• 背景色 
  • 文字サイズ 

白石議員

(問)子どもの貧困と学習支援について

1.島根県でも世帯の経済状況が子どもの学習環境や進学、中退率に影響を与えていると思うが、どのように考えているのか伺う。

2.子どもの貧困の実態把握の必要性について、所見を伺う。また、生活・学習に関する意識調査、母子寡婦実態調査等を活用したアンケート調査実施の可能性を伺う。

3.健康福祉部と教育委員会が問題を共有することの必要性について、所見を伺う。

4.市町村教育委員会と連携し、保護者にも情報提供し、学習支援が必要な子どもの背中をそっと押してあげる必要があるが、所見を伺う。

5.困難を抱える子どもを積極的に支援することで、将来への道を閉ざされないようにするためには、県や市町村の中での教育委員会と首長部局の連携が大切で、県と市町村との連携も重要だと考えるが、所見を伺う。

 

(答)教育長

1.5点のご質問にお答えをいたします。まず、世帯の経済状況が子どもの学習環境などに与える影響についてであります。

 平成27年度の県内公立高校における中退者数は全日制で44名、定時制で18名であり、このうち経済的理由で中退した生徒数は、全日制、定時制ともに1名ずつでありました。

 中退した理由の多くは、「学校生活や学業への不適応」あるいは「進路変更」によるものでありまして、ここ数年は、同じような傾向になっております。

 進学との関係については、いくつかの高校に状況を聞いてみましたところ、学校現場では経済状況によって進学を断念せざるを得ないというようなことがないように、入学時から生徒だけでなく保護者に対しましても、進学後に必要な費用について情報提供したり、奨学金制度や授業料減免制度も紹介したりしながら進路指導にあたっております。

 ただ、例えば失業などにより家計が急変して進学を断念せざるを得ないような事例もあると聞いております。

 また、家庭の経済状況が学習環境全般に及ぼす影響について、学校におきましては、家庭の経済状況によって学習意欲が低下したり、学力不振で自己実現をあきらめたりすることがないように、一人ひとりの児童生徒に対して細やかな学習指導や生活指導が行われております。

 特に学習面では、例えば家庭教師や塾での指導を受けなくても学習進度に遅れが出ないように、日々の予習復習にしっかり取り組むことによって基礎・基本を身につけさせる指導や、放課後においても進路希望に対応した個別指導などにも努めております。

 このように、学校の先生方の熱意とひたむきさによりまして、子どもと丁寧に向き合いながら、細やかな配慮のもとで一人ひとりを大切に育てることが、島根らしい教育の良き伝統となっておりまして、学校現場には引き続き、一人ひとりの自己実現に向けて精一杯努力してもらいたいと思っております。

 

2.次に、子どもの貧困の実態把握のための「保護者アンケート」についてお答えをいたします。

 島根県学力調査において、家庭の経済状態などを含む生活の状況についての「保護者アンケート」を併せて実施すること、そのようなご提案ございましたが、このことは技術的には不可能ではありませんが、貧困と学力を関連づける意図を持って、所得などのデリケートな個人情報の記入を保護者に依頼することは、保護者の理解を得がたいと考えております。

 また、あたかも貧困と学力に相関関係があるかのような先入観に基づく調査を行おうとする発想自体が、貧困の中でも一生懸命頑張っている子どもの気持ちも含めまして、児童生徒や保護者などに及ぼす影響の大きさを考慮いたしますと、教育委員会の姿勢として適切ではないと考えております。

 貧困問題を考える上での課題設定の在り方としましては、貧困と学力の関係をうんぬんするのではなく、むしろ貧困によって進路選択が狭められ、それによって貧困が世代間で連鎖していくことがないようにするために、どうすればよいかという課題意識のもとで議論していくことが大切だと思います。

 具体的には、進学のための奨学金制度の在り方や支援の必要な子どもに対する学習支援の在り方などが検討テーマになると考えられますが、これらは国においても教育再生実行会議の場ですでに検討が始められております。

