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福間議員(自民)

 

(問)経済と教育について

1.戦後教育を経済とともに見てきたとき、今、子供達に次々とおきている様々な問題を解決するために、最も重要なことは何か所見を伺う。

2.地域の存続を考えた時に県内産業を支えて行く人材育成について、どうあるべきか教育、産業両方の分野から基本的な考え方を伺う。

(答)知事

 1.福間議員の御質問にお答えします。

 まず、子どもたちに起きている様々な問題の解決についてであります。

 戦後六十年が経過し、世界に例のない経済発展を遂げ、物の豊かさについては世界有数の国となりました。反面、人を思いやる心や伝統に培われた匠の技を尊重する心など、いわば古来からの日本文化の特徴とされる精神文化を軽んじて、今日に至りました。

 毎日、かってないほどの痛ましい事件・事故の報道に接して、胸を痛めております。

 ベストセラー「国家の品格」の中で、藤原正彦氏は、「武士道は、多くの日本人の行動基準、道徳規準として機能してきた。この中には慈愛、誠実、忍耐、正義、勇気、惻隠などが盛り込まれている。惻隠とは他人の不幸への敏感さである。それに加えて名誉と恥の意識もある。この武士道精神が、長年、日本の道徳の中核を成してきた。」と述べております。また、堺屋太一氏は、「戦後を一言で言えば物の豊かさを得て心の豊かさを失った。」と述べております。

 五木寛之氏は、「今の日本に一番欠けているのは、人間らしい感情だと思う。豊かな情感、感情を取り戻すべきだ。脳力トレーニングがブームらしいが、大事なものは、むしろ情感トレーニング、養情だ」と述べております。これらの意見には、私も全く同感であります。

 ふるさと教育をはじめ美術館や芸術文化センターグラントワ、三瓶自然館や海洋館アクアスなどの社会教育施設の整備は、まさにこうした豊かな心を養って欲しいがために行ったものであります。

 加えて申すならば、国においても、心の豊かさを取り戻すための施策として、自然や伝統文化などの日本の文化の良さが色濃く残っている「地方」を再評価をする施策を進めて欲しいと思っております。

(答)教育委員長

 1.福間議員のご質問にお答えします。

 戦後教育といった時、まず私の頭に浮かんでくるのは、小さいときに近所の友だちとチャンバラをしたり、鬼ごっこをしたりして遊んだことです。子ども同士で学びあい、時には幼い子を守りながら、教えてもらったことを次には自分が教える、という世界がそこにはありました。

 先程「長幼の序」という言葉がございましたが、異なる年齢の子どもの中で、自然と年上の者が年下の者に、遊びの仕方や喧嘩のルールを教えていました。きっと、知らない内に「相手を思いやる心」が育っていたと思うのです。

 また、家庭においても、ご飯がお膳にこぼれれば、「お百姓さんが一生懸命に作ってくれた物を」と叱られ、茶碗に米粒が残れば、「一粒まで綺麗に食べなさい」と言われたものです。

 そして、食べ物に限らず、全ての物に対して「ありがたい」という気持ちを持つようになりました。今でも私は、連日にわたり書類が送られてくる封筒を、ポイと簡単に始末することができないのです。

 今の子どもたちは、「核家族」「少子化」のせいでしょうか、大人が子どもにべったりし、ゲームや携帯を買い与えられ、何不自由なく生活しています。小さい頃に体験し、年相応に判断すべき大切なことが抜け落ち、一足飛びに大人の世界に入ってしまっているようです。

 幼い頃の経験が薄いが故に、どの程度で人が傷つき、どうすれば人が喜ぶのかがわからなくなっているように感じます。

 この十年、私は縁あってモンゴルの人々とも交流を続けています。《このような盃で、》馬乳酒を注ぎ、乾杯をする時、このしずくの一滴を《このようにして》「天と地の大自然」、そして「生を授けてくれた先人や家族」に対し感謝の意を表します。

 豊かになることは決して悪いことではありません。しかし、いつの時代にあっても、どの国にあっても、「相手を思いやる心」、「感謝の気持ち」が最も大切なことだと私は思います。

 そして、正しく判断する力を幼い頃から醸成してゆきたいものと思っています。

(答)教育長

 1.まず、子どもたちに起きている様々な問題の解決についてであります。

 先ほど知事が述べました心の豊かさの重要性とか、伝統文化や地域の再評価という意見に、私も全く同感であります。

 今日の社会は、自然や生命、それを育んだり加工する行為である生産、それを消費する生活が大きく乖離してしまったところに、現在我々の社会が持ってしまいました人間の感性を鈍らせる要因の一つがあるのではないかと考えております。

