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地球温暖化防止座談会


出席者写真【藤原】地球の気温は20世紀の百年間に0.4〜0.8度上がり、さらに2100年には1.4〜5.8度も上昇。これとともに、海水面は20世紀に10〜20cm上がり、今後さらに9〜88cm上昇すると予測されています。今年(2004年)の夏は猛暑が続き、台風も記録的な10個が日本に上陸するなど異常気象が顕著でした。これらと地球温暖化の因果関係ははっきりしていませんが、今後も影響がとても懸念されます。

【知事】このまま温暖化が進めば、四季折々の豊かな自然や生態系も変化し、島根が誇る美しい景観も失われてしまうのではないかと心配しています。海水面が30cm上がると砂浜の約70%、50cm上がると実に約95%がなくなり、白砂青松の美しい砂浜はほとんど姿を消します。県民が誇りにしている宍道湖や中海でも海水の浸入が進み、塩分濃度も上がるため生態系が変化し、嫁ケ島も水没してしまう恐れがあります。

【藤原】地球温暖化による食料危機や伝染病の広がりなども心配されます。これらの問題を故・坪田愛華さんが描いた漫画「地球の秘密」は実に的確に描いていますね。13年前の作品なのに地球環境への先進的な視点と鋭い洞察に驚きます。愛華さんはなぜ「地球の秘密」を描いたのですか。

【坪田】きっかけは「自然と人間について」という国語の課題でした。資料を調べ、人の話を聞いて、自分なりにまとめたようです。「自然破壊とその対策」について小さな子どもにも分かる本をつくり、人があっと驚くようなものを提出したいと意気込んでいました。難しい文字ばかりでは関心を持ってもらえないので得意だった漫画で描いたようです。

【藤原】地球の秘密はその後、英語やフランス語、中国語、韓国語など11カ国語に翻訳され、今も80カ国以上の国で読まれています。この本をきっかけに1994年、松江市で「国連地球環境子供サミットインしまね」が開催されるなど、愛華さんの作品は県内はもちろん国内外の人々の環境意識を高めました。知事は1992年にブラジルで開かれた地球サミットにも参加されましたね。

【知事】地球の秘密が環境問題に対して非常に的確でセンスのある作品なのでとても感心し、リオデジャネイロであった地球サミットに持参して各国首脳に紹介したのです。すると、各国から高い関心が寄せられ、大きな称賛を受けました。こうしたことをきっかけに、国連地球環境子供サミットを地元開催することができました。その際も、地球の秘密を紹介すると同時に、県民ミュージカル「あいと地球と競売人」を初上演し、世界各国から参加した子どもたちに大きな感銘を与えました。これは原作、脚色、演出、出演などすべてを県民が手掛けた島根県初のオリジナルミュージカルで、その後も各地でキャストを代えながら上演されています。

【藤原】きょうは、そのミュージカルの歴代あいちゃん役の中から3人の方が出席しておられます。それぞれエピソードなどを聞かせてください。

【江谷】私は第1回に出演しました。初公演のためとても大変でしたが、みんなで一緒にやっているという一体感がとてもうれしかったのを覚えています。愛華さんも「みんな一緒になって(環境問題に取り組もう)」という気持ちだったと思います。私は漫画や文章を書くのが苦手ですが、愛華さんの気持ちを大好きな歌で伝えることができたと思っています。

【北野】1997年に益田で公演があることを知り、その日にオーディションの申込書をもらいに行きました。当時、歌や踊りが大好きでしたのでぜひやりたいと思いました。環境問題も、ちょうど学校で勉強していたときでしたので関心がありましたね。私も江谷さん同様に、舞台に一人で立っているときでも、後ろで支えてくださっている方がたくさんいる「みんなでつくるミュージカルなんだ」という思いを強く持っていました。

【佐々木】私は小学4年生の時に子役、5年生の時に主役で二度出演させてもらいました。二度ともとても緊張しましたが、友達がたくさんできて楽しかったです。出演する前はよく、家で電気をつけっ放しにしていましたが、出演後は環境に優しくしようと電気もこまめに消すようになりました。

出席者写真【藤原】さまざまな県民が演じているこのミュージカルを、愛華さんのお母さんはどのようにご覧になっていますか。

【坪田】テーマはいつも同じなのですが、毎回新しい初めて見るミュージカルのように思えて大変楽しんでいます。もっともっと多くの皆さんに見ていただきたいと思います。英語の字幕でも付ければ、世界中で見てもらえるのではないかと思います。

【知事】「あいと地球と競売人」は、全県的に上演機会を設ける方針で毎年続けています。10年目を迎えた本年度は、2005年3月に愛華さんの古里である斐川町で上演します。毎年さまざまな県民に出演していただくのはうれしいことで、いつか世界へ向けて発信したいですね。

【藤原】自然の叡智(えいち)をテーマに開かれる「愛・地球博(愛知万博=会期2005年3月〜9月)」での上演計画もあるようですが…。

【知事】県民参加の「あいと地球と競売人」を上演すると決めました。上演日は5月26日の島根県の日で、会場は3000人収容のエキスポドームです。10年にわたる公演の集大成として「島根県は地球環境保護のための活動を積極的に展開している」というメッセージを国内外に発信し、ぜひ成功させたいと思います。2005年7月には松江市で愛知万博凱旋(がいせん)公演を予定しています。
 

