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[1] 国における知的財産戦略


1. 長期経済予測と技術革新

2002年3月に(社)日本経済研究センターが発表した2025年までの長期経済予測によると、持続的な円安の中で、日本がこれまでに蓄積した技術知識ストックや社会資本を有効に活用する構造改革を行えば、平均1.6%で成長すると分析しており、経済構造改革の具体策として、技術革新的な設備に対する償却の簡素化や通信価格の一層の低下、大学改革や研究開発資金の重点的投入等を通した技術知識の蓄積等を挙げている。今後、労働力人口の減少や労働時間の減少を考慮すれば、労働投入の伸びには限界があり、技術革新による生産性の向上が不可欠であると言える。
■実質GDP成長率に対する寄与度(%)
 
  1990/1980 2000/1990 2010/2000
(予測)
2020/2010
(予測)
2025/2020
(予測)
2025/2000
(予測)
実質GDP成長率 4.1 1.4 1.0 2.3 1.4 1.6
(寄与度)労働投入 0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.3 -0.3
非IT資本投入 1.1 0.5 0.3 0.7 0.6 0.5
IT資本投入 2.4 0.8 0.7 0.8 0.4 0.7
全要素生産性 0.2 0.5 0.4 0.9 0.8 0.7

2. 日本の国際競争力

■主要国の総合国際競争の順位
1992年〜2002年(単位:位)  日本 	1	2	3	4	4	17	20	23	24	26	30  アメリカ	3	1	1	1	1	1	1	1	1	1	1  ドイツ 	2	5	5	6	10	16	15	12	11	12	15  イギリス	13	16	14	15	19	9	13	19	16	19	16  フランス	14	12	13	18	20	22	22	23	22	25	22
出典:IMD「The World Competitiveness Yearbook」
バブルが崩壊した1990年代以降、日本の経済成長率は低迷し、これに連動するように経営開発国際研究所(IMD)による国際競争力ランキングも下落傾向にあり、1997年以降は評価基準が変更されているため、厳密な意味での連続性はないが、1992年まで1位であったものが、最新の2002年の評価では30位まで下落している。しかし、一方で科学技術に限った競争力では2000年の時点で2位を維持しており、科学技術が温存されている今であれば、科学技術力を源泉とした競争力の回復も可能である。


3. 知的財産立国へ向けた取り組み

(1)知的創造サイクルの必要性
■知的創造サイクルの模式図
 
出典:特許庁「特許庁行政年次報告書2002年版」
知的財産権制度は、技術開発等のリスクの高い分野に果敢に挑戦する企業に対し、その技術開発成果を広く世に公開するとともに一定期間の独占権を付与することで技術進歩を図り、投資資本の回収、利益の確保を通じて更なる創造的な投資を誘引するものであり、創造的な事業活動を支える制度的基礎である。
国境を越えた情報化、経済のグローバル化が進む中で、世界的な競争を勝ち抜くためには、高付加価値を生み出す社会的システムである「知的創造サイクル」の確立が求められている。創造性の高い技術を多数生みだす環境を整えて技術的優位を確立し、その知的資本を知的財産として権利化し適切に保護することにより知的財産が活用され、そこで生じた利益で更に新たな技術を創造するという、「知的創造サイクル」が、確実に回転し大きく循環することにより、将来に向けた持続的な発展のエンジンとなることができる。

(2)知的財産戦略大綱
知的財産を活用して産業の国際競争力強化と経済の活性化を促進するために、2002年3月に内閣総理大臣が開催する「知的財産戦略会議」が設置され、7月に「知的財産戦略大綱」が決定され、「知的財産立国」の実現と21世紀型の文明構築に向けた国家的事業として知的財産政策に取り組むこととなった。
この、「知的財産戦略大綱」において知的財産を創造し、これを保護、活用することにより、経済、社会、文化が持続的に発展する国家の実現を目指して、2005年度までの具体的な行動計画が示されており、今後、その行動計画に沿って、さまざまな政策が実行されることとなる。
これらの具体的な行動計画のうち、「知的財産基本法」の制定や「知的財産戦略本部」の設置等が既に実施され、2003年度には全国数十の大学に「知的財産本部」が設置されるなど、「知的財産立国」に向けた取り組みが進められている。
■知的財産戦略大綱の概要
現状と課題●我が国の産業競争力低下への懸念●知的創造サイクルの確立の必要性↓実現に向けた戦略知的財産に関する総合的な取組が必要。(1)創造戦略(2)保護戦略(3)活用戦略(4)人的基盤の充実↓知的財産立国の実現「知的財産立国」とは、知的財産をもとに、製品やサービスの高付加価値化を進め、経済・社会の活性化を図る国づくり。

知的財産立国に向けた基本的方向
政府一体となって、2005年度までに集中的・計画的に遂行
遅くとも2003年の通常国会までに、
「知的財産基本法(仮称)」を制定
規定する内容
◯知的創造サイクルの活性化という国家目標(基本方針)の確立
◯「知的財産戦略本部(仮称)」の設置
◯「知的財産戦略計画(仮称)」の策定
↓
1.知的財産の創造の推進
◯大学・企業における知的財産創出
◯創造性を育む教育・研究人材の充実
2.知的財産の保護の強化
◯迅速かつ的確な審査・審判
◯実質的な「特許裁判所」機能の創出
◯模倣品・海賊版対策の強化
◯国際的な制度調和と協力の促進
◯営業秘密の保護強化
◯新分野等における知的財産の保護
3.知的財産の活用の促進
◯大学等からの技術移転の促進
◯知的財産の評価と活用
4.人的基盤の充実
◯専門人材の養成
◯国民の知的財産意識の向上
(注)今後、改革の過程で追加・充実があり得る。

知的財産立国に向けた重点事項
具体的行動計画
◯「世界特許」に向けた取組の強化
日米での調査結果等の相互利用(2002年中に検討開始)
迅速・的確な特許審査のための計画策定(2002年度中)
◯実質的な「特許裁判所」機能の創出
特許等に関連する裁判を東京・大阪地裁に集中(2003年通常国会に法案提出)
◯模倣品・海賊版等の対策の強化
侵害品に対する国境措置の強化(2004年度までに法制面・運用面を改善)
外交交渉等を通じた働きかけの強化(2002年度以降)
◯営業秘密の保護強化
民事・刑事両面での保護強化(2003年通常国会に法案提出)
◯大学の知的財産の創出、管理機能の強化
企業等の協力で戦略的に知的財産を創出する制度(2003年度までに構築)
全国数十程度の大学に「知的財産本部」を整備(2003年度までに開始)
◯知的財産専門人材の養成
法科大学院における知的財産教育の充実(2004年度から学生受入開始予定)
出典:首相官邸ホームページ「知的財産戦略大綱の概要」

(3)知的財産基本法
新たな知的財産の創造及び効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するために、知的財産の創造、保護及び活用に関する基本理念となる「知的財産基本法」が平成14年12月4日に公布され、平成15年3月1日に施行された。
この基本法においては、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務についても明らかにされており、第6条で地方公共団体の責務として、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と述べられている。
本県においては、平成13年2月7日に日本弁理士会との間で締結した「知的財産権の活用による産業振興施策への支援に関する協定(支援協定)」に基づき、知的財産に関するセミナーの開催や無料の特許相談を行っているところであるが、今後、産業振興のために知的財産はますます重要になっていくことから、本県において取り組むべき施策等について次章において、具体的に提示していくこととする。

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