遇や職業イメージ等の改善を行い、年度途中でも入所可能で保護者が安心して働くことのできる環境づくりを加速すること

・就学後の保育は、保護者の要望を受け止める体制づくりが重要であり、保護者と自治会や公民館、学校等の様々な関係機関が関わる放課後児童クラブや放課後子ども教室の活動とその連携を支援すること

 

3.仕事と子育ての両立に向けた支援について

・男性が育児に積極的に参加できる環境づくりを進める必要があり、職場における部下の子育てを応援し、マネジメントできる管理職「イクボス」の養成など、仕事と子育てが両立できる職場環境づくりに積極的な企業の取り組みを支援すること

・安心して子どもを産み、育てるためには、出産後に復帰しやすい職場環境づくりが必要であり、県内の多くの企業で実現できるように啓発や奨励活動を進めること

 

4.さまざまな課題に対応できるしくみづくりについて

 島根で子育てをして良かったと実感してもらうためには、今まで述べた項目だけでなく、子育てに関係する様々な課題にも対応していくことが必要です。

 そこで、様々な要因が複雑に絡み合った課題に対して、きめ細かい支援策を講じていくために、最後の項目として、次の3点を求めます。

・母子家庭等に対する様々な子育て支援について、関係機関等の理解が進むように周知を行うこと

・発達障がいについて、様々な発達障がいに対する理解が進むように啓発活動を行うとともに、早期発見の重要性と支援策の周知に努めること

・子どもの貧困対策について、まず県内の現状を把握し、それに基づく効果的な支援策を検討していく必要があり、関係部局間で現状をしっかりと共有した上で施策の検討を進めること

 

 

 次に「先進的な教育の取り組みについて」であります。

 現在、島根においては、豊かな自然・歴史・文化・伝統などを題材とした「ふるさと教育」や「地域課題解決学習」など、地域の特色を活かした教育が小・中学校や高校で行われ、学校における「学び」と「地域や社会」との接点を意識した学習に意欲的に取り組む子ども達が増えてきたと聞いています。

 また、離島・中山間地域の8つの高校においては、魅力化・活性化事業に取り組み、県外入学生の増加や、地域との交流による学校の活性化など、様々な成果が得られており、これまで地域と関わりの少なかった高校を地域総がかりで支えていくという考え方が定着しつつあることも聞いております。

 島根が有する豊かな地域資源を活かし、子供にとって魅力のある教育を実践していくことが、次の世代からも選ばれる「地域の魅力」を実現するものであり、地方創生や中山間地域の活性化における重要な施策の一つとして、市町村とともに、校種を越えた取り組みに広げながら、「教育の魅力化」を推進していく必要があります。

 そこで、芽生え始めた意欲的に向かっていく力や社会に能動的に関わり貢献していく力を伸ばすために必要な、先進的な取り組みを調査しました。

 

 まず、県内においては、中山間地域の公民館活動を調査し、「人とつながり、よりよく生きていくための力」の育成を目指し、子どもから高齢者まで様々な世代を巻き込み、子どもへの地域文化の継承や地域愛の醸成に取り組まれていることを確認しました。さらには、地域を持続・発展させるための課題解決支援に取り組む状況も確認することができました。

 また、県内外の県立図書館においては、「知の拠点」として「人づくり」と「地域づくり」を担う図書館という観点で、市町村立図書館や学校図書館と連携して住民サービスを提供している状況を調査しました。

 また、県外においては、スーパーグローバルハイスクールの取り組みやタブレット端末を活用した授業などを調査しました。

 調査先のスーパーグローバルハイスクールでは、国際的に活躍できるリーダーの育成を目指した学習カリキュラムに取り組み、グループディスカッションや英語でのプレゼンテーションなどを授業に組み入れながら進めていました。また、単なる授業だけではなく、実社会で使える英語力を育成するために、国内外に出かけてのフィールドワークを取り入れていました。

 なお、全国で123校ある指定校には、本県からも出雲高校、隠岐島前高校の2校が指定されており、その取り組みにも注目していきたいと考えております。

 タブレット端末を活用した授業では、子ども達の学習意欲を喚起したり、他者の意見に触れる機会が少ない小規模校の間をリアルタイムでつないで意見交換することで、思考を深めたりする効果があるとのことでした。

 

 以上の調査を踏まえて、次の2項目について求めるものであります。

 

1.地域を知り、地域で学ぶ体制について

・学校でのふるさと教育、公民館を核とした地域活性化の取り組みを支援し、地域愛の醸成や地域課題解決への取り組みを一層推進すること

・県立図書館が単なる情報ソースとしての資料・情報の提供に留まらず、市町村立図書館や学校図書館との連携や、起業に必要な情報提供など関係機関と連携した課題解決型の支援を一層強化すること

 

2.主体的に学ぼうとする人材育成について

・スーパーグローバルハイスクールで得られた成果を県内に普及し、各高校において主体的に学ぼうとする生徒の育成に活かすこと

・情報技術が進展する中、教育現場においても情報技術を活用することは有用であるが、子どもの主体的、対話的で深い学びのための手段として技術導入を進めること

 

 最後に2年間の調査において、委員全員が感じたことを述べ、まとめとします。

 少子化対策や先進的な教育の確立など、県にとって重要な取り組みを進めるためには、関連する部署がお互いに力を出し合い、支え合うプロジェクト体制をとることが重要です。県外調査を行い、島根県は他県に比べそれが大きく遅れていると感じました。

 例えば、少子化対策では、出産や子育てしやすい環境づくりはもちろん、より多くの部署が協力し、雇用条件や処遇面なども含めたより総合的な検討が進められるように、今の体制を成熟させていく必要があります。

そのためには、県職員の皆さんが、県民の中へ出かけていく機会をもっと増やし、県の思いも伝えながら、現場の意見を真摯に聴き取り、施策に活かしていかなければなりません。

 成果はすぐには出ません。10年、20年とかかるものもあるかもしれません。しかし、今取り組み始めたことは、途中修正を加えながら継続して取り組めば、必ず成果となって表れてきます。職員の皆さんは、今やっている仕事は、島根の将来に繋がっているという思いで職務に励んでいただきたいと思います。

 「安心して島根で子供を産み、育てる環境に向けて」は、総合戦略で掲げる「子育てしやすく活力ある地方の先進県しまね」を実現する上でも重要な部分の一つであり、全部署の協力と県民の共助があってこそ成し遂げられると考えますので、より一層の総合的な取り組みをお願いして、本委員会の調査テーマに関する調査結果の報告といたします。

 

 以上、文教厚生委員会における審査の概要等を申し述べ、委員長報告といたします。

 



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