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[3] 知的財産活用による産業振興の将来展望


1. 知的財産を活用して目指すべき方向

『知』を武器としたビジネス展開により21世紀のトップランナーを目指す

島根県は人口、産業の集積度の低さ、高速道路等の基盤整備の遅れ、中山間地域が多い地理的条件などから一般的に後進県とのイメージを持たれている。そして、残念ながら20世紀においては、その指摘は当っていた。
しかし、21世紀は決して20世紀の延長のままではなく、「ゆとり」、「環境」、「持続性」などの言葉に象徴されるように、文明の変革が求められている。産業界においても目に見える資産である「有体財産」から、目に見えない資産である「無体財産」を重視する傾向が顕著になってきており、21世紀は知的財産の世紀になると言える。
このような時代の節目こそ、島根に過去から蓄積されてきた技術力と島根の資源を有効活用し、従来マイナスのイメージを持たれていた事柄も逆に好機ととらえ、知的財産を重視した新たなビジネス展開により21世紀のトップランナーを目指す必要がある。

2. 島根の社会情勢と島根の資源

(1)島根県の社会情勢
島根を取り巻く社会情勢の一例をあげると、島根県の平成12年度国政調査による人口は761,503人で、前回の平成7年から9,938人の減少である。また高齢化率も全国1位で平成12年国政調査では4人に1人が高齢者である。
基盤整備の面で一例をあげれば平成13年4月1日現在の高規格幹線道路の整備率は全国の半分にも及ばない実態がある。
■高齢化率(国政調査)
平成7年 島根県 21.7% 全国 14.5% 平成12年 島根県 24.8% 全国 17.5% 平成13年 島根県 25.7% 全国 17.7%
※H13は平成13年度末住民基本台帳人口
■高規格幹線道路整備率(H13.4.1)
島根県 25.5% 全国 60.4%
※県土木部調

(2)蓄積された技術と資源
1 島根の潜在力
島根県は、古代には中国、韓国等の東アジア地域との人、技術の交流を通じて最先端の技術を有してきた。例えば、神庭荒神谷や加茂岩倉遺跡から大量に出土した銅剣や銅鐸をはじめ、玉作りの技術、巨大な古代出雲大社を支えた建築技術などである。また中世から近世まで続いた石見銀山の製錬技術などは当時のハイテク技術であった。更に、「たたら★1」による製鉄技術などの伝統は、現在でも安来の特殊鋼などに引き継がれ、潜在的に技術能力の蓄積がある地域と言える。
また、19世紀末までは、山陰地方は全国で有数の産業集積地であり、明治17年の府県別工場数比較においては全国の約1割を占めていた。つまり1世紀前までは島根は先進県であり、当時から現在まで引き継がれている特殊鋼、農業機械、石州瓦、和紙などの技術を更に進歩させた上で、特許等で権利武装することにより、全国、ひいては世界で確固たる地位を築くことも可能である。
 
2 島根の資源
島根の資源はなんと言っても豊かな自然である。これは観光客のアンケート調査にもよくある回答で、確かに島根として自慢できることである。しかし、自慢だけで終わらせてしまっては、観光業以外のビジネスには結びつかない。現在は、この豊かな自然を守る技術、豊かな自然から生産される生産物が、「環境」、「健康」、「安全」、「安心」などのキーワードと一緒になって大きなビジネスになる時代である。
例えば、全国最大の汽水域である宍道湖・中海の水環境を修復する技術を確立して、全国へ展開すれば大きなビジネスチャンスになることは間違いない。また、中山間地域で有機栽培した原料を用いた健康食品や機能性食品★2産業は今後大きな発展が見込める分野である。このように、島根には豊富な資源があるが、これを大きなビジネスチャンスに結びつけるためには、特許による技術保護と、商標によるブランド化が必要不可欠である。

(3)島根の優位性
島根県における潜在的な技術力、豊かな自然を利用した環境産業、健康食品産業などへの優位性については先に述べてきたところである。これら以外にも時代、制度の変革期をとらえ、知的財産を活用して島根のアドバンテージ★3とすることができる分野がある。

1 ソフトウェアの特許化
平成14年の特許法の改正で、コンピュータプログラム自体を物の発明に含ませることとして、特許の取得が可能となった。開発について地理的制約を受けることのないプログラムは島根においても充分に競争力が発揮できる分野であり、研究開発環境に恵まれたソフとビジネスパーク島根の存在もあいまって、発展できる分野である。また、ビジネスモデル特許についても同様のことが言える。

2 医療技術の特許化の方向
従来、医薬品、調剤方法、医療機器以外の医療技術については特許権が認められていなかったが、皮膚や臓器などの再生医療について、特許権を認める方向で検討されている。島根には日本で最初の生体肝移植を行なった島根医科大学など、出雲地域に学の集積があり、企業との共同研究を通じて、機能性食品等を含め医療分野での知的集積を図ることが可能である。
 
