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島根県「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」運用方針

平成14年10月16日制定

法第4条関係(基礎調査)

法第5条関係(基礎調査のための土地の立入り等)

法第6条、第8条関係(土砂災害(特別)警戒区域指定)

法第7条関係(警戒避難体制の整備)

法第25条関係(移転等の勧告)

 はじめに

 本県は、地形が急峻で県土の約80%を山地が占めており、また、広い範囲で風化花崗岩が露出するなど地質も悪く、全域が特殊土壌地帯(マサ)に指定されている。このため、豪雨のたびに土石流・地滑り・がけ崩れが発生し、過去幾度となく、尊い人命や貴重な財産を失ってきた。 

 県では、これらの災害を未然に防止するため、砂防・地滑り・急傾斜地崩壊対策等の事業を鋭意進めてきた。 

 しかしながら、県内には土砂災害のおそれのある箇所が極めて多く、人家が5戸以上存する箇所に限っても、約6,000に達している。このため、土砂災害防止のための対策工事には膨大な時間と費用が必要で、現在、土砂災害防止施設の整備率は20%に満たない状況である。 

災害を軽減し、県民の安全確保に万全を期すためには、土砂災害防止施設の整備と併せ、多様な施策が必要となる。これには、平成13年4月施行された「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「法」という。)」に基づく総合的な対策を進めることが有効である。 

 この法に関連しては、政令・省令・告示のほか、(財)砂防フロンティア整備推進機構により、「基礎調査の手引き」が制定されているが、県では、法の適正かつ公平な施行のため、住民アンケートを実施して地域の実情や住民の意向を把握するとともに、学識経験者・住民代表・宅地開発関係者・マスコミ関係者で組織する委員会で検討し、県独自の運用方針を定めることとした。

1 法第4条関係(基礎調査)

 

1 計画的な調査の実施

(1)基礎調査の対象箇所

 基礎調査の対象は、既に実施した危険箇所調査で抽出した危険箇所とするが、基礎調査の過程で新たな箇所が判明した場合、これを加えるものとする。また、危険箇所のうち、基礎調査時点で住宅の建っていない箇所は、住宅建設の可能性の高いものに限定するものとし、対象から外した箇所は、概ね5年毎に実施する基礎調査時に見直すものとする。ただし、急傾斜地崩壊危険箇所のうち、国・地方公共団体及び日本道路公団が管理する道路であって、防災対策が施されているものは、基礎調査の対象としないものとする。

(2)基礎調査を行う順序

 基礎調査は、開発の可能性の高い市部を含む土木建築(土木)事務所管内及び危険箇所の多い土木建築(土木)事務所管内から実施するものとする。 

 法第4条第1項の基礎調査の実施については、土砂災害防止対策基本指針(以下「指針」という。)2−1に「土砂災害が発生するおそれがある土地のうち、過去に土砂災害が発生した土地及びその周辺の土地、地域開発が活発で住宅・社会福祉施設等の立地が予想される土地等について、自然的・社会的状況を総合的に勘案した計画的な調査を行うこと」とされている。このため基礎調査の対象を明確にするとともに、どの地域から調査を進めていくかを定める。 

(1)基礎調査の対象箇所

  1. 用語の定義
    ・基礎調査
     法に基づき行われる土砂災害防止のための対策に必要な基礎調査として、土石流・地滑り・急傾斜地の崩壊のおそれがある土地に関する地形・地質・降水等の状況、土砂災害の発生のおそれがある土地の利用状況及びその他の事項について行う調査をいう。
    ・危険箇所調査
     建設省河川局砂防部より通達のあった「土石流危険渓流及び土石流危険区域調査要領」、「地滑り危険箇所調査要領」及び「急傾斜地崩壊危険箇所等点検要領」に基づき実施した調査をいう。
    ・危険箇所
    1)渓床勾配2度以上で谷地形をなした渓流(土石流)
    2)地滑り地形を呈している斜面(地滑り)
    3)傾斜度30°以上・高さ5m以上の斜面(急傾斜)
     であって、危害の及ぶ範囲に人家等の存在又は将来人家等の立地が予想される箇所をいう。 
  2. 対象箇所の考え方等 ・危険箇所調査は、平成12年度までに行ったものであり、その後の開発行為等で新たな危険箇所の発生が考えられるため、これを調査対象に加える。 ・危険箇所の抽出は図上で行ったものであるため、現地の状況を考慮すると、住宅建設の難しい箇所がある。この場合、土地利用や開発動向の情報を把握しやすい市町村に、住宅建設の可能性について意見を聞き、基礎調査対象とするかどうかを検討する。 ・基礎調査時に行う説明会等で、市町村及び住民の意見を聞き取り、危険箇所についての情報を幅広く収集する。   

