リレーシンポジウム「魚と人をつなぎなおす」を開催しました。

 島根県では、鳥取県と連携して、ラムサール条約湿地「宍道湖・中海」に関するリレーシンポジウムを開催しています。

 平成24年度のテーマは、「宍道湖・中海の恵み」。

 今回は、日本の魚食文化を広めるために、精力的に活動されている水産庁職員「上田勝彦」さんを講師に迎え、宍道湖・中海に生息する魚の魅力についてレシピ紹介も交えて、楽しく、分かりやすくお話ししていただきました。

 


1主催:島根県、公益財団法人ホシザキグリーン財団、島根県立宍道湖自然館ゴビウス

2年月日:平成24年11月17日(土)午後1時30分〜午後3時30分

3場所:ホシザキ野生生物研究所(宍道湖グリーンパーク内)


4参加人数:33名

5内容:

講師:上田勝彦氏(水産庁加工流通課補佐Re-Fish代表)

「魚と人をつなぎなおす」


〇賢明な利用について上田勝彦さんの講演の様子

・全国の湖や川の水は、その地域の人が水に対してどのくらい関心を持っているかを映し出す鏡のようなもの。関わり方の度合いによってその水が変わってくる。

・自然の中で育ってきた魚は「無主物」であり、誰のものでもない。魚がたくさんいた時代には、腕の良い漁師の方がたくさん採れるだけ採っていても良かった。

・しかし、現在、魚という資源は枯れつつある。魚を「国民の共有財産」であると仮定すると、魚を食べたいという消費者(国民)のために漁師の方々が国民に代わって魚を採っている。だから漁師の方々には「許可」や「権利」がおりている。共有財産だからこそ、枯らさずに採らなければならない、守りながら採らなければならない。

 

 

〇魚離れの現状

・「魚離れ」が言われ始めたのは約30年前から。生産者である漁師の方だけが漁獲制限をするだけではなく、消費者は買って、食べて生産者を支える責任がある。

・生産者と消費者をつなぐ仲買は、目利きをして同じ魚でも見極めてより高く売るという手間をかける必要があると思う。現在は生産者・消費者・仲買の3者の役割がそれぞれうまくいっていないと思う。

・戦前戦後は日本人の全ての年代が一様に魚を食べていた。1970年代ごろからハイカラな料理が入ってきて、この頃の子ども達から魚を食べる機会が減ってきた。そして現代、特に子ども達は、ほとんど魚を食べていない。

・小学6年生までに覚えた味には、大人になってからも戻ってくる。かつては大人になればまた魚を食べると言われていたが、現代は子どもの頃に魚の味を覚えていないので、大人になっても魚には帰ってこない。

・東京では魚を食べさせる店が増えてきているが、これは今や魚は「おかず」ではなく、「嗜好品」になっているということを示している。

 

〇魚離れの原因

(1)調理離れ

・魚を知らない、調理の仕方を知らない、味を知らない。知らないものは買わない、食べない。

(2)伝承の停止

・核家族化などの影響で、この季節にはあの魚が食べたいと思うような味が伝わっていない。

 

・「知らない」というカードを「知っている」に変えなければならない。

・消費者と魚との間に、どうやって食べるか、どんな味かなどを伝える人がいないと消費者は魚を買わない。魚と消費者を「つなぐ人」の存在が必要である。

 

〇なぜ魚なのか

・地理的に見て、日本は島々のつながりで構成された国。面積は世界で130番目だが、海岸線の長さは世界で6番目に長い。山は急峻で雨が多く水が豊か。そして300〜500種類くらいの魚介類が流通している。このような国は世界でたった一つである。

・他国では、それぞれの風土にあった食べ方をして自給率を維持している。しかし日本の自給率は低く、外国のものを食べ過ぎているのではないか。日本では土地柄、たくさんの肉を国内で生産することは不可能である。魚を食べれば米や野菜はおのずとついてくる。魚、米、野菜を主に食べ、時々肉という食べ方が良いと思っている。

・「何を選んで食べるか」ということがこの国を支えているのである。そのくらい大切なことである。

 

