『風土記』ってなに? 西暦713年(今から約1,300年前)の奈良時代に、時の政府は全国に地方の地名の由来、特産物、古老の伝承、などを調査し、報告するように命じました。 当時は全国60余りの国すべてについて風土記がつくられたはずですが、現在まで残っているのは『出雲(いずも)国風土記』のほか、『常陸(ひたち)国風土記』(茨城県)、『播磨(はりま)国風土記』(兵庫県)、『肥前(ひぜん)国風土記』(佐賀県、長崎県)、『豊後(ぶんご)国風土記』(大分県)の5つだけです。 これらの『風土記』は1,300年もの長い間に、大半のものが部分的に散脱しており、すべてが完全に残っているのは『出雲国風土記』だけです。
奈良時代の書物が残っているの? 残念ながら奈良時代当時の『風土記』がそのまま残っているわけではありません。後の時代に手書きで写した『写本』が残っており、この『写本』が『出雲国風土記』を現代に伝えています。→写本
『出雲国風土記』からなにがわかる? 日本の古代の書物は、『古事記』『日本書紀』などが有名です。しかし、これらは中央政府(奈良の都)の政治史を中心に書かれており、地方のことは詳しく書かれていません。 『出雲国風土記』には当時の出雲がどのような姿をしていたかが克明に記されていますので、奈良時代の出雲地方の様子を知ることができます。
『出雲国風土記』はなぜおもしろい? 『出雲国風土記』には奈良時代の地名がたくさん載っています。実は、この地名のなかには、現在でも使われている地名がたくさんあります。出雲で生まれ、育ってきた私たちにとって、『風土記』の地名はすぐ身近にあるのです。 また、山や川、湖、海岸、島も後世の開発をそれほど受けずに今に至っています。つまり、奈良時代の風景が変わらずいまでも見ることができるわけです。 このような「奈良時代の風景」を『出雲国風土記』片手に見て歩くと、見慣れた景色にもふだんと違った味わいがでできます。あらためて、島根の自然の美しさを実感します。
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