3 全国1位の高齢化率
今後の高齢化社会を向え、全国1位の高齢化率である島根では、その条件を利用し、また臨床の場として島根医科大学や県立看護短期大学もあり、全国に先駆けて福祉機器、介護用品の製品開発を行なえる環境にある。
また、高齢者の知恵を活用することも重要であり、画期的な発明は若い研究者に歩があるかもしれないが、消費者が求めているのは、すぐに使える発明である。その意味で必ずしもハイテクにこだわらず経験と実生活に根ざした、高齢者の知恵と技術を有効に活用することも求められている。

4 多くの中小企業
製品の多様化が求められている今日、オリジナリティー★4とフットワークを持った中小企業において、いち早くオンリーワンの技術を開発し、そこからナンバーワンへ発展させていくことが可能である。特に、いまだバブルの処理に大企業が追われている今がチャンスであり、今後、中小企業が経済の活力の維持及び強化に果たす役割は大きいと言える。

5 北東アジア経済圏の一員
北東アジア地域に最も近い位置にある島根県は、これまで同地域とさまざまな交流を行なってきた実績がある。今後、経済発展性を秘めた北東アジア経済圏を視野に入れ、県内企業の有する技術力を有効に活用して、同地域への事業展開を図ることが可能である。

(4)目指すべき目標
1 工業所有権出願件数
■工業所有権出願件数
平成12年 683件 平成16年 750件 平成22年 820件
産業振興プログラムで設定した、工業所有権の出願件数目標は、平成12年度の683件に対して、10年後の平成22年度には20%増の820件を目標にしている。もちろん、知的財産は経営戦略であり、出願や維持に経費もかかることから何でもいいから特許を出して件数を増やすのではなく、経営上必要なものを出願した結果が20%の増加ということである。
なお、産業振興プログラムに掲げた目標は実線で示したとおりであるが、特許に精通した社員が少ない島根の現状を考えると、まずは出願して量を増やし、その後精査していくという意味では破線で示したルートも考えられる。

2 成功事例をつくる
(i)過去の成功事例に学ぶ
知的財産を有効活用して産業の振興を図るためには、まずは知的財産の重要性を認識する必要がある。島根県内の企業は、今までどちらかと言えば堅実な経営をしてきており、失敗の事例もないが、逆に大きな成功の事例もないのが現状である。しかし、広くは知られていないが、県内企業においても、幾つか過去に知的財産を活用して成功した企業もあり、まず、始めのステップとして、過去の成功事例を発掘し広く紹介するとともに、そこから学んでいくことが必要である。

(ii)選択と集中
近年、特許流通アドバイザーなどの活動を通じて知的財産を経営に有効に活用している企業も増えてきているが、全体としてはまだ一部にとどまっている。知的財産を活用してこれから大きく飛躍するためには、誰の目から見てもわかりやすい成功事例を作る必要がある。しかし、成功事例をつくると言っても、一朝一夕にできることではなく、限られた財源や人員の中では、従来の全地域、全産業支援型の施策では限界があり、産業支援についても選択と集中が必要となってくる。今後は、地域の特性や地域における産業の集積、ポテンシャル★5を考慮して、他の施策とも連動しながら重点分野★6に特化して、そこから成功事例を作り出して行く必要がある。

(iii)地域別の重点分野
地域ごとに重点的に特許の出願を目指す分野の一例として、図のような分野が考えられる。もちろん理想的にはあらゆる地域から、あらゆる分野の特許が出願されて産業の振興がなされていくことが望ましいが、産業の集積が乏しい島根においては、まずは重点分野から特許を出すことにより、その地域における知的クラスター★7、産業クラスターを形成し、その後あらゆる分野への広がりを目指す方が現実的である。
■地域別に重点的に知的所有権の出願を目指す分野の例
 

(iv)重点分野出願への基礎固め
重点分野から多くの出願をしていくためには一定の基礎づくりも必要である。具体的には、島根に潜在的にある技術分野等であり、従来の技術をベースとして権利化し易い分野から権利化し知的財産の一定の基礎を作っていくことも必要である。その上で、島根の潜在力や資源を権利化した強固なプラットホーム★8の上に、各重点分野が階層的に積み重なることが理想である。
この基礎固めは特許についてのノウハウを蓄積できるとともに、将来、重点分野から特許を出願する際に、その技術の基本になる特許となる可能性もある。

3 具体的な成功事例づくりに向けた取り組み
当面の成功事例として、「松江エリア」における「環境分野」、「出雲エリア」における「健康食品分野」からの重点的な知的財産創出とクラスター化を目指す。これは島根県科学技術振興指針に定める重点分野である、「環境」と「健康」という分野であるのみでなく、両地域における知の拠点である大学の存在と地域のポテンシャルを考慮したものであり、今後、他の施策も有効に活用し、取り組みを進めることとする。



お問い合わせ先

産業振興課

島根県 商工労働部 産業振興課
〒690-8501 島根県松江市殿町1番地
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