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報告第86号

○卜部文化財課長

 報告第86号国指定史跡の追加指定について(田儀櫻井家たたら製鉄遺跡及び山陰道徳城峠越・野坂峠越)についてご報告する。

 文化財保護法第109条第1項の規定に基づき、平成21年2月12日付けの官報において、田儀櫻井家の製鉄遺跡及び山陰道、蒲生峠越について追加指定があった。

 1の1ページをご覧いただきたい。3番、史跡の件数であるが、島根県内では追加指定により49件となった。1の6ページから8ページに島根県の史跡の指定状況について資料をつけているので、また後ほどご覧いただければと思う。

 それでは、田儀櫻井家の製鉄遺跡について説明をさせてもらう。資料1の2ページ及び1の3ページをご覧いただきたい。

 1の3ページの真ん中あたりに、宮本鍛冶山内遺跡があり、その右側に聖谷たたら跡、上の方に越堂たたら遺跡がある。今回その2つが追加指定された。

 宮本鍛冶山内遺跡は既に指定されているが、これが田儀櫻井家の本拠地である。この本拠地を取り巻くようにたくさんのたたらがある。そのうち旧来県指定になっていた朝日たたらについては、既に平成18年に指定されており、宮本鍛冶山内遺跡も田儀櫻井家たたら製鉄遺跡として既に指定されているところである。今回追加指定された越堂たたらであるが、これは田儀川の河口から約1キロほどさかのぼった場所、国道9号を大田の方に向かっていくと、仙山峠の途中、国道9号線沿いにある。文献資料によると、延享2年、1745年から明治15年、1882年まで長期にわたって操業されていたと言われている。

 このたび発掘調査をして、「田儀村誌」に書かれていた越堂たたらの配置図と矛盾することなく地下遺構が出てきた。通常、たたらというのは山の中にあるのが普通である。特に昔から、小鉄七里に炭三里という言い方をされていて、砂鉄は遠くから持ってくるが、炭は近くから持ってこないといけないということが言われている。この越堂たたらについては、田儀櫻井家の記録などを見ても、いわゆる玉砂鉄を使って操業している。玉砂鉄というのは、川から砂鉄が流れてきて海岸端にあるのを、島根県だけではなく、例えば米子の皆生海岸などから船で持ってきて操業していたと言われている。そういう意味では、非常に特殊なたたらと言えることになると思う。

 聖谷たたらであるが、これは宮本地区から約3.5キロメートル東に離れたところにあり、平たん面などいろいろなものがある。この発掘調査をしたところ、高殿たたらの地下遺構や排滓場、鉄を冷ます池等が確認されている。これは文献上には出てこないが、遺跡の一角に田儀櫻井家の4代目の当主の銘が刻まれた石龕があったということ、また、地蔵の石台に享保19年の紀年銘があり、田儀櫻井家の初期に当たるたたらであるということが確認され、このたびの史跡指定になったものである。

 田儀櫻井家は仁多の櫻井家から2代目に分家したもので新しいが、この宮本鍛冶屋を中心として周りに衛星的にたたらをつくっていき、たたらでできた鉄を鍛冶屋に持ってきて、そしてまた各地に運んでいるということが特徴的な形である。今後も発掘調査が進むと、田儀櫻井のたたらから追加指定になる可能性が広がる。

 続いて、山陰道の方であるが、鳥取県と兵庫県を越えていくところの峠の道路について、平成17年に山陰道、蒲生峠越として指定されているものである。これに、このたび徳城峠越と野坂峠越という、津和野町の峠越えが指定されることになった。資料は1の4ページ及び1の5ページである。徳城峠は、旧日原で約3キロ、野坂峠は約1.5キロである。特に野坂峠については、写真をつけているが、側溝や、石敷、石垣等が設けられており、番所の跡も確認されている。石敷と称して、石の上に見えているような、上に土を盛って道路をなしていたものと推定されている。

 この近世山陰道の益田−津和野間は天領があり、それを大きく迂回するような形で高津港に往来するという目的を持ってつくられた道路だと考えられている。特にこの道は、長州との境にあり、幕末の維新のときに長州の政治家や志士たちが往来に使ったと言われており、第2次長州戦争のときにも、この道が使われ、非常に歴史的な価値の高いものだと言われている。

 

○石井委員

 宮本鍛冶山内遺跡が指定されたのは、規模的に大きいから、ということか。

 

○卜部文化財課長

 規模はそれほど大きくないが、あった場所がきちんと残っていることで注目されている。

 

○山根委員長

 山陰道で指定を受けているのは鳥取県の岩美町と、津和野町だけか。

 

○卜部文化財課長

 おっしゃるとおりであり、文化庁が指定に値するような道としてきちんと残っているのが、今のところその2つだということである。今後調査が進むと、場合によっては増えてくる可能性があるかもしれない。近世山陰道として、京都の方から山口に至るまでのところを全部統合網羅しようと考えているようである。

 


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