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大国議員

(問)全国学力テストに向けた学校での事前対策について

1.国の通知に反する「事前対策」の実施について、県教委の対応及び調査の結果を伺う。

2.全国学力テストの事前対策について、問題の根本的な原因はどこにあると考えているか伺う。

 

(答)教育長

1.まず、この間の経緯をかいつまんでご説明をいたします。

 県内の一部の小中学校で、いわゆる「直前対策」と受け止められかねない対応がありましたのは、昨年、平成28年4月19日の全国学力・学習状況調査の直前の時期となる4月でありました。

 その後、文部科学省から、4月28日付けで、全国調査に係る適切な取組について要請する通知が出されました。

 これは、「4月前後になると、例えば、調査実施前に授業時間を使って集中的に過去の調査問題を練習させ、本来実施すべき学習が十分実施できないなどといった声が一部から寄せられている状況が生じている」という、全国的な状況を踏まえ、今一度原点に立ち返って、調査本来の趣旨・目的に沿って実施するよう求めるものでありました。

 これを受け、島根県教育委員会は、5月12日付けの通知文書で、市町村教育委員会を通じて小中学校に注意喚起を行ったところであります。

 その後、昨年11月定例会での尾村議員の一問一答質問におけるご指摘を受け、いわゆる「直前対策」の実態を確認したい旨の答弁を行いました。また、2月定例会での尾村議員の一問一答質問に対しまして、その調査結果について答弁するとともに、「今後適切な対応を現場に促していくうえで原因の把握は必要だと思っており、その趣旨に基づき、実態の把握に引き続き努めたい」旨を答弁いたしました。

 そして、3月23日付けで「今、学校にご理解いただきたいこと」という文書を、市町村教育委員会を通じて小中学校に示し、その中で、全国調査の本来の趣旨・目的を再確認してもらうとともに、「新年度が始まって学級づくりや各教科のスタートを切る4月の大切な時期に、あえて授業時間を使って過去の調査問題に取り組ませるようなことは、学校教育の本来の姿とは言えず、むしろ全国調査の実施後に、調査問題や調査結果を正しく分析して地道に取り組むことが、適切な活用の仕方ではないか」との県教育委員会の考え方を伝えたところであります。

 平成29年度の全国調査は、今年4月18日に実施され、その直後にあたります4月27日に市町村教育長会議を開催して、この問題についても集中的に意見交換を行いました。

 そして、次の二点について、県教育委員会と市町村教育委員会との間で共通認識を持つに至ったところであります。

 一点目は、全国調査の本来の趣旨・目的に反するような、数値データの上昇のみを狙っていると受け止められかねないような対応は行わない。

 二点目は、全国調査で出題される問題は、子どもの力を把握する上で優れた問題であり、過去に出題された問題を、平素の授業改善や個別指導の素材として活用することは推奨される。しかしながら、いわゆる「直前対策」というような誤解を受けることのないよう、各学校の年間指導計画にきちんと位置づけて活用する必要がある。

 市町村教育長会議においては、この二点が共通認識となったところであります。そして出席者からは、それを前提にすれば、いわゆる「直前対策」についての更なる調査を継続する必要はないのではないか、との発言があり、この会議では、異議なしとして了承されました。

 以上が、この間の経緯であります。

 

(問)これ以上の調査は必要ないと判断されているが、57校のうちのいくつの実態をつかんでいるのか、なぜ把握されなかったのかを伺う。

 

(答)教育長

 二月定例会で尾村議員の一問一答質問にお答えした時点では、すでに、今年4月の全国調査が迫っておりました。したがって、まず今年の全国調査を適切に行う、ということを優先をさせ、そのためには、県内の小中学校の学校現場に、そもそも全国調査が何のために行われているのかという本来の趣旨・目的を徹底することを急ぐ必要がある、このような考えから3月23日の文書を発出したところであります。

 そして、その趣旨については、事務担当者のレベルでも県の教育委員会と市町村の教育委員会との間の、共通認識を図る努力を図ってまいりました。その結果として、今年の4月18日の全国調査は、適切に行われたのではないかと思っております。

 その後の市町村教育長会議で、共通認識に至ったということでございますので、前後関係から、まず今年度の調査の適切な実施を急いだということでございます。

 

(問)57校が直前対策をしていたということで、1校でもどういうことが行われていたのかということをつかまれていないのか伺う。

 

(答)教育長

 平成28年の4月、その直前の4月に、どのような背景の中で、そのような、いわゆる「直前対策」と受け止められかねないことが行われたのか、その背景や要因については、様々なレベルで、現場との意見交換をしながら、把握には努めてきております。私としてどのような背景の中で、昨年このようなことが起こったのかということについては、一定の所感をもっております。

 

(問)57校の中で、一つでも、どういうことが行われていたのかということをつかんでいるのか、いないのかを伺う。

 

(答)教育長

 先ほどお答えしましたように、今年度の全国調査を適切に実施するということを急いだために、昨年の57校についての詳細な実態は、この間、直接的な方法での把握はいたしておりません。

 