【藤原】ところで、ミュージカルに出演した皆さんは、環境保護のために日ごろから心掛けていることがありますか。

【江谷】大学生になり一人暮らしを始めてから、生活の一つひとつが環境に結び付いていることに気づき、より気をつけるようになりました。社会人になってからも、例えば車のエンジンをこまめに切るなど、小さなことにもきちんと気をつけたいと思います。

【北野】私は大学の寮で大人数で生活するようになってから、自分たちが捨てるごみの量の多さに驚き、ごみの減量を意識するようになりました。一人ひとりが気をつけてごみを出さないといけません。

【佐々木】やはり、電気をこまめに消すとか、親からもらった物を大切に長く使い、リサイクルできる物はリサイクルに回す、といったことを心掛けています。

【坪田】私も愛華からたくさんのことを学んでいますが、最近分かったのは、どんなに小さなことでも行動すること、実践することがいかに大切かということです。良いことや良い物でも、しまっておいたり、考えているだけでは何にもなりませんからね。

【藤原】佐々木さんは学校の文化祭で環境問題をまとめたビデオを作って放映したそうですね。

出席者写真【佐々木】30人の生徒が二班に分かれ、一班はごみの問題を、もう一班は川の問題をそれぞれ取り上げました。ごみの問題はリサイクルの仕組みなど、川の問題では洗剤の影響や川を汚さない上手な洗い方などを調べてまとめました。

【藤原】愛華さんは、地球の秘密の後書きで「みんなで協力し合って、美しい地球ができればいいです」と書いています。坪田さんはモンゴルでも環境関連の活動をされていますね。

【坪田】モンゴルの人々はヤギを飼いながら移動する遊牧民で、地球に何も悪いことをしていません。それなのに地球温暖化の影響を強く受け、雨が降らず、永久凍土が緩んで生態系が変化し、土地が破壊されています。「モンゴルの人々はなぜ苦しまなくてはならないのか」。モンゴルの子どもたちに、その理由を知ってもらい、この矛盾を日本の子どもたちにぶつけてもらおうと「地球の秘密」を持って行きました。その反響は大きく、モンゴルの環境大臣にも喜ばれました。次代を担う子どもらに教えるため「一人に一冊ずつ欲しい」と要望が来ており、ぜひ実現したいと思っています。

【江谷】私もミュージカルを通じて、いろいろ勉強させてもらいました。「知ることは、本当に大切だ」と思っています。

【北野】私も「知ること」の大切さを痛感しました。知ることから行動が始まるのです。

【知事】地球の秘密は、地球環境保護という大きなテーマを持っていますが、電気をこまめに消すなど身近な取り組みが温暖化を含む地球環境を守ることになる、と訴えたことが多くの人の理解を呼び、感動を与えたのでしょう。地球環境の保護という壮大な計画を動かす原動力は一人ひとりの思いと、日ごろの地道な活動なのです。

【藤原】さて、1997年に採択された地球温暖化防止のための京都議定書で日本は2008から2012年までに、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量の1990年比6%削減が義務付けられており、11月にロシアが同議定書を批准したことにより2005年2月に発効します。国や県も待ったなしの対応を迫られますが、今後どんな施策を考えておられますか。

【知事】島根県は県地球温暖化対策推進計画を見直し、CO2排出抑制に向けた新たな目標の設定や今後の取り組みについて検討しています。そして4つの重点対策を掲げています。その一つは「県民の意識改革と実践活動のための仕組みづくり」で、2つ目は、話題にも出ている「環境教育の充実」です。3つ目は、県土の8割を森林が占めている島根県にとってとても大切な「緑豊かな森林の保全と利用」です。そして4つ目は、CO2を出す化石燃料ばかりに頼らず、バイオマスや風力などの新エネルギー導入です。
また、12月から地球温暖化防止活動推進員の二期目の活動がスタートしており、県地球温暖化防止活動推進センターや市町村と連携して主に家庭レベルでの温暖化防止対策に取り組んでいます。県民一人ひとりが理解し、協力してくださることがとても大切で、よろしくお願いしたいと思います。

【坪田】いつの日かそういう施策が実り、島根県は世界でも有数の、自然豊かないい地域だと言われるようになるといいですね。愛華も地球ではすべてが循環しており、何一つ無駄なものがない、地球の環境を守ることは、地球の命を守ることと同じ、と言っています。地球の秘密は約2カ月でできましたが、その内容を見ますと、12年間の生活の中で学んできたことが詰まっています。その気持ちをぜひ生かしてやりたいと思っています。

【藤原】地球環境の問題は、国や県の施策とともに、県民一人ひとりの身近なことへの取り組みが大切だということがよく分かりました。きょうは、貴重なお話をありがとうございました。

(2004年12月26日付山陰中央新報掲載)


Allrightsreserved島根県環境生活部環境政策課,山陰中央新報社


 


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