 先ほど知事が申した言葉のほかに、五木寛之氏は「自分の命を大切にしない者は、他人の命も大切にしない。」と述べております。

 先日、雲南市で開催された「永井隆平和賞作文コンクール発表式典」に出席いたしました。永井博士の「如己愛人」すなわち「己の如く人を愛する」という言葉に、今日ますます必要性が高まっていると痛感いたしました。

 最優秀賞を受けた作文の発表の中で、食育を通じて「命の大切さ、そして『命をいただく』ことの意味を学んだ。「食べることはすべて生命をいただくことである」だから私は食べ物を粗末にしてはいけない。」という趣旨の発表に拍手をしました。

 また、日本には世界に誇れる四季があります。

 四季折々の移ろいの風雅を感じ、またそれを表現する感性豊かな人格形成につなげるための様々な情感教育や体験学習を行っていく必要があるのではないかと考えています。

 これが教育のいつまでも変わらない不易の一つといたしますと、確かな学力を身につけさせることも、たくましく健康な体の形成もまた、不易な要素だと考えています。

 学校・地域・家庭が三位一体で成果の上がる実践をできるよう取り組んでいく必要を痛感しております。

 2.次に、県内産業を支える人材育成についてであります。

 県内産業を支える人材の育成は、県政上の最も重要な課題の一つであると考えております。

 そのため、学校教育においては、基礎的な学力や社会性を身につけることはもとより、ふるさとへの愛着と誇りを持ち、創造力を発揮できる人材を育成していくことが、いつの世にあっても不変・不易の部分であると考えております。

 また、自らの体を動かし汗を流して働くことの尊さや仕事とは忍耐を伴うものであることなどを教えていくことも大切であると考えております。

 そうした観点から、勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育やふるさと教育の推進を図っているところであります。このことは、専門校高校に限らず普通高校に於いても大切なことであると考えております。

 また、現在、進めております県立高校の再編成にあたっては、県内各地域の産業の現状や今後の見通しについて、様々な方々の意見も聴取した上で、県内産業を支える人材育成のあり方の観点も十分意識して進めてまいりたいと考えております。


(問)教育における分権について

1.国、県、市町村、学校現場と言う縦の上位下達を当たり前とせず、分権の時代にふさわしい、それぞれの権限・責任を明確にした中での学校教育の在り方を検討すべきと思うが所見を伺う。

(答)教育長

 1.次に、分権時代にふさわしい学校教育についてであります。

 学校現場は、毎年毎年、教員は忙しくなる一方で、子どもにゆとりを持って接する時間がなくなったと聞いており、そのとおりであると私も認識しております。

 かつては考えられなかった学校の安全問題、学力問題、不登校、生活習慣等の様々な問題に対応する必要があるため、非常に苦労も多いと思っております。

 それぞれの学校でも工夫すべきことではありますが、できるだけそうした課題に対して、効率よく対応できるよう、県・市町村教育委員会としても検討していかなければならないと思っております。

 一方、学校の権限や責任が拡大された場合、校長には、明確な学校経営のビジョンと情報の開示が求められます。

 そのため、学校評議員制度や学校評価に外部評価を取り入れることなどを進めております。

 また、本年度から導入しております教員評価制度では、特に管理職に対して、学校経営目標の具体的な成果を求め、教職員一人一人を活かした活力ある組織体としての取組を期待しているところであります。


(問)高等学校の運営について

1.経営的にも安定が見込める高校については、法人化を含めて管理運営方法について検討してはどうかと思うが、所見を伺う。

 

(答)教育長

 1.次に、県立高校の法人化の検討についてであります。

 国立大学法人の主な収入は、学生納付金の他に、国庫からの運営費交付金や附属病院収益などであり、平成十七年度の財務状況について見れば剰余金が発生し、いわゆる黒字となっております。その内訳は、主として、特許料収入や競争的研究補助金などの外部収入となっております。

 一方、県立高校の場合は、経費のほとんどを県の予算でまかなっており、授業料収入以外には、農業や水産関係の学科を有する一部の専門高校において、実習の成果である生産物の売却収入がありますが、他に多額の外部収入を見込めないこと、また、学問の自由が認められている大学と比較すれば、高校教育は学習指導要領によることが求められており、より柔軟なシステムとなっていないことも踏まえれば、大学と異なり、法人化は困難であると考えております。

 しかしながら、ご提案のありました高校の自主性を強め、自由度の高い学校経営を行うことは、傾聴すべき点が多いと思います。積極果敢なチャレンジが可能な教育行政に努めてまいりたいと考えております。


お問い合わせ先

島根県教育委員会

〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎)
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