 また、島根県としても、家庭の経済事情によって進路選択が狭められることがないよう、学校において児童生徒一人ひとりの抱える課題に細やかに配慮した学習指導・生活指導に努めるとともに、地域の方々が主体となって実施される放課後の学習支援などにつきましても、積極的な取組が県内各地で広がっていくよう、努力していく必要があると、このように考えております。

 

4.次に「地域未来塾」などにおける学習支援の在り方についてお答えします。

 放課後の学習支援については、公設塾を設ける方法のほかにも、学校の施設内や公民館等を活用し、大学生や退職教員等地域の方々が参画して、子ども一人ひとりの学習進度やつまずきなどに細やかに配慮した学習の場を提供している例が見られます。

 こうした学習支援に取り組んでいる市町村教育委員会に聞いてみましたところ、そのような学習の場に、真に支援の必要な子どもに参加してもらうために市町村教育委員会や学校では次のような対応を行っております。

 まず、市町村教育委員会が校長会で事業趣旨の説明を行い、学校側の理解を促進すること。

 また、教育委員会の担当者が、個別に学校訪問を行って、事業説明を徹底すること。

 そして、支援の必要な子どもが学習の場に参加しやすいように、担任の先生等がやわらかく勧誘すること。

 さらに保護者のみなさまにも、そのような学習機会を知っていただくための資料を配付することなど、丁寧な手順を踏んで支援の必要な子どもの参加を促しております。

 県教育委員会としては、こうした積極的な取組を行っている市町村の事例を他の市町村にも紹介し、支援の輪が広がっていくように努めていきたいと考えております。

 

3、5.最後に、部局間の連携や、県と市町村との連携についての、二点のご質問にまとめてお答えをいたします。

 学校が把握した生活上の課題を、学校だけで抱え込むのではなく、積極的に外部の支援機関に繋いでほしいという議員のご指摘につきましては、教育委員会としても、同様の考え方をしております。

 例えば、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置し、学校がこうした専門職と協働することによりまして、子どもの状況を正しく把握し、必要に応じて関係機関との連携を図り、子どもやその家庭への支援を行っております。これもその一環であります。

 学校現場に対しましては、問題を学校だけで抱え込むのではなく、関係機関と「繋いでいく力」を高めていくように助言を行っております。

 子どもの貧困は、保護者の就労問題や健康状態、家庭環境など多岐にわたる要因が絡んでおりますので、県・市町村いずれにおいても、教育委員会と首長部局との連携が欠かせないものとなっております。また、県と市町村との連携・協働も求められております。

 島根県教育委員会としても、健康福祉部や商工労働部など知事部局との連携は当然必要と考えております。現在も庁内会議に参画して情報提供をしましたり、知事部局と一緒に学校を訪問する機会を設けて、子どもの貧困問題の実態をよく把握してもらえるように、案内・説明したりしております。課題意識が共有されるように努めております。

 今後も、こうした考え方で連携を進めてまいります。以上でございます。

 

(再質問)貧困が見えにくくなっている状況にあって、有効な支援は何なのかということを何らかの形で知る必要があると考えるが、どうしたら実態調査ができるのかということについて所見を伺う。

 

 お答えをいたします。実態を把握しなければ、的確な対策を検討することにつながらないというご指摘については、まったく同感であります。

 ただ、その実態把握のやり方につきましては、課題により、テーマにより、様々な方法があろうと思います。

 今回テーマとなっております、貧困世帯の子どもにどのような支援をしていくのか、あるいは学習支援のためにどのようにしてその子どもの背中を押すのかという極めてデリケートな問題に関しては、必ずしも統計的な数値データによる実態把握だけではなく、むしろ現場でそのような厳しい状況にある子どもに寄り添い、支援をしている学校の先生でありますとか、スクールソーシャルワーカーでありますとか、そのような関係する方々の意見をよく聞いていくというような、定性的なアプローチもあるのではないかと思います。

 いずれにしましても、庁内会議に積極的に参画をいたしまして、適切な実態把握が行われるよう努めてまいります。以上であります。

 


お問い合わせ先

島根県教育委員会

〒690-8502 島根県松江市殿町1番地(県庁分庁舎)
島根県教育庁総務課
TEL 0852-22-5403
FAX 0852-22-5400
kyousou@pref.shimane.lg.jp