(2)基礎調査を行う順序

  1. 新たな危険箇所の発生を抑制することが法の大きな目的となっているため、開発の可能性を調査順序決定の基準とする。基礎調査が完了し指定前の段階で、新たに開発が計画された場合でも、調査結果を活用し、土地利用計画を調整することができることから、これを定める。
    また、指定効果が高いことから、危険箇所の多寡を調査順序決定の基準とする。 

  2. 県下の危険箇所全体を対象として優先順位を付け、その順序に従って基礎調査を行う方法が考えられるが、調査には長い期間を要することから、同一地域内で実施時期に大きな差があると、無用な混乱を生ずるおそれがある。このため、基礎調査は土木建築(土木)事務所を単位として実施する。また、これにより、住民周知も容易となる。 

2 基礎調査結果の住民への周知と意見集約

 市町村は、県から基礎調査結果の通知を受けたときは、土砂災害(特別)警戒区域の位置図・区域図を市町村の事務所及び関係する公民館において公開するものとする。また、関係住民に対し、速やかに調査結果の説明会を行うとともに意見の集約に努めるものとする。 

 法第4条第2項に規定する、基礎調査結果を市町村長に通知する際の、住民への周知方法と意見集約について定める。 
 災害の防除に責務を有する市町村長は、基礎調査結果の通知を受けたとき、区域指定の目的や意義、私権の制限を伴うこと等、住民に周知徹底するため、図面の公開と説明会を開催する。このとき、市町村の求めがあれば、指定区域に関する情報を持つ県も説明会に同席する。
 また、市町村は、説明会やインターネットなどを通じて、住民意見の集約に努める。 

2 法第5条関係(基礎調査のための土地の立入り等)

 

1 基礎調査のための土地の立入り

(1)他人の占有する土地に立入る場合

 県は、調査作業を行うに当たり、市町村ごと又は一市町村を数ブロックに分割し、自治会役員等を対象として説明会を行うとともに、危険箇所内の土地占有者に、法の概要・作業内容を記したリーフレットを配付するものとする。

(2)宅地又は垣・さく等で囲まれた他人の占有する土地に立入る場合

 県から基礎調査業務を受託した者は、当該土地の占有者に対し、調査目的・請負会社名・立入り者氏名・立入り日時を、戸別に告げるものとする。

 法第5条第2項に規定する「他人の占有する土地に立入る場合」及び、同条第3項に規定する「宅地又は垣・さく等で囲まれた他人の占有する土地に立入る場合」に、あらかじめ行わなければならない、土地の占有者に対する通知の方法や内容を定める。 

3 法第6条、第8条関係(土砂災害(特別)警戒区域指定)

 

1 区域の指定

(1)指定作業の単位

 指定の作業は、原則として公民館の所管範囲(以下「地区」という。)ごとに、基礎調査結果に基づいて行うものとする。

(2)指定作業の順序

 地区ごとの指定作業の順序は、原則として次のとおりとする。ただし、同一の順序となった場合には、危険箇所の多寡で順序を決定するものとする。なお、災害の兆候が認められる場合等で、緊急に指定を要する箇所についてはこの限りでない。

 第1位 過去20年以内に災害履歴のある危険度の高い箇所を含む地区
 第2位 災害弱者関連施設の存する地区
 第3位 高齢化率が35%を超える地区
 第4位 都市計画区域を含む地区
 第5位 その他の地区

 上記の順序で地区ごとに作業を実施するが、対象地区内の危険箇所に、砂防事業等によって整備された施設又は同等の機能を有する施設が既に存する場合には、その箇所の作業は、県内全体の指定作業が概ね完了した後に実施するものとする。

(3)指定しないことができる箇所
  • 急傾斜地
    急傾斜地であっても、堅固な岩盤等で明らかに崩壊が発生しない箇所は、専門家の意見を聞き、理由を明確にした上で土砂災害警戒区域に指定しないことができる。
  • 地滑り
    地滑り危険箇所であっても、地滑りブロックが確定できない箇所は、差し当たり、土砂災害特別警戒区域に指定しないことができる。

 法第6条第1項及び法第8条第1項の区域指定については、指針3に「指定要件に該当する区域が相当数に上る場合には、基礎調査の結果を踏まえ、過去の土砂災害の実態、居室を有する建築物の多寡、開発の進展の見込み等を勘案して、逐次指定することが望ましい。」と示されている。これを参考として、指定の優先順位の決定方法を定める。