(問)教育委員会に伺った時に、この問題を受けて文部科学省の学力テストの担当者から、松江市内に調査に入った時、県の担当者も同行したと聞いている。その時に一つの事例でもつかんでいないのか伺う。

 

(答)教育長

 議員の、ただ今ご指摘いただいた事例と、私が聞いております事例が全く同じかどうか、ちょっと確信がございませんが、県の教育委員会の担当者が松江市教委とともに県内の学校を調査した段階では、どのような経緯の中でどのような過去問題の出題をしたのかと、その経緯を確認をしたというふうに聞いております。

 

(問)過去問題を解くことはテスト対策と言われても仕方がないと思われる。直前に過去問題を使っていても、活用の仕方によっては、問題はないと判断されるものもあったと聞くがいかがなものか伺う。

 

(答)教育長

 具体的に4月に過去の全国学力調査の問題を授業の中で活用した、その外形的な基準に照らして判断をいたしますと、答弁いたしましたように、57校、昨年の4月に57校で全国調査の直前に授業の中で取り扱っておりますが、その中には、年間指導計画の中に位置付けて、計画的に子どもの力を伸ばすための手段として行った学校もあり、一方で、そのような計画的なものとはみなしがたい、突然のような形のものもあったと、このように報告を受けております。

 

(問)日常的、計画的に過去問題を使うことがよしであれば、年間を通じてテスト対策をしてもよいことになる。直前ではダメで日常的、計画的であればよいということは矛盾していないか伺う。

 

(答)教育長

 今回のいわゆる「直前対策」というようなことが、県内の一部の小中学校で、昨年見られたわけでありますけれど、今回のことが、なぜ問題なのか、あるいは、そのような問題がどういう要因の中で起こってきたのか、この点について、私は大きく2つの要因があるのではないかというふうに見ております。

 一つは、全国調査の本来の趣旨・目的が、当時の学校現場に十分理解されていなかった面があるのではないかという点であります。

 本来の趣旨・目的とは、決して学校ごとの平均正答率を競うようなことを煽るために行っているものではなく、調査結果の正しい分析に基づき、学校全体で組織的に授業改善や個別指導に生かしていくことであります。

 全国調査の毎年度の繰り返しの中で、その本来の趣旨・目的の理解が薄れていった面があるのではないかと、これが一点目であります。

 そして、二つ目の要因として、これがより重要であると、私自身は認識しておりますが、当時の学校現場に、学力観そのものに関する基本認識について、課題があったのではないかと、このように見ております。

 角議員の一般質問への答弁でも触れましたが、平成18年の教育基本法改正に併せて一部改正された学校教育法において、学力の重要な要素は、基礎的・基本的な知識・技能、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、そして、主体的に学習に取り組む態度という「学力の3要素」が法律上定義されております。

 それから10年が経過し、現行の学習指導要領も「学力の3要素」を踏まえたものとなっておりますが、いまだに知識・技能の習得のみに重きを置いた、狭い学力観に捕われているかのような感覚、そして、あたかも競争の中に置かれているかのような、煽られ感が一部の学校現場にあったのではないかと思われます。

 全国学力・学習状況調査は、子どもの力を把握する上で優れた問題ではありますが、主として「知識・技能の習得状況とその活用力」を測定するものであり、「思考力・判断力・表現力等」については、現時点でその測定方法が確立されているとは言えません。

 一方、新たな学力観に基づき、「学力の3要素」を正しく評価する測定方法の具体化に向けて、国を挙げて、様々な努力が続けられております。そうした大きな動きの中で、現在の中学三年生以下の子どもたちは、新たな測定方法を取り入れた大学入試を受けることになります。

 そのような状況の中で、全国調査で測定できる力は学力の一部である、あるいは学力の一部でしかない、という理解が、学校現場において共通認識になっていなかったのではないか。そうであるとすれば、残念なことだというふうに私は認識しております。

 このため、今年の4月以降に開催しました市町村教育長会議や、小中学校の校長を対象とした教育施策説明会においては、全国調査の趣旨・目的に加えまして、学力観についての基本認識の共有を図るため、県教育委員会の考え方を丁寧に説明したところであります。

 そのような対応を通じて、今後、現場の適切な対応を、さらに促してまいりたいと、これが私の考え方であります。

 

2.先ほどの答弁と重複する面もありますが、学校教育法が改正され、「学力の3要素」が、法律上すでに定義されているわけであります。それから10年が経過し、現行の学習指導要領もその「学力の3要素」を踏まえたものとなっております。にもかかわらず、いまだに知識・技能の習得のみに重きを置いた、狭い学力観に捕われているかのような感覚、そして、あたかも競争の中に置かれているかのような、煽られ感が一部の学校現場にある。このことが今回の問題の最も重要な論点であろうと思います。

 全国学力・学習状況調査で測定できる力というのは「学力の3要素」の一部であります。あるいは一部にすぎません。その一部だということを正しく理解をした上で、この全国学力調査の結果を授業改善や個別指導に生かしていく、このようなバランスの取れた認識というものが必要であろうと思います。そして、そのバランスは煽られ感の中で偏ってしまうリスクがありますので、県教育委員会としてはそのような煽られ感が現場から払拭されるように精一杯努力していきたいと考えております。

 


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