〇宍道湖ではどうか

・「魚」を「湖」、「消費者」を「島根や鳥取の住民」に置き換えてみると同じことが言える。

・斐伊川にダムが2つもできて、大橋川も改修されることになり、宍道湖の環境は変わってきている。

・アマサギ、シジミ、ハゼなどこれまで親しまれてきた魚なども減りつつある。

・地域の人達が宍道湖に関心を持ち、監視の目を注いでいなければならない。漁師が漁獲制限するだけではなく、消費者であり恩恵を受ける地域住民が支えなければならない。地域住民が支える資源回復を推進していく必要がある。だれが調整役をするのか、その人の存在が重要である。

 

〇レシピ紹介

 宍道湖で増えているスズキの調理法を実演していただいた。さばき方の様子

(下処理)

・全てのヒレを料理バサミなどで切って取り除く。

・スチールウールや包丁でウロコをとり、頭を落として内蔵を取って魚を良く洗い、ぬめりや血をきれいに取り除く。

・よく拭いてから粗塩を尾の方から頭に向かってこすりつけ、すぐに流水で洗い流す。

・最後に少量の酒で全身をぬぐってまた流水で洗い流し、水分を拭き取る。これで生臭さが消え、キッチンペーパーなどにくるんでラップして冷蔵庫に入れておけば日持ちがする。

 

(スズキの筒焼き)

(1)スズキを骨ごと5センチほどに筒切りにし、薄塩を当て、焼く前にもういちど塩を振ってから焼く。

(2)セイゴ(30センチ前後)ならば、切れ目を体と直角に5センチ間隔で入れて同様に。

 

(茹でスズキ)

(1)スズキの皮付き切り身に薄塩を当てしばらく置き、フライパンで沸かした湯で5分煮る。煮あがったら刻んだ長ネギとポン酢で。

(2)茹でたてにバターを塗り、粗挽き胡椒、醤油をかける。

(3)茹でたてに刻んだ長ネギとショウガ醤油、ごま油をかける。

料理の様子1料理の様子2

 

(スズキの和え物3種)

 スズキの刺身を醤油とワサビ以外で食べてみよう。

(1)酒と塩とワサビ

荒塩で軽く和えたスズキに少量の酒をふり、臭みを取り、わさびを付けて食べる。

 

(2)刻んだ長ネギと味噌

スズキに刻んだ長ネギと味噌をのせ、好みでみりんを足して和える。

 

(3)刻んだ玉ネギと粗挽き胡椒、レモン、オリーブ油

スズキに薄切りの玉ねぎ、粗塩と少量の酒をなじませ、レモン汁をしぼる。白っぽくなったら余分な汁を捨てる。粗挽き黒胡椒、オリーブ油をかけて。

 

(4)少量の醤油と七味唐辛子で和えて。

 

〇質疑応答

Q.宍道湖のスズキと他の地域のスズキでは味の違いがあると思うが、宍道湖のスズキの味の特徴は?

A.宍道湖のスズキには甘味があるが、くさみが強い。ただし、先程の下処理をすれば臭みはなくなる。魚の旬は産卵前の旨みを蓄えている初夏も良いが、冬に川底でじっとしている時も脂がのっていてうまい。

 

Q.NHKのラジオビタミンという番組にご出演されていたか?

A.はい。テレビはながら見をしているが、ラジオは何をしていても聞こうという意識が働きやすいので、ラジオのほうが伝わりやすい。発信したい情報を必要としている人に的確な方法で伝えることが大切。

 

Q.宍道湖で採れすぎているスズキと住民をつなぐおもしろい提言があれば、お聞きしたい。

A.例えばキャッチフレーズで「スズキは山陰のサケです」というのはどうか。スズキは川で生まれて一度海に出て、また戻ってきてくれるそんなありがたい魚。

 今までは資源が潤沢で、食べてくれる人もたくさんいたので、人間の都合で魚を採ったり売ったりできた。しかし、全国的に魚が採れなくなってきている今、魚の都合で採らなければいけなくなっている。これまで捨てていたようなものも見直して、魅力を再発見する必要がある。魚のルネッサンスであり、県内でそういう機運を盛り立てていく必要がある。行政だけでなく、みんなでやっていかなければならない。

 

Q.小さい頃と現在とで魚に対する見え方に変化があるか?

A.小さい頃から魚は自分にとって変わらない輝きを持っていた。その輝きが大人になるに連れて増えてきた。いよいよ魚ってすごいなと思うようになった。

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