(1)指定作業の単位

 住民周知の徹底を図るため、生活単位を考慮し、公民館の所管する範囲を指定作業の単位とする。 

(2)指定作業の順序

  1. 災害履歴のある箇所は崩壊を繰り返す危険性があり、このような箇所を含む地区を第1位とする。
  2. 特に防災上の配慮を必要とする災害弱者関連施設を含む地区を第2位とする。
  3. 高齢者の避難には介助が必要であり、災害弱者関連施設に次いで高齢化率の高い地区を優先し、第3位とする。
  4. 開発の可能性の高い都市計画区域を含む地区を第4位とする。 

 同位の場合は、指定効果を考慮して、危険箇所の多寡をもって順序を決定するが、土砂災害防止施設が整備済みの箇所は、未整備箇所より相当程度安全性が向上しているため、未整備箇所を優先する。 

(3)指定しないことができる箇所

1 急傾斜地
 法第6条第1項に、知事は、政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域として指定することができるとされているが、指定しないことができる場合を定める。

2 地滑り
 法第8条第1項に、知事は、政令で定める基準に該当するものを土砂災害特別警戒区域として指定することができるとされているが、以下の4点の理由から、指定しないことができる場合を定める。

・十分な調査資料がない場合や顕著な動きが認められないときは、地滑りブロックを確定できない場合がある。 ・施行令に示された特別警戒区域の指定範囲は、地滑り末端から最大60mと広範にわたり、私権を制限するには影響が大きい。 ・近年県内では、勾配30°未満の土地の区域で発生した地すべりで、人的被害が発生した記録はない。 ・地滑り危険箇所であっても高さ5m・勾配30°以上の斜面は急傾斜地崩壊危険箇所として指定できる。 
2 指定区域の公示

 県は、土砂災害(特別)警戒区域の指定をするときは、平面図を使用するものとする。

 法施行規則第5条に規定する土砂災害(特別)警戒区域の明示については、【1】市町村大字・字・小字及び地番【2】一定の地物・施設・工作物又はこれらからの距離及び方向【3】平面図の三通りから選択することとなっており、簡単明瞭に分かる平面図を使用する。

3 公示図書の縦覧場所等

 公示図書は、市町村の事務所において縦覧し、当該公民館においても公開するものとする。

 法第8条第7項の規定によると、土砂災害特別警戒区域指定時における公示図書の縦覧場所は、市町村の事務所と定められているが、周知度を高めるため、住民に身近な公民館でも公開する。

4 指定の解除

 県は、土地の形質変更や土砂災害防止施設の整備に伴い、指定の基準を満たさなくなった場合は、法に基づく手続きを経て速やかに土砂災害(特別)警戒区域の指定を解除するものとする。

 法第6条第6項及び法第8条第8項に規定する「指定の事由がなくなったと認める場合」を定める。 

4 法第7条関係(警戒避難体制の整備)

 

1 警戒避難体制の整備

 市町村は、県から基礎調査結果の通知を受けたときは、速やかに警戒避難体制の計画とハザードマップの作成に着手するよう努めるものとする。

 法第7条第1項では、市町村は、警戒区域の指定があったときは、警戒避難体制に関する事項について定めることとなっているが、県から基礎調査結果の通知を受けることで、計画立案に必要な資料が整うため、指定後速やかに警戒避難体制を公表できるよう、極力早期に策定作業に着手することを定める。 

5 法第25条関係(移転等の勧告)

 

1 移転等の勧告

 県は、土砂災害特別警戒区域内で、土石流・地滑り・急傾斜地の崩壊が発生した場合、あるいは居住者・利用者等の生命・身体に著しい危険が生ずるおそれが大きいと認められる場合には、現地調査の上、移転等の勧告を行うことができる。この場合、危険度の状況、勧告による住宅の移転には住宅金融公庫融資の優遇措置があること、がけ地近接等危険住宅移転事業の補助制度が利用できること、及び、移転等の決断は本人の意思であること等について説明を行うものとする。

  法第25条第1項に規定する、移転等の勧告を行う条件、また、その際の説明の内容を定める。 

※「住宅金融公庫の融資制度やがけ地近接等危険住宅移転事業の補助制度」

ア)特別警戒区域内に存する居室を有する建築物で、県から移転勧告を受けた場合には、住宅金融公庫の貸付条件で、段階金利を適用せず、11年目以降も引き続き基準金利が適用される。また、据置期間の設定(3年以内)とこれに対応した償還期間延長の特例がある。
イ) 特別警戒区域内の不適格住宅に対しては、がけ地近接等危険住宅移転事業の対象となり、諸条件あるが、最高7百万円程度の補助がある。
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